「うぅ〜ん……」  
 今日はなんかカラダの調子がおかしい。  
 回路が妙に熱っぽくなってる気がするし、フラフラする。  
 これ、確実に風邪引いちゃったな。  
「よりにもよって、今日なんて」  
 今日は、ずっと楽しみにしてたのに……。  
   
「寝てなさい」  
「えーっ」  
 風邪を引いてるのを気付かれないように、振る舞おうと思ってたのに。  
 視界がグチャグチャになってるせいで出来なかった。  
 起きてきたトモキに、フラフラしてるところを見られて、この状況。  
「えーっ、じゃない。風邪の時は大人しく寝てさっさと治すのが一番!」  
 うぅ〜……こうなるから、バレちゃいけなかったのに。  
「大体、なんでそんなに寝る事に反対してるんだ? ……あ、いや、お前らは眠らないのか……。  
 なら別に、横になってるだけでも」  
「そうじゃなくて……」  
「? じゃあ、何?」  
 ……笑われないかな、こんな事言って。  
「その……パフェ」  
「パフェ?」  
「今日はちょっとぜーたくして、駅前のお店でパフェを食べる日なの!」  
 ハズかしさを隠すために叫ぶ。  
 でもこれ、余計ハズかしい気が。  
「……別に、明日食えば良くね?」  
 あーもう! トモキなら絶対そういう反応してくると思った!  
「一週間この日を楽しみにしてるのっ、一日でもズレるワケにはいかないのよ!」  
「んな事言ったって……」  
「ひゃっ――?!」  
 ちょっと、なんでいきなり人のオデコに手を!  
「ほら、やっぱり熱出てんじゃねーか。そんな状態でパフェ食っても味なんて判んねーだろ」  
「バッバカにしないでよ! こんな熱くらいでわかんなくなるような安っぽい味覚じゃないんだから!」  
「はぁ……」  
 ……溜め息なんて吐かれた。  
 だって、だって……  
「命令だ、ニンフ。今日は一日大人しくしてろ」  
「え?」  
 めい、れい。トモキからの。  
「わかり、ました」  
 
 
「やれやれ……」  
 あんま言いたくないんだけどな。この言葉。  
 けどま、あそこまで駄々こねられちゃああするしかないし。  
 それはそうと……  
「未確認生物の看病って、人間と同じで良いのか?」  
 前にも一度風邪を引いた事があったけど、あの時はイカロスに任せきりだったからな。  
「ま、いっか」  
 濡れタオルを持って、ニンフが寝てる部屋に向かう。  
 あいつらは眠らないからきっと退屈してるだろうし、しばらく話し相手になっててやるか。  
「ニンフー、入るぞー」  
「トモキ? どうぞー」  
 ……なんだろう、自分の家の部屋に入るだけのハズなのに、なんか緊張するぞ。  
 いや、意識しすぎ。ここは自然に。  
「どうだ、調子は?」  
 ドアを開いて部屋に入る。  
「もう良くなった」  
「ウソつけ。さっき別れたばっかだろ」  
「じゃあ聞かないでよ」  
 とりあえず、こんな風に言い返す気力はあるワケだし、そんなに重くはないと思う。  
 けどだからこそ、軽いうちにパパッと治さないと。  
「ほら、濡れタオル。これ頭にのっけてろ」  
「うん……ひゃっ」  
 冷たかったのか、声を上げる。  
「……………」  
「……………」  
 ……さて。しばらく話し相手になっててやろうと残ったけど。  
 何を話せば良いんでしょうかねぇ。  
「出ていかないの?」  
「あ、ああそうだな。もう用事も済んだ事だし」  
 やっぱただここにいてもジャマなだけだよな。  
 今日は休みだし、俺も部屋に戻って有意義な過ごし方を……  
「あ! べ、別にここにいても、いいんだけど!」  
 立ち上がった瞬間、ニンフが起き上がる。  
 額に載せていたタオルが、布団の上に落ちた。  
 風邪の時って、なんか心細くなったりするもんだけど。  
 未確認生物も、そういうもんなのかな。  
「なら、もうちょっとだけいてやるかな」  
「うん……」  
   
   
「なら、もうちょっとだけいてやるかな」  
「うん……」  
 良かった。トモキ、いてくれるんだ。  
 トモキが立ち上がった瞬間、不安になって、思わず呼び止めちゃった。  
「んっ……」  
 布団の上に落ちちゃった濡れタオルを、載せ直してくれた。  
 思わずヘンな声が出ちゃった。  
 冷たいのと、なんだかとってもくすぐったくて。  
「ねぇ、トモキ」  
「ん?」  
 風邪引いちゃってるんだし、少しくらい甘えても、いいよね?  
「お腹すいた」  
「ああ、そういやそろそろいい時間だな」  
 
「マスター。お粥を持ってきました」  
 トモキが動くよりも、私が言うよりも早く、アルファーは準備をしてた。  
「サンキュ、イカロス」  
「……………」  
 ? なんだろ、アルファーの様子が……。  
「お任せしてもよろしいですか? マスター」  
 任せるってなにを? 後片付け?  
「ん? まあ良いけど」  
 何故かトモキが、アルファーからお粥を受け取る。  
 そしてトモキが、レンゲでお粥を掬って。  
 って、ちょっと待って。それって私の分なんじゃ――  
「ふーっ、ふーっ、ほらニンフ、あーん」  
「え……?」  
 トモキは自分の息でお粥を少し冷ましてから、私の方にレンゲを向けてきた。  
「? どうした?」  
 そんな事までされるとは思わなくて。  
 嬉しくて、でも照れくさくて。  
「えっと、あの……」  
 私は上手く反応が返せずにいる。  
「……………」  
 そんな私を、トモキは急かす事もなく、ただ待ってる。  
「あ、あーん……」  
 私はやっと口を開いた。  
 なんだろう。すごくくすぐったい気持ち。  
 トモキの運んだレンゲが、私の口の中に入ってく。  
 口の中に、薄い味が広がる。  
「味うすい」  
「病人なんだからガマンガマン」  
 全然好みの味じゃない。  
 でも、なんだろう。  
 トモキに食べさせてもらったお粥の味、なんだかいいな。  
「一口じゃ足りない。もっとちょうだい」  
「ああ。ほら、あーんだ」  
「あーん……」  
   
 お椀の中身が空になるまで、トモキはそれを繰り返してくれた。  
 
 
 次の日。  
 昨日大人しくしていたのが良かったんだろう。  
 ニンフの風邪は一日でカンペキに治った。  
「ただいまー」  
「ただいま」  
「お、おかえり」  
 イカロスと一緒に学校から帰ってきてみると、玄関でニンフが出迎えてくれた。  
 いつもなら居間でテレビを観ているから、こういう事は少ない。  
「……………」  
 しかも何か言いたげにモジモジしてる。  
「? どうした?」  
「えっと、今からパフェ食べに行こうと思ってるんだけど……」  
「ああ、そういや昨日言ってたっけな」  
 たまたま出かけようとしていたところに俺達が帰ってきたんだろう。  
「うん。でね、昨日看病してもらったから、  
 その……トモキにも、パフェごちそうしようかなぁって」  
 なるほど。どうやらその為にわざわざ待っててくれたみたいだ。  
 ま、好意は素直に受け取っておきますか。  
「よし、じゃあ行くか、三人で!」  
「うんっ! ……え?」  
 
 駅前のファミレス。  
「お待たせしましたー」  
 まさか、こうなるなんて。  
 いや、よくよく考えればこうなって当然か。  
 トモキとアルファーは一緒に学校から帰ってくるワケだし。  
 それに……  
「私も、いいの?」  
「そりゃ、アンタだってお粥作ってくれたりしたんだから」  
 アルファーにだって、お礼しないと。  
 お礼……。そうだ、アレをしなきゃ。  
「じゃ、いただきま……」  
「あっ、待ってトモキ!」  
 呼び止められて、スプーンを止めるトモキ。  
 アルファーまで律義にスプーンを止める。  
「その、トモキには特にお世話になっちゃったから」  
 止まったスプーンの代わりに、私は自分のスプーンを動かす。  
 てっぺんの、チョコレートソースがたっぷりかかったバニラアイスを掬って、  
「はい、あ、あーん……」  
 昨日トモキがしてくれたのと、同じ事を。  
「いいっ!?」  
 慌てふためくトモキ。  
 微妙に後ずさってさえいる。  
「トモキは私に、食べさせてほしく、ない……?」  
 恥ずかしかったけど、私は昨日、トモキに食べさせてもらってとても嬉しかったから。  
 
 お礼に、私も食べさせてあげたら、トモキも喜んでくれる。  
 そう、思ったんだけど。  
「い、いや、そういうワケじゃ……」  
 トモキの眼を見つめる。  
 それだけで、心の中を覗けたら、こんなに不安にならずに済むのに。  
 だけど、  
「……………」  
 トモキが、微笑む。  
「わかった。あーん……」  
 だけど、応えてくれた時、こんなに嬉しくなる事もないから。  
「――うんっ」  
 開いた口に、昨日トモキがしてくれたみたいに、スプーンでアイスを入れる。  
「どう? おいしい?」  
「ん……一口だけじゃちょっと分かんないな」  
 伝わる。もう一口。  
「しょうがないなぁ、はい、あーん」  
「あーん……」  
 またスプーンが、トモキの口の中に入る。  
「あの、マスター……」  
 そこにアルファーの声。持ってるスプーンの上には、生クリーム。  
「私からも、どうぞ」  
「ん、ああ。じゃお言葉に甘えて……」  
 口を開くトモキ。  
 アルファーの場合は素直に食べさせてもらうんだ。  
 私の時はいろいろ言ってたクセに。  
 しかもなんか嬉しそうな顔してる気がするし。  
 
「トモキのスケベ」  
「えっ? なんで!?」  
 ボソリと呟いて、自分の分のパフェを食べる。  
 口の中いっぱいに広がるチョコレートの風味。  
 ……ってあれ? このスプーンって確かトモキに……  
「ッ――!」  
 意識した瞬間、顔が急に熱くなった。  
 トモキが口を付けたスプーンでそのまま私がパフェを食べて。  
 これって確か、間接キスっていうんじゃ……。  
 間接、キス……。  
 キス……  
「あれ? お前なんか顔赤くないか?」  
「っ……」  
 なんでこういう時ばっかり鋭いんだろ。  
 一番知られちゃいけない相手に知られてしまう。  
「お前ひょっとしてまだ風邪が――」  
「なっ、なんでもないっ!」  
「ぎゃあああっ!?」  
 手近にあった物を投げつける。  
 ハズかしくて、思わず。  
「マスター……」  
「……………」  
 フォークが額に刺さってる。  
 もしかしなくても、私がさっき投げたヤツ、よね……?  
 ……………。  
 
「えっと、大丈夫……?」  
「……………」  
 返事はない。ど、どうしよう。  
「こういう時は、まず人工呼吸を……」  
 アルファーがトモキの方に顔を近づける。  
 こういう場面で、ホントに人工呼吸が正しい対処法なんだろうか。  
 けど、それよりも……  
「待ってアルファー! 私の所為でこうなったんだから、私が――!」  
「あっ――!」  
 ……先に言っておくけど、別に狙ったつもりはホントになくて。  
 けどアルファーを押しのけた私は、そのまま勢い余って。  
 勿論、人工呼吸しようとしてたワケだから、結局はこうなるんだったんだろうけど。  
「……!」  
 いきなりこれは、これって……  
「(私、トモキとキス、しちゃってる……!)」  
 私の唇とトモキの唇が、重なり合ってた。  
   
 看病してくれたお礼。  
 それから、昼ドラで観て、トモキにもしてもらった『あーん』をしてみたくて。  
 だだそれだけで来たファミレスで。  
 予想以上にスゴイ事が、起きてしまった。  
 
 
『マスター……』  
 何故かいきなりニンフにフォークを投げつけられて。  
 刺さったショックで俺は気を失ってしまった。  
『えっと、大丈夫……?』  
 相変わらずこいつらはやる事がメチャクチャだ。  
 で、意識はわりとすぐに戻ったんで一言ガツンと言ってやろうかと思ったんだが。  
『こういう時は、まず人工呼吸を……』  
 会話の流れが少し不穏なものになってきておりまして。  
 これは一刻も早く起き上がらないと、と思い顔を上げたのと、  
『待ってアルファー! 私の所為でこうなったんだから、私が――!』  
『あっ――!』  
 ニンフがイカロスを押しのけて、勢い余って体勢を崩したのが重なって、  
「(ちょっ、これってまさか……!)」  
 まあ、唇と唇が合わさってしまっていたワケでして。  
「ッ――!」  
 ニンフが勢いよく顔を離す。  
 そしてそのまま、  
「ごっゴメンなさい!」  
 一言残して、走り去っていった。  
 ……………。  
 ………。  
 ……。  
「……………」  
 アレから三日。  
 ニンフとまともに顔を合わせられない日が続いている。  
 さすがにアレは気まずい。  
 オマケに直後に逃げられちゃったし。  
 事故だから仕方なかったとはいえ、やっぱりイヤだったんだろうなぁ。  
 だからってこの状況はさすがにちょっとショックが大きいんだが。  
 
 
「どうしよう……」  
 トモキと顔を合わせられない。  
 あのことを思い出して、ハズかし過ぎて。  
 トモキはあのこと、どう思ってるんだろう。  
「それじゃ……行ってくるから」  
「あっ、待ってアルファー私も」  
 買い物に行こうとしてるアルファーについていこうと思った。  
 こういう時は外に出て気分転換しないと。  
 けれどアルファーは静かに首を横に振って、  
「宅配便が届くはずだから……お留守番してて」  
「そ、っか。うん、わかった」  
 私の思惑をあっさりと打ち破ってしまった。  
 しょうがないか。大人しく留守番してよう。  
 ……………。  
 ………。  
 ……。  
 どうしよう。  
 こうなる事をちゃんと予想しておくべきだった。  
 っていうかアルファー、この為に私がついて来ないようにしたんじゃ……。  
 とにかく、とにかくっ  
「……………」  
「……………」  
 居間でトモキと二人きり。  
 この家には今二人しかいないんだから当然だ。  
 こんな時に限ってデルタもそはらも来ないし。  
「……………」  
「……………」  
 気まずい。トモキも何も喋ってくれないから尚更。  
 そうだ。テレビでも観て、そこから何か話題を……  
『奥さん! ぼかぁもう……!』  
『だ、ダメ……んっ……』  
 って、なんでよりにもよってキスしてんのよ、昼ドラで!  
 やっぱりテレビはダメだ。早く消して――  
「お、俺お茶でも淹れてくるから!」  
 そう思った瞬間、トモキが立ち上がる。  
「待って! それなら私が――!」  
 本能的に、それを遮る。  
 そういう事は私に命令してくれれば良いのに。  
 そう思いながら立ちあがって、  
「あっ……!」  
 慌ててたから、足がもつれて、  
「わっ……!?」  
 丁度立ち上がりかけてたトモキにぶつかって。  
 そのまま、二人して倒れ込む。  
 
「……………」  
「……………」  
 真下にトモキの顔。すごく近い。  
 トモキ、私の事ジッと見つめてる。  
 ヘンな気分。私もトモキから、眼を逸らせない。  
 さっきまで顔を合わせる事さえできなかったのに。  
「トモキ……」  
「ニンフ……?」  
 避けられないようなスピードじゃない。顔を近づける。  
 近づける、よりも近づく、の方が正しい気がする。  
 吸い込まれるように、トモキの唇に……  
「んっ……」  
「まっ……!」  
 前にも感じた感触。  
 ううん、前は事故でパニックになってたから、あんまり覚えてない。  
 でも今回はきちんと感じる事が出来る。  
 触れ合ってる唇が、すごく熱い。  
「(トモキの心臓、すごく早くなってる)」  
 私の胸の少し下。激しく脈打ってるのが分かる。  
 トモキ、ドキドキしてくれてるんだ。  
 私の今の状態も、同じようにトモキにバレちゃってるのかな……?  
「トモ、キ……っ」  
 私とトモキの足が絡み合ってて。  
「に、ニンフ? ちょっ……」  
 どうしよう。なんか、止まんない。  
 トモキの身体に、自分の身体を擦りつける。  
 身体が、熱い。  
   
   
「トモ、キ……っ」  
 マズイ。マズイマズイマズイ。  
 多分、顔を近づけてきたのを避ける気になれなかった時点で終わってた。  
 いやだって、あの状況で冷静に避けるヤツがいたら絶対人間じゃねーだろ。  
 で、なんかキスされて、  
「に、ニンフ? ちょっ……」  
 なんかスイッチが入ってしまったらしい。  
 ニンフが自分の身体を俺に擦りつけてくる。  
「トモキぃ……」  
 そんな状態で潤んだ瞳を向けられて。  
「きゃっ!」  
 耐えきれるワケがなかった。  
 一瞬で位置を逆転させる。  
 俺の下にはニンフの、驚いた顔。  
「お前が、悪いんだからな」  
 そうやって、カワイイ顔して誘うような事するから。  
 おかしな事になったもんだ、と心のどこかで冷静な自分が呟いて。  
 けどそれを無視して、俺はニンフの身体に手を伸ばした。  
 
 
「トモキぃ……」  
 身体が熱い。  
 それでいて、すごく切ない。  
 密着しているはずの身体をもっと近づけたくて、グイグイ押しつける。  
「きゃっ!」  
 強引に位置をひっくり返される。  
 今は私が、トモキに押し倒されてる。  
 当たり前か。こんな誘ってるようなことしちゃったんだから。  
「お前が、悪いんだからな」  
 違うか。みたいじゃなくて、誘ったんだ。  
 いつの頃からかトモキに恋しちゃって。  
 昨日偶然キスしちゃって、今日はこんな状態。  
 自分でも気付かないうちに、こうなる事を期待してたのかな。  
「あっ……」  
 抵抗しないようにするためなのか、トモキが私の両手首を掴む。  
 トモキは失念してるんだろうけど、こんな事してもホントは何の意味もない。  
 この程度の力で押さえつけても、カンタンに振り払えるんだから。  
 けど、  
「トモキ……」  
 そもそもこんな風に押さえつける必要自体、ない。  
「ニンフ……っ」  
 唇を奪われる。さっきまでのたどたどしい感じじゃなくて、強く。  
「ン……んッ?!」  
 境目を割り開いて、トモキの舌が私の口の中に入り込んでくる。  
「ん、ちゅっ、ぇろ」  
 熱い。地蟲の舌って、こんなに熱かったんだ。  
「ん、あっ……」  
 ううん、違う。きっとトモキのだから。  
 こんなに熱くて、口の中をねぶられるのがこんなに気持ち良い。  
 
「んンぅ――!」  
 キスに夢中で気付かなかった。  
 トモキの手が、私のスカートの中に入り込む。  
「や、ん……」  
 指が蠢いて真ん中をゆっくり撫でられる。  
「ヤバ……すっげぇヤワらかい」  
「やぁっ……トモキ……っ」  
 夢中で私のアソコを撫で続けるトモキ。  
 頭の中がどんどんボヤけてく。  
「……よっと」  
「え……?」  
 だから両足を持ち上げられた事にもなかなか気づかなくて。  
「ちょっとトモキ、何を――ひゃっ!?」  
 気づいた時にはもうトモキが、私のアソコにキスをしていた。  
「やっ……舌が……っ」  
 そしてさっきのキスと同じで、舌が私の中に入り込んでくる。  
 ヌルヌルして、熱くて、とてもヘンな気分になってくる。  
   
   
「あっ、んっ、ふっ……」  
 舌で舐め続けてやると、明らかに感じてる声で喘ぐニンフ。  
 それがハズかしいのか必死に声を抑えようとしてる。  
「やんっ、くっ、んぅ……」  
 けどそうやって、親指の爪を噛んで堪えてるのを見て。  
「きゃっ!?」  
 余計にイジめたくなってしまう。  
 手を伸ばして、今までノータッチだった胸に触れる。  
 小さな胸だけど、それでもやっぱり女の子の胸。  
 柔らかくて、揉み続けてるとメチャクチャ気持ち良い。  
「それ、ダメぇ、トモキぃ……」  
 一箇所だけの刺激で、既に翻弄されてたんだ。  
 今の状況は、もうワケが判らなくなってんじゃないだろうか。  
 さっきから溢れてきてる愛液の量も、目に見えて増えてるし。  
「んっ、ぴちゃっ……」  
「やっ、あっ、ぅんっ……!」  
 少しだけ頭を離して見てみると、イヤイヤと首を横に振り続けるニンフ。  
「イヤか? ニンフ」  
 
「え……?」  
 ……自覚したばかりのSのスイッチが、オンになる。  
「ホントにイヤなら、ここでやめるから」  
「トモキ……」  
 エロマンガなんかでよくあるシチュエーションを、自分が起こすとは思わなかった。  
 いや、これは多分ここまで可愛くていぢめたくなるコイツが悪い。  
「じゃ、俺はこれで」  
 そのままスッと立ち上がろうとする。  
 勿論、このままで終わらせられるワケはないだろう。  
「ま、待って!」  
 起き上がったニンフが俺の腕を掴んで止める。  
「お願いトモキ。……して」  
「……何を?」  
 上目遣いに訴えてくるニンフの誘惑をギリギリのところで断ち切って、訊く。  
「だからその、続き……」  
「〜〜っ!」  
 本来ならここで『ちゃんとハッキリ言ってくれないと分からないなぁ』とか言ってさらに焦らすんだろう。  
 だが……ゴメンなさい、読者の皆さん!  
「私の……きゃっ!?」  
 私の方が、この焦らしに耐えきれませんでした!  
「とっトモキ、ちょっ……ひゃんっ!」  
 再び押し倒して、クンニを再開する。  
 そのまま手を伸ばして、控えめなサイズの胸を覆うようにして揉み、  
「んっ、あっ、やっ……!」  
 衰え始めてた火がまた強くなったのを確認するなり、俺はラストスパートをかける。  
 今までの刺激で完全に勃ってしまってる乳首を親指と人差指で捻り、アソコの汁を一気に吸い上げる。  
「らめ、トモキ! らめえぇぇぇッ!」  
 最早絶叫と言っていい勢いで叫ぶニンフ。  
 同時に、勢いよく噴き出した水が俺の顔面に降りかかる。  
「ハァ、ハァ……っ」  
 くたっと身体を弛緩させて肩で息をしている。  
「とりあえず一回、か」  
   
   
「ハァ、ハァ……っ」  
 トモキが、あんなイジワルな責め方するから。  
 私、あっさりイッちゃった。  
「イッちゃったな、ニンフ」  
「……………」  
 指摘された。顔が熱くなるのを感じる。  
「けど俺、まだ満足してないんだけど」  
 弛緩した身体を抱き起こされる。  
「んっ……」  
 トモキの顔が近くにあったから、そのままキスする。  
 すぐに唇を離して、  
「こっちにもキス、頼んでいいか?」  
「……うん」  
 私はトモキの足の間に顔を埋めた。  
 
 

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