一瞬で殺気が膨れ上がったのを、肌で感じた。  
せめて直撃はかわさなければと身を引こうとして、予想外の力で掴まれたままの左腕に動きを止められる。  
身構える余裕も無かった。  
空気を裂く音すら聞こえるような一撃に、情けない悲鳴が他ならぬ自分の喉から溢れる。  
腿が、脹ら脛が、膝が、体を支えることを放棄して震えだす。  
衝撃は瞬時に全身に広がり、脳天まで突き抜け、視界が白く染まる。  
踏ん張ることすら考えられずに、その場にくずおれる……。  
 
 
「ガウリイ!」  
嫌な汗が背中を伝うのを感じて目が覚めた。  
真っ先にかち合ったのは、オレの胸の上から、心配そうな表情で見つめてくる大きな瞳。  
「リ……ナ」  
「どうしたのよ?うなされてたわよ」  
そう尋ねられて、先程の悪夢が蘇ってくる。体が勝手に強張ったが、すぐに包み込まれている確かな感触を感じて、安堵の溜め息が漏れた。  
「そうか……夢、か」  
正しくは、過去だ。  
あの悪夢は現実だった。ただしとっくに過ぎ去った出来事で、今あの痛みに再び襲われたわけじゃない。  
「……どんな夢、見たの?」  
「へ?」  
「うなされてたじゃない。どんな夢だったの?」  
「あー……」  
「クラゲが考え事なんかしてもロクなことにならないんだから、ちゃっちゃと吐いちゃいなさい!」  
いや、そう言われても……なぁ?  
正直に言っていいのかと迷ったが、小さな手のひらの上にうっすらと光が集まり始めたのを見て、オレは観念して話しだした。  
「いやな、お前さんにアレを蹴られた時の夢を見たんだよ」  
 
「……は……?」  
「前にさ、マルチナにバンダナ取られて呪い掛けられたことあったろ?  
あの時にお前さん、本気でオレのモノを蹴り上げただろうが」  
一瞬眉を顰めたリナだったが、思い当たったらしく、赤くなってちょっぴり青くなった。  
「ガ……ガウリイが、んな昔のことを覚えてるっ!?」  
おひ、まずそこか。  
「お前な、あれ結構痛いんだぞ。まあ女のお前さんに分かれとは言わんが」  
「じゅーぶん味わったわよ……二倍返しでね」  
痛みまで思い出したのか、げんなりした顔でリナが言う。  
これで案外痛みに弱いからなあ。  
初めての時なんか、そりゃもう大変だった。  
滅多なことで泣かないリナがぼろぼろ泣いて、痛い、苦しいって言うんだから。  
それも精一杯我慢しようとしていて、それでも我慢できなくて漏れてしまったような声で  
訴えてくるもんだから、余計に罪悪感を掻き立てられた。  
やっとの思いで全部押し込んでも、元からとてつもなく狭いナカがぎゅうぎゅうに締め付けてきて、  
これオレ動けるのか?と思うほどで、やっぱり一突きするたびにリナが呻いて。  
まあそんな様子も声もかなりソソるもんがあって、オレは罪悪感に苛まれながらも  
美味しく頂いちまったんだが……。  
 
「……ちょっと、なにおっきくしてんのよ」  
ナカで直に感じ取ったんだろう、リナが睨みつけてくる。  
だがなリナ、目許も耳も真っ赤にして、しかもナカまで絡みついてきてるんじゃ、  
いくら凄んでもちっとも怖くないぜ?  
「良かったじゃないか」  
「は?」  
「もしアレでオレのが勃たなくなってたら、お前さんをこーんなに気持ちよく  
できなくなるところだったんだぞ?」  
「なにいってんっ……んっ、ふんんっ……」  
軽く数回揺らしただけで、リナのナカからぐちゅぐちゅといやらしい音が立ち始める。  
なんだ、リナももうその気なんじゃないか。それじゃ期待に応えないとな。  
 
「んじゃまあ、オレのモノの有り難みが分かったところで。」  
「で、なによ……んぅ」  
「もう一回するか♪」  
 
上がるはずだった罵倒はもちろん舌で塞いだ。  
 
 
 
 
(終)  
 

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