ある日、智樹はひとり自室で行為に耽っていた。右手の動きが
激しくなると共に欲情が高まり、自然、身体の揺れも増していき
「イイイッ…」と呻き声を思わず漏らしてしまう。
我を忘れて熱中していると、襖が開き、碧眼の少女が入ってくる。
「お呼びですかマスター」とイカロスの声
「!!」
「……」眼が合う智樹とイカロス
「アホかぁーーー!なんちゅう時に入ってくるんだぁぁ」
慌てて着衣を直しながら怒鳴る智樹
「申し訳ありません。お呼びになったと思い参りました」
いつもの様に無表情ながら申し訳なさそうにするイカロス。
「ノックもせずに入ってくるんじぁない」
「すみません…」と顔を伏せるイカロス
「はぁぁぁぁ」と深い溜息をつく智樹
そんな姿を見たイカロスは智樹の寝床の傍らに正座し
「あの、マスター何をなさっていたのですか?」と問う。
「そんな事言えるか!」と、布団に寝転がる智樹
「すみません。何かお役に立てる事はないでしょうか」
「あるわけ無いだろ」と正座したイカロスの太腿から眼をそらす智樹
「…」うなだれるイカロス
「あーあ、中途半端になっちゃったな…」
とぼやきながら智樹は布団の上でゴロゴロ転がる。
「あのーマスター」
「なんだ」と顔を背けたままの智樹
智樹の部屋に散乱している本を見てイカロスは「よくそういう本を
読んでいらっしゃいますが、お好きなのでしょうか?」
「まあな、思春期真っ盛りの男子中学生だからな」
「初めて、お目にかかった頃、私に服を脱ぐ様にお命じに
なりましたが、その時はちゃんと私を見ていただけませんでした」
「あの頃は、まさか本当に脱ぐとは思ってなかったからな」
遠い眼で回想する智樹「あん時はびっくりしたな」
「でも、その後は脱ぐ様にお命じになられません。私ではダメなのでしょうか」
「…そんな…」と思わず智樹は起き上がる。
「やはり私はマスターの好みではないのでしょうか?兵器の私では…」
「そんな事無いよ!」
「私の身体は人体と同じ組織で作られていて、外見、感触はもちろん人間の
女性と同等の機能が実装されていますのでマスターに悦んでいただく事も
出来ると思うのですが」
「そんな事、言ったって…」と言いつつもイカロスの肢体に眼が行き
思わず生唾を飲み込む智樹
「私は兵器−戦略エンジェロイド−として作られましたが、出来れば
マスターの愛玩用として生きて行きたいのです」
「愛玩用って…」思いがけずイカロスに迫られて、たじろぐ智樹
「そはらさんには良くエッチな事をされていますが、私にはしていただけませんし…」
「…」
「私には魅力が無いのですね。そはらさんや本物の女性の方が良いのですね」と眼を潤ませるイカロス
「そんな事ないって、すんごい美人でカワイイと思ってるよ!ただ…」
「ただ」と智樹をじっと見つめるイカロス
「おまえは俺の命令に逆らえないのが分かっているから玩具にしたくないんだ」
「…」
「おまえの事が大事なんだ!」
「私が大事…」首の鎖を両手で握り、眼を閉じるイカロス
そして再び眼を開き「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「我ながらちょっとクサイ台詞だったな…」と頭をかく智樹
「そんな事ありません。私なんかに優しい言葉をかけて下さって…」
イカロスは何時もの様に無表情であったが智樹には何故か微笑んでいた様に
見えた。そのあまりの可愛さに欲情しそうになるが、なんとか押さえこみ
「もう寝るから自分の部屋に戻れ」と命じる。
「はい、マスター」と部屋を出て行くイカロス
見送る智樹は呟く「押し倒した方が良かったのかな…」