――どれぐらいの時間が経ったのだろう?
夜中に目覚めたら汗をかいていたので、一人で川へ水浴びに来たのだ。
機嫌良く汗を流し、体を拭こうとしたその時…
「こんばんわ、リナさん」
「…ゼロス!?」
近くの平たい岩に、まるで安楽椅子に座るかのように優雅に、ゼロスが座っていた。
助けを求めようと叫んだが、こいつが何かしたのだろうか、助けはなかった。
野宿の場所からここは近い。なのに見張りをしていたガウリイも来なかった。
それから大した抵抗も出来ないまま、両手首を何かで縛られ、魔族の指にずっと内部を蹂躙され続けている。
「っはぁ…、あ、あっ、ああああっ!」
もう何度目の絶頂だろう。
しかし何度果ててしまっても、意識を手放すことが出来なかった。
その上、だんだん敏感になってくるのだ。
絶頂を迎えるごとに、彼は訊いてくる。
「どうですか?まだ、私のものになる気にはなりませんか?」
また彼は訊いた。あいかわらず、指を中に入れたまま。
さざ波のように襲ってくる快感に、思わず身を捩る。
この手首を縛っている物は何なのだろう?手の動きは完全に封じられているが、縛られている痛みは感じない。
動けない手を必死に動かそうとしているあたしの様子を見て、ゼロスが口元に余裕をたたえる。
指だけで翻弄されるあたし、余裕を見せる彼。
この状況が悔しくて、あたしは精一杯強がることにした。
「…こ…の程度じゃ…っ…あんたの、もの…ならない、から…」
涙目で言っては何の効果もない。
けれど自分から求めるつもりはなかったし、おとなしく快感に流されたくはなかった。
ましてや、こいつのものになるなんて。
たとえ、この魔族を身体が欲していても。
「おやおや、これだけして差し上げているのに…」
そう言いながら、ゼロスはあたしの中に入っている指を曲げ、中を引っ掻くようにして刺激した。
「あっ…いやぁ…っ!」
思わず叫んでしまう。
しかし、その声を無視して、動作を激しくしていった。
「あ、あっ、ふあ…!!」
身体が反り返る。全身があたしの意志を裏切る。
理性が否定する言葉を、口が勝手に言いかけたその直前――
ずっとあたしの中をかき回していた指が、不意に抜かれた。
「あ…!?」
「…夜明けですね」
言葉を失っているうちに、手首を解かれた。
自由を取り戻した両手を、なぜだか判らない理由でゼロスへと伸ばそうとしたが、感覚を失った手は動かなかった。
「…ゼロス…」
「残念ですが、時間切れですね。…またお会いしましょう」
その声が聞こえた瞬間、あたしは意識を失った。
…気がつくと、あたしは服をきれいに着た状態で、岩――ゼロスが座っていたものだ――に寝かされていた。
頭がぼんやりする。体が言うことを聞かない。
しかし、このままここにいるわけにはいかない。
疲れた体を引きずるようにして、あたしはみんなが寝ている所へ戻った。
見張り役のガウリイが、座ったまま珍しく眠っていた。
やっぱり、ゼロスは助けが来ないように何かしていったようだ。
体が重い。少し眠りたい。
もう夜が明けているんだから、どうせすぐ誰かが起こしてくれる。
『…またお会いしましょう』
まどろみの中でゼロスの言葉を思い出す。
「また」と彼は言った。
ねえ、「また」って…いつ…?
答えが出ないまま、あたしは眠りに引きずられていった。