「まずはさっきのオシオキ」  
「あっ」  
 ニンフの着ているワンピースをたくし上げる。  
 現れたのはシミ一つない綺麗な肌。  
「……………」  
 密かに生唾を飲み込む。こんな経験あるはずもない。  
 緊張するのは当然の事だった。  
 けれどそれを悟られてしまっては”オシオキ”どころの話ではない。  
 あくまで平静を装って、ニンフの控えめな胸を掴む。  
「や、ん……」  
 何度か、勢いに任せて触れた事はある。  
 だがこんな風にまじまじと触れたのは初めてで。  
「(こいつのでも、こんなに柔らかいんだ……)」  
 などと、本人に聞かれたら全力で殴られそうな事を思う。  
「……どうせ、小さくて揉み応えがないとか考えてるんでしょ?」  
 ギクッという音が聞こえそうなほどに衝撃を受けてしまう。  
「いっイエイエイエ! そんな事、欠片ほども思っておりませんヨ!?」  
「どうだか」  
 ジト眼のニンフ。  
”オシオキ”発言の時の威厳など、最早何処にもなかった。  
 だが実際、揉み応えがない、とは思わなかった。  
 小さくても、十分に柔らかいし、  
「あっ、トモキ……!」  
 何より、ニンフの声が、表情が、自分の愛撫で感じてくれている事を教えてくれる。  
 それもまた、心地良さを増長させていた。  
「感度良いな、お前の胸」  
「べ、別にそんなこと……ひゃぅ!?」  
 胸の頂を口に含み、舌を這わせる。  
「見てみろ、こんなこと出来るくらいに乳首立ってるんだぞ」  
「ッ〜〜〜!」  
 指摘してやると、ボッと音が出そうなほどに顔を真っ赤に染めた。  
 その反応が智樹の嗜虐心をくすぐる。  
 要するに、もっとイジめたい。  
   
   
「それに、ここも」  
「と、トモキ、そこは……!」  
 智樹の手が、おもむろにニンフの下半身に伸びる。  
 胸の上にまでたくし上げられているワンピース。  
 当然、今彼女の秘処を守っているのはショーツのみ。  
「ひゃんっ」  
 薄い布地の守りは、大して役に立たない。  
 感触もそう変わらないし、何より、  
「これじゃ下着の意味ないな、濡れ過ぎて透けてるじゃん」  
 溢れだす愛液の所為で透けているし、肌に張り付いている。  
 ニンフの大事な部分の形を、くっきり描いてしまっているのだ。  
「この濡れ方、さっきのおっぱいだけじゃないよな」  
「そ、それは……!」  
 こんな時ばっかり、勘が鋭い。  
 こっちの想いとかには、全く気付かないのに。  
「ひょっとして、俺のを舐めてる時からとか?」  
「そんな、こと……ぁんっ」  
 
 さっきからずっと、クチュクチュと水音が聞こえている。  
 自分の、秘処から。  
 智樹がしつこいほどに指で愛撫してくる所為だ。  
「あうっ」  
 異物感。  
 表面を撫でていただけの指が、一気に二本膣内に入ってきた。  
「ほら、指二本がすんなり入る。お前、かなり感じやすいっぽいぞ」  
 自分の言葉を証明する為か、一度指を抜いて、ニンフに見せる。  
 大量の愛液が絡みついた、智樹の指を。  
「〜〜〜っ!」  
 こんなまざまざと見せつけられるのは、とてつもなくハズかしい。  
 けれどそれ以上に、重要な事が一つあった。  
「……は、キライ?」  
「え?」  
「だから! ……トモキは、エッチな女の子、キライ?」  
 数瞬、智樹の表情が固まった。  
「いっいや、アリだと思いますヨ!? その、そういうのもカワイイし!」  
「そっか」  
 冷静に見えてたけど、智樹に限ってそんな事はなかった。  
 自分とこんな事して、ちゃんとドキドキしてくれている。  
 慌てふためいた声がそれを証明していた。  
「トモキが好きなら、私、エッチな女の子でもいいかな」  
「なっ――!」  
 智樹がまた固まった。  
「ど、どうしたの?」  
「いやなんていうか……お前、可愛すぎ」  
 背中に手を回し、抱き締められる。  
「あ……」  
 肌と肌、温もりと温もり、鼓動と鼓動が重なり合う。  
 今誰よりも、自分が智樹の近くにいるという実感。  
「トモキぃ」  
「わっ……!」  
 温かくて、けれど同時に切なさが込み上げてきて。  
 顔を上向かせ、智樹の唇に自分のそれを重ねる。  
「んっちゅっ……」  
 まだ、まだ。  
 出来る限り、長く。  
「――はっ!」  
「あ……」  
 先に智樹の方の息が続かなくなったらしく、唇を離された。  
「い、今のがファーストキスだから!」  
「え?」  
「だってさっきのは強引にキスされて、何が何なのか分かんなかったんだもん!  
 だからアレはノーカウントなのっ!」  
 こっちだって、初めてだったのだから。  
「いやでも、それ言ったら今のだってお前結構強引に……」  
「男がそんな細かいコト言わないの!」  
「はっハイ!」  
 初めては、やっぱりロマンティックに……。  
   
   
「じゃあニンフ、いくぞ?」  
「う、うん」  
 智樹がニンフの秘処に、自身の先端を宛がう。  
「(こ、この穴に挿れるんだよな……)」  
 
 今までの行為も勿論緊張していたが、今のそれは完全に別格だった。  
 何せセックスの、いわゆる本番である。  
 それでも未だにあるのが意地。  
 緊張している、慌てている内心を悟られたくないから、なるべく平静を装う。  
 いきり立っているモノを、ニンフの中心に……  
「んっ……」  
「あ、アレ……?」  
 ……に、入らない。  
 縦に入っている筋を割り開いて挿入を試みたのだが、そこから先に進まない。  
「な、なんでだ?」  
 何度か試行錯誤を重ねるが、逸る気持ちとは裏腹に、分身がニンフの中に埋まる事はない。  
 が、偶然、  
「うわっ?」  
「あっ、ん……!」  
 智樹が思っていたよりも下の方にあった本当の場所に、滑り込んだ。  
「は、挿入った……トモキの……」  
 だが入りはしたものの、そもそもに幼い姿をしたニンフの膣。  
「ニンフの、膣内っ……キツッ……」  
 締め付けが非常に強く、思うように進める事が出来ない。  
「ふっ、んんっ……!」  
 それに加えて、ニンフが浮かべている苦悶の表情。  
 強引にいくのも躊躇われる。  
 少しずつ、少しずつ腰を進めてゆき、  
「んっ……あっ?」  
「お……?」  
 行き止まりに当たる。  
 まだ智樹のモノは、さほど入ってはいない。  
 とするとこの壁は、初めての、証。  
「ニンフ、痛いと思うけど我慢して……」  
「……して」  
「え?」  
「キス、して。そうすれば、がんばれると思う、から」  
 健気なニンフの言葉、お願い。  
 断る術があるはずもない。  
「ああ」  
 三度目のキス、今度は智樹の方から。  
「トモキ――んっ」  
 優しく、ありったけの気持ちを込めて。  
 そして……  
「んっんんんンン――ッ!」  
 早く済ませようと、一息にニンフを、奥まで貫く。  
   
   
「トモキ、トモキぃ……ッ!」  
 痛い。すごく。  
 この痛みの理由が理由でなければ、とても耐えられない。  
「ああ。頑張ったな、ニンフ」  
「あ……」  
 けれど、この痛みは智樹と一つになれた証だから。  
「――うんっ」  
 そして自分を労って、頭を撫でてくれる彼の手が温かいから。  
 心地良いから。  
「トモキ、動いて、いいよ」  
「大丈夫なのか?」  
「平気。ヘーキ、だから」  
 本当は、まだ痛い。  
 でも自分の所為で、智樹に我慢をさせたくないから。  
 
「……分かった。動くぞ?」  
 それを知ってか知らずか、頷く智樹。  
 止めていた腰の動きを再開する。  
「んっ、くっ……!」  
 智樹がモノを引き戻し、再び挿入する度に、秘処に痛みが走る。  
「ニンフ、これ……想像してたよりも、ずっと――!」  
「あっ、あっ、トモ、キ……!」  
 智樹の方は逆に快感が増し続けているのか、徐々に動きが激しくなってくる。  
 当然、ニンフが感じる痛みも、大きくなる。  
「ゴメンッ! これもう、止められねぇ!」  
「んっ、ふっ、あっ……!」  
 けれど、好きという気持ちの、力だろうか。  
 智樹が自分を愛してくれている、そう考えるだけで、  
 この痛みすら愛を刻まれているという喜びに変わる。  
「あっ、んっ……やっ」  
 そしてそれが徐々に快感に変わっている事にも気づいた。  
「ニンフ……!」  
「トモキ……んっ」  
 重なる唇と唇。  
 とにかく、少しでも多く、智樹と繋がっていたい。  
 秘処も、唇も。  
 ――心も。  
「ニンフ、俺、もう……!」  
「うん……ちょうだいトモキ! 私の膣内にっ!」  
 欲しい。  
 それが、何よりもの、自分を愛してくれている証に思えてならなかったから。  
「――出るッ!」  
 最後に大きく腰を引き、一気に貫いて、  
 智樹がニンフの膣内に、ありったけの欲望を解き放った。  
「あああっ――!」  
 自分の膣内に、流れ込んでくるのが判る。  
「(これが……アツい……っ)」  
 それがニンフにとっての引き金になった。  
「あっ、んん――ッ!」  
 今まで感じていた快感をさらに上回る大きな波。  
 思考すら、流されそうになる。  
 辛うじて考えられた事は、二つ。  
「(私も、イッちゃったんだ……)」  
 という事実と、  
「(私今、すごく幸せだ……)」  
 という、実感だった。  
 
 
「本当にこんなんで良かったのか?」  
 布団の中、二人が横になっている。  
 智樹の腕の上には、ニンフの頭が乗っかっている。  
 所謂腕枕、というやつだ。  
「これくらいしか思いつかなかったから」  
 元々小鳥を飼う事を許してくれたお礼、そのつもりだった。  
 だが事が終わった後、痛がるニンフの姿を思い出し、後ろめたくなったのだろう。  
 ニンフの希望を一つ叶える、という提案をしてきた。  
 こちらがお礼をした側なのだからと断ろうとしたのだが、  
『じゃあ命令、俺にお前の望みを叶えさせろ』  
 と、押し切られてしまった。  
「別に、今決めなくても良かったのに」  
「ううん、これで良い」  
 これくらいしか思いつかなかったから。  
 今は、智樹と一緒にいたいとしか考えられなかったから。  
   
 エンジェロイドは眠らない。  
 この長い夜の間、彼の腕の中で、彼のぬくもりを感じながら。  
 ずっと、ずっと――。  
 
 

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