A rainy day
「…つまんないわねー」
「ん?」
強い雨の降りしきる憂鬱な午後、街道沿いの意外と大きな宿屋の一室で本を読んでいた私は、不意に
雨の音以外に聞こえた声に疑問と肯定を混ぜ込んだ答えで…けれど気の無い答えともとれる声を返す。
「…」
「…」
しばしの沈黙。
私は再び手の中の魔道書へと視線を戻す。
「…だから、つまんないって言ったのよ」
「そんなの分かってるわよ」
その声の主がやや不満気な声で同じことを繰り返すに至ってやっとそちらを振り返る。
宿屋の一室だというのにまったく外と変わらない服装…無意味に露出度過多な悪の魔道師ルック…で
居る同伴者は、何故か部屋の真ん中で決めポーズをして立っていた。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………」
「………………」
暫し無言の時間が過ぎる。
「………ひ…」
「うん?」
小さく動いた唇に小首をかしげて問い返した時、いきなりその黒衣の魔道師は…
「ひまなのおぉぉぉぉ」
……あ、泣いた…
「はいはい、ナーガ、暇なの分かったから」
そのまま放置してても良いのだが、わざわざこの騒音を放置しておくのもアレだし、そもそも、この
いつ止むとも分からない長雨の中、もう一部屋借りてまでナーガを隔離しておく程無駄遣いしたくもな
い。
お金と労力、天秤にかけたら速攻でお金に傾いた私は、本を閉じ、椅子から立ち上がってひんひんと
泣いているナーガの元へと歩み寄った。
「ウルサイから…まずは、泣くの、やめようね?」
護身用にと腰に挿していたナイフを抜いて、首筋に突きつけながらにっこり笑うと、ピタッと泣き止
んでコクコクと首を振り続けるナーガ。
まぁ、なんて説得上手なのかしら♪
「リナ、それ、交渉とか思ってない?」
「気のせいよ」
「…まぁいいけど…」
それまで泣いていたのなんて全くどこ吹く風、ふぁさっとお手入れ要らずな黒髪を掻き揚げながら再
び立ち上がる。
「リナ!暇よっ!!」
「はいはい」
ナイフを収め、ナーガの立ってる側のベッドに腰を下ろしながら気の無い返事を返す。
「だから暇だってば!!」
「それは分かったってば」
「ひーーまーーなーーのーーよーーー!!!」
「うっさいっ!!」
がごっ!!
「ぅきゅっ」
………あ…瓶でいまの角度はちょっとヤバかった…かな?
「ナーガ?」
手元にあった何かでとりあえずぶん殴ったら、豪快に倒れてぴくぴく痙攣してるナーガ。
手にあるのは、一昨日下の酒場から買ってきた銘酒ぬらりひょんの瓶なわけで…とりあえず、急いで
調べてみて…
「よかったぁ…割れてなくて」
「心配はそっちなの!?」
「当たり前じゃない!!」
「私は心配じゃないわけ!!?そんな瓶で殴って、一瞬お花畑が見えた気がしたわよ!!」
「あのねぇ…」
人差し指を額に当てて大きくため息をつく。
「あんたはカーヴフレアでも平気な顔してるゴキブリ以上の地上最強謎生物、通称UMAでしょ!そん
なのと比べられるものなんて、うちの姉ちゃんくらいしか居ないわよっ!!」
「そ、そのとおりよ!!何だかちょっと貶されてる気がしないでもないけど、私は、リナ!あんたの永
遠の好敵手、サーペントのナーガですもの!!」
…いや、だから、貶してるし、ライバルな訳でもないし…
「そんな酒瓶如き、私の敵でもなんでもないわ!!」
…酒瓶を永遠のライバル視してる魔道師なんてすっごく嫌だし…
「かしてっ!」
「あっ」
あいも変わらないナーガの意味不明な論理展開についていけず、頭を抱えてた私の手から素早く取ら
れた銘酒ぬらりひょん。
「こんなものこうよっ!!」
「あああああぁぁーーー!!!」
止める暇もあらばこそ、一瞬で栓を抜き、そのまま一気にラッパ飲みしてゆくナーガ。
「オーッホッホッホッホッホッホッホッ!!!ざぁぁっとこんなものよっ!!」
「…わ、私の…私の…お酒…」
瓶を投げ捨てて勝ち誇るナーガと、無残に空き瓶に成り果てた酒瓶を抱き締めて泣き崩れる私。
ユルサナイ…ユルサナイワ…
「ナーガ…」
ゆらりと立ち上がる私。
「空き瓶ストライクっ!!」
めごぉっ!!
今度は手加減無用の勢いでナーガの頭にめり込む空き瓶。
え?さっきのも手加減してないって?それはそれ、これはこれ。
「んっふっふっふっふっふ」
「えぇ!?」
確実に決まった手応えが有ったのに、怪しく笑いながらゆらぁりと立ち上がるナーガ。
「そんなの、このサーペントのナーガには効かなっ!ちょっ!いたっ!いたいってばっ!!」
「空き瓶アタック!空き瓶クラッシュ!!空き瓶スマァァッシュ!!!」
ごすっ! どごっ!! めきぃっ!!!
「痛いって言ってるでしょおぉぉ!!」
さんざっぱらぼてくりまわしてると、何やら絶叫しながら私の手から空き瓶がひったくられた。
ちちぃっ油断した!このまま動かなくなるまでどつきまわして、埋めてしまおうって思ったのに!
「…いま何か、空怖いこと考えたでしょ…」
「えぇ〜?なぁにぃ?リナわかんなぁぁい♪」
瓶をひったくられて空いた手を軽く拳にして、両手を口の前で揃えてぶりっ子してみる。
「……まぁいいけど」
…いいんかいっ!?
空き瓶をぽいっと部屋の隅に放ってけろっと言うナーガ。
何はともあれ、あれだけ殴られて平気なのねこの金魚のフンは…
「で…話は戻るけど…暇ね」
「………」
めごっ!
「きゃうんっ」
堂々巡りしそうな予感に、顎へ一発拳を叩き込む私。
「いたたたた…リナ、今日、なんか暴力的…」
「あんたがそうさせてるんでしょ!!」
「やぁん…リナたんのいけずぅ…」
こっ…このっ…
「あ、わかった!」
「…あによ…」
「リナ、今日あの日でしょ?」
めごっしゃあぁっ!!
ナーガの余りに素っ頓狂な論理展開に、思わず木の床へヘッドスライディングをしてしまう。
ぅぅぅ…鼻っ柱がいたひ…
「ちょっと、リナ大丈夫?ただでさえ低い鼻が…」
「余計なおせわよっ!!」
「ほらぁ…赤くなってるし」
「ちょ、なっ、何する気よナーガっ!?ひゃあっ!?」
がーって起き上がって抗議する私をいきなり抱き締めて、ベッドへと一緒に倒れこむナーガの行為に
あたふた慌てる私。
「あの日ならカリカリしないで、ゆったり構えてないと駄目よ?」
「だから違うって言ってるでしょ!!離しなさいよ!!って、あっ!こらっ!!どこに手ぇ伸ばして!
ちょっ、舐めっ!こらあぁぁっっ!!」
したたかに打ち付けて赤くなってる鼻の頭をいきなりペロッと舐めたかと思えば、いつの間にか回さ
れた手が、私のお尻を撫で回してる。
…ちょ、この雰囲気はやばひっ!!?
「ナーガっっ!!!あんた酔ってるでしょ!!今なら許したげるけど、いい加減にしないと!!!」
「なぁに?」
「なぁにじゃなくって!覚悟できてるんでしょうね!!?」
「覚悟って…えい♪」
「ひあっ!?」
急に走った甘い感覚に、全くらしくない乙女チックな声が喉から飛び出す。
「あら?リナ、もしかして今のでもう…?」
「もしかしても、かもしかもないわよっ!!いいから離れなさっ!ひっ!?」
うぅぅ…外に出ないからって、長袖のTシャツ一枚で居るんじゃなかった…
ナーガの擦り付けてくる西瓜みたいな胸に圧迫されて、私の胸も徐々にスイッチがはいってくる。
「んっふっふっふ…こうなっちゃったら、リナ、可愛いのよね〜」
「くっ…こ、こうならなくたって、私は可愛いわよっ」
前に一回、お酒の上でナーガに押し切られて以来、たまにこういう関係になるけれど…何故か、一回
として私がイニシアティブをとったことが無い。
っていうか、敏感すぎる私がなし崩し的に押し切られてしまうからだろうけど…
「それじゃ…暇つぶし暇つぶし」
「暇つぶしとか言うな〜!!って、聞いてるの!?こらこらぁぁっ!!ベルト外してるしぃぃ〜!!」
「暇つぶしだけど、それだけじゃしないわよ。サーペントのナーガを見くびってもらったら困るわね」
「ワケわかんないこと言いながらズボン脱がすなぁぁ!!」
「じゃあなんて言えば良いのよ」
「ぅ…」
じっと見つめるナーガの視線を受け止めきれずにぷいっとそっぽを向いてしまう…って、気がついた
らズボンも綺麗に脱がされてる!!?
「い、いつの間に脱がしたのよ!?」
「いつの間にって…今の間よ?」
脱がしたズボンをひらひらさせて、ぽいっとベッドの脇に放るナーガ。
「いや、今の間って…それ、長ズボンなんですけど…」
「世界には七つの不思議って言うものがあって…」
「いや、それでごまかされるわけないし…」
「………」
「………」
下半身ショーツだけの私と、元々水着以外なんでも無さそうな服のナーガ、しばし無言で見詰め合う。
「………えいっ」
「ひあっ!?」
その沈黙は、不意に走った下半身への刺激で破られた。
「ちょ、ナーっガ…そ、こっ、まだっ!」
「大丈夫よぉ。いつも気持ちよくしてるでしょ?」
「そ、そういう問題じゃっ!んんっ!っ…っ…」
「ほらほら、リナ、もう、出来上がってきたんじゃない?」
「あ、あんたっ…かっこ、んっ!だけ、じゃ…ふぁっ!中身まで、エロ恥ずか、しっ…きゃうっ!」
ナーガの指が踊るたびに、私の身体が小さく跳ねる。
悔しいけど…ナーガの言うとおり、私はすぐに出来上がっちゃう。
ナーガの手管もさることながら…全ては郷里の姉ちゃんのせいで、こんな敏感な…
「それにしてもリナ…」
「なっ…なによっ」
「…その歳でコットンショーツはちょっとアレじゃない?」
「っっっ!!」
ナーガの言葉にただでさえ赤かった顔が、耳まで一瞬で真っ赤になるのが自覚できる。
「うっ!うるさいわねっ!!誰に見せるわけでもないし、安いし、長持ちするし、お手入れ簡単だから
良いじゃないのっ!!」
「……貧乏臭いわね」
「あのねっ、私だってシルクとか、何枚かはもってるわよっ!!」
あ…勢いに任せてつい…
思ったとおり、ナーガの顔がニヤリと笑む。
「へぇ〜…ふぅぅん?」
「っっっっ!!」
あまりに悔しくて声が出ない私をにやにやと楽しそうに見るナーガに、無意識に呪文を叩き込もうと
魔術の構成を編み上げ始めるが…
「えい」
「ひんっ!」
女の子の最も敏感な部分を布越しに軽くなで上げられて、たったそれだけで頭に編みあがりかかって
た構成が霧散してしまう。
「リナ、おいたしちゃ駄目よ〜?」
「お、おいたって…子供扱いひっ!!あっ!ぅくっ!!」
「お子様ショーツ…お子様ぱんつの方が良いかしら?これ履いてる限り、リナのことお子様扱いしちゃ
おうかしら」
「こ、このっ…調子にっああぁぁっ!!」
「調子に、なぁに?」
「あっ!!あぁっ!!ひっ!っっっ!!だめえぇ!!」
私が敏感なのを良いことに、強気に出るナーガ。
そして悔しいけど…それに逆らえない私。
「〜♪」
「っ!っっ!!ぁっ!ぃひっ!!ふぇあ!!」
私が傷つかないように加減しながら、突起を布越しに摘んで転がしてはいるものの、それだけで余り
に峻烈な快感が私の背筋を痙攣させる。
「リナ、湿ってきてるわよ?」
「そ、それ、わぁ…っ!!あ、あんた、がぁっ!!やあぁっ!!」
快感の塊への指はそのままに、秘裂の方にも指が伸びてきて、私の声を跳ね上げさせる。
あ…もぉ…
頭の中が段々白くなってきて…勝手に身体に力が篭って…
「ナーガッ!!なーがあぁっ!!」
手足をきゅっと縮こまらせて、私は跳ねた。
「…リナ、いっちゃった?」
「………」
思い出したようにびくっびくって震える身体を優しく撫でてくれながら、声をかけてくれるナーガ。
押し切られたのは悔しいけど、こうやって撫でてくれるのは凄く好き。
「……ナーガ…」
「なに?」
「…お酒弁償しなさいよ」
「………」
「あっ!!ちょっ!!待ちなさっひっ!!今いったばっかりでっ!!あぁあっ!!」
私の言葉に、指の動きで応えるナーガ。
ただでさえ敏感なのに、達してどうしようもない程になってる身体を責められる。
「いつまでたっても、空気が読めないんだから…」
「あっ!!ひっ!!やあっっ!!だめっ…だめえぇっ!!」
自分でも分かる。
ショーツがどうしようもないくらい湿って張り付いてる。
胸の先端、Tシャツの布地をはっきり押し上げてる。
私の顔、快感で惚けてる。
「リナ、雨が止むまでずっとしてあげる」
「やっ、ああぁっ…そん、な、のっ!ひっ!やはあぁっ!!」
しとしとと降り続く雨、この雨が止むのはいつだろうか?
この雨が止まないこと、どこかで期待してないだろうか?
ナーガの指が再び私を啼かし始める…
It continues to the next time?