「アーニャ、おまえ」
「別にヤケになって言ってるんじゃないよ」
回り始めた歯車がとめられないのなら、自らの手で回すだけ。
これまで言えなかったこと、今ならはっきり言える。
「わたし、トーマスが好き」
胸がどきどきしてる。
「アーニャ!」「きゃ」
ふいに抱き寄せられてトーマスの胸に倒れこむ。
胸の鼓動が加速する。
「…いいのか?」
「いいよ、トーマスが…いいのなら」
「オレも…」
トーマスの顔が近づく、わたしはそっと目を閉じる。
ふれあう唇と唇。何年かぶりのキス…
「ん…」
両肩を軽くつかまれると、キス…
そのまま、仰向けにに倒されて、今度はちょっと深いキス。トーマスの舌先がわたしの舌先にちょんと触れた。
肩の上にあったトーマスの右手がいつの間にかわたしの胸の上にきてる。
感触を確かめるようにゆっくりと動かしてる。ちょっとくすぐったいけど、いい感じ。
そして、服のボタンに手をかけると…
「いいか?」
「うん」
ひとつずつボタンをはずされてく…
全部のボタンがはずされ胸が露出する。
「…恥ずかしいよ」
「…」
トーマスは黙ったまま顔を胸近づけて…
「や…」
夫に死なれてから感じたことのなかった感覚が全身を駆け抜ける。
「やっ、まって」
わたし胸の上にあったトーマスの右手がからのからだの上を滑りながら下へ…
「はうっ…」
スカートとパンツの間に滑り込んだトーマスの右手の指が、わたしのたての線にそって軽く上下してる。
やだ、なんかもう完全に濡れてる感じ、さっき換えたばかりなのに…
トーマスはわたしのスカートをするりと下ろす。
いつの間にかトーマスも服を脱いでトランクス姿になっていた。
素早いやつ…
こんなときでもそつなく行動できるトーマスに感心すると同時にちょっぴり腹が立った。
「だめっ」
反射的にパンツを脱がそうとするトーマスの手を押さえて抵抗してしまった。
…これが本当の最後の砦、だったから。
「アーニャ…」
トーマスは一瞬すごく切なそうな顔をした、でもすぐに優しい顔になってわたしの頭をそっとなでる。
「もしおまえが、どうしてもいやだったら…」
「…待って」
言いかけた言葉をさえぎる。
ここまできてトーマスにそんなこと言わせるなんて、本当にダメなわたし…
「ごめん、トーマス」
トーマスは優しい、いつもリーネのことを気遣っているから、いつでも…
だから…
「わたし、大丈夫だから…」
「アーニャ!」
思いっきり抱きしめられた。
肌と肌が直接触れ合う。
…暖かい。
「あっ…」
トーマスの先端がわたしのあそこにあたる。
ぬるっとした感触が上下して、わたしの入り口を探す。
…もうだめ、心臓が爆発しそう。
そして…
「…入れるぞ」
「ええ・・・」
彷徨の腰が徐々に押し付けられる。
「うっ…」
忘れかけていた快感が再び巡ってきた。
思わず腰を引いてしまうわたし。
「痛いか?」
トーマスも力をぬいて心配そうにわたしの顔を覗き込む。
「大丈夫よ、大丈夫」
「そのままきて…」
トーマスを受け入れるって決めたんだ。
両手でシーツをギュッと握り締める。
「ごめん、未夢」
トーマスはそのまま思いっきり腰を突き入れてきた。
「!!」
「…うぁ」
激痛が走る。と同時にはじめてトーマスが小さなうめき声をあげる。
トーマスは気持ちいいのかな…
わたしがリーネの幸せのためなら何でもできる。
そう考えると幸せな気分になって、悲しみも少しやわらいだような気がした。