「こうなったらもう、やっちゃうしかないよな。リナ」  
 あたしを胸に抱いたまま、ガウリイがのんびりと言う。  
 後ろにはゼルがあたしを支えるように背中を抱きとめている。  
 「3Pか……そんなプレイに興味はないが、この状況だ、仕方ないか……」  
 こいつら、さ、さ、さんぴーっていったい……?  
 あたしはいっしょーけんめい聞いてないフリをしているってのに、男二人の会話が勝手に続いていく。  
 「なに言ってんだ。リナはオレに任せろ」  
 「そう言うなよ、ガウリイの旦那。俺にも楽しませてくれてもいいだろう?」  
 「それもそうか。けどオレが先だぜ」  
 「順番はどうでもいいが、同じところに入れるのは気が引けるな……俺は後ろの穴にするか」  
 「あっあんたたちねぇ!!好き勝手に何言ってんのよこの非常時にっ!」  
 どろどろのねばねばの、大きな大きなスライムの中に取り込まれてしまった今の惨状は、はてどうやって  
説明したらいいものやら……  
 もうとっくに陽が沈んで、森の中は薄暗くて冷たい夜風が吹いていることだろう。お腹すいたなぁ……  
 召喚は好きな分野ではなかったけど、それなりに何とかなっていたから、今回も楽勝だと思っていたのに。  
 「おーい、リナ。結局どうなってんだ?」  
 「うっさいわね!今考えてんのよ、あんたたちもくだんない冗談言い合ってないで、なんとかしなさいよ!」  
 「そんなこと言われてもなー。オレ魔法なんか使えないし……」  
 「召喚したやつが何とかするのが筋だろう。だいたい……」  
 ゼルは少し言葉を切って、苦々しく告げた。  
 「釣り餌にスライムを召喚するなんぞ、馬鹿げている。挙句にこんなでかいのをどうやって釣り針に刺すと  
 いうんだ……」  
 またまた必死に聞こえないフリをするあたしの耳元に、後ろからゼルの深いため息がかかる。  
 「………………っ!」  
 あたしの微かな身悶えを、ガウリイがまじまじと見つめてきた。  
 「……そういや、リナって耳弱かったっけ……」  
 ばっとガウリイから顔をそむけ、あたしは早口でまくしたてる。  
 「そっそれより、よ。アメリアが町から帰ってくる前にどうにかしなきゃ!」  
 「?なんでだ?アメリアならどうにか出来るかもしれないだろ?」  
 そういえばそうね……どうしてかしら、この現場を見られたくないと思うのは……?  
 からかわれるから?うん、そうだ、そうに違いない。  
 「俺も、そうだな……見られたくないな」  
 珍しくゼルが照れたような声をだした。  
 ………お尻の下でなんか熱い物体が硬く膨らんできてる……気がする……気のせい……気のせいよ……  
 「あれ?リナ、顔赤いぞ?」  
 ガウリイの言葉にあたしだけがびくっと露骨に反応してしまってなんか悔しい。  
 でもここでゼルを睨んだら、いくらガウリイでも男の生態を察してしまうかもしれない。  
 っ?! 油断してたっ!ガウリイの服も一部分だけみょーにでかく膨らんでる!!  
 なんなのよこのケダモノたちはっ?!  
 アメリアが見つけようもんなら、男の方って不潔です!とかって涙目で叫ぶわね、こりゃ……  
 などと考えていると、横手の茂みが揺れ、小柄な人影が飛び出してきた。  
 「アメリア!良いところに………」  
 助けて、と言おうと……  
 「わたしを悪の道に誘わないでっ!……みんな不潔だわぁぁぁああああっ!」  
 ……全速力であさっての方向へと走り去ってしまった……  
 呆然とするあたしに、ガウリイとゼルからの冷たい視線がびしばし刺さる。  
 「……何を考えているんだ、お前は……いくら探究心旺盛だといってもだな……」  
 「そうだぞリナ。いきなり4Pはないんじゃないか?物事には順序ってもんがあってだな。  
 まずはオレとリナだけで……」  
   
 ───あたしは未完成版ギガスレイブの詠唱を始めた。失敗する気満々で。  
 
 
      完  
 
 

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