「でっ、そんな格好で誘ったってわけか…?」  
「えっ…と、それは、ねぇ」  
えへっ、と舌を出してごまかしぶりっ子笑いを浮かべてリナは上目遣いでガウリィを見上げた。  
 まずっ、マジで怒ってる。  
いつもとは違う真剣な表情は、さすがのリナもちょっとだけ、いけなかったかな? と自分の行動を反省してみる。  
「冗談、冗談よ、本当に」  
ひらひらと手を動かしながら、笑ってごまかそうとするが、ガウリィの視線は怒りをあらわにしたまま、いつものように『全くお前って奴は』とは言ってくれない。  
本当に、本当に冗談のつもりだった。  
単に、可愛らしいネグリジェを見つけ、これでも年頃の女の子なのよっ、と購入し、ゼルとガウリィに見せびらかした、ただそれだけ。  
そりゃ、ちょっとはセクシーにゼルに近寄ったりしてみたけど…。  
その、『セクシーにゼルに近寄ったりした』が、ガウリィの逆鱗に触れた。  
 やっぱり、ガウリィの前で迫ったのはまずったか…  
ゼルに対する悪戯心、というよりは、最近めっきり相手をしてくれないガウリィに対しての意地悪も加わって、リナはいかにも誘うためのネグリジェで、ガウリィの前でゼルを誘惑したのだ。  
もちろんゼルは、ばかばかしい、の一言で自分の部屋に戻ってしまったわけなのだが…  
 
「…さてと、あたしももう寝ようかな…」  
いつまでも許してくれそうにないガウリィの視線から逃れるように、リナはくるりとガウリィに背を向けて部屋を出ようとした。  
途端、身体がふわっと浮いたかと思うと、次の瞬間にはベッドに押し倒されていた。  
「ちょっ、と、ガっ、ガウリィ」  
自分を押さえつけるように上にまたがっているガウリィに、リナは非難がましい声を上げる。  
「こうして欲しかったんだろ」  
両手を押さえ込み、耳元で囁くように告げる。  
そのまま、唇は耳を甘噛みし、首筋へと下りていく。  
「やっ…」  
「したかったんだろ?」  
図星をつかれて、リナはカッと頬が熱くする。  
「ちがっ…」  
抗議の声を上げようとしたその唇は、すぐにガウリィのそれに塞がれ、言葉は宙をさまよう。  
 舌が生暖かく口の中に侵入し、まるで口を犯すようにくねくねと動き回り、リナの思考回路を切断していく。  
「ゼルを誘って、こんな風にされたかったんだろ…」  
びりっびりっと言う音でリナは、切断されかかった思考を呼び覚ました。  
「ちょっ、と、ガウリィ」  
なにするのよっ、せっかく買ったオニューのネグリジェ。  
言葉にせずに非難がましい視線を向けると、怒りに満ち溢れたガウリィの視線と重なった。  
 
「妬いてる…の?」  
「…ああ、妬いてる。すごく、妬いている。お前が他の誰かを見るなんて、耐えらんないくらいに、な」  
「…ご、…ごめんな、さい」  
リナにしては、珍しい反応だった。  
その、珍しくしおらしい反応に、ガウリィの本能的意地悪がむくりっと体をおこす。  
「許さない、と言ったら?」  
「えっ?」  
その言葉に、はっとして潤んだ瞳が向けられる。  
その反応がよりいっそうガウリィの心に火を付けるとは思わずに。  
「えっ…と、あの…」  
何か言葉を紡ぎだそうと必死に唇を動かそうとするリナ。  
「だって…」  
ずっと相手をしてくれなかったから…  
言いかけてリナは顔を赤くしてガウリィの視線から顔を背けた。  
「そんなに我慢できないなら、お前がくればよかったんだ」  
そう告げて、ガウリィは破れたネグリジェの間から覗いているピンクの突起を口に含んだ。  
「ひゃんっ」  
突然の行為に慌てて体を引き剥がそうと動いたとき、許さない、とばかりにガウリィはその胸の蕾を強く吸い上げる。  
「いゃっ…ん…」  
 
小さな、まるで子猫のような声を上げるリナ。  
 だから、それが誘ってるんだよ。  
誰にでもそんな声を上げるわけではと理性ではわかっていても、もし…と考えると、それだけで嫉妬心が湧き上がっていく。  
だから、虐めたくなる。  
体が、忘れられなくなるように、自分以外では駄目になるまで…壊したい。  
ちゅぷちゅぷとわざと音を出して胸の蕾をすすり上げると、小さくいやいやをしながらリナは首を横に振り、うるうる瞳をガウリィへ向けた。  
「ガゥリィ」  
こんな時でなければ、決して聞けない甘い声が、リナの唇から漏れる。  
その唇を塞ぐように自分の唇を重ね、先ほどより激しく口の中を犯す。  
くちゅりと音を立てて絡みつく舌。  
ねっとりと奥のほうまで侵入しては、音をたてリナの羞恥心をあおる。  
手は胸を刺激し、優しくなでるように体を舐めまわし、足の付け根の茂みへと動いていく。  
「んっ…ひゃ…ん」  
しっとりとしたそこに軽く触れただけで、リナの唇から甘いと息が漏れ、ガウリィの心を絡めとる。  
「リナ、ぐっしょりしてるな、まるでお漏らししたみたいだ」  
「…」  
「そんなに触られたかったんだな。我慢して毎日自分でしてたのか?」  
「そ、んな、こと…して」  
ない…  
しっとりと濡れている下着の上から、その刺激的な部分を避けるように、ガウリィの指は動いていく。  
ぞわぞわと背筋を走り抜ける感じが、焦らされ、いたぶられていくたびに体を熱くしていく。  
 
「やっ…ん、……はぁ」  
「一人じゃ我慢できなくて、ゼルを誘ったんだろ? こうしてもらいたくて、そんな声を聞かれたくて。  
俺以外でも、誰でもよかったんだろ?」  
「そんな、こと…な…      い」  
言葉とは裏腹な優しい指の動きに喘ぎながら、違うとリナは首を横に振った。  
「ガウリィで、なきゃ…ひゃんっ」  
不意打ち的に直にそこに指を這わせる。  
「びちゃびちゃだな」  
そう呟くと、足を持ち上げ茂みの中に軽くキスをする。  
「ふぁ…あ…」  
ぴちゃ、ぴちゃと聞こえるように音を立てて、  
舐めるように、吸い付くようにガウリィはそこを嘗め回していく。  
効果音を嫌うリナにとっては、顔から火が出るほどの恥ずかしさなのを知っていて、  
啜り上げるような音を出しては、硬くころころとした突起物を転がしていく。  
「あ…んっ…、やっ…」  
びくんっとリナの体がのけぞる瞬間、ガウリィは指の動きを止めた。  
「はぁ…ガゥリィ?」  
昇りつめる瞬間にやめられ、とろんっとした表情でリナはガウリィの顔を見つめた。  
「まだ、だ」  
「えっ?」  
ぬりゅっと言う感覚と共に、ガウリィの指がリナの中に飲み込まれていく。  
「はうっ…、あっ… ん…っ」  
激しい指の動きに、こんどこそっと思った瞬間、またその指の動きが止まる。  
「ガゥ…はぁ、…はぁ、」  
名前すら呼べない途切れ途切れの声。  
「まだ、駄目」  
いく度となく、繰り返される愛撫。  
絶頂の瞬間に止まるその行為。  
リナの意識はすでに限界寸前だった。  
 
「お、願い…」  
苦しそうに、涙をいっぱい溜めたその瞳が、指以上の絶頂を望む。  
「お願、い…、もう…」  
「どうして欲しい?」  
「…、いれ、て…、ガウリィが、…ほ、しい、の」  
求めることがほとんど無いリナからの言葉。  
ガウリィは嬉しそうに微笑み、一気にリナの中に侵入する。  
「ああっ」  
言葉に出してしまえば、後は快楽に溺れていくだけ。  
リナは、貪るようにガウリィの動きに合わせて腰を動かしていく。  
ガウリィの指によって、極限状態まで愛撫されたそこからは、  
とめどなく蜜があふれ出し、二人の動きに合わせてく、くちゅりくちゅりといやらしく音を立る。  
「もっと…、あぁっ…、ガ、ウリィ…」  
名前を呼ばれるたびに、ガウリィは激しく腰を動かす。  
「あっあ、だめっ」  
ぎゅっと中がきつくなり、ガウリィのモノを締め上げた。  
 近い、な…。  
リナの絶頂が近いことを判断し、ガウリィは腰の動きにリズムを付ける。  
ゆっくりと…激しく。  
「いゃんっ…、あっ、ん…駄目…」  
激しいリズムに合わせて、リナの声も色と艶を増しガウリィの心を刺激する。  
「もっ…と、ほし、い…よ」  
「いきたい?」  
ガウリィの問いに、潤んだ瞳でこくんと頷く。  
 かわいいっ。いっつもこうだったらいいんだけどなぁ。  
憎まれ口しかきかない昼間と、その反動的に甘えねだる夜のリナ。  
どちらも選べないほど好きだし、どちらも誰にも渡したくない。  
 
「ひゃっ…もっ…と、ちょう、だい。ガ、ウリィ…」  
「あ、んっ…いっちゃ…、あっ」  
びくんっびくんと体を動かし、ようやくの絶頂に達するリナ。  
「はぁ、…はぁ…」  
荒い息を付きながら、カクンと体の力を抜いた瞬間、天と地が逆転した。  
「えっ?」  
何が起こったかわからず、まだ快楽から離れない思考のまま、  
自分の下にいるガウリィを見つめると、意地悪そうな光をその瞳に宿して、にっこりと笑った。  
「まだ、許してない」  
「…?」  
意味がわからず首をかしげた途端、下から突き上げられた。  
「ああっ」  
力の入らない体に快楽の波がまた押し寄せる。  
そしてリナは、ガウリィのモノが、さっき以上に熱を帯び、自分の中で大きくなっていることに気が付いた。  
「満足するまで、付き合ってもらうぞ? お前が、壊れるまで、な」  
これからの快楽の嵐に、ぞくっとリナの背筋に寒気が走った。  
底なしのガウリィの体力とそれに見合った精力。  
 持つはずが無いっ。  
リナの表情がさっと青ざめ、逃れられるはずの無いガウリィの腕の中でじたばたする。  
「諦めろよ、リナ」  
にやりっと笑い、しっかりとリナを自分の上に座らせたまま、動きを再開した。  
「あっ、やんっ」  
抵抗はすぐに快楽の海に飲み込まれ、意識を手放すことすら許されず、夜は更けていくのだった。  
 
「リナ?」  
度重なる絶頂の後、隣でピクリとも動かないリナに、ガウリィは声をかけた。  
 さすがにやりすぎた、かな? …でも  
「誰にも、渡したくないんだ」  
狂おしいほどに愛してる。  
誰にも渡したくない、渡すつもりもない。  
たとえ、お前を壊してでも…、渡さない。  
 
腕の中で幸せそうに眠るリナを見つめるその瞳は、限りなく優しく、限りなく狂気に満ちていたのだった。  
 
 
 
終わり、です。  
 

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