ビリッ!  
あたしが何かを思う間もなく、ゼロスはその杖の先端で、あたしの服の先端を切り裂いた。  
何が起こっているかを把握した瞬間、あたしの背筋は恐ろしさに震えた。  
「いっっ・・・やあぁぁぁああ!!!」  
「リナさん。僕から逃げれるなんて思わないことです」  
ゼロスはそのままあたしを壁に押し付け、普段どおりの笑顔で、あたしに囁いたのだ。  
「・・・ガウっ・・・んっっ」  
反射的にガウリイに助けるあたし。  
しかし、彼の名を呼ぶ前にあたしはゼロスに唇を無理やり奪われた。  
乙女の大事なファーストキスを、魔族に奪われてしまったのだ。  
口内に無理やり侵入されたぬるりとした感触が、とてつもなく気持ちが悪い・・・  
 
この宿の壁は薄い。  
あたしとゼロスの会話は隣室のガウリイに聞こえ――いや、気配でゼロスがいることはわかるはずなのに、何故ガウリイは助けに来てくれないのだろう・・・  
 
 
「さぁ・・・食事させていただきます。  
リナさんから提供される食事は、さぞかし極上のものでしょうねぇ・・・」  
そう言って、ゼロスは片手であたしの腕を壁に押さえつけたまま、もう片方の手であたしの上着を強引にはぎ取ったのだった。  
 
 
 

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