じゃらり。
少女の腕の鎖が音を立てる。
薄暗く、何も無い部屋。
窓も無ければ、扉も無い。
息苦しいぐらい、閉ざされた部屋。
そこに、少女はいた。
少女の白く華奢な腕に付けられた鎖は、その部屋の中心においてあるベッドとつながっている。
「・・・隠れてないで出てきなさいよ」
「あら、気づいてました?こんばんは」
「・・・」
少女は何も言わず、ただ彼を睨み続ける。
「凄い憎悪ですね?」
「誰のせいよ?」
「・・・僕のせいですか?それは失礼しました。」
さして悪びれた様子もなく、彼が言う。
「よくもそんなことが言えたもんね?早くこの鎖はずしなさいよ!」
「いくらあなたの頼みでもそれだけは・・」
「あんた、何が望みなの?こんな何も無い部屋に縛り付けて・・」
「簡単な事ですよ?ただ、あなたのその瞳を僕だけのものにしたくて、ね」
「っ!」
少女の持つ、真紅の瞳が更に紅く輝く。
彼に対する憎悪の感情を隠すことなく、彼にぶつける。
それが彼にとって食事を意味するのは少女も知っていた。
「・・・ガウリイは・・皆はどうしたの?」
「今もあなたを探してますよ。見つかるわけありませんのにね?」
「あんたは楽しいでしょうね?全て自分の思うがままにコマが動いて」
「そうですね。楽しいか、は別として。快感ではあります。」
少女はもう一度彼を睨みつけると、ベッドの端と自分の両手首とを繋いでいる鎖に目を向ける。
がしゃん・・じゃら・・
「引っ張っても無駄なのはあなたもよく分かったでしょう?傷がつきますよ」
「うるさい!」
「・・やれやれ」
彼が少女をそっと抱きかかえる。
少女が着ていた『布』をやさしく取り除き、少女に深く口付ける。
「・・んっ・・」
息苦しさのあまり、少女は声をだす。
抵抗は一切しない。
「ほら、手首から血が出てるじゃないですか?」
壊れ物を扱うかのような手つきで、彼は少女の手首に手を添える。
「駄目な人ですね。リナさん」
「・・・」
唇にキスをおとし、そのまま首筋を強く吸う。
「あなたは僕のモノなんですよ?勝手に傷付けては困ります」
「あたしはあたしよ。誰のものでもないわ」
「・・お仕置きが必要ですね?」
少女の身体が大きく反応する。
「ん・・っ・・はぁ・・んっ・・」
「僕は誰よりもあなたの身体の事を知ってますよ?あなた自身よりも」
「やぁっ!!ん・・あっ・・あぁ・・ん」
彼の手が少女の秘所に触れる。
指を入れて、動かすと少女は彼の思うとおりの反応を返す。
その指の数を増やしても、抵抗も無くすんなりと中に入る。
「さすがに、そろそろ慣れてきたみたいですね?」
「んぁっ!ひゃっ・・!!ん・・ふっ・・!!」
「いれますよ?」
彼の『モノ』をゆっくり少女のなかに入れる。
「上手くなりましたね?リナさん?」
「ん・・やめ・・っ・・てよ・・・んっ・・はぁ・・っ」
少女の身体が反応すると、少女の手首の鎖が音を立てる。
「くぅ・・んぁっ・・やっ・・は・・あぁっ!」
彼が腰を動かすと、少女は素直に反応をする。
少し前・・彼が此処に少女を連れてきたばかりの頃は、少女は必死で声を出さないようにしていた。
でも、それも無駄な事。
彼を喜ばせるだけ、と少女は気づいた。
「あっ・・んん!くっ・・やぁっっ!」
そろそろ限界なのだろう。
少女の声が荒くなってきたのを聞いて、彼は思う。
少しずつ、腰の速度を速める。
この行為をしている時の少女の瞳はいつもの何倍も美しい、と彼は思う。
いつもの輝きとは違った『何か』がある。
『これが、女性の持つ輝きってやつなんでしょうかね?』
彼が少女の涙をためた瞳をみて心の中でつぶやく。
「んぁ!!ひゃっ・・んん!!駄目・・っもぉ・・!!」
「いいですよ?イってください?」
「んん!!ふぁ・・ああぁぁっっっ!!!」
彼女の身体が大きく反応する。それと同時に鎖が大きな音を立てる。
「やっぱりあなたの瞳は、『この時』が一番綺麗ですね」
「・・・」
シーツを掴み、うつ伏せになって少女は何も答えなかった。
「また来ますね。今は寝てください」
最後に少女の頭を優しく撫でて、彼は部屋から姿を消す。
彼の気配が消えた事を確認して、少女はゆっくり起き上がり、いつの間に置かれたのか
ベッドの上にある、服に手をかける。
「笑わせないでよね」
誰にとはなしに少女が皮肉の笑みをみせる。
「瞳?あぁ、そう・・あんたは結局『あたし』はいらないんじゃない」
少女の頬に、涙が流れる。
「こんな瞳あげるわよ・・っ・・瞳が無くなったら、あたしになんて興味無いくせに・・っ」
側にあった枕を掴み、彼が最後に立っていた位置に投げる。
「こんな瞳・・っ!」
スカートの裾を強く握り締める。
「少しぐらい・・『あたし』を見てよ・・っ・・何で・・あたしじゃ駄目なのよぉ・・っ」
薄暗く、何も無い部屋。
窓も無ければ、扉も無い。
息苦しいぐらい、閉ざされた部屋。
その中心には、少女を繋ぐためにベッド、そして、少女自身。
「ゼロス・・っ・・愛してる・・っ」
少女の声を聞いた者は誰もいない。