壊して欲しいと思っていた。  
 あの優しい瞳がこちらを向くたびに。  
 あたしの原型がなくなるくらいに、その手で壊して欲しい、と。  
 
   
 旅の途中の宿場町にあたしたちがもう一泊しようと決めたのは、なんてことはない、でてきた料理が  
美味かったからだ。海の幸、山の幸をふんだんに盛り込んだ、豪華ではないが一流と言ってさしつかえ  
ないほどの料理が、こんな普通の宿屋でひょいっと出てきたものだから、ただ通り過ぎるにはもったい  
ない!と堪能することになったのだ。  
 こーいうのも旅の醍醐味のひとつよねー、とあたしがうきうきほくほくうかれているのを、いつものように  
ガウリイはまた保護者の顔をしてながめていた。  
 昼間は町の小料理屋をめぐり、夕方宿屋に帰ってきたあたしたちは各自の部屋でごつい武装をはず  
して、廊下で待ち合わせ、お茶でもするかと食堂へと向かう。  
 あたしもガウリイも、冬がおわり軽装になっている。  
 ちらりと目を横にやると、武装と厚着にかくされていたガウリイのたくましい体・・・  
 思わずもれたため息が熱い。自分でも驚くほどはっきりわかる。  
 気づかれてしまうだろうか?こんなに近くで、鼓動を早めてしまっていること・・・  
 「リナ?・・・」  
 ガウリイがあたしの様子をうかがうように、優しく声をかけて顔をのぞきこんでくる。  
 「なんか熱あるんじゃねーか?ほっぺ赤いぞ。春だからって薄着してたら風邪ひくんだからな」  
 すこしひんやりとした手をあたしの額に軽くふれさせてくる。  
 心配そうな瞳を正面から見てしまい、なんとなくうつむいてしまった。  
 いつもだったら、そう、少し前のあたしだったら、その子供扱いする手をはねのけて、あんただって薄着  
してんでしょーがと憎まれ口をたたいて、そのまま勢いでお茶はガウリイのおごりだかんね!とでも言って  
困り顔で苦笑する彼を楽しむ余裕すらあったのに。  
 なんなんだろう、いきなりといえばいきなりだった。  
 あるとき彼の瞳の中に男を感じてしまってから、あたしの心臓は痛いぐらいに踊り出し、その結果頬を熱く  
してしまうこともちょくちょく起きるようになっていた。  
 そして今も。すぐ目の前にガウリイがいるというだけなのに・・・  
 「ん〜、やっぱり熱があるな。元気もねーし・・・少し早いけど晩飯食って寝ちまえよ」  
 そうか、これ、風邪なのかな・・・風邪・・・だったらいいな・・・  
 ここしばらく、ふと感じる息苦しいまでの鼓動と思うようにならない体の反応とに、あたしはいいかげん  
くたびれてきていた。  
 この体の熱は違うんだ、ガウリイへの熱じゃなくて、きっと風邪なんだ・・・  
 そうじゃないと報われない・・・彼があたしのことを女としてみているふうには見えないんだもの。  
 
 「ん、じゃあそうしましょかね・・・そんなお腹すいてないんだけどなぁ。  
 ・・・て、いつまでおでこ触ってんのよ、晩御飯おごらせるわよ」  
 ずっと額においてあった手をどけて食堂へ向かおうとしたのだが、あたしはガウリイの大きな手に触れた  
とたん、体がさらに熱をおびてしまった。ずきんと胸が痛む。  
 この手があたしを求めてくれたらいいのに・・・そんなことを考えてしまいあわてて手を離すと、いそぎ足を  
速める。顔が熱い。いやもう熱いというより痛い。  
 「・・・リナ、お前さん・・・」  
 すっとあたしの腕をとってひきとめるガウリイ。  
 しまった!やっぱ不自然すぎ?でもどうしようもないんだこんなの。意志の力なんて全然無意味なんだ、  
無理だ、自分の体なのに、言うこと聞かない!  
 「・・・やばいんじゃないか?無理すんのやめとけよ。オレが飯もってってやるからもう寝ろ」  
 気づかれてない・・・?  
 あたしは安堵しながらも、彼の保護者然とした態度に寂しさも感じていたたまれなくなってしまった。  
 どうしろっていうのよ・・・・・・思うようにならない自分の体にあたしは嫌気すらさしてきていた。  
 「・・・わかった、寝る。おやすみガウリイ」  
 あたしはぶっきらぼうに言い、胸のうずきに耐えながらきびすを返して自分の部屋へと廊下を歩く。  
 「おう、あったかくしてろよ。飯は起きてたら食えばいいからな」  
 ガウリイの心配げな声を背中で聞き・・・あれ?てことは後でこっちの部屋にくるってこと?  
 ちょ、ちょっと今は勘弁してほしい・・・けど来てほしくもある・・・や、違う違う、あたしは風邪でおかしく  
なってるだけなんだ。一晩寝たらなんかすっきりしてるかもしんないし・・・  
 ふぅ、もうどうでもいいや。なるようになる。覚悟決めろ、リナ。  
 あたしはぐっと握りこぶしをつくり、部屋までの道をなんとかふんばって歩いていった。  
 ガウリイの視線がささったままだったので、部屋の前で一度彼に手を振ってから中に入った。  
 過保護だわ、ほんと。嬉しいのやら悲しいのやら、自分でも判別つかない。ガウリイのばか。  
 
 とりあえずベッドに横になりシーツにくるまる。  
 春になり毛布の季節が終わったとたん、宿屋はのきなみシーツにかわっていた。  
 ・・・やっぱほんとは風邪で顔熱いのかな?そしたらあの「壊して欲しい」っていう願望はなんなんだ?  
 ・・・正確に言う。「ガウリイに壊して欲しい」・・・そんなことを望むあたしは、いったい何を考えている?  
 言ってみたらどうなるのかな・・・望み通りに壊してくれるのかな・・・?  
 めちゃくちゃに・・・してくれるのかな・・・  
 ああ、いかんいかん、ガウリイがそんなことするわけないじゃん。  
 ずっと保護者としてそばにいた旅の相棒を、たとえ一時の間違いであっても、壊すわけがない。  
 あたしは枕に顔をうずめて、吐息をはいた。  
 体の熱はおさまりもせず、さっき触れた彼の手を思い出しては切なくなる。  
 なんでこんなことになったんだろう?ガウリイに男を感じたのはいつからだっけ?  
 なんとなく、そうなんとなく、何か感じてはいた。それがここ最近、顕著に感じるようになってきて、  
ついに今日あたしはギブアップしてしまったのだ。  
 かっこいいとか、ハンサムとか、そういう次元じゃない何かにものすごい勢いで惹きつけられて、  
頬が火照るのをおさえられなくなったのだ。  
 もっと近くに寄りたくて、その体に触れたくて、あの瞳で見て欲しくて、そして彼に・・・  
 コンコン  
 ノックの音にあたしはびくっと身をちぢめる。  
 「リナ、飯ー。おきてるか?」  
 想像の中のガウリイにひたっていたあたしはなんだか当人に申し訳ない気持ちになって、つい  
小さくため息をついた。会いたいような会いたくないような・・・  
 どうしよ、このまま寝たふりしちゃおかな・・・  
 「お?おきてるな、鍵あけてくれ。オレのもあるから一緒に食おうぜ」  
 た、ため息聞かれた?! なんでこんなときまで敏感なのよっ! いつもはくらげなくせに!  
 ああもうっいいわよ、あけるわよ!  
 「はいはい待って、いま鍵あけるから」  
 のそのそとベッドから出て、鍵をあけてとびらを開く。あいかわらずの心配顔でガウリイが  
おいしそうなパンを山盛りのせた皿を持って部屋へ入ってきた。そしてもう片方の手に毛布も。  
 「ほれ、これ借りてきたからくるまっときな」  
 言ってあたしの肩に毛布をかぶせて、サイドテーブルをベッドわきにゴトゴトと引き寄せる。  
 いつもなら、あたしはほかほか焼きたてパンに目がいくはずだった。  
 けど今のあたしは毛布にくるまりながら、ガウリイのそのたくましい腕を見ていた。  
 あたしのこともそうやって引き寄せてくれないかな・・・なんて思いながら。  
 テーブルにでかい皿を置いたガウリイが、準備完了とばかりにこちらを振り向き、手招きする。  
 その手がとまり、動こうとしないあたしをいぶかしげに見つめる。  
 「・・・リナ・・・?」  
 
 ベッドの前にテーブル。パン食べるだけとはいえ、ベッドに二人ならんで座るなんて、なんか・・・  
 足を一歩踏み出すだけなのに勇気がいる。  
 そんなあたしに無造作に近づき、ほっぺに手の甲をふれさせて、熱をはかろうとするガウリイ。  
 心臓がはねる。彼の目が見れない。  
 あたしは熱にうかされたふりをして視線を泳がせた。  
 「ん、んん?ありがたくちょうだいするわ、食べて寝たら大丈夫よ!・・・いろいろありがと・・・」  
 おそろしく素直にいろんな言葉がでてくる。とまどったのはあたし以上にガウリイのほうだった。  
 「お、おう・・・ひでー熱なんだな、リナが素直だ・・・」  
 どーいう意味?っと言おうとして彼と目が合う。  
 それだけで・・・なんで?心臓がつぶれそう・・・おかしい、やっぱあたしおかしい・・・  
 ガウリイにこんなにどぎまぎしてしまうなんて・・・風邪、なんかじゃないな、これは・・・  
 あたしはむりやり視線をはがし背を向け、部屋の鍵をかけようとして、はた、ととまどってしまった。  
 鍵かけたら、出て行かないでってふうに取られちゃわない?いやでも普通は宿では鍵かけるわよね?  
 いつもはガウリイの部屋で相談やらしてるから鍵は彼が勝手にかけて、あたしが勝手に開けてでて  
いくから、いまあたしが鍵かけても変な意味にとったりしないよね・・・いやいやあたし考えすぎ・・・  
 ぐるぐるあたしが迷っていると、後ろからガウリイが片腕を扉におしかけて、背中のすぐ近くに立った。  
 触れるか触れないか、ぎりぎりの距離で、彼の体の熱を真近に感じたあたしはますます動けなくなる。  
 ガウリイは無言でそのまますっと腕を横から這わして鍵をもつあたしの手に柔らかく手を重ねる。  
 「鍵、かけねーの?」  
 小さくそうささやいて、少しだけ背中にもたれてくる。  
 こんな距離間、いままでにはなかった。  
 鎧もマントの結界もなしで、ここまでお互いの体温を感じるなんて・・・なかったのに。  
 あたしは頭がクラクラして状況を把握できず硬直していたが、とにかく今の状況をなんとかしなければと、  
気力をふりしぼり、ガウリイに手を握られたまま鍵をかけた。よし、よくやったあたし!  
 なのになぜか手を離さないガウリイ・・・ど、どーいうこと?これ・・・  
 扉にもたれていた片腕をそっと離したガウリイは、あたしの毛布をふんわりと掛けなおし、何も言わずに  
 そのまま・・・抱きしめてきた。  
 あたしの心臓はにぎりつぶされたように苦しくなる。  
 はねのけれない・・・てゆーか、こーいうのって、どのタイミングで突き飛ばしたらいいんだろ・・・?  
 一連のガウリイの動作が至極ゆっくりかつ優しいものなので、いまいちこう、ノリでスパン!とスリッパ  
叩きつけるきっかけがわからないんだが・・・だれかおしえてぷりーず。  
 うわわわわ・・・とにかく何か、なんでもいいから体離してもらおう。でないと・・・あたしの心臓がもたない。  
 「あ、あの・・・ガウリイ?」  
 「うん・・・」  
 「や、あの・・・風邪、うつるかもしんないし・・・あの・・・」  
 「うん・・・うつってもいーぜ」  
 あんまりな発言にびっくりしていると、腕にぎゅっと力をこめてきた。  
 「・・・ほんとに風邪なら、な・・・」  
 
 !?みぬかれてる・・・?ガウリイにもわかってしまったのか、この体の熱が風邪なんかじゃないってこと。  
 だからって、どう答えたらいい?風邪じゃない、じゃぁ何なのだ?って、あたしにもよくわかんないのに!!  
 だってガウリイだよ?!スライム並でゼリー脳の、ガウリイに!なんでこんなドキドキしてんのよ、あたし!  
 頭が本気でくらくらして、返す言葉も見つからず、軽くパニックになってきていたあたしは、頭の中にひとつ  
だけ、言葉を見つけた。・・・そう、ひとつだけ、はっきりしてることがあったっけ・・・  
 「あたし・・・ガウリイにこわされたい・・・」  
 ・・・・・・・・・  
 ・・・・・・って、なんつった!? あたし今なんて!? とりけしとりけし、とりけしたい!!  
 な、な、な、なんて言ってとりけしたらいいの?!またもやおしえてぷりーず!  
 「・・・熱にうかされてんのか・・・?」  
 まったく力を弱めずに抱きしめたままガウリイがつぶやく。心なしか声がかすれている気がする。  
 「お前・・・それ本気で言ってんのか?・・・」  
 答えることができない。ノーもイエスも言えない。本気だし本心でもあるけど、理由が説明できない。  
 心の激しい動揺は、しかし、はっきりとガウリイにイエスと答えていることになっていた。  
 「・・・壊したくねーんだけど・・・いいぜ、お前がそう望むんなら、オレも逃げねぇ」  
 逃げて逃げてー!ちがうのよ、こんなこと言うつもりじゃなかったのに!  
 「ち、ちょっと、ちがうのよ、これはあれよ、あれ、なんだ、ほら、うっかりぽろっと、ていうか、えと・・・」  
 弁解しながらおそるおそる後ろをふりむくと、ガウリイの真剣な眼差しがまっすぐあたしを貫いた。  
 ガウリイは続きを言えなくなったあたしの唇にゆっくりと唇を近づけてくる。どくんっと胸が鳴る。  
 このまま、どうなってしまうのか。いちおう知ってはいるけれど・・・  
 あたしはまだ迷っていた。まだ、今ならまだ、ノーを言える。でも胸が苦しくて、何も考えられない・・・  
 そっと唇を離したガウリイは、少し首をかしげてあたしを見る。瞳がいつもと違う、そう、これが男の瞳・・・  
 「なぁ、リナ・・・これってファーストキスなのか?ひょっとして」  
 へ、なんで知ってんのそんなこと!?  
 ってゆうか、今キスされた!? な、なんか唇に触れた感触があるけど・・・キスぅ?!   
 そんなあたしの慌てぶりにガウリイは小さく笑うと、腰に腕をまわしてさらに抱き寄せ、あごに優しく手を  
かけ上を向かせる。  
 「じゃ、いまのノーカウントな。キスするときは目つぶるんだぜ、お嬢ちゃん・・・」  
 「お嬢ちゃんはよしてよね・・・いまさら・・・」  
 ありったけの虚勢をはるあたしをガウリイは可笑しそうに見つめている。  
 毛布にくるまったままのあたしは彼の腕の中でなんの身動きもできなかった。  
 しかしガウリイもまたそのまましばらく何の動きもしなかった。  
 ガウリイは待っている。  
 あたしが自ら瞳をとじるのを・・・  
 ・・・・・・待て待て待って!  
 あたしの中でも答えでてないのに、キスなんかできないわよっ!・・・いやさっきしたけど・・・  
 あーどうなってんのあたし!? とガウリイも!!  
 
 そういえば、キスしたら本当に好きかどうかわかるって、昔の連れが言ってたっけ・・・  
 あの時はそんなのどんな状況で好きかどうかわからんやつとキスなんかすんのよって笑いとばしたけど、  
 今ならわかる、こういうことかっ・・・  
 ガウリイの大人びた青い瞳がじっとあたしを見ていた。そのまなざしに心がかきみだされていく。  
 わかったわよ・・・試してやろうじゃないの。  
 ・・・でもお試しが乙女のファーストキスってなんか違う気が・・・いやいやキスはさっきされたんだって・・・  
 ええい、もう!これで好きじゃなかったら許さないからねガウリイ!  
 我ながら理不尽な結論をだして、ちからいっぱい目をつぶった。  
 ガウリイからくくっとこぼれる笑みに不安になるあたし。やっぱなんか違うのかしら・・・  
 もうっするならするで早くしてよね・・・  
 ぎりぎりと閉じたまぶたに力がはいる。  
 「だいじょうぶ・・・力ぬいてみな・・・好きだよ、リナ・・・」  
 え・・・と思う間もなく優しく唇を重ねてくるガウリイ。・・・え?ガウリイなんて言った?  
 少しの時間だけ触れていたあたたかい唇がそっと離れていく。  
 その瞬間、閉じたままのあたしの瞳から涙がこぼれておちた。  
 ああ・・・これ・・・なのか・・・本当だ、キスしたらわかった・・・・・・好きで好きでたまらないや。  
 やっと感情の意味を理解できた。この甘く苦しい胸の痛みは、恋愛の・・・感情だったんだ。  
 耳年増なあたしは、こと恋愛に関しては、知識はあっても頭と心が現状にまるでついていけていなかった。  
 ガウリイが優しくあたしの涙をぬぐう。  
 
 
 「・・・で?お望み通りでいいのかな?このまま抱いても・・・」  
 ガウリイにはあたしの悩みも涙も全てわかっちゃってたんだ・・・あたしが今日どんな思いで顔を赤くして  
たか、悩みながら瞳をつぶったことも、あたしがずっと、ガウリイに抱いて欲しいって思ってたことも・・・  
 想いが通じないのなら、いっそのこと壊してくれたらいいのにって・・・あたし思ってたんだ、きっと。  
 「ガウリイは・・・どう思ってるの?あたしのこと・・・」  
 「え、いや、さっき・・・言ったぜ・・・?」  
 「・・・あんな余裕しゃくしゃくで言われたって!本当かどうかわかんないわよ!  
 ガウリイはあたしよりずっと・・・大人なんだから!」  
 なぜか悔しくなって大きな声を出してしまった。  
 こんなとき、いつもならすぐにでもなだめてくるガウリイが、今日はため息をついた。  
 「ひでーなー、さっきから・・・告白も、リナとのファーストキスもなかったことにされてんだもんな・・・  
 それに、オレ・・・」  
 離れてしまっていた体をぐっと力をこめて苦しいくらいに抱きしめられる。  
 見上げた顔がぞくりとするほど悩ましかった。  
 「好きでもねー相手にこんなことしねーよ。」  
 まるで責められているような告白だった。  
 
 怒りに似た感情がガウリイからあふれだしてきて、今度は有無を言わさずキスをされた。  
 さきほどの、感触を確かめるようなキスではなく、激しくて容赦のない大人のキスだった。  
 あたしは立っているだけで精一杯で、頭の芯がぼうっとしてくるまま、目をつむり体を任せてしまった。  
 ガウリイが毛布ごとあたしを抱き上げるのがわかったけど、抵抗する気もおきず、ただ愛撫のような  
 キスに翻弄されていた。  
 あたし、キスってもっと甘いものかと思ってた・・・こんな激しくて・・・こんな体が熱くなるなんて・・・  
 
 
 ガウリイがあたしを抱きかかえたまま、ベッドをきしませて上にあがり毛布ごとあたしを寝かせ、なんの  
ためらいもなく自らの服を脱ぐ。鍛え引き締まった身体にみとれてしまったあたしは、こんな状況になっても  
なんのリアクションもできず、自分の鼓動が早鐘のように鳴るのを聞いていた。さっきまでの紳士的(?)な  
雰囲気とはがらりと変わったガウリイの熱のこもったまなざしにとまどいながらも、度々感じていたガウリイ  
の男のオーラがあたしの勘違いではなかったことを悟る。  
 ああ・・・これだ・・・この瞳だ。・・・ぞくぞくする。  
 「言葉を信じねーっていうんなら、カラダに教えるぞ・・・  
 言っとくが、やめろって言われてもやめねーからな・・・」  
 あたしが何か言おうとする前に、また激しく唇を重ねてきた。  
 服の上からガウリイの手が胸を触り、身体がびくんとふるえてしまう。  
 乱暴な口調と、乱暴なキスのわりに、手はやわらかく優しく動いては胸のふくらみをもてあそぶ。  
 そうして片手で器用に服のボタンをはずして肌蹴させていった。  
 ゆっくり、ゆっくりと手が肌の上にのびてきて、ついには直に胸をつつみ、指できゅっと先端をはさみこむ。  
 初めて男に体を触られる、それをおそれていたはずのあたしだが、しかしそれはまぎれもない快感だった。  
 ぴりっとからだがしびれのけぞる。  
 その動きにあわせて唇を離したガウリイはそのままうなじに舌をはわせてきた。  
 「んんっ、んはぁっ・・・」  
 たまらず声をあげてしまってから、あたしは唇をかみしめる。  
 「かーわい・・・」  
 ガウリイが嬉しそうにつぶやく。  
 首筋、鎖骨と舌をはわし、そのまま胸の充血した先端を舌でなめあげるとやわらかく口にふくみ、小さく  
 舌を動かしころころとなめ続けては、ときおりきゅっとすいついてくる。  
 あたしはぶるぶるふるえながら声を抑えて、シーツをきつくつかんだ。  
 でもだめだ、声抑えらんない、すごい・・・気持ちよすぎる・・・  
 胸のとがった先だけを執拗に責められて、なんだか自分の身体じゃないような感じさえしてくる。  
 もはや声を抑えることはできなくなっていた。  
 「あっあっあんっあんっ・・・」  
 舌の動きに合わせて出てくる自分の喘ぎ声が自分の耳を犯していく。  
 やらしい・・・あたし、やらしい声だしてる・・・  
 
 ガウリイには、容赦する気がないようだった。  
 焦らすことなどせず、女が快楽を感じるところを躊躇なく責めては身をよじる度に脱がしていく。  
 あたしには考えるいとまさえ与えなかった。  
 ただただ気持ちよくて、ガウリイの思うままに初めて女の声でよがってしまっていた。  
 肌に何も身につけていない、と気づいたときには、彼の上半身は下のほうに移動していて・・・  
 熱く湿った舌がいきなりクリトリスをなぶりあげた。強烈だった。  
 「ああああっ!」  
 叫んでしまってから、シーツを噛みしめて声がでないように歯をくいしばる。  
 軽く混乱してたけど、ここ、宿屋じゃないの・・・!  
 こんな声もし部屋の外にもれてたら、中で何してるかわかっちゃう・・・  
 そんなあたしの羞恥にはお構いなしで、ガウリイは楽しげですらあるように、少しの躊躇もなく濡れた舌を  
はわし続けていた。強い刺激は最初だけで、あとは優しく、しかし容赦なくねぶっては口にふくみ舌で愛撫  
し続ける。身体の奥から快楽がおしよせてたまらなかった。どんどん高みへおしあげられていく。  
 こんな感覚は初めてだった。こんな・・・快感は・・・!  
 「んっ、んんー!!」  
 背がのけぞる。  
 逃げようとする腰をガウリイにおさえこまれ、逃げ場も無いまま快楽があたしを蹂躙していく。  
 「っはぁう!!あああんん!」  
 指が入れられた。優しくゆっくりと。達してしまった瞬間に、奥まで。ガウリイのあの長い指、が・・・  
 指?指が入っちゃったの?痛いってきいてたけど、痛くない・・・それどころか、これ・・・って!!  
 舌でクリを執拗に愛撫されたまま中で指がうごめく。すさまじかった。  
 身体の芯からしびれておかしくなりそうだった。  
 ガウリイはあたしがどんなによがろうがまったく止めない。それは・・・想像を絶する快楽だった。  
 すぐにまた達してしまう。でも舌も指もとまらない。  
 こんなすごいこと・・・ガウリイはできるんだ・・・ああ、すごすぎるっ・・・またイっちゃうっ・・・!!  
 もう・・・もうだめっ・・・!おかしくなる・・・!  
 気がつくとあたしはまた泣いていた。泣きながら、ゆるしてっ・・・と言えたかどうか・・・  
 ふいにガウリイがあたしのびくつく腰を抱きながら舌をはなした。・・・き、きこえた?  
 あたしの涙を見て、ガウリイはそっと指も抜きとると、あたしの目を見る。  
 「オレの本気、わかった?お前は男を勘違いしてる。  
 愛してる女じゃねーとこんなこと出来ないんだぞ、男って・・・」  
 ガウリイの声が心のなかにすぅっとしみこんでいく。  
 愛してくれてるの・・・ガウリイ・・・あたしを・・・  
 身体も心も身震いする。全てを捧げてもいいと思った。  
 こんなにたやすくガウリイを信じるあたしは単純なんだろうか・・・  
 
 もうすこし・・・そうつぶやいてガウリイがまたあたしの敏感な箇所に口を近づけていったので、あたしは  
さすがにあわてた。  
 「ゆ、ゆるしてくれたんじゃなかったの?」  
 「まだ許してない」  
 短く、それだけ言うと、舌先でちょいちょいとクリを弾く。それだけで体の中が甘くしびれ、腰がはねあがる。  
 もう何回イったかわからない、ひくつくからだに頭がついていけない。  
 まるで体ごと作り変えられたかのようで、自分の体じゃないみたいだ。自分の知ってる体じゃない。  
 そして・・・  
 「壊してやるよ・・・」  
 ・・・あたしの知ってるガウリイじゃない。  
 でも・・・はっきり言うわ・・・・・好みよ。知られたくない、あたしの本心。  
 指で秘裂を大きくおしひろげられ、クリにじっくりすいつかれると、さきほどとはくらべものにならない強い  
快感が子宮を這い上がる。奥の奥まで舌がはいりこんでなめあげられていくような、脳天まで響きあがる  
ような、鋭い快楽だった。あたしは知らず腰を浮かしていた。ガウリイの指がぐぐっとはいりこむ。  
 さっきより太い・・・その指が・・・中で曲がる・・・  
 そこまでだった。あたしの頭の中は白く焼きつきながら、なにか叫んで気を失った。  
 
 
 髪にだれか触れている・・・優しい、慈しむような指の動きに、意識をくすぐられ、ゆっくりと覚醒していく。  
 それに気づいたように、ふわりとキスをされる。  
 ・・・愛しい。あたしの胸は、以前の重苦しい焦燥感ではなく、愛しさで満たされていた。  
 「ガウリイ・・・ガウリイ・・・」  
 あたしは大好きな男の名前をよんだ。また勝手に涙があふれてくる。  
 「・・・ん?・・・どした?リナ・・・」  
 ガウリイもまた、あたしの名を囁く。そして宝物のように、大事そうに抱き寄せてきた。  
 ごめんなさい、と言いたかった。あなたの本気を疑ってごめんなさい、と。  
 でもそれは今は適切でない気がして言いよどむ。  
 ありがとうなのか?・・・壊してくれてありがとう・・・これも違う気がする。  
 状況に頭が追いついていないのが良くわかる。まるで小さな子供になってしまったかのような、とても  
もどかしい気持ちでいると、ガウリイの顔がゆっくり近づいてきた。  
 今度は、あたしはきちんと瞳をつぶった。  
 
 優しい、甘いような大人のキスをされた。唇をかるくかまれ、押し開けられ、舌をやわらかく中へ入れてくる。  
 あたしの舌に、ガウリイの舌がキスをする感じ・・・不思議な感じだった。舌がそのまま口の中をゆるゆると  
確かめるようになぞりはじめ、あたしの頭はぼうっと熱におかされたようにぼやけてくる。舌をかるく吸われ、  
腰が動く。まるでそれが合図のように、ガウリイの手があたしの腰からおしりのほうへとなでおろされる。  
そのままゆっくりと、濡れて、あふれた蜜を確かめるように、指を這わしていく。  
 ・・・気持ちよかった。不思議なくらい気持ちよかった。  
 体の奥にこもった熱がふたたび熱くぶりかえしてくるのがわかる。  
 ガウリイがそっとキスをやめてあたしの手をとり、指へ唇を触れてくる。  
 あたしがおそるおそる瞳をあけると、ガウリイの少し上気した顔がまっすぐにこちらを見ていた。  
 目が合うと、ガウリイは唇をはわしていたあたしの手を自身のモノに導いていく。  
 熱くて硬い感触が手のひらにあてがわれ、その感触にびくっと体をすくめてしまった。  
 いや、なん、ていうか、こんな大きいものなの・・・?  
 当然ここから先の知識もあるが、展開を想像したくなくなってしまう。  
 さっきあたしこわされちゃったけど、これは違う意味で確実に壊される・・・??  
 はいるわけないじゃん・・・むりむりむり!!  
 ガウリイは片方の手でずっとあたしの髪の毛をなでている。  
 そしてこれからすることをおもい知らせるように、もう片方の手はあたしの手をその大きく猛った自身に  
あてがわせたまま、黙ってあたしを見つめている。  
 ・・・きっとまたガウリイは待っているのだ。  
 あたしがイエスと答えるのを。  
 ・・・・・・・・・  
 いやいやムリムリ!!どう考えてもはいりっこないもの!!なんなのこの太さ!  
 もっと常識ってもんを考えたらどーよ?!  
 ・・・まぁ、どのくらいの大きさなら常識の範囲内なのか、なんて知らないけど・・・  
 ガウリイのそれは、明らかに・・・あたしを軽々と壊してしまいかねない代物に感じた。  
 いくらあたしが壊してほしいって思ってたって、そ、そーいう意味ではなかったんだけど・・・  
 ああ、それで、か。  
 あたしは納得がいった。ガウリイがあたしからのYESを待つ理由が。  
 別にあたしを困らせて楽しんでるわけではなく、自分の抱える凶悪さを精神的にはともかく、物理的には  
押し付けたくないからなのだ。ガウリイは自分が抱えているものを知っているのだ。肉体的にも精神的にも。  
そしてそれに決して流されない。なんて大人なんだろう、この人は。  
 あたしはあらためてガウリイという男に惹かれていくのがわかった。  
 彼となら、どんなことでも乗り越えていける気がした。  
 あたしは意を決して、口を開く。  
 
 「だいじょうぶ、なのかな・・・あたし・・・」  
 ガウリイのモノに添えられた手をすこしだけ動かしてみる。熱い脈動が敏感に手のひらに伝わる。  
 「だいじょうぶだよ。女の体はちゃんと扱えば壊れないようにできてんだから・・・じぃちゃんが言ってた」  
 ・・・どんなじぃちゃんだ。光の剣を伝承するだけじゃなく、そーいうのも伝承してんのかい。  
 「それに、リナの体が壊れるような無茶をするつもりはねーよ。  
 オレの子供産んでもらわなきゃいけねーし」  
 ガウリイはさらりと言い放ち、いつもみたいに優しく笑う。その笑顔は、出会ったときからずっと見てきて  
いたままの笑みだった。  
 なんだ、あたし、ずっと変わらず愛されてたわけか。ふーん、そっかそっか。・・・・・・  
 「へ?! 子供?!」  
 思わず口にだして驚いてしまった。だって、ええ??こどもって??あたしが・・・こども・・・産む・・・?  
 想像すらできない・・・  
 そんなあたしに優しく口づけしながら、ガウリイはまたもや大人っぷりを見せつけてきた。  
 「そのうちな。リナが子供ほしいって思ったら、そのときに産んでくれ。  
 今はまだ・・・リナがやりたいことして、行きたいところにいけばいい。  
 オレはそんなリナが好きだ。」  
 顔が火照っていくのがわかる。  
 あたしのとまどいを全て受けとめた上に、あたしの全存在を肯定して、「好きだ」と言う・・・  
 かなわない、と思った。この人にはかなわない、と。  
 あたしは初めて男に負けを認めた。いっそすがすがしかった。  
 そんなあたしの内心を知ってか知らずか、ガウリイは体勢をかえてあたしの上におおいかぶさるように  
動いた。  
 「いまのオレにできるのは・・・気持ちよくさせてやることくらいかな・・・」  
 ガウリイはことここにおよんでまだあたしが黙っているのをどう解釈しているのだろうか。  
 あたしは彼みたいに素直に何か言えないまま、顔を赤くしてじっとしていた。  
 しばらく見つめ合っていると、いきなり、にっと嬉しそうにガウリイが笑う。  
 「『オレの女』宣言、否定しないんだな」  
 そう言われてドキンっとした。胸の鼓動が高まっていく。  
 確かに・・・あたし、そんなふうに言われて、実は喜んでいる・・・かもしれない。  
 「・・・否定、しないわよ」  
 精一杯の、告白だった。  
 愛してるだとか好きだとか、まだまだあたしの柄じゃない。今言えるのはこれだけ。  
 あたしってばお子様だ。  
 「オーケー、そうこなくっちゃ。一生かけて愛しまくってやる」  
 あたしよりずっと大人なガウリイは、あたしのその精一杯さを確実に受けとめてくれていた。  
 ガウリイの顔が、また男のそれに切り替わっていく。  
 舌なめずりさえしそうなその表情に、あたしはぞくぞくするほど興奮した。  
 
 彼の、その猛りは熱く焼けていた。あたしは自分の中を貫くガウリイのその灼熱したモノを受けいれ呻く。  
 痛いなんてもんじゃなかった。熱くてやけどしそうだった。  
 それがあたしの中をものすごい存在感で押し進んでいく。  
 あたしは痛みをそらすために文句を言ってみる。  
 「ガウリイっ・・・あつっくて・・・っいたい・・・やけちゃうっ・・・おっきいっ・・・・・・」  
 「だいじょうぶだよ・・・リナ・・・」  
 ガウリイにはなんの躊躇もみられなかった。そのことが少しだけあたしを安心させた。  
 だいじょうぶ、だいじょうぶなんだ。壊れたり、しないんだ。ガウリイは、壊したり、しないんだ・・・  
 さっき舌と指でさんざんイかされて、おかしくなるまで愛撫されていたのは、やはりガウリイの優しさだった。  
 ・・・だって、ほら・・・熱くておっきくて痛いし苦しいけど・・・なんか頭の違うとこで、気持ちいいって言ってる・・・  
 奥まで入ったのか、ガウリイがふぅっと息を吐きながら動きをとめた。  
 「・・・しめてみて」  
 そうささやかれて、あたしには意味がわからなかったが、体がなぜか反応していた。  
 きゅうっとあたしの体の中が勝手にガウリイを締め上げる。え?なにこれ??やだ、勝手に・・・  
 あたしの頭とは違い、あたしの体はえらく素直にガウリイに従ってしまっていて・・・でもそうやって締め  
つけていると、ガウリイのあの、あれの形がはっきりとわかる。オウトツさえもリアルに感じてしまって、  
あたしはびっくりしてあわてて力を抜いた。  
 それなのに元に戻る感触がダイレクトにわかって、よけい恥ずかしくなってしまった。  
 ガウリイはあたしを愛おしそうに見つめている。奥に入れたまま、じっと動かずに。  
 「もう一度・・・」  
 ガウリイが優しくささやく。  
 さすがに何を言っているのか理解できないほどのお子様ではない。でも実践できるほど大人でもない。  
 あたしの理性はその妙な狭間につめこまれ、羞恥で眩暈がしそうなほどだった。  
 「・・・わるいわるい、あんまり気持ちよかったからさ、つい・・・」  
 吐息混じりにガウリイが言う。  
 ああ、あたし、女としてあつかわれたんだ・・・  
 そう思った瞬間、あたしの中はまたもやきゅうんっとガウリイを締め上げていた。  
 あたしはびっくりして目をつぶる。腰がジンジンとしびれていく。ゆるめることも出来ないまま、体を  
こわばらせてしまっているあたしをガウリイは落ち着かせるように撫でていく。  
 その手が熱く火照っている。息も少し荒い。そしてガウリイはそれを隠そうともしない。  
 「気持ちいいよ・・・リナ・・・」  
 あたしの理性がかすむのと、ガウリイが腰を動かしたのは同時だった。  
 彼の熱いものが動くたびに、あたしの中もうごめき絡まるような・・・その感触がもたらすそれは、  
耐え難いほどの羞恥だった。  
 あたし・・・こんなやらしい体してたの・・・??でもきもちいい・・・!  
 自らが与えてくるその羞恥にさいなまれながらも、ガウリイの優しい、しかし躊躇のない動きに、  
確実に快感をあたえられていく。最奥を熱い猛りで犯され、敏感になった胸を大きい手のひらで  
やわらかく犯され、そして自分の喘ぎ声さえ耳を犯してくる。  
 
 もうたまらなかった。こんな快感が世にあるとは、知識をはるかに凌駕する。  
 それをガウリイに、保護者と称していた過保護でたくましい、優しい相棒に・・・男の顔で責めこまれ、  
全てをもっていかれながら、全てを与えられていく激しい交わりを・・・愛情が持つ、すさまじいまでの  
快楽という一面を、容赦なくたたきこまれていく。熱心に愛をささやかれながら・・・  
 これはもう・・・あたしのキャパの限界を超えていた・・・  
 ガウリイが唐突に呻いて荒い息とともに白濁した熱い塊をあたしの体にぶちまける。そのあまりの  
熱さにあたしは体がとうとう溶けてしまったのかと思いながら意識が遠くなるのを感じていた。  
 
 
 「・・・すっげぇ気持ちいい・・・たまんねー・・・リナ・・・」  
 ガウリイはまだ息が乱れていた。あたしはといえば、乱れるどころか、息絶え絶え、だ。  
 体中がジンジンしびれてうまく動けない・・・  
 「オレ、こんな気持ちよかったの、初めてだぜ・・・  
 なぁ、もっかい・・・もっかいしよーぜ・・・」  
 好き勝手なことを言うガウリイ。  
 それなのにあたしの体の奥はガウリイの言葉に反応して、はいってきたガウリイを勝手に締めつける。  
 「・・・こわれ・・・ちゃう・・・ガウリイ・・・」  
 あたしの限界を知らせる声に、しかしガウリイは壮絶な笑みを見せてゆっくりと耳元でささやいた。  
 「こわれちゃえよ・・・」  
 ・・・ああ・・・ひどいおとこ・・・  
 なんてひどいおとこなの・・・?こっちははじめてだっていうのに、手加減なしでしてくるこの男は・・・  
 しかもあたしが悦んでいるって、きっと知ってる・・・こんなにめちゃくちゃにされて・・・もっと恥らいたいと  
思ってるのに・・・女の声で悦んでいるって、きっとわかってる・・・・・・なんて、ひどいおとこ・・・・・・・・・最高・・・  
 あたしはガウリイの名を何度も何度もよんで、腰をふった。  
 こわれてもいい、と思った。ガウリイが、ガウリイがこわすのなら、何度でもこわしてほしいと・・・  
 そんなことを思いながら愛しい男と快楽に溺れるあたしは、もう十分イカレていた。  
 
 自分の絶叫を聞いた。悦楽の、ふるえるような叫びを。魂の底からのよろこびを。  
 あられもなく繋がってよがって突き上げられて・・・っまた熱いものがあたしの体にほとばしる。  
 あたしは今度は気を失わなかった。  
 理性を保とうとするから意識が負けてホワイトアウトしちゃうのね、きっと。  
 今のあたしは全てをうけとめていた。ガウリイがそうしてくれたように。  
 でも、おなかにかかったガウリイの白濁を見たとたん、おそろしいほど悲しい気持ちになった。  
 あたしの中に出さなかったんだ、ガウリイ・・・  
 男の人が子供ほしいって思う気持ちが少しだけ理解できた気がする。  
 でもあたしにはまだ決心がつきそうにない。  
 もうしばらくはガウリイの言葉に甘えさせてもらうことになるかな・・・  
 
 ガウリイの息がひどく荒い。  
 口ではなんのかのと言いながらも、やはりあたしの体を気遣いながらでは消耗が激しかったんだろうか。  
 大きく息をつくと、あたしの上にどさっと倒れこみ、むさぼるように口づけてきた。  
 お互い何か言いたげなまま、体の疲労にひきずられるように意識までたおれこんで、おそらくはこのまま  
眠ってしまっていくのだろう。  
 あたしたちは明日の朝、いったいどんな言葉をかわすのだろうか。  
 裸で抱き合ったまま目が覚めたとき、もう元には戻れないとわかりきっている、あたしたちは・・・お互いを  
どんな目で見るのだろうか。  
 そういえば、結局あたし、好きだって言わないままだったなぁ・・・  
 
***  
 
 リナの栗色の髪が、オレの金色の髪と乱れあって朝の光にきらめいていた。  
 裸のままのリナを抱きしめながらオレは目を覚まし、昨夜のリナを思い出す。  
 本当に幸せだった。  
 オレはふと思い出してシーツでリナの腹を拭う。乾いていたそれは、すべすべとしたリナの肌に簡単に  
負けて、するりとはがれおちた。  
 うーん、物悲しい。でもリナが望んでいないことをする気はさらさらない。これでいいんだ。  
 また待つさ。気長にな。  
 ベッドのすみにしわになっていた毛布をリナの華奢な体にかけ、オレも中にもぐりこむ。  
 あ、っとまた思い出して、そっと体を起こすと、足元の毛布をめくった。  
 やっぱり血が流れていた。さきほどのシーツのよごれていない部分で優しく拭く。ずっと湿っていたからか、  
思ったよりも綺麗にふきとれた。オレは床へとシーツを落とすと、またリナの隣へと毛布の中に戻っていった。  
 やっと抱いた。  
 リナが示す微かな兆候を見つけたときから、オレはずっと待っていた。この愛しい女を抱ける日を。  
 男を感じさせたら逃げるかもしれない、ある種の賭けだったが、今はこうしてオレの腕の中で眠っている。  
 何が変わるわけでもない、オレはずっとリナが好きだったのだし、リナもやっとオレへの気持ちに気づいた  
のだ。このままどこまでも一緒にいるし、いつか子供ができたなら、祝福すればいい。  
 何も変わらない。オレたちは。出会ったときからずっと。  
 馬鹿騒ぎして、笑い転げながら、死ぬまで一緒にいる。  
 そうだろ?リナ。  
 この気持ちをどう言うか、オレは知っている。教えてくれたのはお前さんだよ・・・  
 リナも本当はわかっているんだろう?いつかそのかわいい唇で言ってくれ。  
 「愛してる・・・」  
 月並みな、世界中で幾億と言われ続けている言葉をオレは口にする。  
 恋人同士の朝の挨拶にふさわしいと思わないか?ありふれた恋人たちの、ありふれた言葉。  
 リナがゆっくりと目をあけて・・・なんて言ったかは、オレだけの秘密。  
 
    ...end.  
 

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