「えっと・・・・・・リナ、何かはえてるぞ」  
 ガウリイは訪れたリナの部屋で奇妙なものを見た。  
 リナはと言うと仏頂面で窓の魔道書に目を通している。  
「・・・・・・・」  
 くいくい  
 それは柔らかくリナから直接はえているらしい。ガウリイは引っ張ってみてそう確認した。  
「本物か?」  
「引っ張んないでよ」  
 リナはガウリイの手を振り払うとまた魔道書に没頭する。と言うより必死に呼んでいる。  
「なあ・・・それ猫の耳だよな?」  
「―――そうかもね」  
 リナの頭にはえているそれは確かにネコの耳だった。柔らかい栗色の毛に包まれたそれは時折ピクピクと動いている。  
「なあ、どうしたんだ?」  
「―――指輪をつけたらこんなんなったのよ」  
「指輪?」  
 ガウリイは小首を傾げて聞き返す。  
 確かにリナの指には見慣れぬ銀の指輪が輝いている。  
「盗賊いぢめの戦利品」  
「お前なー。やめろって言ってるだろ」  
「うるさいわね」  
 説教をはじめようとしたガウリイにリナは頬を膨らませる。耳もそっぽを向いてしまう。  
 
「それで、指輪のせいでそのネコミミがはえたのか?」  
「・・・・・・正確には耳と尻尾よ」  
 リナの言葉にガウリイはまじまじとリナを見た。  
「尻尾?」  
 性格にはリナのお尻のあたりを。  
 ガウリイはリナに近寄るとおもむろに手を伸ばした。リナの腰を抱えたかと思うと片手はリナのズボンを下着ごと引き下ろす。  
「お、ホントだ」  
「なっ!」  
 ぷりっと出されたリナのお尻には耳と同じく栗色の尻尾がはえていた。  
「何すんのよっ!」  
 リナの怒りと同時に尻尾がぴんと立つ。  
 それをガウリイはおもむろに掴む。  
「んやっ!!  
 離しなさいよっ」  
「おもしろいなーこれ」  
「はーなーせー!!」  
 暴れるリナをものともせず、ガウリイはネコミミシッポのリナをものめずらしそうに弄ぶ。  
 
 そうしてしばらく。  
 
 ベッドの上にうつ伏せにされてそのままシッポやらミミやら弄られていたリナは今ではもうすっかり無抵抗だった。  
 散々暴れたのだが、自分よりも随分体の大きいガウリイに上に乗られると逃げようが無かった。  
「ふえー、生え際見てもやっぱり直接はえてるなー」  
 
 ガウリイは今リナのお尻をまじまじと見つめていた。  
 シッポの付け根をくまなく見て、指でたどる。  
「うひゃっ」  
 くすぐったそうにリナが声を上げるが気にしない。  
 そして今度はミミを弄る。  
「これ、聞こえてんのか?」  
「聞こえてるわよっ」  
 ガウリイはリナのピクピク動く耳元で喋ったり息を吹きかけたりする。  
「んっもうっ」  
 すると突然ガウリイがリナから離れた。  
 軽くなった体を起こして、リナはガウリイを見つめる。  
「じゃ、これくらいにしとくか」  
「え・・・・・」  
「んじゃ俺部屋に戻るな」  
「待って」  
 このまま放って置かれたんじゃたまらない。  
 リナはガウリイに弄りまわされて体が火照ってきていた。  
「ん?」  
「お願い・・・・・・ガウリイが欲しいの」  
 恥ずかしそうに懇願するリナ。その瞳は潤みながらもガウリイをしっかりと見据えている。  
「へえ?」  
 ベッドに身を起こしたリナのもとにガウリイが戻ると、リナは手を伸ばしてガウリイの服を肌蹴させる。  
 そうして上着を脱がせて、次は下。  
「ぁ・・・」  
 脱がせて現れたガウリイ自身にリナは切ない吐息を漏らした。  
 触れようとしたリナの手をガウリイが掴む。  
「人を脱がせて自分は?」  
 ガウリイに言われて、リナは服を脱ぐ。お尻だけをだしていた格好からガウリイの視線から隠すようにしながらも全裸になる。  
「ね、来て・・・」  
 恥じらいながらも艶かしく誘うリナに、ガウリイは笑みを浮かべる。  
 
「な、猫みたいに舐めてくれよ」  
 ネコのそれとなった耳元に低く囁かれ、リナの顔の前に突き出される。  
 リナは少しためらいを見せたが、それに指を添えて舌を這わせた。  
 リナが触れるたびにビクンと震えて大きくなるそれを愛しく感じながら、リナは次第にその行為に集中していく。必死にそれを舐め、くわえ、奉仕する。  
「んっ、ふ・・・ふ・・・んんっ」  
 小さな口で大きなガウリイのものを少し苦しげにくわえるリナ。そのリナの髪をガウリイは優しく梳いてやる。  
 そうしてすっかり大きくなったそれから口を離すと、リナは熱に浮かされたような瞳でガウリイを見あげた。  
「お願い、もう、ちょうだい」  
「しょうがないな、ほらこっちにお尻向けろ」  
 リナはガウリイの言葉に嬉しそうに笑い、そして少し恥ずかしそうに四つん這いになってガウリイの前にかわいらしいシッポの揺れるお尻を突き出した。  
 その下に覗く秘所は触れていないはずなのに既にとろとろに溶けている。  
「あ・・・早く」  
 期待を込めた瞳でガウリイを見つめるリナ。  
 ガウリイはその腰を掴むと片手で揺れる尻尾を弄ぶ。  
「ん、あん・・ふあ・・・がうりい」  
「シッポも感じるんだな」  
 ガウリイはそう笑うと、リナの望むものを押し付けた。その硬さと大きさにリナが息を飲む。  
 くちゅ、と湿った音を立てて入り口にあてがわれる。リナは期待にそこがヒクついてガウリイを飲み込もうとしている。  
「ん・・・あ・・ああ」  
 ずず、と少しずつ入ってくる。その圧迫感にリナは恍惚とした表情で声をあげる。  
 奥まで入ってお腹を突き上げられると満足げな吐息を漏らした。  
 するとガウリイはそれまでとは一転し激しくリナを攻め出した。  
 音がなるほど肌を打ちつけ、喘ぐリナをかき回す。腰を掴んでいた手はいつの間にかリナの形の良い胸にまわっている。  
 リナに覆い被さるようにし、背中に舌を這わせる。  
「はあん・・・あっ、ああっあん、がうりっ」  
 リナはガウリイと体の間に挟まれてぐりぐりと圧迫される尻尾にも快感を感じていた。  
「ふああ、あっ、あうっ・・あん、あひっ」  
 喘ぎ続けて、口を閉じることも出来ないリナはよだれを垂れながら自らも腰を振る。  
 そうしてしばらく――リナは一際大きな声を上げて体を痙攣させた。  
 
 
「う・・あ」  
 目をさましたリナは、身じろぎして体の違和感に眉をしかめた。  
 自分をしっかりと抱きしめて眠るガウリイを認めて、深々と溜息をつく。  
 いまだ自分の中に居座るそれを引き抜こうと、腰を動かす。しかし、あと少しと言うところで自分の背中に回っていた腕が素早く動きリナの腰をつかんで引き戻した。  
「―――っ・・ひゃあぁっ!!」  
 大きさと固さを増したそれに不意打ちにつきたてられてリナは仰け反った。ネコミミとシッポも同時にぴんとたつ。  
「おはよう」  
「〜〜〜〜〜っ何考えてんのよっ!!」  
 腰をぐいぐいと押し付けてくる男にリナは思い切り爪を立てて叫んだ。  
「何って・・・なあ?」  
「なあじゃないでしょっ、やぅ、シッポやだっ!!」  
 腰を掴んでいた手が片方すうっと滑って栗色の毛に包まれたシッポをつかんだ。ガウリイはそのままリナのシッポをしごく。  
「へえ?シッポってそんなに気持ちいいのか?」  
「やめっ」  
 絶妙な力加減で触れてくるガウリイにリナは瞳の端に涙を浮かべながら逃れようとした。  
 しかしそれとは裏腹に、体はガウリイを咥えこんだまま締め付ける。  
「んやっ・あっああっ・・・・・にゃあぁっっ」  
 結局リナは朝からしっかりと愉しんでしまうことになった。  
 
「んもう、早く元に戻る方法見つけなきゃなんないってのに!!」  
 太陽も中天近くに登った頃に、ようやく解放されたリナはいつもの魔道士ルックに何とか着替えた。  
 シッポはズボンの上から出し、マントで隠す。耳はフードを被って。  
「リナだって気持ちよさそうだったじゃないか。  
 あんなに乱れて・・・」  
「うるっさいっ!!」  
 街中でとんでもない事を言い出すガウリイにスリッパをお見舞いしてリナはさっさと歩き出す。  
 目指す先は魔道士教会。  
 昨夜の盗賊が以前魔道士教会からも盗みを働いていたため、なんらかの手がかりのある可能性は高い。この指輪が魔道士教会に保管されていた、ということも充分にありうるのだ。  
 そう考えたリナは、調べものにはどう考えても邪魔なガウリイを置いて先ほど人に聞いた道を突き進む。  
 
「ああっ、なんて素晴らしい!!」  
 魔道士教会の一室で、感嘆の声を上げる男。  
「で、コレどうやったら戻るの?」  
 大きなメガネの向こうから舐めるように見つめられながら、リナは不機嫌そうに訊ねる。コレとはもちろんネコミミのことである。  
 しかし男はそんなリナの言葉を聞いている風もない。  
「ふう、やはり僕の研究は完璧だった!  
 こんな完璧にネコミミとシッポをつけることが出来るなんて!!」  
 なにやら自画自賛だ。  
 リナの手にはまったままの指輪を作ったのはこの男だと言う事はあっさりとわかった。というのも、妖しげな研究に打ち込む変態として有名だったのだ。  
 ネコミミについて突然熱く語りだす人らしい。人生の全てをネコミミにかけているといっても過言ではない。  
 その噂の男がこの指輪を作ったらしいのだ。  
「やっと完成した作品が盗まれた時にはもう本当に落ち込んだが、  
 こんなにネコミミの似合う人が装着して戻ってくるなんて」  
「はいはい、わかったからとっとと戻る方法を教えてくれるとうれしいんだけど?」  
 魔力光片手にニッコリ微笑んでみる。  
「わ、わかりましたっ!!  
 でも、その前に・・・データ収集に協力していただきたいんですけど。  
 その、指輪をしてから気分が悪くなったりとかはありませんでした?」  
「特にないわね」  
 いきなり真面目な顔で質問をされて、リナはつい正直に答える。  
「その耳はきちんと聞こえていますか?」  
「聞こえてるわよ」  
 男は次々と質問を繰り出してリナの返答をメモしていく。  
「ちょっと、いい加減にしてよ」  
 
「じゃ、次で最後の質問です」  
 男はそう言うと棚に置いてある缶を持ち出してきた。その蓋をリナの目の前で開ける。  
(あれ、何か――?)  
 缶の隙間から漂ってくる匂いにリナは眉をしかめた。  
「コレではどんな感じです?」  
「う・・・あ・・・・・」  
 リナの体中から力が抜け、座っていたソファにもたれかかる。  
「ふむ、きちんと効くようですね」  
「あんた・・・なに・・・・」  
 ぐったりとしながらも男を睨みつけるリナ。そのリナに男は缶の中身を見せ付けるようにして目の前に突き出す。  
「マタタビですよ」  
「ま、た・・・」  
「さてと、今度は体のほうを調べさせていただきますね」  
 近づいた男は、リナのマントを剥ぎ取りネコミミとシッポをまじまじと見つめる。  
「ふふ、本当によい出来です。  
 コレはどうですか?」  
 逃れようにも全く力の入らないリナのシッポを握る。  
「んっ・・・あ・・」  
「よさそうですね。シッポが性感帯になるようにしていたんですが、成功のようですね。」  
「やめっ」  
「じゃ、ご協力感謝します」  
 身の危険を感じていたリナだが、男はあっさりと身をひいた。  
 マタタビの缶に蓋を閉じると、またもとの棚に戻す。  
 少しづつだが、リナの体に力が戻り始める。  
「それじゃあ解呪しますね」  
 男は短く呪文を唱える。  
 
「あれ?」  
「戻らないじゃない」  
 ようやく呂律がしっかり回るようになったリナは以前健在なシッポをゆらりとふって低く問い詰める。  
「どうしてくれんの?」  
 あからさまに怒りのオーラを纏ったリナに、男はじと汗をかきながらあとずさる。  
「いや、その・・・あっ、あなたその姿になってからセックスしましたね!」  
「な、・・な、なな何言うのよっ!!」  
 男の台詞に、唱えかけの呪文も放り出して、リナは真っ赤になって怒鳴った。  
「そのせいですよ、戻らないのは」  
 
「もともと指輪をはめてからのその姿って言うのは不安定なもので、それを性行為によってしっかりと固定するように設計していたんです」  
「なんだってそんな変なことするのよっ!!」  
 リナは耳とシッポをぴんと立てて男を睨みつける。  
「趣味に決まってるじゃないですか」  
 男はいやに真面目な顔で言い切った。  
 そうしてやれやれと言った風に溜息をつく。  
「とりあえず元に戻す方法を探してみますから。  
 僕としてもその指輪を返してもらわないと困りますからね。祖母の形見なんですよ」  
「形見でんな変なもん作るなっ!」  
「変とはなんですかっ、素晴らしいじゃないですか!  
 ネコミミにシッポですよ!むちゃくちゃかわいいじゃないですか!!」  
 それまでとは打って変わっての大声での主張にリナは思わず黙った。男は目がマジだ。  
 そこで男はぴたりと止まると、鼻の下につつ、と血を流した。  
「何!?鼻血でてるわよっ!!?」  
 汚いとばかりにリナは身をひく。  
 男は流れる血をハンカチで押さえるが、その布もすぐに紅く染まる。  
「なにっ何か病気?」  
「いえ、リナさんその姿でえっちなことをしたんですよね・・・  
 うわ、・・・・・・」  
「何を想像しとるかーー!!」  
 よく見ると股間の所を膨らませている変態をリナは力いっぱいスリッパで殴りとばした。  
 
 行きと同じにフードとマントで体を隠してリナは宿へと戻ってきた。  
 変態魔道士には早く解呪の方法を見つけるか開発するかするようにしっかり脅し――お願いしておいた。  
 少し古くて軋む階段を上がり、宿の自分の部屋に入るとマントをむしりとる。  
「ふぃー、ゼルってよくいっつもこんな格好してられるわね」  
 リナは一人つぶやくとベッドに体を投げ出す。  
 食事もマントにフードを被ったままでは取った気がしない。朝と同じくガウリイに持ってきてもらうしかないか、とリナは空腹を訴え出したお腹を撫でながら考えてふと気付いた。  
「ガウリイ?」  
 隣のガウリイの部屋からは人の気配がしない。  
 出かけているのだろうか?  
 
 少し眠ってしまっていたリナはノックの音に目を覚ました。  
「リナー?」  
「ガウリイ」  
 戸を開けて入ってきたのは自称保護者のガウリイ。買い物に行っていたのかなにやら袋を抱えている。  
 ガウリイはリナの頭にはえているネコミミに視線を走らせる。  
「治りそうか?それ?」  
「ん、まあね。  
 この指輪を作った奴は見つけたから、そいつに戻す方法を見つけてもらってるわ」  
 リナはベッドの縁に腰掛けて今日の事をざっと話して聞かせる。ただ、セクハラまがいのことは恥ずかしいので省いている。  
「ま、とゆーわけで、あんたが昨夜あんなことしてくれちゃったから治らなかったのよ。  
 どうしてくれんのよ」  
「へ?でも昨夜はリナが欲しがったんだろ?  
 随分かわいらしくおねだりしてたじゃないか」  
 八つ当たりをするはずが、逆に返されてリナは真っ赤になって絶句する。  
「ま、いいか。  
 とりあえずメシもらってきてやるよ」  
 
 
 猫舌にもなっていることが発覚したリナは、温かい食事をわざわざ冷ましてから食べなければならなかった。  
 そのために不機嫌な顔で食後のぬるい香茶を啜っていたのに、いつの間にか近くに寄ってきたガウリイに押し倒されてしまっていた。  
「んやぁっ、そんなことしないでぇっ」  
 ガウリイに圧し掛かられた下でリナは必死で身を捩った。  
 またの下を茶色いシッポがくぐらされ、細い両足をガウリイの脚でしっかりと挟まれて開けないようにされている。  
「はっ、あ・・う」  
 ガウリイの手が掴んだ尻尾を抜き差しするとリナの敏感な場所を擦られてかわいらしい声が零れる。  
「やっがうりい」  
 柔らかい感触に包まれて扱かれる尻尾が気持ちよくて、尻尾に擦られる敏感な場所が気持ちよくて、リナはもう訳がわからなくなってきていた。  
「あふ、あっ、やっもうダメッ」  
 ビクンと体を仰け反らせてぐったりとしたリナに、ガウリイはその手を止めた。  
「いっちまったのか?」  
 するりと離した尻尾は濡れて毛並みが光っている。  
「なんか自分だけでいっちまうなんてオナニーみたいだな」  
「何言って・・・」  
 
 言われた言葉にリナは真っ赤になって顔を背けた。しかしその顔はすぐに驚愕に変わる。  
 脚を持ち上げ、先ほどまでとは打って変わって思い切り開かれると、ガウリイが容赦なく押し入った。  
「ああ――っ」  
「オレも一緒に気持ちよくさせてくれよ」  
 ガウリイの手がリナの敏感な肉芽に伸びてぐりぐりと刺激する。  
 それにあわせてリナの中が収縮してガウリイを締め付ける。  
「やっそんな・・激しく、し、たらっ・・・あああっん・・こわれちゃうっ」  
 口では抗いながらも、リナはガウリイにあわせて腰をくねらせる。そうして快楽の絶頂へと上りつめていく。  
 
 
 
 ネコミミのために進んで外に出ることのなかったリナはこの数日宿屋で散々ガウリイに遊ばれることとなった。  
 酷い日には小さな鈴のついた赤い首輪をつけられて鎖につながれ、アブノーマルなプレイをされた。かと思えばまさに猫かわいがりと、優しく優しくされた。  
 ようやく変態魔道士の言っていた約束の日に、リナは久しぶりに外に出て魔道士教会へと向かった。  
「あいたた・・・」  
 少々の無理がたたって痛む腰を押さえながら、ヒョコヒョコと歩く。それにあわせてフードを被った頭が揺れる。  
 
「も、もも、もちろん大丈夫ばっちりです!!」  
 脅し、もといお願いがばっちり効いていたようで、変態魔道士はリナの顔を見るなり壊れんばかりに首を縦に振った。  
「そ?ならいいけど。  
 で、どうしたら治るの?」  
 ようやくネコミミとシッポからおさらばできるとわかってリナは上機嫌で聞いた。  
 そのリナに、男は細長いものを取り出した。  
「へ?・・・アイスキャンディー?」  
 それは木の棒の刺さった薄青い色をしたアイスキャンディーだった。冷えた空気が白い靄となってキャンディーから流れる。  
「コレを舐めちゃって下さい」  
「コレで治るの?」  
 リナはキャンディーを受け取りながら首を傾げ、男を疑わしそうな目で見る。  
「はい、ばっちりです。  
 ただ薬としては苦かったので食べやすくアイスキャンディーにしてみました」  
「ふーん、気が利くわね」  
 暑い日差しの中フードとマントで全身を覆ってやって来たリナは早速キャンディーを舐める。  
 
 ぺろぺろ、ぺちゃ。  
 
「ん、なかなかおいしいじゃない」  
 味を確認したリナは舌なめずりをして満足そうに言うと、またキャンディーを口元に運ぶ。  
 
 ぺろ、ぱく、ちゅくちゅく。  
 
 普通に売られているものよりも太く大きいアイスキャンディーに苦戦しながら、リナは舌を這わせる。  
 そうしてようやくキャンディーを舐めきったリナは頭にはえているネコミミに手をやって魔道士を振り返った。  
「ちょっと治ってないじゃ・・・?」  
 魔道士は呆けた顔をしてリナのほうを見ていた。  
 
「どうしたの?」  
 不審に思ったリナが近づくと、それまでソファに遮られて見えなかった男の下半身が目に入った。  
 男は取り出したものを手に握っていたのだった。  
 リナはキャンディーを舐めるのに集中していて気付かなかったが、はあはあ言いながら、男は自慰を行っていたのだった。  
「はー、ネコミミでぺろぺろって・・・たまりません」  
 しっかりと白い粘液を吐き出した後の状態の魔道士はうっとりとつぶやいた。  
「しかもあんなかわいい舐め方で、うう、思い出すとまた」  
「ってあんた何してんのよー!?」  
 それ以上男に近づきたくなかったリナはスリッパを投げつけて自分をおかずに自慰に耽ろうとするのを止めた。  
「あんた騙したの!?  
 ぜんぜん治らない上に人のことを―――」  
 わなわなと肩を怒らせ、リナは低く呪文を唱え出す。  
「うわ、わ、ちょ、ちょっと待ってください!  
 大丈夫です、薬はきちんとホントに入れてますから!!」  
「ホントでしょうね?」  
 慌てて言い訳する男を睨みすえて、リナは魔力光を片手にすごむ。  
「ホントですっ。  
 今の薬は性行為でその姿が固定されると言う作用を反転させるものなんです。  
 だから今薬を飲んだ状態で性行為、吐精していただくと固定された姿が不安定な状態に戻ってこの間僕の唱えた解呪の効果で人間の姿に戻るんです!!」  
 早口で説明された言葉をリナは自分の中で反芻する。  
 
 
 変態魔道士に制裁を加えてから爆発に騒ぐ人の目を避けてこそこそと帰ってきたリナ。  
 事情を時に赤面し、つっかえながらガウリイに説明する。  
 しかしその説明を聞き終えたガウリイの反応は薄かった。  
「ふーん」  
「いや、・・・えっと・・・・・・・」  
「ん?なんだ?」  
「だから、そのぅ」  
 ガウリイとえっちをしないと人間には戻れないのだ。そのことはきちんと説明したはずなのだが。  
 困ったように耳を垂れて、真っ赤になってもじもじする。  
「――じゃあ、リナのしたいようにしていいぞ?」  
「へ?」  
 言われた言葉に顔をあげたリナが見たのはにやっと笑う端正な顔。  
「さ、好きにしてくれ」  
「あ、あたしにしろって言うの!?」  
 慌てるリナにガウリイはニッコリ頷く。  
「う・・・・・・・・・・・・・・・・・」  
 しばらく唸るリナだが、ガウリイがしてくれないのならば、結局そうするしかないのである。  
 ベッドに腰掛けるガウリイの衣服に手を伸ばして、ボタンを外していく。  
「オレだけ脱がすのか?」  
 ガウリイの言葉にリナは拗ねたようにガウリイを睨みつけるが、溜息をひとつ漏らすと自分の服を脱ぎ始める。  
 脱ぎ終えると、恥ずかしさをごまかすようにガウリイにキスをする。いつもと違い反応のないガウリイの口内に舌を潜らせ貪る。  
「っはぁ」  
 息が続かなくなって離した唇のまわりは濡れて妖しく光っている。  
 リナは相変わらずガウリイが何もしてくれないのを認めると、筋肉質の体をベッドに押し倒してその下半身に手を伸ばした。  
 両手で持って、扱きながら舌を這わせる。  
 次第に固く大きくなっていくそれに、リナは必死に唾液を塗りつけていく。  
「んふっ、んんぅ」  
 リナの口には大きすぎるそれに、苦しげな声が漏れる。  
 やがて準備が整うとリナはチラリとガウリイを見あげた。  
「どうした?」  
 ガウリイが意地悪な顔で聞いてくるのに、リナは意を決してガウリイをまたいで腰を落とした。  
 ずる、とリナの唾液を纏ったそれが飲み込まれていく。  
 
「あ、がうりい・・・あぅ・・・」  
 自分の体重で深々と入ってくる感触に、リナは頬を上気させて声をあげる。やがて全てが収まるとゆるゆると腰を動かしだす。  
「はぁ、はぁ、あん」  
 リナの動きにあわせてヌチャヌチャと湿った肉の擦れる音が立つ。  
「そんなんじゃオレはいつまでたってもいけないぞ」  
 恍惚としたリナにガウリイが溜息交じりに言う。  
 リナは悔しげに眉をしかめるとガウリイの胸に両手をついて激しく腰を上下させる。  
「はっ、ああぅっ、ああっ」  
「いいぞ」  
 一気に高まっていく快楽に、リナは振り落とされそうになりながらも必死に腰を振る。  
「ああっあんっ、ひあっ、あ、もうっ」  
「くぅっ」  
 背筋を電気が走り、尻尾をぴんと立ててリナは絶頂に達した。  
 しかしガウリイはうめき声をあげながらもそのリナの締め付けを耐える。  
「はあっガウリイっ」  
 リナは泣きそうになりながらも、一瞬硬直した体を動かす。イッタばかりの体には刺激がきついが、それまで異常に腰を振る。  
「ああっ、あひっ、ああんっおねがいっぃ」  
 口から零れるよだれをそのままに、リナはガウリイを締め付ける。  
「もう、もうっだめなのッ、ガウリイっイってぇ!」  
「うっ」  
 リナの渾身の締め付けに終にガウリイはリナの中に吐精した。  
 中にたたきつけられるその感触に、リナは安堵した表情を浮かべ、そのまま意識を手放した。  
 その瞬間に、リナの頭に生えていたネコミミは普通の人間の耳に戻り、シッポもなくなった。  
 
 
 
 

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