野郎共が書庫に官能小説を隠していたことが判明した、書庫での一件から、一ヶ月ほどが過ぎました。  
 
 あのとき二人が王様から呼び出されたのは、隣国のお姫様と王子様の政略結婚のお話があったからだ 
と聞いて、リナは血の気が引く思いでした。  
 
 元はと言えば、ゼルガディスに会いたいが為に人間の足を手に入れたリナ。  
 その為に故郷を捨て、魚の尾も捨てて。  
 それなのに。  
 
 夜の海は黒インクをを流したように真っ黒で、空との境目も判然としません。  
 空に浮かんだ月は、水底から見上げたときのような歪みを見せず、見事な真円を描いて静かに海と、 
そこに浮かぶ船を照らしていました。  
 今夜、船上での結婚式が執り行われ、その余興としてダンスパーティが催されているのでした。  
 それにも連れ出されたリナ達侍女は、式そのものへの参列こそ許されなかったモノの、それぞれ好き 
なドレスを着て船に乗り込むことを許されていました。  
 今リナが着ているのは、やはりゼルガディスとガウリイから贈られた(おねだり攻撃で買わせたとも 
言う)、落ち着いたワインレッドのドレス。  
 床下から漏れ聞こえる楽の音を遠く聴きながら、リナは途方に暮れました。  
 空に浮かぶ月を見上げていると、どうしようもなく切なさが込み上げてくるのです。  
 
 彼のざらついた肌が、今は酷く恋しくて堪りません。  
 リナは甲板の手摺りに肘をかけ、その中に顔を埋めました。  
 嗚咽を噛み殺し、人気のない宵闇の中、肩を震わせていると、かつん、かつんと、真珠になった涙が 
床に落ちました。  
 声だけは出すまいと、リナはくちびるを噛み締めます。  
 高い矜持が、リナの震える脚を支えていました。  
 
「…………風邪を引くぞ」  
 聞き慣れた低い声がして、同時に、剥き出しのリナの肩に、ふわりと厚手の布――恐らく彼の纏って 
いたマントでしょう――が掛けられました。  
 はっとしましたが、今顔を上げるわけにはいきません。  
 涙でぐしゃぐしゃの顔なんて、見られたくないからです。  
 代わりに姿勢だけはそのままにして、  
「パーティ、抜け出してきていいの?」  
「俺一人居なくなったってわからんさ。結構酔いつぶれて部屋に戻ったヤツもいるようだしな」  
 肩に掛けられたゼルガディスのマントにはまだ彼の温もりが残っていて、リナはそっと、指でマント 
を握りしめました。  
 何かに負けているようで、少し悔しい思いもあったのですが、そうしたいという思いが勝ったのです。  
 
 ゼルガディスはふと身を屈め、  
「…………泣いてるのか?」  
 床に落ちた真珠の一粒を拾い上げて、そう言いました。  
「泣いてない」  
「じゃあ、なんで真珠が落ちてるんだ?」  
「誰かのネックレスでも、千切れたんじゃない? 大体、あたしが泣いてたからって、どうして真珠が 
落ちてなきゃいけないのよ」  
「加工された形跡なんか無いんだけどな……  
 お前さん、まさか隠せてたと思ってたのか? 初めて会ったときに、俺とガウリイは、お前さんが泣 
くところを見てるんだぜ」  
 今度こそリナは「あっ」と声をあげました。  
 確かに人間の風習に慣れるまでは、服の着方さえも分からず、相当頓珍漢なことをしていましたが、 
特に深く追求されることもなかったので、気付かれていないものだと思っていたのです。  
 しかし、確かにリナが処女を散らされたとき、彼女はあまりの痛みに涙を零し、涙が真珠に変わると 
ころを見られているのでした。  
 
 吐き出すべき言葉も見つからず、リナは黙りこくります。  
 そんなリナの様子に、ゼルガディスは軽く息を吐いて、彼女の小さな肩に手を回しました。  
「…………ここは冷える。本当に風邪を引く前に、部屋に戻るぞ」  
 肩を抱き寄せられ、階段の方へ連れて行かれそうになって、ようやくリナは顔を上げました。  
 涙は手の甲で拭ってありますが、赤くなった目は如何ともしようが在りません。  
「ちょ……っ、待ってよ」  
「何だ?」  
「何だ、って……だって、あなたの部屋には、もう……」  
 
 結婚相手のお姫様が居るんでしょう――――……?  
 
 掠れたリナの呟きが、ゼルガディスの耳に届いたかどうか、彼女には分かりませんでした。  
「…………………は?」  
 リナの言葉は潮騒にも風にも流されず、ちゃんとゼルガディスの尖った耳にも届いたらしく、彼はそ 
の端正な容姿には似合わぬ間抜けな声で、聞き返すように声を絞り出しました。  
「だっ、だから……ッ」  
「待て待て待て。お前、もしかして凄い勘違いをしてないか?」  
 クックック、と喉の奥で笑いを押し殺して、ゼルガディスは片手で額を覆いました。おかしくて堪ら 
ないときの、彼の癖です。  
「勘違いって、何を?」  
 手酷くからかわれたような気がして、リナはゼルガディスに食ってかかりました。  
「だから。  
 今日結婚したのが俺だと思ってないか?」  
「…………だ、って…………王子様が結婚……って……」  
 段々混乱してきたリナの様子が余程おかしかったのか、遂にゼルガディスは手摺りに凭れて肩を震わ 
せ始めました。  
「なッ、なによ! そんな、笑わないでよ! あたしショックだったんだから!」  
「はは……って言われてもなぁ……俺はまだ独身だし?」  
「え? え? なんで? あれ?」  
 まだくつくつと笑いながらも、何処で間違えたのかと状況を整理するリナの腕を、ゼルガディスは引 
き寄せました。  
「……どういうこと?」  
「『王位継承者』は一人じゃないってことさ」  
 
「…………あーーーーーーーーーーーっっ!!」  
 どうして今の今まで気付かなかったのでしょう。  
 リナはバカバカあたしの莫迦、と内心で自分をぽかぽか殴りつけました。  
「じゃあ、今日結婚したのは……?」  
「ガウリイだよ。あいつは俺の、腹違いの兄貴って訳だ」  
 ま、こんな奇妙なナリじゃあ、親父も表舞台には出せないだろうがなと、ゼルガディスは自分の手を 
月に晒し、苦く笑います。  
 リナの内心における、似てないにも程があるとか、オヤジは誰だというツッコミはこの際横に置いといて。  
「納得したんだったら、部屋に戻るぞ。本当に風邪ひいちまう」  
 
 去っていく二人の後ろ姿を見送ったルナはふっとちいさく微笑むと、もしもの時のために持ってきて 
いた短剣を放り投げました。  
 それは月光を反射して煌々と輝き、深い深い、海の底へと沈んでいきました。  
 そしてルナはざぶんと尾を上げ、水の底へと潜っていったのです。  
 妹の幸せを願いながら。  
 
 特等客室(勿論ゼルガディスの部屋です)に連れ込まれると、ゼルガディスは即座にリナを抱き上げ 
て、ベッドの上に横たえました。  
 彼はリナの頬や額に優しくキスを落とし、それから唇を重ねてきます。  
 啄まれた唇を舐められ、それに応えて薄く唇を開くと、ゼルガディスのざらついた舌が滑り込んでき 
て、リナの舌をつつきました。  
「んっ……ふ」  
 彼の手が背中に滑り込んできてジッパーをおろし、胸元をくつろげます。  
 口腔から抜け出した舌がリナの肌を這い回り、ドレスから露出しない場所を選んで肌を啄むのでした。  
「ひゃっ……あァ……」  
 ドレスの裾がたくし上げられ、下着とお揃いのガーターベルトで飾られた肢体が露わになります。  
 いつもの急いた愛撫ではなく、今まで感じたどれよりも優しい手の動きに、リナは酷く、泣きたくなりました。  
 
 ショーツの中心をゼルガディスの指が軽く押し込め、  
「もうこんなに濡らして……」  
 からかうように彼が言うものですから、リナも負けじと手を伸ばし、ゼルガディスのいきり立ったモ 
ノを握りしめました。  
「あ、あなただって……こんなにしてるじゃない……」  
 リナの手に伝わる彼の分身は、火傷しそうな熱を帯び、布地を少し湿らせています。  
 ソレをきつく扱いてやると、気持ちいいのでしょう、彼の眉根が寄せられました。  
 海岸で彼らと出会って以来、リナの躰にはあらゆる性技が刷り込まれ、高い矜持と女らしい恥じらい 
はそのままに、快楽に正直な躰にされていたのです。  
 
 のし掛かっていたゼルガディスの躰をそっと押して、ベッドの上に彼を座らせますと、リナは床に跪 
いて、彼のズボンのジッパーを歯で咥えました。  
 栗色の髪を優しく撫でつけられ、ちらりと頭上にあるゼルガディスの顔を見てから、リナはそっと顔 
を下げていきます。  
 布地越しに唇が掠めたせいか、ゼルガディスのソレが、時折ぴくんと震えました。  
 
 やがてジッパーを全て下ろしてしまうと、湿り気を帯び、むっとするような雄の臭いと共に、屹立し 
たソレが顔を出します。  
「あぁ……」  
 溜息とも感嘆とも付かないと息をもらし、リナはとろりとした視線でゼルのソレを見つめました。  
 無意識ながら、上目遣いに媚びを含んだ眼差しを送り、先端の割れ目に沿って舌をそよがせると、彼 
の先走りが溢れてくるのが分かりました。  
 自分の奉仕でゼルガディスが感じてくれているのが嬉しくて、リナは薄いレースの手袋もそのままに、 
右手で竿を支え、左手で髪を掻き上げながら、砲身を口腔内に吸い込みます。  
「……んっ……」  
 喉の奥までソレを咥え込みながらも、もう吐き気は憶えません。  
 とっくに慣れてしまっていたからでしたが、リナはそれを嫌悪してはいませんでした。  
 まるでそれが大好きなお菓子か何かであるかのように、リナは丁寧に、陰嚢にさえも舌を這わせ続けます。  
 
 ゼルガディスに限界が近付いてきたのか、彼の息が徐々に上がり始め、リナの髪を梳く手にも少しば 
かり、力が籠もりました。  
「ッ……リナ……そろそろ……」  
 目元をうっすら朱に染めて、ゼルガディスはリナに切なそうな視線を送ります。リナもそれは心得て 
いて、小さく頷き返すと、絶頂を急かしてきつく吸い上げてやりました。  
 ケモノのような息遣いと、リナの口から発せられる卑猥な音が船室を満たし、やがてゼルガディスの 
腕が、リナの頭を包み込むように抱きしめようと―――――……  
 
「そこの乳繰りあってるお二人さん♪ いいもん持ってきたぞ〜v」  
 
 ドアに鍵を掛けるのを忘れていたのか、それともどうにかして鍵を開けたのか。  
 何やら大量の布地を抱えたガウリイが、船室のドアをばたんと大きく開いたのでした。  
 
(8/11)  
 勿論廊下には衛兵達が居るはずで、あれだけ大きくドアを開けられたら、リナのあられもない姿が見 
られてしまう――……  
 
 慌てたリナは(ゼルにとって)一番大事なところであるのを完璧に失念し、ソレから口を離してしま 
ったのでした。  
「っ、ばか、リナ……!」  
 幸いと言うべきか、リナの右手がソレを掴んだままでしたので、ゼルガディスは放出中のソレが跳ね 
返って(不適切なので中略)ということにならずに済みました。  
 しかし、代わりにリナが、その災難を被ってしまったのです。  
 文字通り、頭から。  
 
「ふにゃ……っ!」  
 びちゃびちゃっ、と音がするほどの勢いでゼルガディスの白濁が放出され、リナの貌やドレスをべと 
べとに汚してしまいました。  
「……やぁん……」  
「あんな時に口を放すからだ。ほら、こっち向け」  
「あたしの所為じゃないわ。ガウリイがノックも無しに入ってくるから……」  
「え、俺?」  
 なんだか責任転嫁を順番にやってるようにも見えますが、それはさておき、リナの貌にかかった白濁 
を拭き取ってやりながら、ゼルガディスはガウリイが手にしているモノに目をやりました。  
 
「ガウリイ、それは?」  
「あ。あーあー、そうそう。  
 リナ、お前ちょっとこれ着てみろよ」  
 そう言ってガウリイが手にしていた布地をばさりと広げると、それは真新しいウェディングドレスでした。  
「え、これって……」  
「うん、さっきアメリアから脱がせたの持ってきた」  
 どうやら件の「お姫様」はアメリアと言うようです。  
 しかし。  
「新婚初夜に花嫁ほったらかしていいのか?」  
「心配ご無用!  
 五回戦で失神しちゃったから、今はシルフィールにえっちなことを手取り足取り腰取り教えられてるとこ」  
 
 初めてでいきなりガウリイの6センチをハメられ、しかも五回連チャン(しかも絶好調時のガウリイ 
の場合、それはまだまだ序盤だったりする)で犯られて失神したと思えば、  
相変わらずガウリイへの愛に狂い、筆舌に尽くしがたい嫉妬に燃えさかって居るであろうシルフィール 
によって閨房術の手ほどき――恐らく寸止め四十八手のフルコース。  
 ガウリイのブツによって、何回か死にそうになった経験のあるリナは、嫁いできたお姫様に、ある種 
の同情を憶えました。きっと今頃、泣き(啼き?)ながら、大変なことをされまくっているのでしょう。  
 
 ガウリイが開け放していたドアを閉めている内に、リナは衝立の向こうに隠れ、汚れたドレスを脱ぎました。  
 代わりに手にしたウェディングドレスは、とびきり質の良いシルクをベースに、真珠やダイヤが散り 
ばめられています。  
 売っ払ったら一体幾らになるのかしらと考え込んだリナの意識を、ゼルガディスの声が呼び戻しました。  
「リナ、ガーターベルトはそのままでいいから、下は脱いでこいよ」  
「マニアックだよなー、お前」  
「うるさい。巨乳フェチが」  
「なんだよ貧乳マニア」  
 なにやら聞き捨てならない言葉が聞こえましたが、それがリナを示す単語なのかは証拠がないので、 
ひとまずスルーしておくことにしました。  
 
「ほら、これでどう?」  
 ふぅわりとドレスを翻して衝立から出て来たリナは、どう見ても初々しい花嫁そのものでした。  
 殿方二人が、これからするコトとリナの花嫁姿を脳内で結びつけ、速攻で前屈みになってしまうほど。  
「……なにしてんの」  
「あ、いやいや」  
 少々照れ臭いのを押さえつけてベッドの傍に立つと、真っ先にガウリイのリクエストが飛んできました。  
「スカート捲ってv」  
「あ……あほかっ!」  
「何を今更恥ずかしがってるんだ?」  
 ゼルガディスの手がリナの手を取り、彼女にスカートの裾を掴ませました。  
 
 ヴェール越しに見えるリナの貌は羞恥からまた更に赤く染まり、華奢な肩は小さく震えておりました。  
 既に興奮しきった肢体からはいやらしい蜜がとろりと滴り落ち、まろやかなラインを描く内股を伝っ 
て煌めいています。  
 ゼルガディスは悔しいのか恥ずかしいのか、視線を逸らして震えるリナの顔を覆うヴェールを捲り、 
軽くくちづけました。まるで結婚式のそれのように。  
 しかし下肢には下着を付けておらず、溢れた蜜は既に白く濁り始めていて、神聖な儀式とは対を成す 
ほどの、淫蕩な姿。  
 
 ガウリイがリナの後ろに立ち、胸をはだけさせます。  
 彼女には少し大きすぎるカップ部分がするりと落ちて、可愛らしい一対の果実が顔を覗かせました。  
 ガウリイは手慣れた様子で小さな膨らみを揉みしだき、彼女を包み込むように抱きすくめて胸を吸い 
上げました。  
「ふ、あ」  
 ひくんとリナの躰が跳ね上がり、ます。  
 下腹が切なくなってきて、うっすら開いた眼でゼルガディスに誘いを掛けると、彼は心得たという風 
に、リナの泉へ指を伸ばしました。  
 綻んだ道に指が潜り込み、リナの弱い部分を探り当てようとゼルガディスの指がうねります。  
 ついに彼の長い指がリナの感じる部分を探り当て、くっとそこを押し込められて、リナは小さく、そ 
れで居て鋭い嬌声と共に、押さえていたドレスの裾を取り落としてしまったのでした。  
 
 パニエとシルクのスカートにゼルガディスが閉じこめられると同時に、部屋がノックされました。  
 その場にいた全員がぎょっとし、ゼルガディスも出てくればいいものの、そのまま硬直してしまった 
上、リナは自分の服装を直すことで精一杯、しかもそれは「お后様」のウェディングドレスです。  
 ガウリイがどうにかしてテントを収め、着替えるいとまも隠れる場所もないリナが、機転を効かせて 
ヴェールを被り背を向けました。  
 そうしてからガウリイが返事をしたので、ドアから衛兵の一人が顔を出し  
「ああ、こちらにおられましたか。  
 王子、陛下がお呼びです」  
「あ、そう。わかった、すぐ行く」  
 それだけを告げると、衛兵はあっさり立ち去ってくれましたが、ガウリイはまだしも、リナの方は堪 
ったものではありません。  
 隣で「ちぇー、ウェディングドレスでえっち、もっかいしたかったんだけどなー」とぼやくガウリイ 
はさておいて、リナはスカートのフロント部分をぺけっと叩きました。  
「……出てきていーわよ」  
 それからもそもそとゼルガディスが顔を出したのですが、彼はリナの顔を見るなり、ぺろりと唇を舐 
めました。  
「ご馳走様」  
「…………ッ! ばかー!!」  
 どうやら衛兵とガウリイとがやり取りする短い間に、彼はリナのスカートの中で、彼女の秘裂を舐り 
倒していたようです。  
 
「んーじゃあ、残念だけど俺、行くわ」  
 タイを直しながらドアに向かうガウリイに、  
「ドレス、持っていかないの?」と声を掛けると、ガウリイはやっぱり何も考えて居なさそうな顔で振 
り向きました。  
「ああ、もうお色直しとかで別のドレスにしてあるはずだから。  
 今回はゼルガディスに譲ったげよう!」  
 そう言って、ガウリイは来たとき同様、嵐のように去っていったのでした。  
 
「……さて、仕切直しといくか」  
 純白のドレスを纏ったリナをベッドの上へと放り出してそう言うと、  
ゼルはスプリングを軋ませてのし掛かってきました。  
 大きなベッドの上にふんわりと広がったベールの上に、やはり柔らかに広がった栗色の髪。  
 既に数え切れないほど躰を重ねているにもかかわらず、リナはまるで処女であるかのように、赤面して俯きました。  
 リナの唇を一度軽く啄み、その細い首筋にゼルは舌を這わせます。  
「ふっ……うン」  
 ドレスの襟ぐりをひきずり降ろし、露わになった白い乳房に頬を寄せました。  
 既に紅の先端はツンと尖り、彼にしてみれば、触れないでいる方が余程罪ではないかと思うほどでした。  
 小振りの乳房を両手で掻き集めるように寄せて、先端を交互に吸ってやると、  
リナの甘い、聞き慣れた喘ぎが彼の耳朶を打ちます。  
「や、ぁ…………ア……」  
 きつく張り詰めた乳首を舌の上で転がすと、薄いその躰がしなやかに仰け反り、  
ゼルの脚と交互に並んでいたリナの膝が軽く持ち上がって、彼の中心を刺激しました。  
 同時にリナの腰が持ち上がり、切なく揺らめくそこがゼルの膝に押しつけられます。  
 リナが我慢の限界であるのを受けて――ゼル自身も限界だったのですが――彼はまだ真新しいドレスの裾を酷く苦労しながら持ち上げて、ぐしょぐしょに濡らしたリナのソコを露わにしたのでした。  
 
「凄いな……今までで最高記録じゃないか?」  
「う、るさい……っ! あんたが、気持ちよくするからいけないんでしょーが……っ」  
 言う間にも中心から溢れてくる蜜はその水嵩を増し、リナの薄い茂みはすっかり濡れて、  
女の匂いを立ち上らせています。  
「……へぇ。気持ちいいのか」  
 膝上のストッキングに包まれたリナの片膝を持ち上げ、肩に担ぎ上げると、  
ゼルの長い指がリナの秘所に潜り込みました。  
「ひゃあッ!」  
 すっかり綻んで厭らしい蜜を垂れ流す花びらの中心に、  
鈍色の指が沈み込んでいく様は酷く淫猥で、ゼルは知らず、唇を舌で湿します。  
「あ、あ……ッ」  
 既に準備を終えていたリナのソコは簡単に男の指を3本飲み込み、指先が細かく内壁を刺激すると、  
彼女は声にならぬ声をあげ、シーツを掻きむしりました。  
「……ゼ……ル……おねが……もぉ……挿入て……挿入てよぉ……ッ!」  
 リナの嘆願に応え、ゼルはズボンをくつろげて、充血しきって痛いほど張り詰めた肉茎を取り出します。  
「………あ…………」  
 飛び出してきたソレは先走りでうっすらと濡れ、血管を浮き上がらせてびくびくと脈打っていました。  
先程リナが口で奉仕したときより、少し大きくなっているような気もします。  
 
 何度かリナの秘裂にソレを擦り付け、淫蜜を塗して滑りを良くしたソレをあてがうと、彼女の瞳が期待に潤むのが見えました。  
「いくぞ」  
 リナが頷き返すのも待たず、ゼルは自身を押し進めます。  
「……っ、あぁあああ……!」  
 一気に膣を大きく広げられ、同時に連続して襲いかかってきた悦楽の波に、リナは大きく仰け反り、声をあげました。  
 彼女の中に入ってきた肉茎によって押し出された恥蜜が、とっぷりと溢れ出します。  
 溢れた自身の蜜で他人のドレスが汚れることにすら気付かず、リナは内壁を圧迫するソレの感覚に、声も出せず戦慄くばかり。  
 ゼルはゆっくりと律動を始め、彼が動くたび、繋がった部分からは蜜の粘つく音が聞こえてきたのでした。  
 
「……ッは、ア……んんッ……」  
 滑らかな太腿にまで飛び散った蜜は、神聖な儀式に使われるべきドレスを汚し、しどけなく着崩れたドレスは本当に新婚初夜の花嫁を陵辱しているような背徳感があって、それはゼルの背筋を震わせます。  
 律動にあわせて慎ましく震える乳房を乱暴に掴んで転がせば、無垢の花嫁は娼婦の顔を覗かせるのです。  
 そんな淫れた貌をもっとよく見たくて、ゼルはリナの躰を抱き起こし、お互いの位置を入れ替えてしまいました。  
「ほら、リナ。ちゃんと見えるように、持ってろ」  
「………ふえ?」  
 やや呆けているリナにドレスの裾を自分で持ち上げさせると、白い肌と薄い茂みと、  
そこに飲み込まれていくゼル自身が見え隠れしていました。  
「よく見えるぜ……おまえさんの――――に、俺の―――が根本まで咥え込まれてるのが」  
 卑語に辱められ――リナがどうしても慣れることの出来ないもののひとつでした――彼女の頬が殊更赤く染まります。  
「ばか……っ!」  
 しかしいやらしい言葉を吐きかけられ、貶められると、余計にリナは躰が熱くなってきてしまうのです。  
「何を今更恥ずかしがってるんだ? これが欲しいって言ったのはお前さんだろう?」  
「うるさいッ……うるさいうるさい、この……っあ、あぁぁ!」  
 今もまた、恥ずかしい言葉にリナの肢体は激しく反応し、奥まで突き刺さったまま、  
只繋がっていた場所を擦り合わせたくて、リナの躰は勝手に動き始めてしまうのでした。  
 
 ぎっぎっ、とスプリングの軋みが早くなり、リナの膝に込められる力も、  
ゼルの突き上げる動きも、共に次第に強さを増していきます。  
「や……あぁっ……ふぅ、ッ………は……ッ・く……」  
 それに比例してリナの胸が慎ましくふるえ、汗ばんだ肌に髪がまとわりついて、  
しどけなく開かれた唇にその一本が引っ掛かっていました。  
「ほら……おまえさんが触るのは、ここだろう?」  
 先程散々弄くり、舐め回した胸へ、彼女自身の手を押しつけます。  
 触れた先端はまるで豆か何かのように硬くしこり、  
リナは自分が酷くふしだらな女になったようで恥ずかしく思いました。  
何より、好きな人とは言え誰かの言いなりになっているなんて。  
 しかし、一度そこに触れてしまうと、快楽に飢えたリナの躰は、  
飢えを満たすために、指を動かさずにはいられなくなるのです。  
「っは、あ……やっ……あッ、あ……!!」  
 ゼルガディスの腹の上で、リナがささやかな乳房を揺らしていると、  
ふと彼の視線が繋がり合っている部分に触れます。  
 リナがきゅっと目蓋を閉ざし、悦楽に浸っている隙を突いて、  
ゼルガディスは薄い茂みに隠された肉芽に、指を伸ばしました。  
「んぁあ……っ?!」  
 散々焦らされ、ようやく気持ちよくなってきたところに、許容量を超えそうな一撃。  
 突き上げられるたびに快感が嵩を増し、臨界に手が届きそうなのです。  
 そこへ持ってきて、ゼルガディスは指の腹で、リナの一番弱い場所を  
くりくりとこね回すのですから、堪ったものではありません。  
 
「ゃあ……ッ……そんな、ダメ、ダメだったらぁ……!」  
 いやいやと髪を振り乱しても、ゼルガディスの意地悪な指は悪戯を止めないどころか、  
リナの躰までもが彼女を裏切り、ゼルガディスの指がソコを弄くりやすいように、  
前方へと腰を突き出し、恥ずかしいところを彼に見せつけてしまうのです。  
「なんだ、ココを弄られるのはそんなに嬉しいのか?」  
 女(リナ)が何処を弄られれば気持ちいいのかなんて、充分に分かっている癖に、  
ゼルガディスはそう言って、もう片方の手でもってぷにぷにとした陰唇をくつろげて、  
余計に肉芽を弄くる手に力をこめます。  
 彼を涙目で睨み付け、悦楽まみれで無言の抗議をするリナの貌が、あまりにそそるものですから。  
 
 やがて限界が一層近くなり、ゼルガディスが突き上げる動きも、  
リナの腰も忙しなくなっていきました。  
 蜜の粘る音とリナの嬌声が、卑猥な音楽のようにテンポを速めてゆきます。  
「んんんっ……あ、あッ……だ、め、イっちゃう、イっちゃうよぉっ……」  
 既に断続していた音はひとつに繋がっているかと思うほどに早まり、  
リズミカルに上がっていたリナの嬌声は、もはや絶叫のよう。  
「イきたいんなら……イけよ……」  
 ゼルガディスに縋り付くように身を倒すリナの顔を上げさせ、  
胡乱な表情を楽しむように、ゼルガディスは笑います。  
「や……ひとりじゃ、ヤだぁ……あ、あぁぁあ……ゼル……ッ!」  
 自ら乳房を激しく揉みしだくリナの手に自分の手を重ねると、  
リナは堪えきれない風に、唇を押し当ててきました。  
「いっしょ……いっしょが、いいのぉ……」  
「………仕方の、ない、ヤツだな……ッ」  
 潤んだ紅の誘惑に逆らいきれず、ゼルガディスは思いきって、  
躰を突き上げる衝動に身を任せます。  
「ふ、ぅあ!…あ、あぁッ…あ、あ、あぁ・ン…や、はぁ…あああぁ…!!」  
「……………!!」  
 ぞくぞくと背筋を戦慄かせ、しなやかに背中を仰け反らせるリナの膣内に、  
声を押し殺すゼルガディスの白濁が、たっぷりと注ぎ込まれたのでした。  
 
 結局あれから4、5回はシたでしょうか。  
 流石に二人揃って力尽きたかリナ達は、すっきりした後は躰を拭うこともせず、二人揃ってベッドに潜り込んだのでした。  
「……ねーぇ、ゼル」  
 寒がりの猫のように、シーツの中でもぞもぞと身を寄せるリナが、あの甘い声で呼びかけてきます。  
 吐き出した液体やら汗やらで、二人とも体中べとべとでしたが、どちらも気にはしていません。  
「…………ん?」  
「人魚がすっごく数少ないの、どうしてだか知ってる?」  
 リナを引き取って以来、人魚の習性や性質に興味を持っていたゼルガディスは、  
既にその知識を充分すぎるほどに蓄えていました。  
 曰く、人魚は一度心に決めた相手と結ばれなければ、相手を殺さない限り  
海の泡と消えてしまう。それが人魚の数を減らす原因である、と。  
 そうゼルガディスが答えると、彼の胸に頭を寄せていたリナが、小さく頷くのが見えました。  
「……そ。だからね」  
「一生面倒見てやるよ」  
 ゼルはリナの言葉を汲み取って、吐き捨てるように――しかしそれは、照れ隠し――言いました。  
「王族と言っても日陰だがな。それでもおまえさん一人養うくらい出来るさ。  
 …………贅沢な暮らしはあまり出来ないが、それでいいんだろ?」  
 ちらりと横目でリナを見遣ると、リナの紅い瞳が、今にも泣き出しそうに潤むのが見えました。  
 ―――泣かれる?!  
 そう思った次の瞬間。  
「ゼル………っ! ありがとう!」  
 ゼルの視界が栗色に染まり、それが首っ玉にかじりついてきたリナの髪だと言うことに気付くのに、  
彼はまた少しの時間を要したのでした。  
 これだけ悦んでくれるなら、身を固めるのも悪くない。  
 なにより、リナと一緒なら、一生退屈はしなさそうだ、と、ゼルは男冥利に尽きるという貌で、リナの髪を撫でてやったのでした。  
 
 めでたしめでたし。  

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