智樹と、イカロスと、ニンフと、アストレア。
部屋いっぱいに敷き詰められたベッドの上に横たわる四人は誰もみな全裸で、荒い息をついている。
うっすらと怪しい色をした室内灯にたゆたう淫気が映っているような錯覚に襲われるほどうっとりとした空気が部屋に満ち、誰もが気だるさに身をゆだねていた。
これまで四人で重ねた行為は激しく、長く続いたために夜も終わりが近く、体力もほとんど残っていない。
このままあとはゆっくりと四人で寄り添って時間を過ごし、朝を迎える。
そんな未来があり得たその日、だがしかし四人はまだどこか満たされない物を感じていた。
仰向けになり呼吸と共に胸を揺らしていたアストレアがきゅっとシーツを掴む。
うつぶせになっていたニンフがぱたりと羽を揺らし、わずかに腰を上げる。
横を向いて寝転がっていたイカロスが体を丸め、手が太腿に触れるとピクリと震えた。
そして、三人ともが一斉に智樹を見る。
足を崩して座り、三人のエンジェロイドの様子を眺めていた智樹はその視線を受け、ゆっくりとその顔に笑みを浮かべた。
まだ終わらない夜への、期待に満ちた表情だった。
「イカロス、『あのカード』、使ってくれるか」
「ッ! ……はい、マスター」
智樹の言葉に応えたイカロスが、どこからともなく一枚のカードを取りだした。
ニンフとアストレアは智樹の言葉を聞くなり体を起こし、じっとイカロスの手にあるカードを見つめている。
イカロスの掲げたカードからゆっくりと光が溢れだし、誰かがごくりと息をのむ音が聞こえた。
そして、部屋をまばゆい光が満たし、誰もが目を閉じて視界を隠す。
イカロス達三人のエンジェロイドは、瞼を通して網膜に突き刺さる光が弱まるのを待ってゆっくりと目を開いた。
その目に映るのは、その背に羽をもつ自分たちの仲間と、さっきまでと変わらぬ部屋と、そして。
ベッドの上、数えきれないほどの数に分身した智樹の姿だった。
「あ……トモキがいっぱい……」
「マスター、カードによる分身、成功しました」
「うぅ……こんなに増えるなんて聞いてませんよ……」
イカロス達は三者三様の反応を示していたが、その目の奥にとろとろと熾き火のようにきらめく性欲の輝きがあるのは変わらない。
だからこそ、笑みを浮かべて自分たちに手を伸ばす何人もの智樹に対して、迷うことなく体を委ねたのだった。
「んっ、きゃっ……んぁああ! やぁ、やふぁあああああああ!」
ニンフを迎え入れたのは、何本もの智樹の手。
手と足を掴まれてうつぶせのまま宙に浮き、体中に智樹の手が這わされた。
首筋をなぞる手が鎖骨のすぼまりをくすぐり、脇腹をさすられるくすぐったさに身をよじれば脇を通って二の腕へと抜ける。
へそには二人の智樹の人差し指が突き刺さり、背中は腰から肩まで背骨に沿ってなぞるように三人の智樹がマッサージと愛撫の中間のような手つきで撫でまわす。
足には太腿とふくらはぎに何枚もの掌が張り付いて隙間もないほどで、間断なく揉みしだかれて奇妙な感覚が這いあがってくる。
そして、ニンフの秘所とアナルには他のどこよりも多くの手が殺到し、絶え間なく愛液と腸液を掻きだしていた。
膣内深くへと潜り込む指と浅い部分を引っかく指が二本、花弁を広げるように引っ張る指があり、クリトリスは上下左右からそれぞれ別の手の指四本でこねくり回されている。
アナルにも二本の親指がねじ込まれ、他の手が尻たぶに添えられてパン生地をこねるように揉みこみ、また別の手は菊門のしわを伸ばそうと引っ張ってくる。
慎ましやかな胸には掌がそっと添えられて優しく揉まれ、一方先端で固くしこった乳首はつまみ取ろうとするかのように強く摘まれる。
そんな規格外の快感からわき上がる声を上げるための口にもまた、何本もの指が差し込まれている。
喉から顎にかけてを這いまわる手によって上げられたニンフの顔に慎ましやかに収まる口は今、限界まで開かれて智樹の手を含んでいる。
奥歯の形をなぞる指、歯茎を磨くように動く指、頬の粘膜の感触を楽しむ指、前歯の並びに爪を引っ掛けてこりこりと動く指、舌を摘んでくる指。
ニンフの口に入れられた指はそれぞれてんでバラバラにニンフの口の中をいじり回し、唾液がこぼれるのも構わずくぐもった悲鳴を上げさせ続けていた。
そして、
「ニンフ、可愛いよ」
「ニンフ、綺麗だよ」
「肌、すごく滑らかだね」
「おっぱいちょっと大きくなったかな」
「太腿あったかい」
「また愛液溢れてきたよ」
「お尻がきゅってしてる、気持ちいいんだ」
「ほら、もっと舌動かして」
「腰ががくがくしてる、イクんだ」
ニンフの耳元で、ニンフを弄ぶ智樹達がかわるがわる耳朶に言葉を拭きこんでいく。
左右から同時に何度も何度もささやかれるその言葉を、ニンフの優秀な演算能力は全て理解し、記憶し、反芻する。
頭の中で何度も響くその言葉自体が麻薬のようで、正面からニンフを覗き込む何人もの智樹を見つめるニンフの顔がだんだんと夢見るようにとろけていった。
「んぐっ、ひぃ……ひもひいぃ! もっろ、もっろトモキのものにしへぇ!」
ニンフの言葉を合図に、体中を這いまわる智樹の手の動きがより一層激しさを増した。
ニンフの体中を震えが走り抜けて絶頂が近いことを知らせ、ニンフの体を弄ぶ智樹達は声を合わせて言った。
「ああ……」
「もちろん……」
「ニンフは……」
『俺のものだ』
「んひぃぃぃぃぃぃーーーーーーー!!!!!??」
「んむっ、ちゅっ、じゅろぉ……ひゃ、ひゃやああああ……」
そんなニンフのすぐ隣、アストレアの体は、無数の舌で舐め上げられていた。
ニンフと同じように宙へ浮かされた体に、智樹達は舌を伸ばしてアストレアの体を味わっている。
頬にも瞼にも額にも、智樹の舌が何度となく這いまわって唾液のぬめりを残していき、首筋から髪の毛の生え際まで固くとがらせた舌先でつつきまわされる。
脇や背中など、特に汗の出ている場所にはちゅうちゅうと音を立てながら吸いついて一滴残らず汗を舐め取られ、手足の指は全てしゃぶられてふやけかけている。
胸にはもういくつのキスマークをつけられたのかは分からず、谷間の底の汗まで舐め取られ、乳首は一時たりとも智樹の口の中から出ることが無い。
へそのすぼまりには智樹の口から垂らされた唾液が溜まってアストレアが体を揺らす度に波打つが、深く口の中まで犯すように口づけされたアストレアは見ることができない。
いや、仮に見ることができたとしても、膣とアナルの双方に限界まで舌を突きこまれ、体の内側すら舐め上げられるアストレアにはそれを認識する余裕はなかっただろう。
狭く広く、固く柔らかく、舐めて吸われてアストレアの体は智樹の唾液の色に塗り上げられていく。
視界は口づけする智樹の顔が一杯に映り、嗅覚は智樹の匂いしか感じられず、触角は前身くまなく智樹の舌の感触に覆われ、味覚は智樹の舌と唾液の味しかせず、聴覚は耳の穴に差し込まれた智樹の舌が蠢く水音しか聞こえない。
「んぶっ、ぐもっ、ちゅぅ……と、とも……きぃ……気持ち……いいいいぃぃ……っ」
五感の全てを埋め尽くされ、そのことごとくから快感を送り込まれたアストレアは、もはやまともな思考もできはしない。
口内深く差しこまれた舌に奉仕し、一本一本丁寧にしゃぶられる指で智樹の舌をなぞり、与えられる快感のままに豊かな腰と胸を震わせる。
そして最後に、何人もの智樹に一斉に羽へとむしゃぶりつかれ、アストレアの意識は一瞬で振り切れた。
「―――――――ッ!!!!!!!!!!???????」
そして、手と舌で体を弄ばれるニンフとアストレアに対し、イカロスは一足先に智樹を受け入れていた。
「ぐぽっ、ちゅばっ、れろれろ……んふぅぅ……んっ」
イカロスの体は複数の智樹に支えられてまっすぐに背筋を伸ばして立ちあがり、その身に無数のペニスを受けとめる。
口の中には既に何度か射精された精液が蟠り、新たに奉仕する極太を唾液と粘膜と精液の海の中で舐め上げている。
吸いつき舌を這わせる度に震えるその感触からこの智樹もまた絶頂が近いことを覚り、イカロスは自分の口の中がますます熱くなったようにさえ感じた。
両手は絶えず智樹を扱き、以前に射精に導いた別の智樹の精液がべっとりとへばりつき、まるで純白の手袋のようにイカロスの手首までを白く染めている。
豊かな胸の谷間にも熱い肉棒が挟まれ、両側から押し付けられた胸を強く擦っている。
イカロスの汗と智樹の精液が潤滑材となり、谷間にわだかまる精液がイカロスの乳房とともにたぷたぷと揺れている一方、こぼれおちた精液は胸を伝って下側からねっとりと滴を落としている。
「ぐぷっ……、ぢゅっ……、あ、あぁぁ……まふふぁ……まふふぁあ……んんーっ!」
胸を伝う滴の落ちた先、イカロスの下半身は前後から智樹に貫かれている。
膣とアナルに入れられた肉杭が動くたび、イカロスの内側でぶつかり合う衝撃が背筋を上る間に快感に変換され、頂点に達した脳を幸福感で満たしていく。
既に満タンになった膣内は愛液が滲む度に同量の精液を結合部の隙間から噴き出し、今再び射精され、引きぬかれた前の穴からは精液と愛液が混じり、どろりとした粘液が大量にあふれ出た。
しかしその穴もすぐに新たに張りつめた別の智樹によって埋められ、全身に真新しい震えが走る。
その震えが最も顕著に表れるのはイカロスの背中から生えた羽のはずであるが、今は重たげにその純白の身をわずかに揺することしかしない。
それもそのはず、イカロスの羽を染める純白は今、本来の色ではなく、智樹の精液によって塗り替えられた色なのだから。
イカロスの背中の羽には幾本ものペニスが擦りつけられ、射精され、その全ての精液を受けとめている。
羽毛はじっとりと精液を染み込んで重くなり、含みきれなくなった精液がぽたぽたと垂れている。
新たに熱い精液を羽に浴びせられる度にばさりと震える様がまたイカロスの羽を責める智樹達の歓心を買い、さらなる精液を以って迎えられるのだった。
そうしてイカロスの体が白く染め上げられるころには、ニンフとアストレアも智樹のペニスを受け入れている。
「ふーっ……ふーっ、んんー、んむぐぅぅぅぅぅうううん!」
ニンフは先ほどよりは少し上体を起こして前後の穴を塞がれ、小さな膣とアナルを限界まで広げられている。
智樹の体を受け入れるため、限界まで開いた足の先、足首がかくかくと揺れる。
滑らかな手に握らされた肉棒は赤黒く膨らんでグロテスクに光り、ニンフの手の中で震え出す。
艶やかなツインテールもその内側に智樹のペニスを包み込んでいる。
両側から髪の房をもった智樹が自分のペニスに髪を撒きつけ、わざわざニンフの視界に入る位置で髪ごと擦り上げていく。
射精するときはもちろん髪の中に吐き出し、髪に包まれた智樹の先端部分がわずかに膨らみ、その内側から白い精液を零す様子をニンフに目撃させる。
ニンフはそれを口の中に火傷しそうなほど熱いペニスを受け入れ、背中の透明な羽が白く染まるほどの精液を浴びせられながら見せられていた。
びゅくっ、びゅる、びゅるるるるっ
「んんーーーーー! んんんんーーーーー!!?」
再びニンフの腸内で智樹が絶頂を迎えた。
直腸はおろかその先までも叩くように噴き出した熱い粘液の感触に脳裏が焼けるが、全身から絶え間なく襲い来る刺激が気絶することすら許さない。
そして、その余韻に浸る間もなく射精したばかりの智樹が引き抜かれ、またすぐに新しいペニスが菊門を犯す。
その繰り返しが何度行われたか、もはやニンフは覚えていない。
ただ、さっきからだんだんと腹のあたりが重くなってきたような気がしているが、確かめるすべもない。
うっとりと焦点の合わない瞳を潤ませてペニスをしゃぶるニンフを見ながら、まるで妊娠したかのように膨らみ始めたその腹にいつ精液をかけて気付かせてやろうかとほくそ笑む智樹達だけが、そのことを知っていた。
「んちゅっ、ちゅばっ、じゅるる……んむぅん、んんふぅぅぅぅうううん!!」
アストレアもまた、その身に何人もの智樹を受け入れていた。
さっきと変わらず、宙に浮いて仰向けにされた体にまとわりつく智樹はアストレアの柔らかい肢体を夢中になってむさぼっている。
前後両方から貫くペニスは膣もアナルも激しく掻きまわし、根元まで打ち付けられた腰どうしがぶつかってパンパンと甲高い音を立てていく。
胴体にも一人の智樹がのしかかってその胸を掴み、谷間に挟んだ自分自身をまるで本物の膣にするように激しく出し入れしている上に、別の智樹達が両側からその先端に裏筋を擦り付けている。
イカロスやニンフと同じく両手にペニスを握らされているのはもちろんのこと、両腕は高く上げられ、脇の窪みにまで先端を押し付けられ、既に何度か精液を浴びせられた。
その口も当然見逃されるわけはなく、仰向けのまま喉を逸らされ、視界の上下が逆になったまま喉の奥まで突きこまれている。
直接喉奥に向かって精液を流しこまれる用に射精されたのも一度や二度ではなく、胃の中に精液が溜まっていると思うと、アストレアの心にまた違った快感が湧いて出る。
ぴたぴたと鼻先に玉袋が当たるために直接見えることはないが、アストレアもまたニンフ同様その長い金髪を使われている。
さらさらと流れる髪質が自慢であったのに、今では髪の毛で何重にも包んだペニスを頭皮に直接押し付けるように射精され、へばりついた精液が頭からにじみ出ているのではないかとさえ錯覚された。
人並み外れた饗宴も、しかしいつかは終わりを告げる。
満足するしないといった領域を一足飛びに超越し、飽和状態の法悦に染まったイカロス達と智樹は言葉もなく、触れ合う肌から次が最後であることを理解する。
エンジェロイドの三人は並べられ、イカロスと同じように上半身を立ち上がらせて智樹に攻め立てられる。
膣とアナルを抉る智樹はますます激しく腰を突き穿ち、愛液と精液の水音だけではなく、穴からこぼれおちようとする粘液のぐぽぐぽという音も響かせ始めた。
イカロスとアストレアは胸の谷間に、ニンフは両の先端をも使われ、それぞれの両手と口には今にも弾けそうなほどに張りつめた熱い肉棒が収められている。
見えはしないが背後の羽にも何本ものペニスが擦りつけられているのを感じ、ニンフとアストレアは改めてその髪の中にも肉杭を包み込まされていた。
そして、三人の目の前には、直接イカロス達に触れずに自分のペニスを扱く何人もの智樹達。
何をしようとしているのかなど、もはや考えるまでもない。
膣で、アナルで、胸で、両手で、口で、羽で、全身で余すことなく感じている智樹の震えが一層大きくなり、そのタイミングが目の前の智樹達のそれと重なった。
わずかに残った理性のためらいもさらなる快感で上塗りされ、イカロスは、ニンフは、アストレアは、つま先から髪の毛の端までを貫くような衝撃に、絶頂した。
「「「んんんああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」
どぴゅっ、びゅるっ、びゅくるるるっ!
膣とアナルに弾けた精液の熱さに脊髄が燃え上がり、柔らかな性感帯と化した胸に浴びせられる幾筋もの白濁が快感だった。
羽に染み込む精液の重さが心地よく、髪が智樹の色に染め上げられるのは極上の歓喜そのもののよう。
喉を滑り落ちる智樹の子種は甘いようにしか感じられず、全身から立ち上る精臭は紛れもない芳香であった。
部屋の中に荒い呼吸の音が四つ、規則正しく響いている。
全員が極限まで高められた絶頂に達したことにより、自動でカードの効果が切れ、智樹は一人に戻っている。
そしてそれと同時に部屋の中の様子も整えられ、全員の体は清められ、シーツは新品になり、淫臭のこもった部屋の空気も入れ替えられている。
だがそれぞれの身の内に残った火照りまではなかったことにされず、エンジェロイドの三人はそれぞれの膣とアナルからこぷこぷと許容量の限界以上に吐き出された精液を零し続けている。
そんな部屋の中に一つ、むくりと起き上がる影があった。
イカロスである。
まだその動きはどこか気だるげであるが、ゆるゆると首を巡らして部屋の様子を見ると、ずりずりとシーツの上で体を引きずるようにして動きだした。
その先にいるのは、智樹。
満足げな表情を浮かべ、無防備な様子で眠りに就くイカロスのマスターがいる。
イカロスは智樹の傍まで行くだけで体力が尽きたのか、ぽてりとその身をシーツの上に横たえ、体の下で胸をひしゃげさせる。
そのまましばらくじっと智樹の寝顔を見つめていたが、再びゆっくりと体を起こす。
智樹を起こしてしまうことが無いよう、音を立てずに枕元まで近づき、智樹の寝顔を近くで見つめ、そして。
「おやすみなさい、マスター」
ちゅっ、と。
智樹の頬に優しく優しくキスをした。
智樹はむにゃむにゃと何事か呟き、安心したように体の力を抜いてより深い眠りへと落ちていく。
そしてそれを合図に、智樹とエンジェロイド達の一日が、本当に終わった。
大なり小なり差はあれど、大体このようにして、最近の智樹の一日は過ぎていくのであった。