もみじの赤く染まる季節…  
 
一本道のさびしい帰り道を鮮やかに彩っていた。  
 
そこには1人の少年とピンク色の翼を生やした少年より頭1つ分高い少女が歩いていた。  
 
「ふぅ〜、もう秋かぁ、なぁイカロス、お前って秋って知ってるか?」  
 
イカロスと呼ばれた少女はきょとんとした顔で少年の質問に答えた。  
 
「秋…ですか?マスター、秋とはいったいどんなものなのですか?」  
 
マスターと呼ばれた少年、名は桜井智樹という。  
 
智樹はこう答える。  
 
「秋って言うのはこういう風に景色を楽しむことが出来るいい季節のことだ」  
 
「そうなんですか?」  
 
「ああ、ほら、このもみじだってきれいだろ?」  
 
智樹はちょいっとあごを上に上げるとイカロスもつられて上を見る。  
 
「あっ…綺麗…」  
 
イカロスが見たのは風で散りゆくもみじの葉であった。  
 
「だろ?いい季節だと思うんだ、俺は」  
 
「なんとなく、マスターのおっしゃることが分かります」  
 
この距離で話をしていると周りの人たちは2人を恋人だと思うほどの近距離であった。  
 
そんなことを話しているともう家についていた。  
 
「ただいま〜」  
 
「おかえり〜」  
 
奥からイカロスとは別の声が聞こえた。その声の主はポテチを食べながら智樹たちを出迎えた。  
 
水色の髪の毛をしたツインテールの智樹よりも小さい少女で、名はニンフという。  
 
翼は七色の透明な翼で、翼というより羽というべきである。  
 
「ふ〜、今日は風が気持ちいいな、寒くなくて、暑くもないいい天気だ」  
 
居間にはちゃぶ台と座布団とテレビとシンプルである。  
 
だがそのシンプルさがやすらぎを与える仕様になっている。  
 
そんなわけでくつろぎの空間でやすらいでいるとイカロスがお茶と茶菓子を持ってきてくれた。  
 
「マスター、お茶です、どうぞ」  
 
ニンフの分も用意されてあり、3人分のお茶が出された。お茶の温度はちょうど80度。  
 
智樹は2〜3回息を吹きかけて冷ますと一口飲んで、味と風味を味わう。  
 
「…うん!イカロス、また煎れるのがうまくなったな」  
 
「そうですか?」  
 
智樹が褒めると頬を少し紅くして照れくさそうに智樹を見つめた。  
 
「ああ、美味い、これだけ美味いとお前を嫁にしてもいいかもな」  
 
「ブッ!!こほっ!こほっ!トモキ!急に変なこと言わないでよ!もう!」  
 
そういってニンフはお茶を飲み干して玄関の方へ向かっていった。  
 
ぼっ!!!とイカロスが顔を一気に真っ赤にしてぶしゅーっ!と煙を出している。  
 
「ま…マスター…冗談はやめてください///」  
 
「ん?冗談じゃないさ、俺は本気だよ」  
 
再び、ぼっ!!!と顔を紅くさせ照れているイカロス。  
 
「そのお言葉、ありがとうございます、私は夕飯の仕度をしてきますので…」  
 
「ああ、頼んだぞ、イカロス」  
 
「…かしこまりました、マスター」  
 
その場から逃げるように台所へ向かうイカロスの後ろ姿はうれしそうに見えた。  
 
「きゃあ!!!どうしたの!?デルタ!」  
 
ニンフの声が聞こえたがデルタといった。デルタとは3人目の未確認飛行物体であり、  
 
金髪で髪をひざの位置で包帯らしきもので巻いている、こいつはいわゆる電算能力0(バカ)だ。  
 
そのうえ、結構デレるというバカデレである。名はアストレア。  
 
アストレアと呼ばれた少女はか細い声でつぶやいた。  
 
「…お…おなか…すいた…なにか…食べさせて…ください…」  
 
ようするに行き倒れっていうやつか。と、智樹は思った。  
 
 
「あの…マスター、ご飯、出来ましたけど…アストレア?」  
 
イカロスの声を聞くとバッ!跳ね起きてイカロスにすがり付いてねだり始めた。  
 
「お願いします!イカロス先輩!ご飯を食べさせてください!」  
 
今にも泣きそうな目で訴えている。それを見たイカロスは智樹に許可をもらうかのように見つめた。  
 
「ふぅー、いいんじゃないか?」  
 
「はい、マスター、アストレア、あがって」  
 
「ありがとうございます!イカロス先輩!」  
 
それから小さなちゃぶ台に4人が座り夕飯にありつく。  
 
こんな光景を他人に見られたら智樹が父親、イカロスが母親、ニンフとアストレアが娘たちといった風に思うだろう。  
 
「おいしい!おいしぃよぉ〜」  
 
ものすごい勢いで飯にありつくアストレアを見てイカロスもうれしそうにしているように見える。  
 
「にしても、イカロス、やっぱお前の飯はうまいな!」  
 
ぼっ!!!三度目なので説明は要らないだろう。  
 
「そ…そんなことはありません、私はマスターが食べてくれるだけで幸せです」  
 
ものすごく照れた表情でちらっ、ちらっと智樹の顔をみるイカロスはかなり人間らしくなった、といえる。  
 
「にしても、いいなぁ、ニンフ先輩やムシは、毎日こんなにおいしい料理が食べれて」  
 
夕飯を食べ終わってからアストレアはため息を1つついた。  
 
「別にお前だってこればいいじゃないか」  
 
「だってムシの家でご飯を食べるなんて恥みたいなことできるわけないもん!」  
 
きっ!と智樹をにらみつける。  
 
「ふー、分かった、分かった、じゃあその辺まで送ってくよ」  
 
「ムシのくせに生意気ね!私は大丈夫よ!」  
 
そういった矢先に出っ張りで引っかかってこける。  
 
「ほら、だから言ったのに!ホラ、つかまれ」  
 
「つ〜!!いったぁ〜い…」  
 
肩をつかんで引くようにして川原に向かって歩いていく2人は闇へと姿を消した。  
 
「ねぇ、ムシ」  
 
「ん?なんだよ」  
 
「ムシはどうしてイカロス先輩やニンフ先輩と仲良くなってるのよ」  
 
「さぁな…気がついたらなんかこうなってたんだよ」  
 
「ふぅ〜ん…そうなんだ、ここまででいいわ」  
 
「おっ?そうか」  
 
「あんたがバカだから気がつかないんじゃない?」  
 
「なっ・・・なんだと!!?」  
 
「あんたがバカだからよ!バーカ!バーカ!」  
 
「んだと!!?お前の方がバカだろう!?バーカ!バーカ!」  
 
「うるさいわね!バーカ!バーカ!」  
 
「バーカ!黙れ!バーカ!」  
 
ヴァカはお前らだ。  
 
「…っ…まぁいいや、じゃあな、気をつけろよ、あっ、それとな、腹減ったらいつでも家に食べにこいよ」  
 
そういって家に向かって帰る智樹の後ろ姿を見送りながらアストレアはつぶやいた。  
 
「なによ…もう少しくらい…居てくれたっていいじゃない………バーカ…」  
 
ぷいっ!と逆方向を向いて帰っていくアストレアであった。  
 
そしてもう一度振り返り…かなりデレが入った声でこうつぶやき走り去った。  
 
「……ばーか……」  
 
END  
 
 

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