それは、ガウリイと別行動になり、再び落ち合う予定で訪れた、とあるリゾート地に立ち寄った時の事。  
「野良タコぉ?」  
思わず聞き返すあたしに、依頼主である町長が神妙そうに頷いて、こう言う。  
「はい。実は数ヶ月前までこの岬の外れに住んでいた魔道士が、いつも傍迷惑な研究を繰り返しておりまして、とうとう怒った住民達に追い出されてしまったのですが、  
出ていく時に、腹いせに自分が実験で作り出した巨大タコを放っていったんです。そいつがもう性質が悪くて…あのー聞いてらっしゃいますか?」  
 
せっかく待ち合わせがてら、先の依頼で入った報酬で、のんびりリゾート気分を楽しもうかと思っていたのに、実際来てみるとその野良タコのせいで、砂浜は前面閉鎖。  
これはひとまずやけ食いせずにいられるか。という純然たる乙女心というものである。  
決して食い意地が張っているなどと言うべからず。そんな所に、どうやら一石二鳥の依頼と、まずはちょうどいいタイミングで出会った記念にここの払いも依頼主持ちとなれば、当然食欲も増すというのが、人としての道理である。  
「ん?はひひょぶ。んぐ。だいじょぶ聞いてるわよ。あっ!すいませーん!ここBランチ三つ追加ね〜!」  
余りのこの食堂のご飯の美味しさと気前のいい前金、退治後にはリゾート施設使い放題などというのが、決して太っ腹な条件ではなかったことを、この時のあたしは知る由もなかった。  
 
 
白い砂浜、その向こうに連なる、青い海と空。  
照り付ける太陽は閑散としたリゾートビーチをじりじりと照らしていた。  
奴の姿はまだそこには無く、あたしはだだっ広い砂浜の一角、パラソルの下で、一人リゾート気分を味わっていた。  
あたしの格好は暑苦しいいつもの魔道士姿ではなく、ワンピースの水着姿である。  
野良タコの奴は、ある程度の知能があるらしく、客らしい人間がいる時だけしか姿を現さないらしい。  
まあ、このまま現れなくても、皆恐れをなして近付かないせいで、ドリンクなんかを持って来てくれるボーイさんがいないというのを覘けば、この貸し切り状態をしばし楽しませてもらうのも悪くない。  
…しかし、来ない。陽は既に天頂を過ぎ、じりじりと照りつけていた。パラソルの下にいるとはいえ、暑いことこのうえない。奴の気配らしきものも感じられない。  
「こんな時にガウリイの動物的な探知能力があると便利なんだけど」  
などとつぶやいてみても、そのガウリイも一人で受けた依頼に手こずっているのか、合流地点であるこの町には姿を見せていない。  
まあ、今無いものをどうこう言ってもしょうがないし、せっかく目の前にある貸切の海を楽しまないのも勿体無いというものである。偵察とおびき寄せも兼ねて、あたしは誰もいない海へと近づいていった。  
「うーーん。やっぱりいないみたいねー」  
海はかなりの透明度なのだが、見渡す限りには、特に害のある生き物は見当たらないようだった。話によると、相手は相当の大きさ、ショボイ小屋ひとつくらいはあるらしいので、近くにいればすぐわかるはずだ。  
あたしはもちろん辺りに気を配りながらも、少しずつ波の中へと進んで行ったのだった。  
深さは、まだ十分足がつく深さまで来たものの、それらしい影も形も見当たらない。周りの魚達も実に穏やかなものである。  
しかし、流石にこれ以上深い所まで行ってしまうと、いざ敵が現れた時には、こちらにとっては不利になってしまう。  
「これじゃあ、現れるまで気楽に楽しむってのも難しいわね」  
そう言って、溜息ひとつ吐き出したあたしの脚に、ちくりと小さな痛みが走った。  
「何?ってえっ、クラゲ?なんでこんらりきに…れ」  
舌がもつれて、膝がかくんと力を失い、倒れこむあたしの視界に広がる白い砂の中、砂と逃げ行く魚達を蹴散らすようにして、そいつはやっと現れたのだった。  
 
「っかはっ…ごほっ・・」  
少し飲んでしまったらしい水をあたしが吐き出したのは、巨大タコの何本もの脚に吊り上げられた状態だった。両手、両足共それぞれ奴の吸盤だらけの脚にX字型に拘束されて、全く身動きが取れない。  
しかも、先ほどのクラゲの毒の痺れのせいで、呪文の詠唱もままならない状態では、全くなす術が見つからなかった。  
『このままタコの餌なんてっ、何かいい手は。』  
そんな考えを遮るかのように、奴が新たな動きを見せた。  
「なっ、やめ…んんっ!んはぁ…。」  
手足を縛っている以外の数本の脚が、水着の中へと侵入し始めたのである。それも、侵入したそれらは、吸盤などを使って胸や股間を執拗に攻めてくる。  
『人間をエサにしてるわけではないの?』  
ぐにゅぐにゅ、ぬるぬると水着の中で動き回る気色悪さを感じながら、あたしは、依頼主である、町長の言葉を思い出していた。  
町長の話によれば、この巨大タコは、魔道士が創り出した生物らしい。とすると、何か捕食以外の目的を持った生物という事も考えられる。でも、一体…?もしや。  
ある一つの嫌な考えに思い至った時、まるでそれを肯定するかのように、タコが変化をみせた。  
あたしの目の前、胸の間から潜り込んでいる脚の吸盤から、白い液体が湧き出して来たのである。  
「はう…う、んっ…」  
脚達は、その液体をあたしの身体にまるですり込むように、蠢いていく。あたしの脚の間から潜り込んでいるタコ脚からも、その液体は湧き出しているようだ。  
ぬめるような感触が、下腹部にも感じられた。そして、次第に異様な火照りを感じていく自分の身体に気付いて、あたしはその液体の正体を知ることになった。  
『催淫剤?まさかこのタコ、人間と生殖能力が?』  
恐ろしい考えにあたしは総毛だった。冗談ではない。タコの子供を孕まされるくらいなら餌になった方がまだマシよーーーっ!  
なんとか拘束を解こうと試みるが、状況は良くなるどころか悪くなったようなもので、すり込まれた液体のせいで、身体は一層不自由な状態になっていた。  
 
「はぁ、はぁ、はぁ。あぁっ!あうっ、」  
まるで人間の身体を知り尽くしているような動きで、タコの脚達は、水着の中のあたしの身体を愛撫していった。両胸にそれぞれ取り付いた二本の脚は、時折液体を吐き出しながら、  
器用に胸を揉みあげるように蠢き、硬くなってしまった頂は吸盤の一つに、吸いつかれては放される。  
脇の部分から潜り込んだ脚達は、背中や腹を調べ上げるように絶えず蠢いていた。  
股間から潜り込んだ数本は、臀部を、他の一本は、こちらも催淫剤と思われる液体を塗りつけるように、スリットを、巡回していた。  
そして他の一本が、前の部分を分け入り、肉芽を探り出すと、これも液体が滴る吸盤で攻め立ててくるのだった。  
「ああっ!!やっ、らめっ…うくっ。」  
敏感な部分を攻められて、あたしの身体は意思とは反対に身悶えてしまっていた。気を抜けば、気味悪いはずのタコ脚達の蠢きに身を任せてしまいそうだった。  
いや、もうこの時既に、身体中を這い回る感触は、気持ちよくて堪らないという感覚に代わりつつあったかもしれない。ただ、これからされるかもしれない事を思うと、それを認めたくなかった。  
そんなあたしの気持ちとは逆に、身体は徐々に開かれつつあった。身体は火照り、齎される動きに併せて腰がくねってしまっていくのを止められなくなっていた。  
なんとか抗おうと食いしばる口から漏れる吐息もつい高いものになり、時折抑えられずに嬌声を漏らしてしまうのだった。  
「ん…ふぅ、んはぁ、はぁ、んっ!……っはぁ、っああんっ。」  
そして、何度もじわじわと責め続けられ、ひくつく秘所からは、内部から蜜が溢れ、奴の発する液体と、ぬるぬるとした粘液と交じり合い、水着の布地から滴っていた。  
身体中を弄られ、愛撫されるものの、それは執拗ながら、じわじわとしたものであり、あたしは常に燻るような状態の中に置かれていた。  
どんどん身体中の熱さは増していくものの、達する直前になると、その動きは止まったり、他の場所へ移ってしまうのだった。  
身体の奥が熱い…。なんとかして欲しい。至ってはいけない考えがあたしの心をじわじわと侵食していき、それに応えるかのように、再び変化が起こった。  
ピタッと全ての脚がその動きを止めたのである。  
 
「?はぁ、はぁ、な、に?」  
訝しげなあたしの目の前で、胸を攻め立てていた二本の脚が、内側から水着の前の部分の布地を縦に引き裂いていく。  
「あっ、やめっ、やああっ!」  
びぃぃぃぃっ  
布地は一気に脚の部分まで裂け、ワンピース型の水着は、肩や脇、背の部分を隠してはいるが、身体の前の部分は、胸から股間のまで傾き始めた陽の光の中にさらけ出されてしまった。  
さっきまでは、水着に隠されていた動きが生々しく目の前に晒される事にもなり、あたしはそのいやらしさに思わず赤面する。幸い誰も見ていないとはいえ、恥ずかしい事には変わりない。  
露になった素肌の上では、大小幾本ものタコ脚が、吸盤から白い液体を吐き出しながら、這い回っていた。さっき水着を引き裂いた二本も、また胸へと戻っており、ぐにぐにといやらしい動きであたしの胸を弄んでいた。  
「あぁ…いやぁ…」  
先程までと同じ感触に、目に入る動きとが、当然だが重なって、自分の置かれている状況が更に実感されて、あたしは呻いた。腹部には、別の脚が張り付き、  
股の間には、細めの脚が前の方に取り付き、小さく蠢いていた。大事な部分は直には見えないが、布に制限されなくなったこともあってか、益々動きが大胆になってきたように感じられた。  
「はぁ、はぁ、ああん、はぁ、っぅんっ!はぁ、はぁ」  
火照る身体を潮風が撫でていくが、それを冷ます助けには全くならなかった。身体の奥から発せられる乾きは、滴る蜜と反比例して、増して行くばかりで、  
その渇きも、もう限界に思えた頃、新たな脚が、あたしの前に出現した。  
 
海の中から新たに出現したそれは、今までの他のタコ脚とは違い、周囲を全て吸盤で覆われていた。先端にも大き目の吸盤の様な物が付いている。  
ついに、来た…。あたしの背筋が、身体からと心からの相反する思いでぞくっと震えた。そして、推測した通り、その異形の物は、あたしの脚の間を目指して進んで来る。  
「い、やっ…。やだっ、ガウリイっ!!」  
あたしの叫びは空しく人気の無い海辺へと消え、さっきまでスリットを往復していた脚が退いた場所へと、そいつはあてがわれ、そしてぬめりきってしまった奥へと潜り込んできた。  
ぬぷ、ずぷっ  
「あううっ、っはぁあんっ!」  
絶望感とは裏腹に、やっと訪れた感触に身体が仰け反り、軽く達してしまう。侵入してきたものは、吸盤で内側の襞に吸い付くようにしながら、更にどんどん奥へと潜り込んでいった。  
焦らされすぎた身体は、自らもそれを呼び込むように動き、締め上げている。  
『こんなヤツに犯されるなんて、なんとか阻止しなくちゃいけないのに。』  
しかし、何の抵抗も出来ないまま、とうとうそいつは最奥へと到達を果たしてしまった。ぎちぎちと締め付ける自分の身体のせいで、その実態が生々しく感じられて、あたしは身震いする。  
『ヌンサの時は、「卵を産め」だったけれど、こいつは、人間の体内に卵を産み付けるように作られたんだろうか?』  
「いや!お願いっ、やめてっ!!」  
自由にならない腕や脚を振りほどこうと暴れるが、変わらずそれはびくともしなく、代わりに内部に挿し込まれた触手めいた脚が動き出す。  
「ふあっ、あふっ、んっ、はぁ、あうんっ、やぁ、んっ、んんっ…」  
表面の数多くの吸盤が、内襞に吸い付きながら、出て行き、そしてまた吸い付きながら潜り込んで来る。先端の部分は、潜り込む度に最奥の壁を叩き、あたしの背を仰け反らせた。  
「あああっ!!だめぇっ!!っっはぁぁあんっ!!」  
何度目かの抽送の後、あたしは大きく身体を仰け反らせて絶頂を迎えてしまった。  
 
「っはぁ、はぁ、はぁ…!!」  
脱力して荒く息をつくあたしの奥へ潜り込んだままのそれに、あたしは何か違和感を感じた。でも、恐れていた「何かを送り込まれる」感じではなく、逆に「何かを吸い取られているような」  
これは、エルメキアランスで攻撃を受けたのに近い…。  
もしかして、このタコ、人間と生殖を行うのではなく、精神力を吸い取る…?  
「っうんっ!はぁんっ、あっ、またっ、ああっ」  
イッて間もない身体に、再び身体中の脚達の攻めが始まり、思考が中断される。そしてまた押し上げられていく。  
どうやらサキュバスとのキメラらしいそのタコもどきの動きは、どんどん激しさを増していき、胸を、身体中を這い回る脚達は、様々な動きをみせながら、焦らすのではなく、攻め立てる動きをみせ、  
抽送を繰り返す異形のものも、吸盤の一つ一つが意思を持っているかのように、内部の敏感な部分を狙って吸い付いてくるのだった。  
「はうんっ、ああんっ、あっ、あっ、あっ、はぁ、う!っん。ああ、だめ…また、来ちゃうっ…。−−−−−−っ!!」  
あたしのあそこが、また悦びに身悶えるようにそいつを締め付け、泡立つ様になってしまった結合部から、新たに蜜が溢れ出す。そしてまた、最奥まで突き進んた異形のものによって、あたしの精神力が吸い取られていく。  
少しの間を置き、ぐったりとしたあたしの中で、そいつは動き出し、あたしの身体が飽きもせずそれに応えていく…。  
すっかり陽が落ちた頃、町の人に事情を聞いて駆けつけたガウリイに助けられた時まで、それは繰り返され、  
あたしは精神力を吸い尽くされて殺される事は無かったものの、何度もイカされてしまったのだった。  
 

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