真っ暗な室内に、リナの喘ぎが響く。
ほっそりとした四肢は張り付けにされたかのように動かず、
まともに声も出せない。自分のいやらしく震える呼吸音が、
虚しく宵闇に消えていく。
「っ………あ………ぁ………」
すぐ隣ではゼルガディスが、穏やかな表情で眠りに就いている。
つい一時間ほど前にコトを終えたばかりの彼でも、隣でこれだけ
暴れ(ようとす)る気配があれば、眼を醒ますはずなのに。
しかしゼルガディスは一向に目を開けようとせず、リナの躰には
無数の見えない手が這い回る。
明らかに幾つもの見えざる手がリナの肌を這い回り、彼女を貶めていく。
シーツを剥がれ、剥き出しにされた乳房が透明の手で揉みしだかれ、
乱暴に乳首を捻り上げられる。
「ひっ、う!」
両方の乳首をぎちぎちと摘まれ、リナの眼に痛み故の涙が浮かんだ。
(こ、の……ゴーストの癖に、何すんのよぉっ!)
声が出せれば烈閃槍か青魔烈弾波あたりでぶっ飛ばしてやるのに。
ぴくりとも動かぬ躰を呪いたくなる。
やがて色情霊共の手が本格的な攻めを開始した。
乳房を捏ね、乳首を転がし、淫裂を押し広げて陰核を悪戯に刺激する。
反射で溢れ出す蜜を指先に掬い取り、陰核になすりつけ、とろとろに溶けた
蜜壺に指が押し込められた。
「っく、ぁっ………!」
わざと音を出して蜜壺を掻き回し、慣らして指の数を増やしていく。
(やめてよっ……そんなにしたら……手首まで入っちゃう……!!)
リナがどうにか金縛りから抜け出そうと藻掻き、或いはゼルガディスに助け
を求めようと口を開こうとした。
「んんっ…………!!」
口は閉ざしているのに、口腔内にアレの感触が割り込んできた。
見えない相手に同意もへったくれもなく強姦されて、口を犯されるのは不愉
快極まりないし、不快なことこの上ない。
(い、いやぁっ………気持ち悪い…気持ち悪いぃぃっ………!!)
強制的に口淫奉仕をさせられ、悔しさにリナの顔が歪んだ。
下肢からは相変わらず陰核を舐る感触とその淫らな音が響いている。膣を慣
らす指が既に三本に増えていて、リナは生来の淫乱振りが眼を醒ますことを畏
れた。
気持ち悪いのに、気持ちいい。貶められることに感じてしまう。
(こんな……あたし、あたし………!!)
彼女の畏れなど知らず、実体のない肉塊が彼女の中に突き立てられる。
「んんんんんーーーーーーーっっ!」
突き込んでくる動きから、其れは正常位なのだろうと思う。
しかし同時に陰核を弄ばれ、菊座を舐られるなど、実体のある存在には為し
得ない。
異常事態と非常識を相手にしたセックスに、リナの身体は溺れてしまう。
(ああっ……もっと………もっといぢめて………そこ、擦ってぇっ!)
声ならぬ声で陰核への攻めと膣内で一番感じる場所への攻めをねだり、痛い
ほど乱暴に乳房を揉まれるのを望む。
無意識に口腔内を出入りするゴーストのそれを吸い上げるように舌を蠢かせ
、自分の表情がうっとりとした女のそれに変わるのが何となく分かる。
「…………ん…………?」
間近で、低い声がした。
はっとして眼球だけを動かすと、寝ぼけまなこのゼルガディスがリナを見て
いる。何も今頃起きなくても。ていうか起きるならもっと早く起きろ。
悪態を吐きたくもなるが、激しい突き上げにそんなことはどうでも良くなる
。それよりも彼がこの事態をどう見るか。
「……………リナ?」
目の前十センチ程度の場所で、リナが一人喘いでいる。
現状を呑み込んだゼルガディスは、最初彼女が自慰に耽っているのかと思っ
た。しかし直立した姿勢のままで何が出来るというのだ。
ゼルはリナの状態をもっとよく見ようとしてか、魔法の明かりを灯した。
途端明るくなった部屋の中、リナのはしたない姿が余すところ無く照らし出
される。
しかし、彼女が苛まれているのは何一つ変わらない。
なにものかが胸をこねまわし、陰核をくじり子宮を激しく突き上げる。姿形
はないものの、抜き差しされる度に掻き出される淫蜜がシーツをびっしょりと
濡らしていた。
リナの姿しか見えない陵辱劇に、ゼルの視線は釘付けになる。
「なんだ、これは………」
悦楽に流されるリナを食い入るように見ていたゼルだったが、のそのそとリ
ナの足許に回り、大きく開かされた脚の間を覗き込む。
(やだぁっ! ど、どこ見てんのよバカーーーーー!!)
リナからは見えないが、そこは透明な筒で持ち上げられたかのようにぱっく
りと口を開け、中から溢れ出す潤滑油が独りでに掻き出されている。
空気に犯されているようなその部分は、見えないソレを咥え込んで旨そうに
むしゃぶりつき、内壁がうねるのさえよく見えた。
動かされる陰核は大きく勃起し、包皮を剥かれて敏感なピンクの本体を露わ
にさせられて捏ねられ、弾かれるたびにリナの声が大きくなる。
「……………っ」
ゼルがごくりと嚥下する音が、嫌に大きくリナの耳に飛び込んできた。
彼の突き刺さるような視線を(何度も見られているけれど)一番恥ずかしい
場所に感じて、リナは羞恥に震えながらも殊更快楽に溺れていく。
(見られて感じるなんて……あたし…変態じゃないのよぉ………)
不意にゼルの手が、突かれるのと同時に捏ね回される陰核に触れた。
「っんん!」
見えない手はリナに触れることが出来るのに、ゼルはその手に触れることが
出来ない。
それに気付いて、ゼルはにやりと唇を歪めた。
さっきからずっと、好き勝手に自分の女を陵辱される様に興奮しながらも嫉
妬していたのだ。
もとより裸の彼は、とっくの昔に痛いほど張り詰めた『自慢の』逸物を掴ん
で、掻き乱されるリナの入り口に照準を合わせた。
(ちょ、ちょっとちょっとーーーーー?!)
抗議したくともリナの声は出ない。
もの言いたげな彼女の視線とゼルの視線がかち合った瞬間、彼は自身をリナ
の中へと突き立てた。
「んぅぅぅっ!」
ゴーストがイくのかどうか知らないが、イくとしたら相当な遅漏らしく、ソ
レはさっきからずっとリナを突き上げている。ソレも単調すぎて、リナが感じ
ている内の九割は、間違いなく胸と陰核からのものだ。
しかしそこにゼルのソレが乱入してきて、悦楽の比率は一気に逆転した。
「……っ……いつもより濡れてるじゃないか……」
二輪差しにされているような圧迫感を僅かに伴い、ゼルの巧みな動きにリナ
は翻弄される。
(や、やっぱりゼルって……すご……巧いっ…!)
リナの脇に両手をついて紬送を続けていたゼルだったが、彼はいきなりリナ
の躰にしがみつくように腕を回してきた。
「くっそ………訳の分からんゴーストなんぞに……お前を犯らせる隙を……や
っちまうとはなっ…!」
すこぶる口惜しそうなその台詞に、リナは何だか嬉しくなってしまう。
いつもドライで、感情を表に出さないゼルが、こうして嫉妬と独占欲を剥き
出しにしてくれるのだから。可愛いところもあるではないか。
ゼルの動きは速さを増し、複雑な腰使いでリナの一番感じる場所を的確に刺
激していく。
首筋にあたるゼルの呼吸がまるで獣のように荒くなっていったが、きっと自
分も似たようなものなのだろうと、リナは思った。
(ゼルッ……ゼル……ゼル…………!!)
「っ、あ………あ………リナっ!」
獣の咆吼にも似た声で、自分を呼ぶ声を聞いた。
それが、リナの記憶の最後だった。
「結局、何だったのかしら……」
体中に散らされたキスマークも、最後に膣内に射精された白濁も、すべてが
あの不可解な出来事を裏付ける証拠。
リナは朝一番にシャワーを浴びて汗も汚れも洗い流した。が。
「………あたた………」
ゴーストとゼルのふたり(?)がかりで激しく突き上げられたせいか、それ
とも前半の騎乗位とバックがキいたのか。
鈍い痛みに顔をしかめながらも、またあんなコトがあったらそれはそれでい
いかなー、なんて考えてしまうリナは、やっぱり根っからのスキモノだと言う
ことだろうか。
「ゼル、シャワーいいよ………どしたの?」
寝室に戻ると、ゼルガディスが何やら摘み上げて渋面を作っている。
手許を覗き込むと、それは一本の黒い髪。
幾ら安宿と言っても、シーツは毎日交換しているし、ゼルもリナも黒髪では
ない。
アメリアの髪にしては少し短いし、勿論ゼロスのものでもないだろう。
「…………………?」
リナは首を傾げていたが、ゼルには心当たりがあった。
あんまり思い出したくもない心当たりではあるが。
(…………………………ンのクソ色ボケぢぢぃ………)