−−−−お使いV−−−−
チチチチチ…
「ん…」
――うーん、朝…?
柔らかい布団の感触。温かいぬくもり。
――気持ち良いです…もうちょっと。
ごろり、と寝返りをうつ。と、頭の下に枕とは違う硬い感触がある事に気付く。
――ん?
「ふわぁぁぁぁああああああああああああああっっっっ!!!!????」
目を開けたアメリアの前にあったものは。
ゼルガディスの端正な寝顔。
「……もう少し静かに起きる事は出来んのか、お前は」
が、一瞬で眉間に皺を寄せた険しい表情に変わった。
「ゼッゼゼルガディッなっなん」
一体何がどうなって一つのベッドでゼルガディスと共に寝ていたのか。
目の前にある混乱のあまり、昨夜の事はアメリアの頭から綺麗さっぱり抜けていた。
覚えていない事を察したゼルガディスは、ニヤリ、と笑みを浮かべ早速アメリア苛めを開始する。
「…案外(寝相が)激しいんだな、アメリア」
「はげっ!?はっ!!??えっ?????!!???」
「誰がはげだ。そんなに離れるな、こっちへ来い」
後ずさりしてベッドの端ぎりぎりまで離れたアメリアの腕を取り、自身へ引き寄せ抱きしめる。
「ふぇっ!?」
そして軽いキス。
「思い出したか?」
「おっ、思い出す、って、あのっ」
「まだ足りんか」
「えっ…んんっ……んっ…は、ぁ」
こちらは一晩中無邪気な寝顔に我慢させられていたのだ。
これくらいは良いだろう、とばかりに混乱したままのアメリアの唇を味わう。
「ん、うぅ…も…ぉっ……ゼ、ゼルガディスさ、えっちですぅ…」
隙間から途切れ途切れに抗議の言葉を吐き出すアメリアの声は、まるで逆効果なものだった。
「誘ってるとしか思えんな、そんな声で言われると」
「ちっ違います!!!もぉおお!!!!!朝ですよ、起きるんですっ!!」
甘い優しい腕の中の誘惑を断ち切ろうと、枕をゼルガディスの顔に押し付けその隙に立ち上がる。
自分の前で見せられる新鮮な反応にクックックッと笑いながら、ゼルガディスは再び問う。
「で、思い出したか?」
「おっ…思い出しました!おかげさまでっ!!」
先ほどの甘い甘いキスで赤くなった顔は、更に赤くなる。
そうだ。昨夜アメリアは、ゼルガディスに想いを告げたのだ。
そしてそのゼルガディスもまた、同じ想いである事を明かしてくれた。
まるで夢のような出来事で全く実感が湧かなかったのだが、今のゼルガディスの態度がそうではない、と
はっきり現実の物であることをアメリアに確かめさせた。
「それは何よりだ。寝込みを襲われなかった事も感謝して欲しいものだがな」
頭をガシガシと掻きながらベッドから立ち上がり、またニヤリ、とアメリアを見やる。
これは全く本当に、我ながら感心するのだ。
布越しに伝わるアメリアの温もり、柔らかさ。薄っすらピンク色の唇が、呼吸に合わせて吐息を吐き出す様。
時折寝返りを打ってはまた振り返り、ぎゅうっと抱きついてくるわけで。
それらを目の前に、一晩の間お預けを食らっていたわけなのだから、ゼルガディスは最高に寝不足なのだ。
「ねこっ…襲うって、まだそれ引っ張るなんていぢわるです!!顔!!洗ってきますっ!」
体は成熟していてもまだまだ中身はそちらには疎い。
勘違いしてプンプンという音を頭上に浮かべ、部屋から出て行ったアメリアを見、困ったものだ、と
思案しながらゼルガディスも身支度を整え出した。
想いが通じ合い、また側に居るという状況で、相手の全てを欲するというのはエゴなのだろうか。
その瞳が自分以外を映すのが許せない。その腕が自分以外に触れるのが許せない。
その姿を自分以外が見る事すら、許したくない。自分だけが見ていれば良い。
しかしまた、互いの間には決して無くす事の出来ない一つの壁もあり、更に自分にはどうしても譲れない
一つの目的、生きる意味もある。
だが、それがあったとしても、この愛しい存在が自分から離れる事は考えたくない。
「――ね。…聞いてますか?ゼルガディスさん」
物思いに耽っていたゼルガディスは、その声でふと我に返った。
「すまん、全く聞いてなかった」
「今日はお天気も良いですしね、ぼーっとしちゃいますよね。ふふ」
正直に詫びるゼルガディスに怒る事もなくにっこりと微笑むアメリアを見、抱き締めたいほど愛おしさがこみ上げてくる。
さすがに人通りの多い街中では、それは出来ないが。
「運良く馬車が通ったおかげで予定よりだいぶ早く街に着いちゃいましたね、って言ったんですよ」
リナからのお使いに出て3日目の今日は、目的地である街の一つ手前のこの街が目標だった。
徒歩であったなら陽が落ちる寸前ぐらいに着く予定だったのだが、アメリアの言うとおり
旅の商人の馬車が二人の側を通りがかり、少しの買い物と引き換えに馬車に乗せて貰えたのだ。
ここから更に次の街へ行くには確実に夜半過ぎになる。一人ならどうとでもなるが、今はそうではない。
まだ早い時間ではあるが宿を決め、アメリアにせがまれ仕方なく街中をぶらりと散策しているところだった。
本来なら日の明るいうちからこのような場所を出歩くような事はしたくないのだが、逆にこういう時、こういう
ふと立ち寄った旅先の街でもないと2人で街をぶらつくという事も出来ない。
「あ、あれなんだろう、うわぁ。見た事ないのがいっぱいあります!」
くるくると良く動く表情と小柄な体。珍しいものを見付けては立ち止まり、美しいものを見ては感動する。
そんなアメリアの後ろについて歩いていると、その仕草を微笑ましくも思うが、見たくないものまで見えてしまう。
艶のある美しい黒髪、少し日に焼けた肌に浮かぶ頬の赤み。大きな瞳を黒々と縁取る長い睫毛。ぱっと見でも美少女だ。
更に小柄な体躯には不釣合いにも思える、女を強調する膨らんだ胸。くびれた腰。細い腕。
そして。
それらを下種な目で見る、通りがかりの男共の視線。
「アメリア」
「うわっ、は、はい?」
花屋の店先に並んだ色取り取りの花を眺め、香りを楽しんでいたアメリアの腕をぐいっと掴み、無言で歩き出す。
「あ、あの、ゼルガディスさん?」
「宿へ戻るぞ」
「えっ?まだ明るいですよ?」
「だからだ」
「えぇ…?」
アメリアにとっては何が『だから』なのかが分からないが、それ以上問うのも難しい表情に気付き、大人しく着いて行く。
「あの…やっぱり気分が悪かったですか?」
部屋に入るまで無言だったゼルガディスに、アメリアが問う。
「そうだな」
「すみません…わたし、嬉しかったから全然気付かなくて」
今日も一部屋だが、ベッドはきちんと2つある。昨日の失敗を生かし、マスクをしっかり付けてゼルガディスが部屋を頼んだ。
その片方のベッドに腰掛け、ゼルガディスは外套を外しながら立ったまま謝るアメリアを見た。
恐らく、あまり出歩きたがらないゼルガディスを無理に連れ出した事に対して反省しているのであろう。
「そっちじゃないんだがな…アメリア、ここに座れ」
前半は小さく独り言のように言うと自分の隣を指し、促す。落ち込んでいるアメリアは素直にそれに従い、静かに座った。
「楽しんでいるお前を見ているのは全く苦にはならん。いくら見ていても飽きない程見ていたいとも思う。
俺が気分を悪くしたのは、そんな事じゃない」
「え?」
「俺は自分で思っていたよりも相当なやきもち焼きらしい」
優しく、アメリアを抱き寄せる。
「ゼルガディス、さん…?」
「お前を俺以外のやつが見るのが、こんなにも腹立たしく思うなんてな」
ぎゅぅっ…と両腕に力を込め、小さな体を抱き締める。
「ゼルガディスさん…顔を、見せてください」
腕の力を抜き正面からアメリアを見据えると、ちゅっと軽く口付けられる。
「わたしは、ゼルガディスさんが…だいすきです。この顔も、髪も、腕も。
…普段隠れている、優しさも、全部」
今度は、アメリアがゼルガディスを抱き締め、胸元に顔を埋めて問う。
「どうしたら、安心して貰えますか?」
「…お前の全てが欲しい」
「……アメリアは、もうとっくにゼルガディスさんのものです」
背中に回した腕に力を込めながら言うと、その言葉でゼルガディスの心臓の音が一際強く跳ねた。
と、抱きついた格好のまま体が倒される。
「わっ…あ?」
ゼルガディスの冷たい唇がアメリアの熱い唇に触れる。
「ん…ふ…ぅんっ……んん…っ、は、ぁ…」
「そんなセリフを吐かれたら、もう止まらんぞ」
一旦唇を外し、アメリアの紅潮した顔を見詰め、つぶやく。
「えっ……ぁ、あっ!」
唇、頬、耳たぶへと吸い付きながら移動し、軽く啄ばむ。
柔らかい耳たぶに舌を這わせ、吐息を吹きかけながら反応を確かめていく。
「あ、あっ!ゼッ…や、そこ、なんっぁあ、変…です…うっぅんっ…ああぁっ」
ぴちゃ、ぴちゃと舌と唾液の音が自分の耳元で響き、余計にいやらしく感じてしまい、また自分の口から漏れる声が
まるで別人が出しているような声に聞こえアメリアの羞恥をくすぐる。
「ゼ、ルガ…ディス、さ、やっ…変な、声っ…あ、出ちゃ…う、んぁ、はっああっ」
「もっと聞かせろ」
そう言いながら、ゼルガディスの手は服の上からでも柔らかいアメリアの胸に触れる。
「あっ!!」
優しく円を描くように乳房を撫で、そっと先端を摘むと一際高い声がアメリアから発せられた。
耳元や首筋はゼルガディスの唇、胸には手の平から与えられる絶え間ない愛撫で、何も判らないままの
アメリアの感情を昂ぶらせて行く。
「あっ、あぁ!あっ、ふ…ぁああ、あっあ、やぁ…ああっは、だっ…あぁ、め…ああ、あぁああ!」
体をビクビクッと震わせゼルガディスの服をぎゅっと握り締めた後、アメリアの体から力が抜ける。
「あぁ…は…はっ…ふ…ぅ…」
「イったのか?」
目を薄く開け、ぼぅっとした表情で浅く呼吸をするアメリアの顔を覗き込み、ニヤリと笑いながら問いかける。
「イったって、なん…はぁ、です…か…。わかん…な…ふぅ、です、けど…なん、だか凄くて…」
「じゃあもっと凄くしてやろう」
言うが早いか、ゼルガディスは手をアメリアの胴衣の裾から差し込み、今度は直にそのたわわな乳房に触れる。
「あぁあっ…」
首の辺りまで胴衣を捲り上げ、胸元、乳房の横等にちゅぅっと音を立てて吸い付き、小さく赤い印を付けていく。
そして今度は赤く尖り始めた先端には触れないよう、柔らかい部分を丹念に愛撫する。
「ん…んんっ…あ、はぁ…あぁ…」
片方は下から抱えあげるように乳房を揉み、またもう片方には口付けを繰り返す。
次第に乳首の赤みが増し、触ってくれ、と言わんばかりに膨らむがそこには触らない。
「あぁ…ゼルガ…ディス、さっ…、あぁあっ…そこ…ぉ」
「どこだ?」
「うぅ…っ」
触って欲しい感情が込み上げて来るが、恥じらいからはっきり口に出すことが躊躇われるアメリア。
もちろんゼルガディスにはそれが判っているが、やっと自分によってよがり、甘いため息を漏らすアメリアを見られるのだ。
もっと色んな表情を見たい。この少女を、少女の顔から女の顔にするのは自分なのだ、と確かめるために。
もっと色んな声を聞きたい。自分に与えられる刺激に喜び、自分を求めて、耐え切れなくなるほど切なく狂おしい声を。
「も…いぢ…わる…っ」
「じゃあ、どうして欲しいか言え」
「もっと…っここ……っして、ください…」
ゼルガディスの手に自分のそれを添え、胸の先端へと導く。
口に出すのは流石に厳しいか、と内心苦笑したが、その仕草がたまらなく可愛らしかったので十分だろう。
「仰せのままに、いやらしいお姫様」
ニヤ、と笑み、その赤く熟れた乳首を口に含み強く吸うゼルガディス。
「はっ…!あぁ、ああっあ、あぁあぁあん」
やっと与えられた刺激に、アメリアの背中が弓なりにしなる。
もっと、とねだるように胸を突き出し、ゼルガディスの唇、舌の動き一つ一つに激しく反応する。
口の中に含んだまま舌先で先端をくるくると舐めたり、また軽く歯を立ててみたり。
空いている片方の乳房も、しっかりと愛撫する。指先で乳首を軽く弾いたり、きゅっと摘んだりしていると
またアメリアの息が荒く、浅くなり、熱が増すと再びビクンビクンッと体を震わせた。
「あぁ、ゼルッ……さ…ぁ、ふぁ…すごい、きもちい…っふあぁあっあぁぁああああ!」
「胸だけでイクなんて、本当にいやらしいお姫様だな」
ぐたり、としたアメリアの耳元にささやき、薄く開いた唇に軽く口付ける。
「らっ…て、すご…は…あ、あっ!?」
何かを言おうとしたアメリアは、次のゼルガディスの行動にまた驚きの声を上げた。
腰の紐を寛げ、さっと手を差し込み下着の上から秘所に指を食い込ませると、そこはしっとりと濡れていた。
「あぁ、はぁあぁあああ、やぁ、そんっなと…こぉぉっ」
イヤイヤをするように首を振り、動きを止めようと手を動かすが、初めてで2度も絶頂を迎えた後に力が入るはずもなく
頼りなくゼルガディスの腕に手を添えるだけの形になってしまう。
回復するまで待つほど甘くはない。足に力が入らぬうちにと腰の部分に手をかけ、下着と共に一気に脱がす。
「やぁっ…」
拒否の声を上げるが、足を閉じさせないようにゼルガディスは股の間に素早く入り込み、太ももを肩の上へと配置させた。
「こんな、の、恥ずかしいっ…ですぅう…」
「恥ずかしいお前を見るのがイイんだ。足を閉じるなよ?髪が刺さって痛いのはお前だ」
「うぅ…いぢわる……」
顔を真っ赤にし、手で必死に隠すアメリアを股の間から満足そうに眺め、目の前のご馳走へと視線を移す。
薄い痴毛の下に、柔らかそうな赤い実が隠れている。そこにふぅっと息を吹きかけるとびくんっと腰が跳ねた。
「なっ、なんですかっいまの!!??」
「お前の一番敏感なところ、だ」
そう言い、今度はペロリ、とそこを舐める。
「ふゃぁあっ!?」
――初めてだろうし、あまり強くするのは可哀相だろうか。
少し思案したが、ゼルガディスさんのものだ、と言ったのはアメリア自身だ。全てを頂くとしよう。
ちゅぅっと音を立て、隠れた実に吸い付くと唇の中にそれを含み、舌を尖らせてつつき、または舌を広げねっとりとねぶる。
「あぁああっ!?あっはぁあぁ、ふっうぅうんっくぁ、はぁあ、あああぁああぁあぁっ!!」
一つ一つに激しく体が震え、腰が動き、足をびくんと動かすが、閉じるな、と言われた事も既に頭にないのだろう。
時折髪に触れ、アメリアの白い太ももに赤い筋が刻まれていくが、痛みよりも初めて与えられる快感のほうが強い今
そんな事はアメリアの頭には全く入らない。
「あぁあ、あぁあああっんっぁあ、あああぁあああ、だめっ、だめっ、また、あぁっはっああああああああ!!」
2回も達した後でより敏感になっていたアメリアは、クリトリスへほんの少しの刺激でもあっさりと達してしまう。
しかし今度は、そこでゼルガディスが止まる事はなかった。
「あぁあぁあああ、うぁ、あぁ、ふぅ…あぁ、はぁあぁああ!」
更なる刺激から逃げようとする腰をしっかりと掴み、赤い実へ刺激を与え続ける。
「っ…あ――――――――――!!!」
甲高い声を上げびくびくっと何度か痙攣した後、アメリアの体はぐったりと動かなくなった。
「ん……」
どれぐらい経っただろうか。アメリアが目を覚ました時は既に辺りは暗く、ランプの明かりだろう仄かなオレンジ色が
視界に入ってきた。
「起きたか?…すまない、やりすぎた」
隣から聞こえる声にゆったりと顔を傾けると、心配そうに自分を覗き込むゼルガディスの顔がランプに照らされていた。
「だいじょうぶ、ですよ」
安心させるように優しく微笑み、ゼルガディスの頬に手を添える。
ゼルガディスはその手を左手で掴み、そっと口付けた。
「このまま眠れ。側についててやる」
アメリアの額にも口付けし、腕枕をしている右手で頭を撫でると、アメリアは幸せそうに頷きそのまま眠りに落ちた。
――まだ旅は続くからな。今日はここまでで勘弁しといてやろう。
そんな恐ろしい事をゼルガディスが考えている事も知らないで。