小屋の中は、酷く蒸し暑かった。  
 リナとゼルが雨宿りするその小屋に、窓はない。否、窓そのものはあったが、破れた窓枠は外から木ぎれで固定されていて、本来の役目を果たせないままになっていた。  
 光明(ライティング)の明かりに照らされた山小屋は、ひとが二人居るには少し手狭だったが、それでも寝そべるくらいのスペースは確保できる。  
 些かかび臭さのある床板の上にマントを敷いて、その上で、ふたつの体を重ね合わせていた。  
「ン…………」  
 きつく尖った胸の先端をゼルの胸板が掠めただけで、リナの口からは意図せずして、鼻にかかった甘い声が漏れる。  
 自分の口からこんなにも甘い声が漏れるものかとリナは驚き、次いで聞かれただろうか、とゼルガディスを見遣った。  
「……やらしい声」  
 すぐ間近にある藍色の瞳が、愉悦を湛えてリナを見据えている。  
 視線に体の奥底まで、心の中まで犯し抜かれてしまいそうで。恥ずかしくて、顔を背けた。  
「ん、やぁ!」  
 ずぐんと腹の底を突き上げられる。体の位置が少しずれて、白いマントが更にしわくちゃになる。  
「見てろよ」  
 囁く声は熱い。  
 耳朶に絡む舌先も、ささやか胸を弄ぶ硬質の指先も、お互いの何もかもが。  
 
 おそるおそる、顔の位置を元に戻すと、ゼルの唇が落ちてくる。  
 柔らかく唇を啄まれ、差し伸べられた舌に応えて自分のそれを差し出すと、濡れた音が遠く聞こえた。  
 絡み合わせる舌の動きが激しくなる。やがてリナは自分から腕を伸ばしてゼルガディスの頭を絡めとり、繋がり合った腰を揺らめかせて続きをせがんだ。無言のまま。  
 鈍色の指先が、栗色の髪を掻き乱す。くしゃりと掻き混ぜられるのを合図に、また鈍い衝撃とそれに伴う快感が、リナの背筋を貫いた。  
「はぅんっ!」  
 既にもう何度か達した後だというのに、二人の欲望には果てがない。  
「あ、あぁ――――……!!」  
 金属の髪がちりりと肌を刺すのも厭わずに、リナは彼の頭を抱きしめた。  
 肌の触れたところが、擦れる場所の全てが熱く、痛みさえも心地よくて堪らない。傷が残るのも気にならない。  
「あッ、あァッ、いいッ……!」  
 呼吸が苦しくて息が荒くなる。ゼルの頭に回していた腕の片方を解き、無意識に自らの乳房を慰めた。  
「ああ……悪い……あんまりお前さんの膣内がいいもんで……そっちを忘れてた」  
 リナが愛撫するのとは別の乳首を、ゼルの舌がつつく。  
「んあぁん!」  
 ちりちりッ、と痺れるような快感が沸き上がり、リナは意識が灼けるような錯覚に陥った。  
 ゼルの舌が乳首を押し上げるたび、そして絡み合う腰が揺れるたびに、形のよい乳房がリズミカルに揺れ動く。  
 
「やぁ……っ、もう、い、イくぅッ!!」  
 いつも以上に短いサイクルで訪れる絶頂を、リナもゼルも堪えようとしない。  
 最初こそ調子を合わせていたが、次第にそれもままならなくなってきた所為だ。  
 すればするほど、体の感度が上がっている気がする。  
 絶頂の瞬間下腹が無意識に強張り、リナの胎内に治まったソレをきつく締め付けた。  
「っあ……あ!」  
 それが最期の一押しだったゼルも、低く喘いで欲熱をリナの胎内へと注ぎ込んだ。  
 リナはびゅくびゅくと跳ねながら白濁を吐き出すソレの感覚を躰の深いところで味わいながら、事の元凶である木箱を――どうしようもないとわかっていたが――涙で潤む眼で、睨み付ける。  
 
 木箱に焼き付けられた文字は「香料」と読めた。  
 確かに香料の類ではある。しかしその香料の中にも、人体に様々な効果をもたらすモノがある。  
 そして、こうしてこんな人里離れた山奥にうち捨てられていると言うことは、おおっぴらに売りさばけないモノだということだ。  
 つまり、違法である強力な媚薬の原材料が、その中にあったのである。  
 おまけに香料を詰めた瓶は相当時間も経っているらしく、幾つかは割れて中身が零れだしていた。  
 香料、と言うだけあって、零れだしたそれは小屋の中に充満し、知らずに雨宿りに来たゼルとリナは、思い切りその被害を被った、と言うわけだ。  
 
 効果は――――それはもう、サカリの付いた犬どころではない。  
 気が付けばリナは土間に立ったまま、段差に手を突いて尻を突き出し、服を脱ぐのもそこそこに繋がり合っていた。  
 小屋に入って僅か数分だというのに腿まで下ろされた下着はびしょびしょに濡れて、お終いにはゼルの白濁で汚されてしまう始末。  
 汚れたのはマントやズボンの裾程度だったはずが、すぐに着衣の全てを洗わなくてはいけなくなったほどだ。  
 今も小屋の隅で、二人の服が水滴を滴らせている。火炎球(ファイアー・ボール)で乾かす程度の意志力も維持できない。  
 
 そして、如何に一般人より体力の自身のあるリナやゼルでも、いい加減力尽きて居るであろう回数をこなした今でも尚、そのみだらな疼きは止みそうになかった。  
 達してからほんの少し経っただけなのに、余韻を楽しもうと触れてきたゼルの指に、彼女の躰は反応を示し出す。  
 太腿に押し当てられた彼の欲棒もまた熱を取り戻しつつあり、リナはちいさく笑うと、そっとソレに手を伸べた。  
 
 あれからもう、どれだけ経っただろうか。  
 窓は塞がれて、今が昼なのか夜なのかも分からない。  
 魔法の明かりも今はついえた。  
 ただ、屋根を打つ雨音が、今なお聞こえるだけ。  
 

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