※せれくと4収録『ゼルガディス朧月草子』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
はぁ、ごくり。はぁ、ごくり。
明日の食事の仕込みを終えて、疲れた体を癒す就寝前の一杯が、これほど忙しないことはそうない。
早く酔って寝てしまいたい。それだけを考えていたミランダは、杯を開けながら窓越しにぼんやりと外を見ていた。
すると、玄関口を照らす灯りの下に、す、っと白い影が横切った。
「っ!」
考える前に体は動き、ドアを押し開けてその影を呼び止めていた。
白尽くめの衣装、深くかぶったフードからわずかにのぞく硬質な輝き。
数年前、とある一件で出会ったときと変わらない容姿の彼がそこにいた。
とりあえず今は道連れがほしい。簡単にこれまでの経緯を話しながら強引にゼルガディスを呼び込んだミランダは、
強めの酒を数本取り出してカウンターに置いた。
「ここ、あたしがやってるんだ。よければ部屋も用意するし、これはおごるからさ、飲んでくれよ」
当然ながらゼルガディスは訝しげな表情をしている。ミランダの説明に疑いを持った風ではないが、
いきなり顔見知り程度の相手にここまでされたらそうなるだろう。
それでも彼が、椅子に腰掛けたときだった。
キ……ッ……ギッ……
天井から微かに響く異質な音に、ゼルガディスがびしっと硬直する。岩が張り付いた硬質な肌に、二筋、三筋と汗が流れる。
それは今朝方のミランダと同じ反応だった。
気付かれてしまってはしょうがない、ミランダは目を反らしながら説明する。
「あー……昨日からお籠りのお客さんでさ。何があったかしんないけれど、お熱いことだね」
実は、ゼルガディスが硬直した理由は別のところにあったのだ。
長い付き合いとはいえないミランダには分かるはずもなかったが、常人とは比べ物にならないほどの性能を持つ彼の耳には、
床の軋みだけでは済まず、情事の一部始終がしっかりばっちり聞き取れてしまっていた。
そして、その合間合間に聞こえる艶めいた声が、妙に聞き覚えのあるものだったのである……。
「ぁ……ぅりぃ……もぅ、むりぃ……」
のしかかる男を見上げ、少女が途切れ途切れのか細い声で必死に訴える。
開かれた体はわずかな刺激にも敏感に反応して少女の理性を狂わせており、頬を赤らめて力無く首を振るその様が
かえって男を煽っていることに気付かない。
幾度となく内部に放たれた精は少女自身が溢れさせる蜜と混じり、再開される抽送によって掻き出されては飛び散って、
内股とシーツをしとどに濡らしていた。
「そうだな」
次が最後か。
リナの限界を感じたガウリイは、放出して挿し込んだままにしていた己を彼女の中から一旦引き抜く。
「ふぁっ」
そして華奢な体を半回転させてうつぶせにすると、腰を掴んで高く上げさせ、蜜を垂らす秘所に再び己を突き入れた。
「んぁぁぁ……!」
深い所まで潜り込む挿入に、リナはたまらず高い声を上げる。
「っぁ、ん、ひぅっ」
喘ぎを漏らす唇の端から唾液が零れる様が、幼く見える容姿と相俟って淫靡に映る。
「やらしいな、リナは……」
「やぁ……」
耳元で優しく囁いてやると、否定しようとする口とは裏腹に、繋がった粘膜は一層きつく絡みついてきて、絶頂が近いことを知らせる。
激しく突き上げつつ、その細い腰を掴んでいた手の片方を下腹部にあてがって、薄い腹をくっと押し上げた。
最奥まで勢いよく突き入れられたモノと大きな掌の間で、繋がる隘路がさらに狭められる。
「ひっ、あーーーーーーーーっ!!!!」
「うっ……く……!」
責めに耐え切れず、リナが絶頂に追いやられる。その容赦ない締め付けにガウリイもまた達して、精を注ぎ込む。
「ぁっ、あ……ぁぁぁ……」
背を反らし精を受け止めていたリナが、ふつりと糸が切れたように頽れた。
余韻に震える体をそっと抱き上げて仰向けに寝かせると、ひくひくと痙攣を続ける秘所からは先ほど吐き出した精が溢れ出て、
ガウリイの目を楽しませる。
ふと意識を部屋の外にやったガウリイは、階下にあった懐かしい気配が宿の中に無いことに気付く。
たまらず外に出たのだろうか。だが夜も遅いし、この町からは出ないだろう。
そう大きくないこの町で、知った気配の在処を探り当てるのはさほど難しくない。
明日になったら、リナに言ってやろうか。「ゼルがいそうな気がする」とかなんとか。
恋敵になっていたかもしれない男の反応を思い浮かべつつ、力の抜けた細い体を抱き寄せて、ガウリイもまた一時の眠りについた。
(終)