「えっ? ……やああっ!」  
 力の抜けていたあたしの身体は、難なくガウリイの思った通りに動いた。つまり、右足がぐいっと大きく開かれて。  
次いで左足も同様にされる。  
 あたしが慌てて足を閉じようとした時には、両足の間にガウリイの身体が入り込んでいた。  
 大きく開かれた両足。あまりの恥ずかしさに眩暈がする。でもそんなのは序の口でしかなくて。  
「ひゃあああっ」  
 誰にも触れられたことのない、あたし自身もほとんど触れていない箇所に、ガウリイの指先が触れてきたせいで、あたしは思わず声を上げてしまった。隣の部屋に聞こえたかもしれないけど、止められなかった。  
「ガウリイ! ちょっ、やだっ」  
 めちゃめちゃ恥ずかしい!  
 真っ赤になって身体をよじるけれど、押さえられた下半身は動きようもなくて。  
「あああんっ」  
 抵抗するあたしを叱るように、指があたしのそこを、すうっと撫で上げた。  
「リナ……好きだ」  
 指先を何度も往復させつつ、ガウリイがあたしの顔を見ながら何度目かわからない告白をしてくる。  
「リナの全てを知りたい。ここも」  
「ふ……あああん」  
「リナの身体を、隅々まで見たい。味わいたい。……いいか?」  
 顔をあげたガウリイが、あたしを宥めるように唇を寄せてきた。キスをしている間も、右手はあたしの閉ざされた部分を何度も撫でている。左手は胸や腰や腿や……あたしの全身を往復している。  
 恥ずかしさは変わらない。けれどガウリイの体温があたしの身体のいたるところから伝わってきて。  
 力が抜けていく。  
 閉じようともがいていた足が動かなくなったのを了承と見たのか、ガウリイが行為を次のステップに移していった。  
 あたしの唇をぺろりと舐め上げた舌が、先ほどまで弄っていた胸元へと戻っていく。ただしそこへはほんの少し戯れただけで、ガウリイの頭はもっと下がっていった。  
 腰に手をあてながら、腹部へちゅっと吸い付いてくる。それでもガウリイは動くことをやめなくて。  
 あたしはぎゅっと目を閉じた。  
「……っ、あ…………や、あああっ!」  
 衝撃に耐えるつもりだったのに、それはあたしの予想を大きく上回っていて。  
 ついさっきまでガウリイが指でなぞっていた部分に舌が触れた瞬間、あたしの腰は大きく跳ねてしまった。  
「ああっ……ん……ふっ……う、あ…………ああんっ……」  
 ガウリイはあたしのそこを何度も舐めてくる。未通のそこは容易には華開かないのだろう。根気よく、ノックし、擦り、吸い付き、なぞる。  
 そのたびにあたしは抑えられない嬌声をガウリイに聞かせることになった。  
 刺激の大きさに、パジャマを噛み締めているくらいでは最早声を抑えきれない。  
「……は……ああっ……う、ひゃああっ!?」  
 快感の波に溺れるようになっていたあたしは、大波のようなその刺激に目を見開いた。  
「な……あああっ」  
 ガウリイの舌が、あたしの敏感な部分に触れたせいだった。  
 あたしだって、年頃の娘である。ガウリイを想って眠れない夜を過ごしたことだって、ないわけではない。  
 そこに己の指を触れさせたこともある。  
 だけど、ガウリイから与えられる快感は、その比じゃなかった。  
 
「ああっ……ひゃっ……ん、んんっ…………ああん!」  
 ガウリイの舌があたしの小さな突起を舐め転がしてきた。上から押しつぶすように、下からすくい上げるように、先端をなぞるように。  
「……あああ……っ…………ふ、ああっ……んっ」  
 尖らせた舌先がつんつんとつついてくる。膨らみ始めたその先端に、触れるか触れないかのささやかな刺激は、あたしの腰をシーツから浮かせていく。  
「ふ……う……あっ…………あああっ……っ」  
 絶えることのない大波のような快感に、あたしは目の奥に小さな火花を見た。  
「リナ……かわいい…………もっと乱れて」  
「ガ……ウリ、イぃ……っ」  
 無理だよ、これ以上の快感なんて耐えられない。泣きそうな声であたしは自分を追い詰める男の名を呼んだ。  
 だけど、ガウリイは容赦なく次の階段へあたしを誘っていく。  
「……イっていいぞ」  
「え…………?」  
 朦朧とした頭がガウリイの言葉の意味を理解するより前に、それは始まった。  
「ひゃっ……あ、ああっ!」  
 ガウリイの唇が、充血して膨らんだそこをちゅっと吸い上げてきた。しかも唇はそのままに、吸い出したそこに唾液をまぶした舌が絡みついてきて。  
 吸引と摩擦が同時に行われる。吸われた拍子にフードの外れたそこへ、あたしの知らない刺激を容赦なく叩き込まれた。  
「あ、あああっあああああっっ!」  
 何が起きたのかわからないほどの快感が一気に爆発して、あたしは全身を震わせて達してしまった。  
 自分でした時は、目の奥に小さな火花を見るくらいのところで止めていたから、こんな強烈な快感は生まれて初めての経験だった。  
 呼吸が荒い。一気に体温が上昇したのか、汗が吹き出してくる。  
 でもまだ終わりじゃなかった。  
 ガウリイは相変わらずあたしの足の付け根にいる。  
「ああん……ふ……あ…………んっ……」  
 再び触れてきたやわらかくて温かい舌の与えてくる快感は、あたしを容易に捕らえてしまう。  
 達したばかりのそこは、掠るだけの刺激ですら背筋を震わすほどの快感に変換されてしまう。ガウリイの意図的な動きに対し抵抗出来るはずもなく。  
 力の抜け切った腿にあてられたガウリイの手が、ますます大きくあたしの足を開いていくのにすら気づけなくて。  
「……んんっ……あ……ふ、うっ」  
 そこに舌だけではなくガウリイの指が触れてきた時も、声をあげるだけだった。  
 
 ガウリイの指が足の付け根を何度も往復する。ぬるぬると滑るように行き来する指が、さっきまでさんざん弄っていた突起や、未通の穴を刺激してくる。  
「ん……はあっ…………あっ…………んんっ……ふ……」  
「リナ……自分が濡れてるの、わかるか?」  
「…………やっ!」  
 今さらだけど、改めて指摘されると恥ずかしくてたまらない。  
 あたしの足の付け根にいるガウリイは、きっと指からの触覚だけでなく視覚からもその状態を把握しているのだろう。  
 あたしは上昇している体温とは別の意味で、顔を真っ赤にさせた。  
「そんな、こと……言わな……っ……く、あああっ!」  
 抗議は最後まで言い切れなかった。  
 指があたしの秘められた部分に潜り込んできたのだ。  
「あ、く……う……っ」  
 濡れているとはいえ、そこは生まれてこの方、誰の侵入も許していなかった場所だ。  
 あたしの指ですら、第一関節までしか(怖くて)入れたことがないくらいで。  
 それなのに、あたしよりも大きくて、剣を扱うせいで節ばっているガウリイの指が挿入ってこようとするのは。  
「……う……ふ…………くっ」  
 痛みはそこまでなかったけれど、どうしようもない違和感がある。そして圧迫感。  
かろうじて拒絶の言葉こそ口にしなかったけれど、身体は少しだけ含まされた異物の進入に強張ってしまう。  
「リナ、力抜けるか?」  
 うまく出来ないと力なく呟くと、ガウリイはまたしてもあたしの感じる突起に舌を這わせてきた。  
「ああああんっ」  
 直接的な快感に、思わず声をあげる。そのタイミングを見計らって、ガウリイがぐっと指を進めてきた。  
「……く……んあっ……あ…………く、う……んんっ」  
 充血したままのそこを舐め続けられているせいで力が入らない身体は、ガウリイの指を少しずつ飲み込んでいく。  
 そして根元まで差し込まれた指が、挿入ってきたときと同じくらいゆっくりと抜かれていく感覚に、あたしの背がしなった。  
「ふ…………あ、は……あ…………あう……うっ」  
 抜けきる寸前まできたところで、もう一度挿入ってくる。今度はあたしの中を軽くかき混ぜながら。  
「……んううっ……あっ……んっ……ふ……っ」  
 始めのうちは違和感しかなかったのに、何度となく往復する指の節ばった感触に、あたしは少しずつ違和感以外の感覚を覚えだしていた。  
慣れていない内部への刺激に快感を覚えてしまうのは、おそらく今もなおガウリイが舐め続けているあたしの敏感な部分への刺激のせいだろう。  
 やがて突起への刺激が止められ、指の抜き差しだけになっても、あたしの嬌声は止まらなくなった。  
「ふあ……ああ……んっ……や、あ……ああっ…………あ」  
 あたしが内部の刺激からもちゃんと快感を追えていることくらい、ガウリイはしっかり把握しているのだろう。指の動きがどんどん大胆になっていく。  
指の腹を壁に擦り付けるようにしてきたせいで、さっきまでよりもガウリイの指を強く感じてしまう。  
と、その時。  
「ひっ……あああっ!?」  
 ガウリイの指がその部分に触れた途端、あたしは大きく背を反らせてしまった。  
 
 急な反応に、ガウリイの指が一瞬だけ動きを止める。  
 だけどすぐに、もう一度動き出した。  
「リナ、ここか……?」  
「あう……ひゃあっ……ああ……っ……あああんっ」  
「……ここ、気持ちいいんだな」  
 見つけたその部分を集中的に攻めてくる。指の腹を決して離さないように押しあてたまま、揉みこむように指先を揺らしてくる。  
「あああっ……あ、ああっ……んんっ…………あああっっ!」  
 さっきまでの刺激だって十分衝撃的だったのに、今あたしの内部を駆け巡っているものと比べたら、それだって大したことなかったと思えるくらい、あたしは翻弄されていた。  
 声が抑えられない。  
 目の奥に見える火花が消えない。  
 耐え切れない快感が怖くてガウリイに縋りたいのに、腕に力が入らない。  
「……あああっ……ガ……う……んんんっっ……リイっっ!」  
 ダメ。もうダメなの。必死になって訴える。  
 限界が目の前にきているのがわかる。  
「んああっっ……ガウ……リ……っっ!」  
 ガウリイが訴えに気づいてくれた。  
 内部に含ませた指はそのままに、ガウリイが身体を起こした。  
「リナ……」  
 あたしの腰にあてていた腕を外し、力なくシーツの上に投げ出されていたあたしの右手に絡めてくる。  
 あたしは必死になってその温もりに縋った。  
 何かに縋っていないと、すぐにでもさっき以上の昇みに連れていかれそうだったから。  
 ゆっくりと目を開けると、ガウリイの笑みにぶつかった。何ともいえない、オスくさい笑みだった。  
「リナ……イク声聞かせてくれ」  
 言いながらガウリイが、指の動きを更に激しくしてくる。  
 限界ギリギリにいたあたしがそれに耐え切れるはずもなく。  
「やああああっっっ!!」  
 あたしは呆気ないほどにあっさりと、初めての、内部からの絶頂を体験してしまった。  
 
息が荒い。ひゅーひゅーという音が喉から鳴っている。  
呆然と目を見開いたままでいるあたしの顔に、ガウリイが何度もキスをしてきた。  
どうやらあたしは一瞬だけ、意識を失っていたらしい。  
頬に、瞼に、額に、耳朶に、鼻の頭にまで。キスの雨が降り注いでいる。  
「リナ……大丈夫か?」  
 心配そうなガウリイの声。  
 や、正直ぜんぜん大丈夫じゃない。身体は初めてだらけの刺激に限界を訴えている。  
 だけどここで止めるわけにはいかない。  
 何せまだ途中……というか、ある意味始まってもいないから。  
 あたしは小さく頷いた。  
「だい……じょうぶ、だから……」  
 早く続きをして。  
 でも、ガウリイはやっぱり心配そうな顔をしている。  
「ほんとか? 無理してないか」  
 無理はしてるけど。でも言ったら止められてしまう。  
 あたしは必死で笑みを浮かべた。多少、弱々しく見えたかもしれないけど。  
「言ったでしょ、大丈夫……って。……それに、ここで止めたら……辛いのは、ガウリイ……の方、じゃない」  
 うっと詰まるガウリイ。あ、図星だった。  
 その反応に、あたしはちょっぴり嬉しくなった。  
 良かった。ガウリイもあたしのこと、望んでくれてるんだ。  
「……わかった。でも、キツかったらすぐ言えよ」  
 ようやく行為を再開しだしたガウリイに、あたしは安堵の笑みを浮かべたまま瞳を閉じた。  
 ガウリイを感じるために。  
 
「……ん…………っ」  
 先ほどまでの行為ですっかり濡れそぼっている秘裂に、ガウリイが再び指を挿入てくる。  
 一本の指が何度かあたしの内部を掻き回していく。その刺激を、さっきまでの行為で多少は慣れたあたしのそこは、素直に快楽へと変換していた。  
「ふ……あ……んんっ……ん、ああっ!?」  
 甘い吐息を吐いていた、その時。  
一旦抜けた指が、もう一本を従えて侵入してきた。  
「……く、ああっ……っっっ!」  
 あたしはその圧迫感に、思わず呻いてしまった。  
質量が倍に増えたのだから、当然といえば当然のことだ。もっとも、一本目が挿入ってきた時に力の抜き方を覚えたのが幸いして、さっきよりは短い時間で圧迫感を克服出来た。  
ガウリイが、胸と秘裂近くにある突起の両方を同時に舌と指で刺激してくれたおかげでもあるかもしれない。  
「あ、く……っ……ん…………んんっ……ふ、あ……あっ」  
「リナ……痛くないか?」  
 案じるガウリイの声に、そっと目を開いて笑みを浮かべてみた。  
「……だ……いじょ……ぶ……っ」  
 ちゃんと気持ちいいから。  
 本当はそこまでガウリイに伝えたいけれど、恥ずかしくて口に出来ない。  
 それでも、身体は素直に反応を返していた。  
 ガウリイの指が気持ちいいところを掠めるたびに、内部が勝手にひくついてしまう。  
「……よかった、二本でも気持ちよくなってきたみたいだな」  
 ガウリイが呟いた言葉が、あたしの良すぎる耳(地獄耳とも言う)にしっかり聞こえてしまって。  
 あたしは羞恥に顔を歪ませた。同時に内側がきゅっとガウリイの指を締め付けてしまう。  
 その反応に、ガウリイは自分の呟きがあたしの耳に届いていたことに気づいたらしい。  
 なんだかやらしー笑みを浮かべて、あたしの顔を見つめてくる。  
 ちなみに指は、さっき見つけたあたしの弱いところを撫でている。  
「なあリナ。気持ちよくなってるんだろ?」  
「……そんな……の、知ら……な…………んあああっっ!」  
 衝撃に背を反らせた。圧迫感が増している。  
「く、ふ…………な……ん、ああっっ……」  
「わかるか? お前さんの中に、三本目が入ったんだが」  
 ガウリイが奥まで含ませた指を小さく揺らしてきた。  
「んあああっ」  
入り口付近にひきつるような痛みを感じるけれど、ナカの感じる部分に与えられる刺激のせいで、わけがわからなくなっていく。  
「……ん、やあっっ」  
ゆっくりと指が抜かれていく感覚に、思わず妙な力を入れてしまった。おかげでガウリイの指の節をリアルに感じてしまう。  
「や……やだ……ガウ……リ……やあっ……ああっ」  
 濡れた音が部屋に響いて、あたしは恥ずかしさに耐え切れず必死で身を捩った。そのせいで、内部に一層の刺激が加わってしまい、濡れた音以上に恥ずかしい声を上げてしまう。  
 宥めるように、ガウリイが唇を塞いできた。  
その状態のまま、指での刺激はなおも続く。  
「……んっ……んんっ…………ふ、う……ん……」  
 抗議も嬌声も、ガウリイの口腔内に吸い込まれていく。  
 刺激の強さと息苦しさがあいまって、あたしの頭はどんどん白くぼやけていった。卑猥な音は相変わらず続いているはずなのに、それ以上に快感に追い詰められているせいで、そのことを気にしていられない。  
「んーーーっっっ!!!」  
 指を一気に引き抜かれる。その衝撃に思わず叫んだ声も、やっぱりガウリイが受け止めてくれた。  
 
 内側にあった圧迫感がなくなりぼんやりと首を横に向けると、ガウリイがパジャマの上着を脱いでいるところだった。  
 あらわになった上半身に、思わず見惚れてしまう。  
 ガウリイは戦士ゆえの、バランスの取れた綺麗な筋肉を持っている。上半身くらいなら何度か見ているけれど、そのたびにあたしは感嘆の吐息を漏らしてしまっているくらいだ。  
 そこいらへんの神殿にある像なんかより、ガウリイの筋肉の方が断然バランスがいい、と思う。綺麗だし。  
 ぼーっと見続けていると、あたしの視線にガウリイが気づいたようだった。  
 ズボンに手をかけながら、こっちに視線を向けてくる。  
「なんだリナ、オレの脱いでるところが見たいのか?」  
「そ、そんなわけないじゃないっ」  
からかうように笑うガウリイに、思わず頬を膨らませた。ぷいっとそっぽを向いてやると、服を脱ぎ終わったガウリイがそっと覆いかぶさってきた。  
「ほんと、お前さんはかわいいなあ」  
 笑いながら唇を寄せてくる。もう、何度目かなんてわからないキス。  
あたしは抵抗もせずに、ガウリイの与えてくれる優しい快感に身を委ねた。  
「……ん……ふ…………う……んん……」  
 しばらく舌先を絡ませてから、ガウリイがもう一度あたしの下半身に手を伸ばしてきた。  
 次に何をされるのか、想像がつくあたしとしても、最早抵抗をする気はない。  
 足を広げられる羞恥にも耐え、ガウリイを受け入れる体制を整えていく。  
 それなのに、ガウリイは指を浅く出し入れするだけで、それ以上の行為を始めない。  
「……ガウリイ…………?」  
 くちくちと弄られ続けている入り口付近からの快感を堪えながら、あたしは至近距離にあるガウリイの頬にそっと手をあてた。  
 神妙な顔をしていたガウリイは、あたしの手が頬に触れた途端に小さく苦笑した。そして、あたしの手に自分の手を重ねてくる。  
「いやあ、やっぱ小さいなあと思って」  
 小さいって、あたしの身体が? そりゃあまあ、ガウリイと比べたら小さいだろう。……普通の女性と比べても平均よりやや小さめ、なんだけど。  
 だけどガウリイは首を振った。  
「そうじゃなくて、ここが」  
 言いながら、入り口を弄っていた指を根元まで一気に入れる。  
「あああんっ!」  
 急な刺激にあたしは思わず声をあげてしまった。  
 ガウリイはそんなあたしを見下ろしながら、奥まで含ませた指を二本に増やした。ついさっきまで与えられていたものではあったけれど、慣れていない身体はすぐに元のサイズに戻ろうとしているのか……つまり、ちょっと痛みがぶり返していた。  
「く……あああっ」  
 あたしは痛みを感じてしまったことをガウリイから隠そうとしたけれど、一瞬だけ顔を顰めてしまったせいで、あっさりバレてしまった。  
「指でも痛いんだろ? オレのなんて……お前さんを傷つけるだけじゃないかと」  
 そっと抜かれていく指の感覚に、あたしは慌てて口を開いた。  
「や、やめないでっ……続けて」  
「……え、でも……お前さん、痛いの苦手だろ……?」  
 ガウリイが、戸惑ったように言った。  
 その言葉に、あたしは胸が熱くなった。  
 確かにあたしは痛みに弱い。そのことは、ずっと旅を続けているガウリイにも当然知られていることで。  
 だからこそガウリイは、こんなに時間をかけてくれてたんだろう。自分の欲望を後回しにしても、あたしを何度もイかせようとしていたのはそのせいなんだろう。  
 少しでも、挿入時の痛みを減らすために。  
「オレはお前さんを苦しめたくはないんだ」  
 二本の指であたしの内部を、親指であたしの敏感な突起をやんわりと擦りたてながら、ガウリイが真剣な顔でそう呟いた。  
 ガウリイの気持ちは嬉しい。だけど。  
「……そんな事言って……んっ……ここで、止めたら……っ……竜破斬(ドラグ・スレイブ)だからね……っ」  
 あたしは下半身に与えられる快感に顔を歪ませながらも、頬にあてたままの手でガウリイの顔をぎゅっとつねった。  
 
「リナ、痛い」  
「痛く……っ……してんだから……当然、よ……っっ」  
 それからもう一度、ガウリイの頬に優しく手をあてた。  
「あたしからは……今、痛みを……与えたわ。だから、ガウリイからも……一回だけなら……許してあげる」  
 ガウリイが呆けたような顔をしている。  
 まったく、紳士なんだかクラゲなんだか。  
「……ちょっと、聞いてるの?」  
「…………リナ……」  
 一瞬だけ止まっていた指の動きを再開させながら、ガウリイが幸せそうな笑みを浮かべて口づけてきた。  
「やっぱお前さん、最高の女だな」  
「あ……ガ……ウリ…………っっ……んんんーっっ!」  
 一気に加速した快感に耐え切れず、あたしは本日三回目の絶頂を迎えてしまった。  
 でも今度はガウリイももう止めたりしない。  
 ひくつくそこから指を引き抜くと、間髪入れずに別のものを押し当ててきた。  
 突然触れてきた熱いものに、あたしは目を見開く。  
「ガウリイ……」  
 煽っておいてあれだけど、やっぱりちょっと怖い。  
 だって、ガウリイのはどうしたって指より大きいもの。つうか比較にならない。  
 縋るような目でガウリイを見てしまったら、おでこにちゅっとキスしてくれた。  
「……痛かったら、爪立てていいからな」  
言っている最中にも、あたしに接しているガウリイの熱いものが小さく脈打っているのがわかる。  
……ああ、そっか。  
多分、限界なのだ。ガウリイの衝動も。  
それなのに、あたしを待ってくれているんだろう。  
「リナ……好きだ……愛してる……」  
ガウリイの優しさが伝わってくる。  
「うん……あたしも……」  
あたしは今の気持ちが少しでも伝わるように願いながらガウリイに微笑むと、身体から余計な力を抜くように、ゆっくりと息を吐いていった。  
そのタイミングを見計らって、ガウリイがぐっと身体を押し込んでくる。  
「……っっ……く……う……」  
 身体の内側から、メリメリって音が聞こえてくるような錯覚を覚える。  
 覚悟してはいたけど、やっぱり痛いもんは痛い。例えるなら、鼻の穴に親指を無理やり突っ込まれた時くらい痛い。……そんなこと実際にやってはいないけど。  
痛みから逃げたくて無意識に上擦っていこうと背を反らしたけれど、ガウリイの大きな手があたしの腰をがっちり掴んでいるせいでそれは適わなかった。  
「リナ……もう一回……力、抜けっ」  
 ガウリイの擦れた声が耳に届いた時にようやく気づいた。確かに息を止めている。  
 あたしは必死になって、もう一度ゆっくりと呼吸をした。  
「……ふ……は、あ…………ふ……う……」  
「いい子だ……あと、ちょっとだから」  
 言いながら、しかし何故かガウリイは少しだけ腰を戻してしまった。  
 抜かれてしまう!? あたしは驚いてガウリイの顔を見上げた。  
 瞬間。  
それは一気に挿入ってきた。  
「く、ああああっっっ!!」  
 ずんっという衝撃が脳天まで響いてきて、あたしの視界が一瞬真っ暗になった。  
 
「……ナ……リナ……っ」  
 ガウリイがあたしを呼ぶ声が、すごく遠くに聞こえる。もしかしたら、意識を失いかけていたのかもしれない。  
 あたしは目の前にいるはずのガウリイを、焦点の合わない目で必死に見ようとした。  
「……ガウリィ…………」  
「リナ……全部、挿入ったぞ……」  
「ぜんぶ…………?」  
良かった、ちゃんと挿入てもらえた。あたしは口元をほころばせた。  
でも、さすがにキツくて痛くて。目からは生理的な涙が流れてしまう。  
 ガウリイがあたしの目尻を流れる涙を、そっと唇でぬぐってくれた。  
「すまん……やっぱ痛いよな……」  
「……たいした、こと……ないわよ……」  
 声は掠れてしまったけれど、それはあたしの本音だった。  
 痛みよりも、内側から感じる、ガウリイの熱に感動していて。  
ガウリイがあたしをお子ちゃま扱いじゃなく、ちゃんと女扱いしてくれてるのが嬉しくて。  
だから、もっとしてほしくて。  
「……ガウリイぃ……」  
 あたしは自分でも恥ずかしくなるくらい甘えた声で、自分を貫く男の名前を呼んだ。  
 あたしの声に、ガウリイのそれが小さく脈動する。  
「くっ……リナ…………動くぞ……」  
 言うが早いか、ガウリイが腰を使いだした。  
「……んっ……ぐ…………う……っ」  
 ゆっくりと引き抜かれていく感覚に、あたしは小さく呻いてしまった。挿入れられた時もだけど、抜けていく時もちょっと痛い。  
でももうガウリイは動きを止めたりしない。抜いていった時と同じくらいゆっくりした動作で、もう一度あたしのナカへ埋め込んできた。同時にあたしが苦しまないように、繋がっている部分のすぐ上の突起へ指を這わせてくる。  
「く……うぅ……あ…………ふあっ……く……ん……あっ…………んんっ」  
 何度かそれを繰り返し、あたしの声に苦痛ではない色が滲んでくると、ガウリイの動きも少しずつ大胆になっていった。  
「リナ……ちょっと激しくするぞ……」  
「ふえ……? あ……あんっ……」  
 浅い部分で何度も抜き差ししたかと思うと、一気に最奥まで貫いてくる。  
「……ふ、あっあっあっ…………あああんっ」  
 さっき指で探り当てた、あたしのナカの弱い部分ばかりを、先端を使って擦りたてる。  
「ひっ……あ、あっ、ああああっっ」  
 内側からと同時に、胸や敏感な突起を摘まみ、揉みたてる。  
「んああああっっ……ひっ……ああっ……やああっっ」  
 はっきし言ってガウリイの動きは容赦なかった。あたしが何度イっても終わらない。  
 初心者のあたしは腰を打ちつけてくるガウリイに、嬌声をあげて縋るしかなくて。  
「リナ……リナ……っ」  
 ふと、何度もあたしの名を呼ぶガウリイの声が、切羽詰ったものになっているのに気づいた。  
 ああ、ガウリイもそろそろなんだ。  
 あたしは嬉しかった。ガウリイが、ちゃんとあたしで感じてくれていることが。  
 ガウリイの熱いものが、あたしのナカで爆発寸前だと訴えている。  
 出してほしい。たくさん。あたしの中に。  
 ガウリイでいっぱい、満たしてほしい。  
「んああっ……ガウ……リ……っっ!」  
 あたしは本能的に、全身に力を込めた。  
「……くっ…………!」  
 あたしの渾身の締め付けに、ガウリイが小さく呻いた。同時に、腰を密着させるように打ち付けてくる。  
 最奥まで届いたガウリイのものが、あたしの奥に熱を迸らせるのを。  
 あたしは真っ白になっていく意識の中で感じた。  
 
 目が覚めた時、あたしは自分の置かれている状況が一瞬だけ、わからなくなっていた。  
 いつの間にベッドで寝たの?  
 なんであたしは裸なの?  
 なんで隣にガウリイが寝てるのっ?  
 ってゆーか、なんでガウリイまで裸なの!?  
 しかもなんか、あたしの腰に腕が回されてるんだけどっ!!  
 ちょっと待てえええぇぇええっっっ!!!  
 あたしがパニックに陥っていると、ガウリイが気配に気づいて目を覚ました。  
「おはよーリナ。……しかしお前さん、朝早いなあ」  
 ちょっと欠伸交じりに声をかけてくるガウリイに、動揺はない。さっぱりない。全然ない。  
 むしろさらっとキスまでされた。動揺しているあたしはかわすことも出来ずにガウリイからのフレンチ・キスを受けてしまう。  
「…………あ……」  
 あたしはようやくここにきて、昨夜の一部始終を思い出した。  
 そうだ、昨夜はガウリイと……で、しかもあたし、最後に意識が…………。  
「ああああああっっっ!!」  
 思わず頭を抱えて叫んだあたしの横で、ガウリイがビックリしたように目を見開いた。  
「どうしたんだ? こんな朝っぱらから」  
「や、ななななんでもない!」  
 なんかもう今さらなんだけど、恥ずかしくてガウリイの顔が見られない!  
 あたしは必死でガウリイの腕から逃れようと、身体を捩った。その時。  
「……痛っ!」  
 足の付け根からくる痛みに、思わず動きを止めてしまった。意識してみると、両足をメインに全身のいたるところが筋肉痛になっていたりする。  
 これは……やっぱあれか。いわゆる「はげしー運動」の後遺症か……。噂には聞いていたけど……なんか恥ずい。  
「大丈夫か?」  
 心配そうなガウリイが、そっとあたしを抱き寄せた。  
だから恥ずかしいんだってば!  
「だ、大丈夫よっ」  
正面きって顔を見られたくないのに、全身が痛くてろくに動けないせいで、あたしはあっという間にガウリイに正面から拘束される形となってしまった。  
「身体、キツイんだろ? 無理しないで、今日はゆっくり休んでな。飯ならオレが運んでくるから」  
 身体がキツイのは確かに事実だ。あたしは仕方なく、ガウリイの言う通りにすることにした。  
 大人しくなったあたしに、ガウリイがもう一度口づけてくる。  
「……なによ。随分嬉しそうじゃない」  
 見てるこっちが恥ずかしくなりそうな蕩ける笑みを浮かべているガウリイを、あたしは上目遣いに睨みつけた。  
「いやー、幸せだなあと思って」  
 ガウリイはあたしをそっと引き寄せると、首筋に唇を寄せてきた。  
「リナを好きで、リナもオレを好きで。ようやく出来て、しかもリナの初めてがオレで。これで幸せじゃないはずないじゃないか」  
「って、んな恥ずかしいことを口に出すなーっっっ! ……痛っ」  
 あたしはガウリイの台詞についいつも通りスリッパ攻撃をしかけようとして、動いた拍子にぶり返した痛みに思わず呻いた。  
「おいおい、もうちょっとは大人しくしてないとダメだぞ」  
 保護者顔で心配しだしたガウリイを、涙目に睨む。  
「誰のせいだと思ってんのよ……」  
「オレだな、すまん」  
 あっさり責任を認めたガウリイは、次の瞬間、目を輝かせながらポンと手を打った。  
 ……ものっすごい、嫌な予感がする…………。  
「責任取って、リナが慣れるまで毎晩するってどうだ? 慣れたら痛くなくなると思うぞ。  
 それに、昨日は初心者用にセーブしてたからな。慣れてきたら正常位以外にも色々教えてやるぞー」  
「何言ってんのこのエロクラゲーっっっ!!!」  
 スパコーンっっっ!!!  
 痛みを覚悟で振りかぶったスリッパは、見事にガウリイのどたまに的中した。  
 ていうか……昨日のアレで「セーブしてた」って……こいつの本気はどんだけすごいのかと……。  
 ……………………こあいよう。  
 
 ガウリイの本気モードをあたしが知るのは、もうちょっと後の話。  
 

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