外から、鳥の囀り声が聞こえる。  
 どうやら朝になったらしい。  
 あたしはもぞもぞと布団から顔を覗かせた。  
 結局、ほとんど眠れなかった。  
 寝たら寝たで、変な夢を見てしまい、眠るどころではなくなるし…。  
 お陰でひどい寝不足である。  
 顔を洗い、服を着て、装具を身に付けながら、どうやってガウリイと顔を合わせたものかと考える。  
 昨日のあれを聞いていたことなんて気付かれていないんだから、いつも通り接すればいいんだろうけど、よりにもよってあいつ、人の名前を…。  
 ああああ、無理無理!!絶対普通に接するなんて出来ない!!  
 考えも纏まらないまま、あたしは廊下へと出た。  
 そのまま、ドアを閉めようとして、  
 
「おっ、リナ。おはよう」  
 
 まさにその時、隣の部屋からガウリイが姿を見せた。  
 なにこのタイミング!?  
 あまりに予想外なガウリイの出現に、さっきまで散々悩んでいたことも相まって、あたしの顔は一気に赤くなる。  
 
「あっ、の…」  
 
 咄嗟に言葉が出てこない。  
 しどろもどろになるあたしを見て、ガウリイはきょとんと目を瞬かせた。  
 
「どうした、リナ?顔が赤いぞ?」  
 
 当たり前のように、ガウリイが近付いてくる。  
 思わず身を竦めるあたしの前にガウリイが立ち塞がり、大きな手であたしの頬に触れてきた。  
 
「風邪か?」  
「ちがっ…な、なんでもないから…」  
 
 視線が不自然に泳いでしまう。  
 この手で、昨日ガウリイがしていたんだろうか?あたしの名前を呼びながら・・・。  
 ますます、顔が熱くなる。  
 早く逃げないと、このままじゃ、あたしの頭がおかしくなっちゃう。  
 
「大丈夫だから、風邪とかじゃなくて、その…」  
 
 そこで、言葉を詰まらせてしまう。  
 まさか馬鹿正直に理由を説明する訳にもいかず、なにかいい言い訳はないかと考えていると、ガウリイが、あたしの耳元に口を寄せてきた。  
 
「昨日のを聞いて、興奮してるのか?」  
「!?」  
 
 弾かれたように、あたしはガウリイの顔を見た。  
 
 ガウリイはどこか楽しそうに口元に笑みを浮かべたまま、あたしを見ている。  
 核心を突かれ、否定することも忘れて唖然としていると、ガウリイの手がそっとあたしの頬を撫でた。  
 さっきまでとは違う、掠めるような触れ方に、あたしの背筋がぞくりと粟立つ。  
 
「聞いてたんだろ?」  
「だ、って…」  
 
 言葉が出てこない。  
 逃げようと後ずさると、背中に廊下の壁が当たった。  
 すかさず、ガウリイが両手を付いて囲ってくる。  
 
「あん、たが…あたしの名前なんか、呼ぶからでしょ…」  
 
 逃げ場もなくしたあたしは、ほとんどやけくそ気味にガウリイを睨み付けた。  
 こうなったら、開き直ったもの勝ちである。  
 恥ずかしすぎて視界が涙で滲むが、お構いなしにガウリイに向かって捲し立てた。  
 
「だいたい、か、勝手に人のこと想像して、なにやってるのよ!!」  
「なにって、日頃の欲求不満の解消を」  
「そんなことに、あたしを使うなあああああ!!!」  
 
 なんつう勝手な言い分を!!  
 しかしガウリイは悪びもせずに、至極真面目な顔でじっとあたしの顔を覗き込んでくる。  
 
「じゃあリナは、オレがリナ以外であーいうことやこーいうことを想像しても、別にいいのか?」  
「あーいうことって…な、なに考えてるのよ、あんたは!!」  
 
 思わず赤くなりながら、あたしは力の限り絶叫した。  
 するとガウリイは、にやりと、なにやら薄ら寒い笑みを浮かべる。  
 
「へえ、知りたいのか?」  
 
 悪寒が、背筋を駆け抜けた。いや、これは悪い予感だろうか?  
 あたしは慌てて首を横に振る。  
 
「いいわよ、いらないわよ、そんな…」  
 
 あたしの台詞は、最後まで続かなかった。  
 ガウリイの唇が、なんの許可もなく、あたしの唇を塞いだのだ。  
 
「!?」  
 
 咄嗟にもがけば、逃がすまいとしてガウリイがますます顔を押し付けてくる。  
 唇を割り、ねっとりとしたものが口の中へと侵入してきた。  
 それがガウリイの舌だと分かった時は、すでに口内は、彼のいいように弄ばれる。  
 
「んっ…んん…」  
 
 苦しくて漏れたはずの声が、やれに艶めかしく聞こえて、あたしは恥ずかしさに顔を染める。  
 ガウリイの舌は、歯列をなぞり、舌と顎の間や天井を舐め上げていく。  
 舌を絡め取られ、たまらず口を大きく開けると、チュッと音を立てて舌が吸い上げられた。  
 ぞくぞくしたものが、脳髄を刺激する。  
 全身の力が抜けて、自分一人では立っているのも難しい。  
 あたしは力の入らない手で、必死にガウリイへとしがみ付いた。  
 これじゃあまるで、あたしからキスをねだっているみたいだ。  
 たっぷり唾液を絡ませ合って、ようやくガウリイの顔が離れると、その間をテラテラと光る銀の糸が繋ぐ。  
 淫靡な光景に、あたしは思わず魅入ってしまった。  
 不意に、足が床から離れる。  
 ガウリイに抱え上げられたのだと気付いたのは、部屋へと連れ込まれた後だった。  
 
「ちょっと、離しなさいよ!!」  
 
 ふにゃふにゃになった頭で、それでもどうにか抵抗を試みるも、ガウリイの腕はびくともしない。  
 ベッドに寝かされると、そのままマントを剥ぎ取られる。  
 
「だーめ。知りたいんだろ?オレが何考えてるか」  
「い、いいわよ、別に」  
 
 首筋に、ガウリイが顔を埋めてくる。  
 吐息がかかると、むずむずした感覚が足の先から這い上がってくるようで、落ち着かない。  
 
「こうやって、服脱がせて」  
 
 言いながら、ガウリイの手があたしの服へとかかった。  
 あたしが呆れるくらい、スムーズに前だけが肌蹴られていく。  
 
「やだ、止めなさいよ!!」  
「止めない。ほら、もう胸に触れる」  
 
 服の中に差し込まれた手が、あたしの胸を覆った。  
 自分以外の他人が触れたことのない場所を触られて、羞恥で頭が破裂しそうだ。  
 ガウリイの手が、優しくあたしの胸を、円を描くように揉み始めた。  
 掌が胸の先端を掠める度、あたしは上がりそうになる声を、必死で喉の奥で抑え込む。  
 
「リナの胸は小さいな〜」  
「う、うるさい!!」  
「でも感度はいいぞ。ほら、もう乳首も立ってる」  
「やめ、て…」  
 
 人差し指と中指で、挟み込むように胸の先端をいじられる。  
 硬く尖ったそこに、与えられる刺激に、あたしは身を竦めた。  
 どうしよう、恥ずかしい…。でも、気持ちいいよ…。  
 
「気持ちいいのか?」  
 
 まるであたしの考えを見透かしたように、ガウリイが囁いてくる。  
 
 あたしは自分の気持ちごと否定したくて、首を大きく横に振った。  
 
「ふーん…」  
 
 納得いかなかったのか、ガウリイは低く呻くと、突然あたしの耳朶にカプっと噛みついてくる。  
 
「ひやっ!!」  
 
 突然のことに、あたしは裏返った声を上げた。  
 ガウリイは耳朶を甘噛して、耳の輪郭をなぞるように、舌で舐め上げていく。  
 
「やっ…ん、やだぁ…」  
 
 自分のものとは思えない、甘ったるい声が口を付いて出る。  
 耳の中にまで舌を入れられると、全身に鳥肌が立った。  
 
「ふあっ、ああ、ん…」  
「思った通り、リナは耳も弱いな」  
 
 息がかかると、それだけでますます意識が遠くなるような、そんな快感が送り込まれる。  
 どうしちゃったんだろう、あたし…。  
 自分で自分が信じられない。  
 初めてのことに、戸惑っていると、胸を触っていたガウリイの手が、下へ下へと降りてきた。  
 お腹の部分が軽くなる。ベルトが外されたらしい。  
 ズボンの淵に手がかかり、その時になってようやく、ぼんやりとしていた頭がはっきしとした。  
 
「ダメ、止めて!!」  
 
 あたしの悲鳴は、しかし少しだけ遅かった。  
 ガウリイは勢いよく、あたしのズボンを膝下まで下げると、そのまま一気に引き抜く。  
 
「やだぁ!!」  
 
 下着もなにもかもおかまいなしだ。  
 急に下半身だけ裸にされて、あたしはその場で蹲る。  
 しかしガウリイは無情にも、あたしの足を掴むと、無理やり両サイドへと大きく開く。  
 
「馬鹿、止めてってば!! 見ちゃやだぁ!!」  
 
 逃げることも適わず、あたしは必死で曝け出された恥ずかしい部分を隠そうともがいた。  
 ガウリイは足の間に身体を割り込ませ、あたしが足を閉じれないようにすると、尚も無駄な足掻きをする両手さえも封じ込めてしまう。  
 やだやだやだやだ!!  
 見られてる。ガウリイに、こんな…。  
 恥ずかしさに、涙が滲む。  
 でもガウリイは、なにか感慨深げにあたしのそこを、マジマジと観察した。  
 
「すごい…。想像以上に綺麗だぞ、リナ…」  
「やだってばぁ…。変態!!エロクラゲ!!離しなさいよ!!」  
「離したら隠すだろ?あっ、でも、これだとオレも両手が使えないか…」  
 
 ガウリイは少しだけ考えると、そこに顔を近づけていく。  
 って、まさか…。  
 
「ひゃん!!」  
 
 ぬめっとした感覚を、あたしはそこで感じ取った。  
 ガウリイが、あたしのそこを舌で舐め上げたのだ。  
 
「なんだ、やっぱり気持ち良かったんじゃないか」  
「なに、言って…」  
「濡れてる。胸触って、耳とか少し攻めただけなのにな。リナは淫乱なのか?」  
「〜〜〜〜!!」  
 
 違うと言いたかったのに、あまりの台詞に言葉も出なかった。  
 そんなあたしの様子を、ガウリイは足の間から確認して面白そうに笑うと、更にしつこくそこを舌で弄くり出す。  
 
「ひっ…んん…あっ…」  
 
 そこを触られるのがそんな気持ちいいなんて、初めて知った。  
 それとも、ガウリイが舐めているからなんだろうか?  
 頭の芯がくらくらして、まともに考えることも出来ない。  
 なにも知らないはずなのに、身体はどんな反応をするのかちゃんと分かっているみたいで、勝手に声も出たら、ガウリイの舌の動きに合わせて身体も跳ねる。  
 特に割れ目の少し上を触られると、どうにかなってしまいそうな痺れに襲われた。  
 
「ここが、いいのか?」  
「ふあっ、ん、なんか、変…あぁぁぁ!!」  
 
 チュッと強く吸い上げられて、あたしは全身を悶えさせる。  
 そこだけが異様に熱い。  
 全ての血液がそこに集中しているみたいに、ドクドクと脈打ってるのが分かった。  
 あたしの両手を封じ込めていたガウリイの手が離れて、そこをまさぐる。  
 皮を引っ張られるような感覚。  
 そして、再びそこに、ガウリイが吸いついた。  
 
「ひゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!」  
 
 さっきよりも鮮明になった強い刺激に、あたしは背を弓なりに反らせた。  
 口の中に含んだまま、ガウリイがしつこく舐め回す。  
 頭が白く焼ける。目の前に、火花が散っているようだった。  
 
「だめ、だめぇ!! いっちゃう、から、がうりい!!」  
 
 なにを言っているのか、自分でもよく分からなかった。  
 暴れるあたしを抑えつけ、ガウリイはしつこくそこを舌で嬲る。  
 
「あぁぁぁぁん!! やっ、だめ、もう…!!」  
 
 その直後、あたしの意識は快感の波へと押し流された。  
 全身が硬直し、きゅっとあそこに力が入る。  
 訳が分からないまま、その快感の波が遠ざかると同時に、あたしは意識を手放した。  
 
 
 
 
 
 目を開けると、ガウリイの青い瞳があたしのことを見下ろしている。  
 ぼんやりとした思考が、徐々にはっきりしてきた。  
 それと同時に、さっきまでの自分の痴態を思い出して、あたしはみるみる顔を青くしていく。  
 
「大丈夫か、リナ…わっ!!」  
 
 顔面めがけて投げた枕を、ガウリイはあっさり受け止める。  
 
「なにするんだよ、いきなり」  
「それはこっちの台詞よ!!」  
 
 未だに服を中途半端に脱がされた格好であることに気付き、あたしはシーツを全身に巻きつけた。  
 
「乙女の純潔奪って、どうしてくれるわけ!?」  
「まだ奪ってないぞ」  
「うるさい!!あんなことしたら、奪ったも同然よ!!」  
 
 自分で言いながら、なにをされたのか思い出してしまい、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。  
 そんな顔を見せたくなくて、あたしはシーツの中に潜り込んだ。  
 
「でも、これで分かっただろ?オレがなに考えてたか」  
「分かりたくなかったわよ!!」  
「まあ、リナがこんなこと想像するなって言うなら、今度からは止めるようにするけど…」  
 
 ベッドが不自然に軋む。  
 ガウリイがシーツにくるまったあたしに覆い被さるように、顔を寄せてきた。  
 
「次からしたくなったら、直接リナのところに行くからな」  
 
 耳元で囁かれた台詞の真意を悟り、あたしはますます全身を熱くした。  
 
 

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