目を覚ました時、あたしはまだ彼の腕の中だった。
どうやら、場所は気を失ってしまった書斎の地下室ではなく、ガウリイの寝室のようだ。
「気付いたみたいだな」
あたしを横抱きにしている腕の主にして、この屋敷の主でもある、ガウリイ・ガブリエフがほっとした声で言う。
「すまなかったな。ちょっと激しくしすぎた。なかなか目が覚めないから心配したぞ」
やさしい声で彼が言う。あたしは、それを聞いて、先程までの行為を思い出して赤面した。
そして、その行為に至るまでの事も思い出す。そうだ、あたしは・・・。
声や、外見とは打って変わって、コイツ、相当の曲者だった。
メイドと称して、盗みの為に潜入していたつもりのあたしの知らぬところで、しかもあたしがこの世で恐れてやまない
味方であるはずのうちの姉ちゃんと結託して、盗るべき宝と、このあたしを交換するといった、契約を結んでいたのだ。
そんな事実に驚愕する間も無く、知らされた地下室であたしは彼に押し倒され、あまりの激しさに気を失ってしまったのだった。
「・・おかげでまだあちこち痛いわ。」
呟いて俯いたまま動かないあたしの肩が、小刻みに震えているのを見て、彼が問う。
「・・泣いてるのか?」
「・・・・・」
あたしは答えず、膝に降ろした拳を握り締める。
「おい、リナ・・ぐがっ!!」
「泣いてなんかいないわよっ!!怒ってんのよっ!!!」
二発目のスクリューアッパーを炸裂させて、あたしは荒い息をつく。
今度は少しは効いたのか、仰け反り倒れるガウリイ。
「いててて・・」
「ふんっ!自業自得よ。よくも騙してくれたわね。なんであたしが人身売買みたいなことされないといけないのよっ!」
「人聞きが悪いなあ。人質と言ってくれよ」
「どっちにしてもいい意味じゃないじゃないっ!そもそもあたしはっ、」
「メイドとたばかって盗みに入りに来たんだよな?」
「ぐっ・・それは・・そのっ・・」
するどいツッコミを入れられ、言葉に詰まるあたし。
「ということは、リナも俺を騙そうとしてたってことだよな?じゃあ、おあいこだな」
もうさっきのダメージはどこへやらといった表情の彼が言う。
「な、なに言ってんのよっ!だってあんたは、あたしの目的を最初から知ってたってことでしょ?
そんなの騙したうちに入らないわよっ!そうよっ、だいたい姉ちゃんも姉ちゃんよっ!!」
「じゃあ、本当の事を知ってたら、おとなしく来たか?」
「う”・・そ、それは・・。いくらなんでもこんなことされるなんてわかってたら来なかったわよ。
乙女の純潔を奪ったばかりか、連日連夜・・・」
言いながら赤面してしまうあたし。
「その事については、あえて謝らない。何よりもリナが欲しかった。だから抱いたんだ。」
「な。ななな、何言って・・」
ガウリイの無茶苦茶でこっ恥ずかしい発言に、あたしの顔が茹で上がる。そんなあたしを再び抱きしめて、彼は続ける。
「本当だ。調査を続けるうちに、いつの間にか、リナのことばかり気になっていた。
リナは知らないだろうが、リナの家に行った時に、遠くから姿を見たこともあったんだぞ。
「えっ?うそっ」
「実際に、こうやって手元に置いて、欲しいから抱いた。そして、身体を重ねる度に好きになる。もっと欲しくなる」
ドキンと自分の心臓が大きく跳ねるのをあたしは感じた。そのまま急に駆け上がった動悸は止まらない。
彼にも聞こえてしまっているだろうか?そんなことをあたしは彼の腕の中で考えていた。
「リナは、嫌か?俺に抱かれるの」
拘束していた腕を少し緩め、あたしの顔を上に向けさせて彼が問う。な、なんて事聞くかなっ!こいつはっ
そ、そりゃあ、「嫌」ってわけじゃないわよ。だからって「好き」ってわけでもないわよっ、断じてっ。
そりゃあ、ガウリイの肌に抱かれて起きる朝は、最近はなんだか少し安心するようでもあるし、色んなコト
されてる時だって・・正直、ほとんどがとてつもなく恥ずかしくはあったけど、ものすごく気持ち良かった。
・・って何考えてんのよっ!あたしってばっ(赤面)
問いには答えずに、一人葛藤しているあたしの唇を、ゆっくりと降りてきたガウリイのそれが塞ぐ。
やさしいキスを落とし、唇を離すと、顎に人差し指を添え、親指で唇をなぞりながら、もう一度問う。
「嫌か?こういうことするの」
「・・嫌!・・・じゃないかも・・」
あたしの答えを聞いて、一瞬曇ったかと思うと、一転ぱあっと彼の顔に笑みが広がり、抱きしめられる。
「ちょ・・ガウ・・くるし・・」
「ああ、すまん。つい嬉しくて」
まるで子供のような彼の笑顔に、あたしはしょうがないなという気分にさせられ、口角を上げる。
そして、再びあたしたちの唇が重ねられた。今度は、さっきよりも深く、長く。
やがてあたしはいつものように、自分の身体を彼の手が滑るのを感じ、再びシーツへと身を沈めていった。
前言撤回。次の日、書斎でそう思ったあたしの手には、ガウリイとうちの姉ちゃんの間で交わされたという、
契約書がかさかさと音を立てていた。
いつものようにメイドの仕事として、掃除の為に入ったガウリイの書斎。
いつもはそこにいるはずのガウリイの姿が無いことをいいことに、前々から気になっていた事を確かめる為、
部屋にある金庫を開けてみたのである。そこにあったのだ。あたしの運命を決定してしまった、あの契約書が。
「あんのペテン師め~~~~~~!!!」
怒りに打ち震えるあたしの所へ、ちょうど彼が戻ってきた。
「あれ?リナ。掃除か?」
のほほんとした口調で言う彼の様子は、怒りに油を注いだ。つかつかと彼に詰め寄って、手にしていた物を
眼前に突きつける。
「どういうこと?」
「ん?これは、リナの契約書じゃないか。これがどうかしたか?」
突きつけられた契約書をまじまじと見ながら、全く悪びれた風も無く彼が言う。
「どうかしたかじゃないわよ!!よくも騙したわね!」
「何のことだ?」
あくまで惚ける気らしいガウリイと、怒り心頭のあたし。
「あたしがこの屋敷に来た時の夜よ。あんた・・その・・「夜の相手」も契約に含まれるって言ってたじゃない!」
「言ったっけ?」
こ~~い~~つ~~め~~(怒)
「言ったわよ!でも、そんなことこの契約書には一言も書いてないわよっ」
「でも、普通、メイドの契約にそんな項目あるはずないだろ?」
「う”っ・・それはそうだけど・・って何を人身売買まがいの契約交わしてる奴が今更そんな」
「それに、あの時、リナだって『承諾』したじゃないか」
「あ、あれはっ」
「それに昨夜だって俺とそういうことするのは嫌じゃないって言ったじゃないか」
「昨日は昨日、今日は今日よ!」
ここで彼がどう答えようと、あたしの純潔が戻るわけでも、契約が破棄されるわけでもないのだが、どうにも腹の虫が収まらない。
「ふ~ん」
そんなあたしを鼻で笑うガウリイ。・・何か企んでる顔だ。
「な、なによ・・」
思わず怒りを忘れ、怯むあたし。
「確か、契約書はこの中にあったんだよな?」
契約書を元に戻し、金庫の扉を閉めて、彼が言う。
「う・・いやあのそれはその・・。」
そうでした。
「まだちょっと悪い癖が抜けないようだな。おしおきしないとな。」
「ちょっ・・な・・おしおきって何よそれっ」
なんだか形勢逆転したような空気の中、じりじりと後ずさるあたし。にまっと笑った彼に引きつった笑顔を返し
「じゃっ!そういうことで!」
と振り向きざまその場から逃げようとしたあたしだったが、あっさり捕まってしまった。
両手は、彼によって後ろに回され、腰に付いていた小さいエプロンを解いて、それで一つに括られてしまった。
「ちょっとっ、何するつもりっ?」
「何っておしおき。口調が悪くなってるぞ」
「ぐ・・。あっ、やあっ、やめっ」
床にうつ伏せにされて、スカートの中に手を入れられ、下着を引き下ろされてしまう。
一旦離れて行ったガウリイが引き出しなどを探っているような音が聞こえるが、逆向きな為、よくわからない。
拘束されている手首も、どう縛られたのか、このあたしでも解くことは出来ない。
これから何をするつもりなのだろう?そう考えると、嫌な汗が背中を伝うのがわかった。
何かを見つけた様子のガウリイがこちらへと戻ってくるのがわかり、知らず緊張する。
ガウリイは、あたしを抱えあげると、部屋の一角に置かれていた重厚な造りの椅子へとあたしを座らせる。
今あたしの手を拘束しているエプロンは、いつも腰の後ろで大きくリボンにするタイプの物で、
手首を解けない様に縛ってなお、その長さを余していた。その余った部分が、ガウリイによって、椅子の背に括り付けられる。
更に、彼は先ほど引き出しから見つけたらしい紐で、あたしの脚を、その椅子の手すりへと固定してしまったのだ。
「いやっ、こんなっ・・解いてっ」
もちろん抵抗してはみたが、どれも虚しいものだった。結果、あたしの脚は大きく開かれる形となり、大事な部分も曝け出される
恰好になっている。
恥ずかしさに目を瞑り、顔を叛けるあたしだったが、「おしおき」はそれだけでは終わらなかった。
今日着ているのは、二種類あるデザインのひとつ。後ろのファスナーで脱ぎ着するものではなく、首元から、スカートの裾までボタンが付いているものだった。
ガウリイは、首から、お腹あたりまでのボタンを外すと、胸を覆っている下着をずり上げ、胸を露にしてしまう。
「これ、なんだかわかるか?」
床に置いてあった小瓶を手にすると、あたしの答えを待たず、その中身をもう片方の手に落とす。碧がかった半透明の液体で濡れた指が、胸の先へと触れる。
「な・・何を・・?ひゃんっ!」
ひんやりと、そしてドロリとしたその液体を胸の突起へと塗られて、声がまろび出る。
そのまま、二つの指で、こねくり回され、立ち上がったそれにも、液体を何度も塗られていく。
「ん・・ぁん・・んふぅ・・はぁ・・ん・・」
指の動きに合わせて、甘い喘ぎが零れていくのを止められない。もうすっかり彼に慣らされてしまった自分を再確認してしまう。
同じように、もう片方にも塗られる。なんだか、先に塗られた方が、やけに熱いような気がする。もしかして、これって・・?
「び・・やく?」
自然熱くなる吐息の中、至った思考が声となる。
「もう効いてきたか?ああ、そうだ。粘膜から吸収するらしく、かなりの持続性があるやつだそうだ。」
今度は答えが返ってくる。あんまり聴きたい答えでもなかったけど。
ガウリイは、もう一度小瓶を手にし、また、片手に取ると、今度は、あたしの足の方へ向かう。もしや・・。
「やっ、ダメっ!やめてっ!お願いっ!」
これから彼がやろうとしていることを察知して、悲鳴に似た言葉が口を突くが、ガウリイは全く聞き入れる様子は無い。
冗談ではない、胸の先でさえ、こんなにツライのに、あんなとこに塗られたりしたら、それこそおかしくなってしまう。
しかし、腕も脚も自由が利かないこの状態では、どうすることも出来ない。
あたしは、既に痛いほど敏感になっている場所からの疼きに耐えながら、これから齎されるであろう未知の感覚に、
絶望に似た思いを感じるしかなかった。
ガウリイは、まるで書類の束を片付けていく時のような、事務的な動作で、右手の人差し指に薬を取ると、
広げられ、露になった秘所へと塗りつけていく。その淡々とした様子も、あたしの心を落ち着かなくさせるひとつだった。
塗られた入り口の襞が、先ほどの胸の先よりも早く反応を始める。熱くて、むず痒いような感覚に、切ない吐息が濃くなっていくのを自覚する。
そして、やはりそれだけでは終わらなかった。片方の指で割り広げられた所へ、たっぷりと薬が塗られた指が奥へずぶりと挿し込まれる。
「はあうっ!んん・・はぁあっ・・あnんん・・」
とっくに濡れそぼり、待ち望んでいた刺激に嬌声が漏れる。指に塗られた薬をすり込む為に内部を蠢く指が気持ちよくてたまらない。
身体もそれを欲しているようで、自分からすりつくように、締付けていた。
「あんっ・・はぁ、はぁ、はぁ、ああんっ!っふぅ・・。ん・・ああん・・」
何度も同じ動作で、瓶の中の液体が、あたしの中へと送り込まれていく。そして、ただでさえ敏感な肉芽にも。
挿しいれられる度に、疼きは増し、薬を塗り込む為に侵入してくる指の動きだけでは、どんどん物足りなくなっていくのだった。
どれくらいの薬があたしの粘膜へと取り込まれたのだろう?蓋を閉められた瓶が、再び床にコトリと音を立てた時には、
もうあたしの身体の疼きは、耐え難いものになっていて、縛られた紐達が軋みを立てた。
薬を塗り終えたガウリイは、あたしの愛液に塗れた手を、あたしの内股に塗りつけ、摩りあげるようにした後、あたしに覆い被さるようにして、こう囁く。
「もうかなり効いてるみたいだな。欲しくて堪らないだろう?」
堪らないどころじゃない。気が狂いそうなくらいだった。意地悪そうながら、やっと笑みをみせた彼に向かってなんとか言葉を紡ぎだす。
「はぁ・・なんっ・・で、こんなことっ・・?っはぁ・・ん・・」
絶えず襲い来る疼きに首を振り、唇を噛み締める。
「言っただろう?『おしおき』だって」
「はぁ、、はぁ、、そん・・な・・」
「どうして欲しいか言えたら許してやるよ」
さわさわと太ももを撫でながら彼が意地悪く言う。
「う・・くぅ・・」
それだけで疼きは倍増したように感じられ、彼の目の前に晒された所から、新しい蜜が零れるのを感じた。
更に彼は、胸のあたりへ手を移すと、さわさわと丘の麓を撫で擦っていく。しかし、決して先へは触れてくれない。
「はぁ、はぁ、やっ・・あぁ・・・うぅ・・くっ・・」
服に隠されたままの所にも、ガウリイの手は潜り込んでいき、あたしの心を苛んでいく。
「んっ・・ふぅ・・ん・・はぁ・・いや・・」
中途半端な刺激は、耐え難い疼きに手を貸すものの、それを取り去ってはくれない。苦悶にあたしの顔は歪んでいた。
ガウリイの身体がなぞる身体を、じっとりとした汗が時折伝っていく感触が気持ち悪く感じる。
「んっ。くぅっ・・んっはぁ、はぁ、お願いっ・・」
「何をお願いするんだ?」
意地悪いままの声音でガウリイが応える。
「うっ・・く・・はぁ、っ・・もう、あたし・・」
「それじゃあ、わからないな」
首筋を舌でなぞりながら、ガウリイが言う。もう身体中が燃えるようだ。
「っはぁ、はぁっ・・。お願いっ・・」
「どうして欲しいんだ?」
尚も意地悪く問うガウリイ。あたしは限界を越えていたのかも知れない。
「はぁっ、うくっ・・いつもっ、みたいに・・ガウリイさまのモノをっ・・あたしにっ・・」
焦燥感に耐え切れなくなったあたしの目から、涙がぽろぽろと零れ落ちる。
そんなあたしを見て、ガウリイがふぅっ・・。と大きなため息を突いてこう言う。
「泣くなよ・・」
零れ落ちる涙を唇で拭っていくガウリイ。
「っひぃっく、こんなにしといてっ・・なによっ・・うっく・・」
「・・しょうがないな。」
言うと、ガウリイは、双丘の先に手を伸ばし、指で挟んで、激しく揺さぶる。
「あああああっっっ!!!」
それだけで、大きく背を仰け反らせてあたしは一気に昇りつめる。縛られている3本の紐が軋み、
あたしの胎内からは、濃厚な蜜が溢れ出して、既に床へと出来ていた愛蜜の水溜りを広げた。
ガウリイは、あたしの手足に結んであった紐を解くと、脚を持ち上げて、自身を一気に再奥へと突き立てる
「っはくっ!!!!------------っ!!!!」
声にならない悲鳴をあげて、先ほどとは比べ物にならない波に一気に呑まれて息が出来ない。空気を求めるように喘いで
あたしはしばし、意識を失った。
「ぅ・・ん・・ん・・ぁん・・はぁ・・ん、ん、イイ・・」
まどろみの中からあたしはすでに甘い喘ぎを漏らしていた。やっと齎された快感。でも、もっと、もっとして欲しい。
「はぁ、はぁ、キモチ・・イイ・・の・・はぁ・・もっと・・お願い・・」
「もっとどうして欲しいんだ?」
腰の動きは緩めないまま、ガウリイが言う。胸の頂も、彼の愛撫によって悦びの内にあった。
悦楽に浸りきったこの時のあたしは、恥ずかしげも無く、彼の問いに答えていた。
「んっ、あんっ、もっと、ああんっ、めちゃめちゃに、して・・。まだ・・足りない・・の・・はぁん・・」
あたしの言葉に応えるように、彼の律動が激しさを増す。捻り込まれ、突き上げられ、擦りあげられて揺さぶられる。
舌と指で胸の頂を、もう片方の指で、繋ぎ目の蕾を、そして、彼のモノで掻き回されて、あたしは何もわからなくなる。
閉めきられた書斎の中、やっと癒されかけた身体は、快楽に溺れながらも、次の行為を欲していた。
持続性のあるという薬の効き目は、まだまだ消えないようだった。
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