――このひとは、どうしようもなく不器用で。  
 
二人きりのベッドのなか。  
アメリアは、自分の上にのしかかる愛しい男を見上げながら、ぽつりとつぶやいた。  
「…ゼルガディスさん、あのですね」  
「なんだ?」  
逞しい裸体に汗を滲ませながら、ゼルガディスは答える。アメリアは、いざとなると少し気恥ずかしいなぁ、と赤くなりながらも思い切って口にすることにした。  
「…、その」  
「――痛いのか?」  
ああ、それだ。  
先に言われてしまい、アメリアは少しだけ落胆する。  
 
この男の身体は、通常の人間とは異なる。  
ごつごつした岩肌が、鋭い銀の髪が、彼女の柔らかな肌を傷つけはしまいかと。  
持ち前の冷静さも手伝って、ゼルガディスはいつも彼女を抱くときは必要以上にいたわってくれる。  
だがその暖かな心遣いが、時として彼女にやるせない思いを抱かせてしまうのだ。  
もっと力強く抱き締めてほしい。  
もっと激しく、もっと熱く。  
甘い愛撫にとろけるような情交も確かに好きだ。  
それでも――何よりも愛する彼を、我慢させたり遠慮させたりはしたくなかった。  
 
「ゼルガディスさん、私は…ゼルガディスさんが思っているより丈夫なんですよ?」  
煌めくような笑顔を見せて、アメリアはゼルガディスの首に手を回す。  
ちくりと彼の髪の感触が軽い痛みを寄越してくるが、それすらもいとおしい。  
「…アメリア」  
「だから…手加減なんかいりません」  
ぎゅうっ、としがみつく。  
彼が自分の身体を忌み嫌う理由ごと抱き締めるように。  
ゼルガディスの眼が一瞬だけ伏せられ、歪む。  
だがすぐに安堵したように息をつき、アメリアの頬を優しく撫でた。  
「――言ったな。…後悔するなよ?もう止まらんぞ」  
「望むところですっ!」  
挑むような、ゼルガディスの言葉に、アメリアは満面の笑顔で応えた。  
 
了  
 

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