雪も溶けはじめ、隠れていた草花が萌いづる初春の頃、山野を行く二人の姿があった。  
小さな村で結婚式を済ませた二人はすぐ次の街へと旅立っていた。  
春先とはいえ、冬の残り香のように冷たい風が二人に向かって吹きすさぶ。  
そしてしばらく歩いた頃、二人は山小屋を見つけた。  
「ゲルダ、今日はここに泊まろう」  
少し荒れ果てた小屋であったが、中は小綺麗で暖炉も寝台も用意されていた。  
「ラギ、寒かった…」  
「今、暖かくする。待っていてくれ」  
ラギは暖炉のそばにあった薪を暖炉にくべ、火をつけた。  
やがてパチパチと薪のはぜる音と共に、小屋の中を暖めた。  
二人は暖炉の前に寄り添うように座り、暖をとった。「こうしていると、昔、ラギと一緒に旅をしていた事を思いだすの。  
旅の途中、私が熱をだして倒れた事があったでしょ。そうしたらラギは薬草を探して来てくれて。  
ラギがいない間ホルガーが看病してくれて…次の日ラギはまた薬草を探しに  
出かけていってくれたけど中々帰って来なかった…」  
 
「ゲルダ…」  
「ラギはフラフラになってやっと帰ってきた。私よりひどい熱をだしてた。  
立場が逆転したね。その時思ったの。ラギが、誰よりも大切な人だって…」  
ゲルダは微かに頬をあからめた。  
「…ゲルダ…私はあの時熱と疲労で倒れた…そして…見た。私の死んだ部下たちを…  
彼らは私を許してくれた。しかし私の罪は消えない…  
私にはこのような生き方しかできない…」 パチッと大きな音をたてて薪がはぜた。  
「しかしゲルダ…お前はこんな私を愛してくれた。これ以上何を望む事があるだろう…」  
「…ラギ」  
自然と二人の手が触れ合った。  
「愛している…」  
二人は暖炉の燃えさかる火の前で抱き合い、くちづけを交わした。  
そしてラギはゲルダの身体を抱きかかえ、寝台へ運んだ。  
 
ラギはゲルダを優しくそっと寝台におろすと、ゲルダの柔らかいくちびるを味わった。  
最初はそっと触れるだけだったくちづけが、次第に熱を増し、  
ラギはゲルダの口腔まで味わった。  
この小屋の中を照らすのは暖炉で赤々と燃える火だけ。  
ラギはゲルダの服を脱がしにかかる。ゲルダはまだ怯えて声が出ない様子だが、  
服を脱がすのに協力してくれた。  
ブラウスもスカートも下着も脱ぎ捨てたゲルダの身体は雪の様な白さだった。  
ゲルダは恥じらい腕で胸を隠した。それがまた男の情欲を駆り立てる事を彼女は知らない。  
ラギもまたもどかしげに服を脱ぎ捨てるとゲルダの身体を覆うように、  
この上ない強さで抱き締めた。そしてゲルダの耳を甘噛みした。  
ゲルダはラギの熱い息を感じながら、初めての経験に身体を固く緊張させた。  
 
ラギのくちづけはやがて首筋を這って、ゲルダのふくらみかけた胸へと辿りついた。  
ラギはまた胸の頂を味わいながら両手で激しく揉んだ。  
ゲルダは緊張と恐怖の中にありながらも、身体の奥底が溢れでる快感に、小さく悲鳴を洩らす。  
ラギはゲルダの身体の隅々まで優しく愛撫し、くちづけを落とす。  
ゲルダはラギの硬い男の肌の汗の匂いを嗅ぎ、熱い早鐘のような心臓の鼓動を聴いた。  
大きな傷のある彼の身体を愛しく思い、ゲルダもまた手を伸ばしラギの身体を抱き締める。  
やがて甘い感覚がゲルダの全身を支配し、ゲルダはますます甘い吐息を洩らす。  
ラギの愛撫の手はゲルダの秘められた場所へと導かれるように進んだ。  
そこはわずかだが甘酸っぱい雌の匂いの蜜に濡れ、ラギを興奮させた。  
目の前の清楚で純真無垢な少女と、男を誘惑する秘所の差が欲望をたぎらせる。  
 
「ラギ…怖い…」  
少女が言う。ラギは愛撫の手を止めた。  
「…ごめんなさい…私初めてで…怖い…!」  
そんなゲルダにラギはまた優しくくちづけ、ゲルダの乱れた髪を手で梳いてやる。  
「…やめようか?お前が、もう少し大人になるまで…」  
「…いいえ、やめないで。私はラギを見て、信じて、守って、ついてゆくって決めたの…」  
暖炉の揺れる炎がゲルダの頬を流れる涙をうつしだす。  
「ゲルダ…」  
ラギはゲルダの溢れる涙に接吻し、舐めとった。  
「それなら私もゲルダを見て、信じて、守って、ついてゆく!」  
ラギはそう言うなりゲルダの華奢な身体をしっかりと抱き締めた。  
二人は身も心も溶けあうように、一つになった。  
ゲルダの処女の証の赤い血はシーツに彩られた。ラギは己を刻みこむように  
ゲルダを掻き抱き、腰を打ち付ける。ゲルダは痛みをこらえ喘ぎながらも、  
心は満たされていた。やがてラギが限界に登りつめ、たぎりをゲルダの中へとほとぼらせた。  
そんな二人を見ていたのは消えかけた暖炉の火だけだった。  
 
 
翌朝、二人は山小屋を旅立った。しっかりと手をつないて。  
 
吟遊詩人と少女はこれから街を巡る。二人の指にお揃いの指輪がはめられていた事を知る人は少なかった。  
 

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