小学生というのは、ミもフタもない生き物である。  
たまたま女子が一人もいない昼休み、教室で冬馬は小太郎に質問された。  
「なあ冬馬、オマエ、高校生の女と一緒に暮らしてるんだったよな?」  
「え?あ、まあ…」  
「一緒に風呂入ったりするのか?」  
冬馬はドキッとする。なぜか小太郎を含む友人達数人は、威圧感を漂わせて彼を取り囲んでいる。  
「そ、それは…そんなこと、別に、うららはそんなことは、特に特別な場合の状況のときはそんな。」  
しどろもどろで答える、というか言い逃れようとする冬馬。  
「つまりだな、確かに俺は男だけど小学生だぞ?だからそういうことは、うららだって不都合もあるわ  
けで、やっぱりあまりおおっぴらに出来ることではないわけで、一緒に風呂に入るとか入らないとか。」  
「…わけわかんねーぞ?要するに、一緒に入ったことがあるのかよ無いのかよ?」  
「だからさっきから言ってるように、そういうことが可能な状況は滅多に…」  
「つまりあるわけだな、たまには?」  
「…まあ、そういうことに、なるのかな。」  
 
冬馬の言うことが要領を得ないので補足しよう。  
うららと彼は普段は別々に風呂に入ってる。別にやらしい関係になるといけないからとかいう訳ではな  
い、単純に一緒に入る理由が特にないだけの話だ。  
ただ一月に一遍くらい、家事や宿題やらの時間の関係で、一緒に風呂に入ったほうが都合がいい場合が  
出てくる。そうすると別にうららは躊躇しないし冬馬もそんなに意識はせず、普通に一緒に風呂に入り、  
そして身体を洗って出る。それだけだ。それだけなんだけど…。  
冬馬を取り囲む同級生男子達は目をらんらんと輝かせて次の質問を。  
「で、どうなんだ?見たんだろ?」  
「そりゃ一緒に入れば…言っとくけどうららの胸ってそんなすごくボインってわけじゃないぞ。」  
「おっぱいなんてどうでもいいよ、そんなの小学生だって本とかテレビとかその気になりゃ見れるさ。  
今ここで聞いてるのはマ○コの事だよ。見たことあるんだろ、正直に言え。」  
 
「う…それは…あるけど…」  
「見たのかマ○コ!?」  
「マ○コを見たことあるのか、オトナの女のマ○コを!?」  
もちろん実際の会話中では伏字は存在しない。  
繰り返すが、小学生というのは、ミもフタもない生き物である。このあたりマッスグなのだ。  
「あ、あるよ…たまに、チラッと、だけど…」  
「教えろ!」  
「は?」  
「どんな形してるんだ、教えろ今すぐ!!」  
「ちょっと待て、たまにチラッと、だって言っただろ、そんな詳しく…」  
「いいから、とにかく描いてみろ!」  
画用紙と鉛筆を差し出される。  
取り囲む5人の10歳児の血走った視線に圧倒され、冬馬はしぶしぶ描き始めた。  
そして数分後。  
「…なんだこりゃ。」  
「いや、だから…うららの…マ○コだよ。」  
「…なあ冬馬、前から思ってたけど…おまえ、絵、下手だな…」  
冬馬の絵は、逆三角形をモジャモジャっと描いて、その下に縦長の細長いグニュグニュしたものを描い  
て、その左右にまばらにチリチリした線を描いた代物だ。  
「仕方ねーだろ、俺は図工は2なんだよ、それにそんなマジマジ観察したわけじゃねーんだよ!」  
「それにしたって…なんだよこれがマ○コかよ?便所とかの落書きのとずいぶん違うじゃねーかよ。」  
「冬馬、これ、どこが何なんだよ?このモジャモジャが毛なのはわかるけど…この縦長の線は何だ?」  
「だから、これが…本体だよ、割れ目になってる部分。こっちが尻の穴のほうで、こっちが前で、前と  
両脇にこう、毛がチリチリ生えてて…」  
「そりゃわかるよ、そんくらい知ってるよ。違くて、この本体ってやつのどこが何なんだよ?どこがチ  
ンコの入る穴なんだよ?」  
「わかんねーよ、穴なんて見えねーんだよ!」  
「とにかく、わかるようにもう一度、本体だけ詳しく描いてみろよ。」  
 
また数分後。  
「こ、これでどうだ?色はだいたい唇の色より少し薄いピンク色で…この両側は結構盛り上がってて普  
段は割れ目の中は見えないんだ。脚を開いた時だけこうなるんだけど…」  
「それはいいよ、それより穴だよ。どこが穴だよ?おしっこはどこから出るんだ?」  
「え?穴からだろ?」  
「だから、その穴はどこだよ?」  
「同じ穴じゃないんだっけ?」  
「確か違うはずだぞ。」  
あいまいな知識をつき合わせて侃々諤々の大議論。だが結局何がなんだかよくわからない。  
「だめだやっぱ良くわかんねーよこんな絵だと。あー、なんで図工が2の奴しかマ○コを見たことねー  
んだよ…」  
冬馬の名誉のために言えば、この冬馬の絵は、下手なりにうららの性器の特徴を上手く捉えているもの  
であった。陰唇のよじれ具合とか、陰核は包皮で隠れて見えない所とか…。  
だが子供たちにはそれがわかっていない。教科書の抽象化された模式図のそれのように、膣口とか陰唇  
とかもっとはっきり区分けされてるものと思い込んでいるのだ。  
だんだんみんな思いつめた表情になってくる。小太郎がポツリとつぶやいた。  
「…写真、だな。」  
「そうだな。それしかないな。」  
「え?どういう…まさか、俺に、風呂でうららの…」  
「そうだよ。マ○コの写真を取って来るんだよ。デジカメ持ってんだろ?」  
「無茶言うな!!あのな、うららは自分から見せてくれたわけじゃないんだぞ?屈みこんだ所を後ろか  
ら見えちゃった時とか、湯船の縁を跨ぐんで脚を持ち上げたのが正面から見えちゃった時とか…たまた  
ま見えただけなんだよ。写真なんか撮ったら俺の命が…」  
「冬馬…親友にマ○コの形を知らせるために、君の捨て身の覚悟が必要なのだよ。とにかく写真撮って  
来い、友情の証として。」  
「頼むよーこの絵で許してくれよー!!」  
「やだ。(←全員で)」  
 
自宅に帰ると、しかたなく冬馬は作戦を練った。  
(とりあえず、うららをどうやって一緒の風呂に誘うか、だな…。それさえ成功すれば、後は何とかな  
るはずだ。うーん、どうやって騙すか…うーん。)  
うんうん唸りながら作戦を練ること3時間。9時近くになってうららが高校から帰ってきた。  
「ただいまー。あー遅くなった疲れた…冬馬、めんどくさいからお風呂一緒に入ろ、そんで寝よー。」  
「う…うえ?」  
あわてる冬馬。どうやれば一緒に風呂に入れるかの事ばかり考えてて、その後どうすればアソコを写真  
に取れるか、どうやってデジカメを風呂場に持ち込むかを全く考えていなかったのだ。  
「ほら、何してるの、早く着替えとタオル持っていらっしゃい。」  
 
一ヶ月ちょっとぶりの一緒のお風呂。  
(ちょっと痩せ過ぎっぽい気もするけど…でもそのぶん、おっぱいが大きく見えるよな…)  
腕も脚もすらっと伸びきってなかなかスレンダーなプロポーション。円錐形の乳房、乳輪の目立たない  
ピンクの乳首、面積は広いが全体的に薄くしか生えていない陰毛…。  
冬馬は服を脱ぎ終えてこれから風呂場に入る所だ。  
うららは洗い場でむこうを向いた。背中にかかる髪の毛の末端が濡れている。肩甲骨の目立つ背中、腰  
のくびれの細さ、小さめの尻。脚が細いので、両脚をぴったり閉じていても股間には手が余裕で通るく  
らいの隙間がある。だから普通に立っていても、後ろからだと少し性器が見えてしまう。  
彼女はこちらを向くと屈みこんで風呂のお湯を身体にかけ始めた。股間はこちらに向け開いている。  
(湯船に浸かる前、今しかないな…えーい、やっちゃえ!)  
タオルで巻いてカモフラージュしたつもりのデジカメを持ち込み脱衣所から洗い場に。さりげなく、あ  
えて堂々と、当たり前のような動作でカメラを持ち込めば意外と気づかれないのではないか。冬馬はそ  
れに賭けたのだが。  
「きゃ、冬馬あんた…そのデジカメ何する気?」  
「え?いや、これは単なるタオルを巻いただけのものだよ。」  
ごちん。  
殴られた。カメラを取り上げられる。ばれたのだ。  
まあ、当たり前だ罠。  
 
冬馬は事のいきさつを話した。  
うららは洗い場にいる。冬馬は湯船の中だ。奪い取ったデジカメを弄びつつうららが言う。  
「…何そればっかみたい。小学生って意外とエッチなのね。そんなに、その…女の子の…見たいもんな  
の?まだ自分には毛も生えてないくせに?」  
「見たいんだろ。あいつら、目が血走ってたし。」  
「じゃなくて。あんたよ、冬馬は見たいの?まあさっきの話だと、こうしてお風呂に入ってる時って、  
ちらちら私のを盗み見してたみたいだけど。」  
「…」  
「で、どうしようかこのデジカメ。まだ一枚も撮ってないよね?」  
「撮ってねーよ。って、ひょっとして…撮らせてくれんのか?」  
「んな訳ないでしょ…あ!」  
冬馬が一瞬の隙を突いてうららからカメラを奪い取ったのだ。  
闇雲にシャッターを押し捲る冬馬。脚をぴったり閉じ、両腕で胸と股間を隠して対抗するうらら。  
「撮るな馬鹿、撮るな撮るなー!」  
「撮らせろー!マ○コ撮らせろ、俺の友情のために撮らせろ!マ○コ撮らせろマ○コ!」  
「マ○コマ○コ大声で言うなー!」  
うららのほうがまだまだ腕のリーチは長い。冬馬から強引にデジカメを奪い返す。  
「はあはあ、あーまったくやらしいったら…とりあえず全ファイル消去、っと。」  
「あー!少しは写ってたかもしれないのに…」  
「冬馬聞きなさい!だいたい私はね、歳は離れてるけど一応あんたの恋人よ?『理想の男の条件――』」  
うららはびしっ、と右手人差し指を立てる。  
「『男たるもの、他の男が恋人の肉体に興味を示したら、断固それを粉砕しなければならない!』のよ!」  
冬馬は湯船の縁に腰掛けてまだ憮然としている。うららはため息をつく。  
ところが…次の瞬間、唐突にうららは無茶な事を思いついた。  
「ねえ冬馬…もし、『一枚だけ撮らせてあげるけど、後はそれっきり』ってのと、『撮らせない代わり  
に冬馬にだけは好きなだけ見せてあげる』っていうの、どっちか選べって言ったらどうする?」  
「え?」  
 
「先のを選んだら、一回だけアップで撮っていいよ、大きく広げた所。あとは友達に見せるなりなんな  
りして構わないわ。ただし、もうそれっきり、二度とあなたにはナマでは見せてあげない。」  
冬魔はうららの言うことが先回りして飲み込めてきた。どうしよう…。  
「後のを選んだら、デジカメで撮るのはなし。その代わり、今夜…好きなだけあなたにだけ見せてあげ  
る。どこまでも心ゆくまで…私のオマ○コを。ね、どっちがいい?」  
男の友情か、自分の性的好奇心か…冬馬は迷った。うららがイタズラっぽく微笑む。  
 
結局、冬馬は、自分の欲望に従った。  
お風呂場では湯冷めしてしまうので、寝室に行きのベッドの上でだ。パジャマ姿で下半身だけ脱いだう  
ららの股間に、冬馬は顔を寄せる。  
「見えない?ほら…これだけ広げれば、よく見えるでしょ…?」  
あと10年もすると、毎晩こんな風に見せて…そしてそのときは弄らせたり舐めさせたりするんだろう  
か。うららは将来の自分たちの夫婦生活の一端を垣間見たような気がしている。  
冬馬のほうはそれどころではない。目の前のものを頭に理解させるのに全力だ。  
(うわ…こ、ココがおしっこの出る穴か…ほんとただの点みたいな穴だな…それに比べるとこっちの穴  
は…ここまで広がるのか…しょ、処女膜ってこれかな…へえ、普段からこんなに濡れてるんだ…)  
それは普段からいつも濡れてるんではなく、見られて感じてきて濡れてきたのだよ冬馬君。まあそのへ  
んはうららに悪いので内緒にしておこう。  
とにかく冬馬は今夜、10歳にして許婚の性器(それも17歳でまだ処女のそれ)を舐めるほど近くで  
細部まで奥まで詳しく観察する…という、ほとんどの男に永遠に縁のない体験をしたのであった。  
 
翌日。  
見たもののせいであまり眠れなかった冬馬だが(写真を撮れなかった事、あいつらに問いただされる前  
に釈明してしまおう…)と考え、始業前の悪友の群れている所に行った。  
「あのな、昨日の約束の事だけどな…」  
「あ、あれか…あれはいいや、もう。」  
「はあ?」  
 
「実はな、昨日あの後、帰り道でこいつ(といいつつ仲間の一人を指差す)の兄貴に会ってな…」  
「兄ちゃんに昨日の話をしたら『なんだそれなら俺の秘蔵のDVDを見せてやるよ』って事になって、  
裏DVDを5巻くらい見せてもらったんだ。もうマ○コはげっぷが出るほど見ちまったよ。」  
小太郎がふっ、と口元で笑う。  
「まあ、なんつーか…俺達も、少しだけ大人の世界を垣間見た、って感じ?」  
「そうだな。冬馬にはまだちょっと見れない世界を見たよな。」  
「なんだよなんだよ!俺を半日悩ませといてそれかよ、そんなもので大人の世界を見たとかいうな!俺  
なんか夕べはな、うららのマ○コを、それこそ2,3センチくらいの距離から1時間以上じっくり見さ  
せてもらったんだぞ!ぐにぐに触ったりもしたんだぞ!(←誇張入ってる)」  
「へーそりゃすごい…でも、俺達はTVの画面でだけど、チンコが出たり入ったり、中に出したのが流  
れ出してくる所とかも見たぞ。冬馬は見てないだろ?」  
「そ、そんなの見れるわけないだろ、どうやって見るんだよ…でも、お前たちの見たのはあくまで画面  
の中の事だろ、俺はナマのマ○コを…」  
「ナマのマ○コより画面上でもチンコが入るところを見たほうが…」  
「いや、やっぱりマ○コはナマで見るに限るわけで…」  
「ちょっとあんた達っ、何の話してんのよ!?ここは教室よ!」  
いつの間にか大声になってたらしい。『やらしいわね』とかあちこちで女子の声。担任教師が教室に。  
「あ、みどりセンセー、男子がマ○コとかチンコとか大声で連呼してます、何とかしてください!!」  
「…は?マン…?」  
「うるせーな!マ○コの話題してんだから、マ○コをマ○コっていって何が悪い!?」  
「聞きましたセンセー?さっきからこいつら、マ○コってばっかり言ってるんですよっ!」  
大騒ぎになってきた。教室内を伏字のない単語が大量に飛び交う。先生の顔が真っ赤に。  
「みんな静かにしなさーいっ!マ○コとかチンコとか、他の教室に聞こえたらどうすんのよ、先生恥ず  
かしいわ!小学生がマ○コとか口にするもんじゃありませ――――んっ!」  
みどり先生の声が、学校中に響き渡った。  
 
―おしまい―  
 

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