一目惚れだった。  
 なぜだろう、最初見たときにこのひとは悪人!と思ったのに。  
 白いフードを怪しげにかぶり、口元まで怪しげに隠し、そして隙間から怪しげにのぞき見える肌は  
岩が混じっていた。  
 わたしの正義の勘は、まごうことなく怪しい人だと告げていた。  
 そのゼルガディスさんに一目見て惚れていた。  
 柔らかい物腰かもしれない。  
 鋭いけれど優しい瞳かもしれない。  
 とにかく惚れていた。  
 理由もわからないまま。  
 
 でもどうしよう。  
 こういうことには案外にぶいリナさん達には気づかれていないみたいだけど、仲良し4人組の中で  
恋愛沙汰って危険じゃないかしら。  
 わたしはついため息をつき、真正面に座っていたゼルガディスさんとふと目が合ってしまった。  
 「……どうかしたのか? アメリア」  
 「いえっ! なんでもないです! あ、ほら食後の飲み物まだかな、なんて考えて……」  
 「確かにそうだな……まぁ、この惨状だと持ってきたくても持ってこれんだろう」  
 ゼルガディスさんまでため息をついて、わたしたちのテーブルでまるで戦場のように食事するリナさんと  
ガウリイさんにあきれたような視線を投げつけた。  
 「あはは、そうですよねー。いつものことなんで慣れちゃいましたけど」  
 まだわたしの気持ちは隠しておきたい。  
 わたしたちの旅の目的はみんなバラバラだから、仲良しでいられなくなったとたんにこの旅は終わって  
しまうんじゃないかと思っている。  
 下手に動いて失恋したあげくに旅まで終了だなんて寂しすぎる。  
 戦いの流れ弾ならぬ流れウィンナーをこともなげにゼルガディスさんはひょいと避けた。  
 
 
 「さてと、あたしちょっと魔道士協会よってくるから、適当に宿屋で落ち合いましょ」  
 「なんだよリナ、オレもいくぞ」  
 「こなくていーわよ、あんたは」  
 リナさんとガウリイさんは夫婦漫才をしながら協会の方へと歩いていった。  
 残されたわたしとゼルガディスさんは、いつも少したたずんでから軽く目くばせして別れるのが常だった。  
 お互いに行き先も聞かずに夕食までの一人の時間をそれぞれ過ごすはずだった。  
 きっとゼルガディスさんは人間に戻る方法を探して町を調べるんだろう。  
 その背中を見送るのには、どうしても慣れない。  
 じりじりとした心を抱え込んで、でももう立ち止まるのはやめにしたかった。  
 「ゼルガディスさん!」  
 足は動かなかったけど、声は出た。もう一息。  
 「わたしも一緒に行きますっ!」  
 驚いたようにゼルガディスさんは振り向き、立ち尽くすわたしを眺めながらため息とともにつぶやいた。  
 「……どうせ断ってもついて来るんだろう? 好きにしろ」  
 ぶっきらぼうな口調なのに今は甘い響きにしか聞こえなかった。  
 
 
 徒労というものはどうしてこんなに消耗するんだろう。  
 手がかりと呼べるものさえひっかからず、まるで星の見えない夜に大海原で漂っているかのような、とても  
大きな不安がのしかかる。  
 「おい、アメリア」  
 「…………はい?」  
 「そこまでがっくり落ち込まれると、俺まで滅入るだろう」  
 「あわわわ、すみません…………」  
 「まぁこんなもんだ。……だがひとりより幾分かましだったさ」  
 最高の賛辞をきいた、気がする……  
 ぱぁっと顔が輝くのがわかるほどわたしは浮かれてしまい、ゼルガディスさんに苦笑されてしまうのだった。  
 ふわり、と頭の上に大きな手がのり、低いつぶやきがふってくる。   
 「あいつらが戻ってくる前に一杯おごってやる。ついて来い」  
 ゼルガディスさんはそう言うと、白いローブをひるがえらせて宿屋の古い扉をあけた。  
 「いいんですか?!」  
 いきおいこんで言うわたしに、呆れたような顔をみせてから優しく笑う。  
 「言っておくが一杯だけだ、リナ達には言うなよ」  
 なんでもないこんな小さな出来事に胸が苦しいくらいしめつけられる。  
 わたしは大げさに喜んでみせて、にじんでくる涙を隠した。  
 
 「ゼルガディスさんは、リナさんのことどう思います?」  
 「いきなり何だ? もう酔ったのか……目の焦点が合ってないな」  
 「いいじゃないですかぁ〜前から聞きたかったんですぅ。ねぇねぇ、どうなんですか?」  
 「…………最初は敵だったな。そのあとに手を組んで、どれほどの女なのか思い知った。そんなところだ」  
 「んんん……いまいちわかりません…………わたしが……聞きたいのはぁ…………」  
 「……アメリア? おい、もたれかかってくるな、起きろ、おいっ!……」  
 
 目を覚ますと、ベッドに寝ていた。  
 「えっと……あれ……?」  
 薄暗い部屋の中に視線をめぐらせてみても、誰もいなかった。  
 「呆れられちゃったのかな…………ばかだなぁ、わたし」  
 ちくちく胸が痛む。  
 「…………まったくだ」  
 すぐそばで聞こえた低い声にびっくりして体を起こした。  
 同じベッドの壁際に、ゼルガディスさんが横になってこっちを見上げている。  
 「なにしてるんですかぁ!!」  
 あせって叫ぶわたしをジト目で見つつ、  
 「それをお前が言うか」  
 淡々と切り返してきた。  
 「ジョッキ一杯で潰れやがって……人目をさけてここまで運ぶのにどれだけ俺が苦労したと思ってるんだ」  
 「人目をさけて、ですか?」  
 「こんな怪しい風貌の俺が、酔いつぶれた少女を部屋に連れ込むなんぞ、誘拐にしかみえんだろうが」  
 わたしはなんとなくおかしくなって、悪いとは思いながらも少しだけ笑ってしまった。  
 「……何がおかしい」  
 「だって……ゼルガディスさん、自分で自分のこと怪しいって、ちゃんと自覚してるんですね」  
 ゼルガディスさんはわたしの言葉にすっと表情を消して、黙ってしまった。  
 「あ、あの……怒らせちゃいましたか……? すみませ……」  
 「お前が望むものはなんだ」  
 謝罪を言い終わらぬうちに投げかけられた疑問に、疑問を返したくなる。  
 でも、この状況でこれは……言ってもいいんだろうか、わたしが望むことを。  
 「酒場で言いかけていたろう、俺に聞きたいことがあるなら言ってみろ」  
 
 いつもと様子が違う気がする。  
 体の距離が近いというのもあるけれど、いつもよりもずっと、心の距離が近い気がする。  
 わたしは唇をぎゅっとかんで、あふれる言葉を抑え込む。  
 チャンスは一度だけかもしれない。  
 ゼルガディスさんは自分の腕で腕枕をしながら、横たえた体をわたしに向けて開いている。  
 その胸に飛び込みたい、その腕に抱かれたい、強く、きつく抱きしめて、あなたの女になりたい。  
 どう言えば伝わるのかしら。  
 わたしはこんなにも臆病だったの……?  
 早く、ゼルガディスさんがため息をついてしまう前に、なんとか伝えなくちゃ…………  
 焦れば焦るほど何を言っていいのかわからなくて、そんなわたしの目の前で、物憂げに吐息がもれる。  
 ……ああ、終わっちゃった……  
 「俺が悪かったな」  
 何を言われたのか意味がわからないままに、伸ばされた腕に引き寄せられてシーツごとたくましい体に  
抱きしめられてしまった。  
 「あっ……あのっ?! ど…………どど……??」  
 「どうして、か? わかりやすいやつだな。そのくせ自分のとる態度に無頓着なのが不思議だな」  
 「えええっ?! わたし何かしましたか?!」  
 「……バレバレなんだよ…………目閉じろ」  
 鋭いまなざしがわたしを貫いて、考える力を奪っていく。  
 この展開……まさしくわたしが望んでいたことだけれど、嬉しさと同時にいいのかしらという不安がつのっていく。  
 「……どうした? こわいのか?」  
 わたしを抱きしめていた腕の力がゆっくりとゆるんでいく。  
 やっぱり無理強いするような人ではなかったことに感激したくなるけれど、こわいのは体じゃなくて心のほう。  
 「ゼルガディスさんは、リナさんが好きなんじゃないんですか?」  
 自分でびっくりするくらい冷静な声がでた。  
 困った顔をされてしまうと覚悟していたのに、きょとん、とした目で見つめられてしまった。  
 「そんなことが聞きたかったのか?」  
 完全に予想外、といった反応に、なぜだかわたしが困った顔をしてしまう。  
 「聞きたいのなら教えてやるがな……すごい女だと思うことと、その女を抱きたいと思うこととは別物だ」  
 直接的な言い方に、わたしは口をぱくぱくさせたが何も言葉はでてこなかった。  
 ゼルガディスさんは見たこともないような優しい目でそっと笑った。  
 「俺にとっては、アメリア…………」  
 同じくらい優しい声でささやかれるわたしの名前に、心が熱くとろけてほどけていく。  
 次の言葉が聞こえる前に、わたしは自分から目をとじて、もう一度強く抱きしめられるのを泣きそうな  
ぐらいに望んだ。  
 「抱きたい女はお前だけだ」  
 言葉に痺れたのか、重なる唇に痺れたのか、頭が真っ白になってよくわからなかった。  
 
 
 冷やりとした硬質の肌が火照る体に気持ちいい。  
 ぼやける頭に唇が誘いをかけて、力をぬくとすこしざらついたような舌が丁寧にはいってきた。  
 わたしの舌にかるくふれると、あとはもう隅々まで遠慮なくさぐってくる。  
 大人の自信と包容力がキスひとつにまであらわれていて、ただ身を任せるしかできないでいた。  
 舌をからめとられて吸いあげられて息もうまく出来ない恍惚のなかで、わたしはさっき言われたことを  
何度も思い返しては嬉しくて嬉しくて天にも昇る心地だった。  
 ……両思いよね、これ、ゼルガディスさん……  
 どんどんどん、と堅い扉に音が響く。  
 なんの未練もなく唇が離れていってしまう。  
 「おーい。ゼルガディス。あけてくれー」  
 ガウリイさんだ! やだどうしようこれ、そんなぁ、やっとここまでこれたのに……  
 
 ぱっと手を離されるかと思ったのに、わたしの頭をおさえこんで胸におしつけ、いつもと変わらぬ口調で  
ゼルガディスさんは少し大きな声を出した。  
 「すまんな、ガウリイさんよ。いま取り込み中だ。しばらくリナの部屋にでもいててくれ」  
 「それがさ、リナがアメリアを探してるんだ。まだ帰ってきてないって。でもそこにいるんだろ?」  
 ええっ?!  
 「いるさ。だから鍵をかけてるんだ」  
 「だよなー。リナに言っとくわ。邪魔したな」  
 ええええっっ?!  
 「い、いい、行っちゃいましたよ?! 言うって言うって何を言うつも……っ……」  
 また深く舌をからめて声を奪い、服の上からわたしの胸をきゅっとつかんだゼルガディスさんは、わたしが  
抵抗をやめておとなしくされるがままになるまで楽しげに翻弄してきた。  
 「何か問題でもあるのか?」  
 ぷはぁっと乱れた息をはいてしまうわたしを面白そうに見つめて、にやりと笑いかけてくるゼルガディスさん。  
 ああ、覚悟が足りなかったのはわたしのほうだった……恥ずかしい。  
 「ないです! 全然、なんの問題もないです!」  
 「……声はおさえろよ、いくら内緒にはしないとはいっても、宿屋中に知らせるつもりはないからな」  
 かーっと赤らんでいく頬を両手で隠しながら、わたしは黙ってうなづいた。  
 
 指がすべるように動いてわたしの服を脱がしていく。  
 ゼルガディスさんのところどころに見える岩の肌は硬そうなのに、ふれてくる感触はやわらかくて、  
優しげだった。  
 すべて脱がされてから、じっと視線を注がれると、羞恥心で肌が焼けつくようだった。  
 「……綺麗だな」  
 短くそうつぶやかれただけなのに、ゼルガディスさんに申し訳ないような気持ちになってしまった。  
 勝手な同情心なんて迷惑以外のなにものでもないというのに、わたしはどうしても素直に喜べなかった。  
 「服を着たままだが、許してくれるか? 傷をつけずに裸で抱き合う芸当は俺にはできないんでね……」  
 わたしがここで、服を脱いでもかまわない、いくらでも傷つけていい、と言っても、たぶんなにも解決しない。  
 自嘲でもなく自己憐憫でもなく、最善の方法を示してくれている好意から出た言葉なのがわかる。  
 見かけよりずっと紳士で優しいゼルガディスさんを丸ごと受けとめるのに、服がどうとか関係ない。  
 「ありがとうございます」  
 そう言ってにっこり笑ったわたしを、彼は穏やかな目で見つめてくれた。  
 「……可愛い女だ……」  
 そうして芯までしびれるような愛撫が始まった。  
 
 
 「こういうのって……ああっどう、したら…………はぅぅ……っ……!」  
 意味のわからないことを口走ってしまったわたしに、抑えろ、とでも言いたげなキスで黙らせて、それでも  
胸の先端にとがるちくびを躊躇なく甘く刺激してくる。  
 ゼルガディスさんってばわたしの想像よりもずっと大人だった。  
 きゅっと力をこめて指でつまみあげられると、痛さに似た鋭い快感が走り抜けていく。  
 出せない喘ぎがゼルガディスさんの舌へ響いて消えていってくれるから、もっと強くと願うわたしをさらけ  
ださずにすむ。  
 はじめて、なのにここまで体が違和感もなく快楽を感じてしまうのは、惚れた人が相手だからなのか、  
それとも……ううん、きっとゼルガディスさんが上手すぎるんだわ。  
 熱い舌がからまりあう。  
 こぼれおちる唾液が口の端から頬をつたってシーツを濡らしていく。  
 なにをされても怖くなかった。  
 痛いほどに舌を吸われても、ちくびの先に爪をたてられても、針のように鋭く冷たい髪が首筋をなぞっても、  
服ごしにゴリゴリとこすれる岩の肌も、それが全部ゼルガディスさんが与えてくれているものだと思うと、  
ぞくぞくとした興奮すら背をかけめぐっていく。  
 
 「……痛くされても感じるのか?」  
 強く心臓の上に吸いつき赤い印をつけたあとに、小さくそうささやいてくる。  
 「…………試して……?」  
 「すまんな、俺の見込み違いだったようだ。……まだガキだと思っていたが、女の反応をしやがる……」  
 ほんとうにすまなさそうに苦笑するゼルガディスさんを見上げながら、わたしは胸についたキスマークを  
誇らしいような気分でそっとなでた。  
 
 「……遠慮せずにいかせてもらうぜ」  
 「うれしいです……」  
 胸が高鳴る。  
 未知の世界なのに心臓がおどりだしそうなくらい喜んでいる。  
 だけど、ふと不公平な気持ちになる。  
 「……ゼルガディスさん……わたしだけ裸なのってやっぱり落ち着かないです」  
 「フン……それで?」  
 「それで、その…………見せてもらってもいいですか……?」  
 「……見るだけか?」  
 いじわるそうに言われて、さすがに返事につまっていると、  
 「好きにすればいい」  
 とさらりと受けとめられてしまった。  
 もじもじしながらも、やめる気にはなれなくて、わたしはゼルガディスさんの腰へと体を近づける。  
 服ごしに見てわかるほどにその部分が大きくなっていた。  
 激しい昂ぶりを間近に感じてこのうえなくしあわせな気分だった。  
 どうやって脱がせばいいのかとアレコレいじっていると、こそばゆさに我慢できなくなったように身をくねらせ  
つつ自分から解いてくれて、しかもその大きなモノを取り出してしまったので、わたしはすこしだけ落ち込んだ。  
 ふるふると頭をふって気を取り直してから、両手でこわごわと包み込んでみる。  
 熱くてかたくて大きくて、でも優しいような形をしていた。  
 大丈夫、な気がする。  
 処女喪失は地獄の痛みとは聞いていたけれど、わたしは大丈夫なんじゃないかと楽観的な気持ちになれた。  
 あいさつをするようにキスをしてから、口をあけてほおばってみる。  
 苦しくてすぐに離してしまったけれど。  
 やっぱり地道になめるところからしてみよう。  
 手は根元にそえて下から上へと舌を動かすと、ぴくっとした反応が手に伝わった。  
 息も乱さずにわたしをじっと見続けているゼルガディスさんの口元に笑みがうかんでいる。  
 涼やかな目元とあいまって、わたしの中の羞恥心をあおってくるけど、わたしの体は違うことを感じていて、  
どんどん濡れていくのがはっきりとわかってしまう。  
 挿入、ってどんな感じなのかなぁ……痛くて、でも気持ちいいんだろうな……  
 けっして口にはだせないことを思いながら、もう一度ほおばってみた。  
 のどの奥に刺さるような感触に思わず目をつぶったら、汗で熱のこもったわたしの髪の毛に指がからんで  
きた。  
 そのままゼルガディスさんのしなやかな指が遊ぶように髪をいじっていく。  
 ぐっとねじりあげて欲しいと思うのはおかしいですか……  
 無邪気にそう言えるような子供ならよかったのに。  
 じゅぽっと音をさせてしまってもくわえてしごきあげる動きをやめないでいるわたしは、初恋の一目惚れの  
最愛の男性に、自分でも知らなかった女の性をいきなりさらけだしてしまっていた。  
 でも、すごく、興奮する……  
 「そのへんにしといてくれ」  
 くん、と髪の毛がかるく引っ張られた。  
 歯があたらないように用心して口をはずすと、自分で思っていたよりも呼吸が乱れていた。  
 「ふぁい……」  
 口がうまくしまらなくて、間抜けな返事をしてしまう。  
 
 「俺の上に来い」  
 もうすでにゼルガディスさんの上にまたがっているような格好をしていたので、小首をかしげると、  
 「わからないか?……顔の上に来い」  
 ぼっと体の熱が急激にあがる。  
 「あ……あの…………」  
 「みなまで言わせる気か。お返しに舐めてやると言っているんだ」  
 そんな言い方されると、なおさら動けなくなるんですけど……  
 ゼルガディスさんの淡々とした表情が、羞恥心と好奇心をかきまぜてわたしをおかしくしていく。  
 差し出された手に吸い寄せられる。  
 手を取ってしまったあとは、あらがう理由も余裕もなにもなかった。  
 壁に両手をついて上半身を支え脚を開いてひざで立った。  
 「もっと脚を開いて腰をおとせ、舌が届かん」  
 言われるがままにゼルガディスさんの顔の横についたひざをずらしていき、秘部を近づける。  
 「……すごい濡れようだな、ひくついていやらしいぜ……」  
 恥ずかしくて目が開けられない。  
 お尻をわしづかまれてびくりと背筋がのけぞった。  
 そのすぐあとに濡れた舌が敏感な膨らみをなぞりあげる。  
 一瞬で頭の芯にまで快感が響いて腰がしびれていく。  
 開いた口から声がでそうになって、あわてて自分の指をかんだ。  
 それでも漏れでる喘ぎは許してくれるのか、注意はされなかった。  
 舌がねっとりとクリにからみつき、もてあそぶようにぬめぬめとねぶりあげられる。  
 あまりの刺激に悶えようにも、しっかりとお尻をつかまれていてままならない。  
 いとも簡単に絶頂に昇りつめてしまう。  
 きゅぅーっと弓なりにのけぞりふるえていると、クリ全部を口の中におさめられてしまい、容赦なく吸われた。  
 それだけでも快楽は激しいのに、両手を上にすべらせて胸をつかみちくびをつまんでくる。  
 卑猥な音とともにクリを吸い上げられ、尖ったようにふくらんでいたちくびまでこねまわされては引っ張られる。  
 快楽の芯を下から上へと何度も何度もねぶられて、体の奥がとろけそうだった。  
 思考がぼやけて理性がとんでいく。  
 また絶頂の激しい波がきた。  
 悦び震えてその波に身を任せようとしたのに、きつくちくびをねじりあげられ、体の芯が焼けつき痺れた。  
 その余韻にひたる間もなく、いつ胸から手を離したのか、ぬめりで溢れるわたしの中に指がねじこまれる。  
 「ひっ……い……ああっそ……んあっっ……」  
 ひくつくクリを押しつぶされたままで指をじわじわと奥へ入れられ、もうとめようもない喘ぎが流れでる。  
 たしなめるようにゼルガディスさんが首を軽く振るけれど、敏感な芯をぬるりとこすられて黙れるはずもない。  
 もう一本ふやされた指が中でまげられ、からみつくように抜き差しされる。  
 お尻がびくびくふるえてひざがもう自分を支えていられない。  
 「もぅ……だ、め…………だめですぅ……もぅ……」  
 喘ぎのあいまからかろうじて出せた言葉がどう伝わったのか、ゼルガディスさんの舌と指はさらに執拗に  
責めだしてきた。  
 的確に、確実に、めちゃくちゃに翻弄され、自分がどんな声をだしているのかもわからない。  
 つま先から背筋をぬけて頭の芯にまで快楽が駆け抜けていく。  
 今まで感じたことのない危険なまでの気持ちよさに魂が奪われそうになる。  
 唐突に開放されたと思ったら、ベッドがきしんで、うしろから腰を抱かれて熱いものが一気に貫いてきた。  
 
 焼けるような痛みと充足感が子宮をねらって突き進んでくる。  
 壊れそうだった。  
 激しくゆさぶられて奥を突かれて壁に押しつけられる。  
 それなのに痛みまでもが気持ちいい。  
 ゼルガディスさんから送り込まれるものすべてがわたしの内で激しい快楽に変えられていく。  
 悦びの声しかでてこない。  
 にぎりつぶされるようにして抱きしめられた。  
 肌にくいこむ硬い岩の感触も、わたしの絶頂を後押しするだけだった。  
 せつない呻きが聞こえて熱いなにかが奥へ注がれた。  
 愛してるというささやきの代わりに息もできない熱烈なキスがしばらくつづいた。  
 わたしはそんなふうにして意識をうしなった。  
 
 
 だるい体をむりに起こそうとして肩を抱き寄せられる。  
 「……もう少し寝ておけ」  
 窓の外は完全な暗闇で、酒場もしまっているような真夜中だということがわかる。  
 「リナさんたちが心配してないでしょうか……?」  
 「心配、か……むしろ俺たちの本気を祝ってくれているとありがたいがな」  
 わたしはゼルガディスさんの瞳をじっと見つめた。  
 照れたように微笑んで、それでもまっすぐに見つめ返してくれた。  
 それなのに何故か涙がでてきて、わたしはわんわん泣きだしたいのを必死でこらえ、優しく抱きしめてくれる  
最愛の人にむりやり微笑みを返した。  
 
 
 

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