「…はぁ」
『ん?どうした相棒、急に溜息なんか付いて』
「何でもないよ、ギグ。
どうせ話したって仕方ないし」
『あぁん?
何だよ、折角このギグ様が心配してやったってのによぉ』
私はまた小さく溜息をついた。
そう、こんな事をギグに相談したって仕方ない。
相談しても解決のしようが無いし、ただ話を聞いてもらうんだったらレナ様にした方がよっぽど良い。
…ダネットは論外だけど。
―――そう、これは例えレナ様だって解決できない問題。
『あの時』だけギグを隔離してくれればいいんだけど、そんな事できっこないし。
そりゃあまあ、今でもお風呂やトイレの時は目を瞑ってやってるけど。
感覚も共有するんだから、あんな恥ずかしい事、出来るわけ―――
『恥ずかしい事?何だそりゃ』
「!!
ギ、ギグは黙ってて!!」
口に出してたのか、失敗失敗。
兎に角、世界を破壊するものを全部破壊すればきっとレナ様もギグとの融合を解いてくれる…だろうし、ソレまでは我慢しなきゃ。
『…ちっ、つまんねーの』
ギグは不貞腐れたようにそういって、(姿が無いのにこういうのはおかしいけど)横になってしまった。
…ちょっと、悪い事したかな…折角心配してくれたのに。
明日、ポタポタ食べよう。
「何をしてるのですか、お前は。
早くしないとおいていきますよー?」
「あ、うん。すぐ行く」
少し皆との歩みが遅れていたからか、ダネットに叱咤されてしまった。
さて、気持ちを切り替えて、先に進もう。
―――夜。
皆が寝静まってるこの時間に、私はまだ眠れないでいた。
目が、嫌に冴えてる。
理由は…何となく、判っていた。
最後にしたのは、里を出る2日前だったから…幾らなんだって、もう限界にきてる。
私だって年頃の女の子だし、この状況は本当にきつい。
…ダメ、ちゃんと寝なきゃ。
寝不足に何かなったら、明日にも支障が出ちゃうし…
「ん…」
ごろり、とまた寝返りを打った。
そういえば、さっきからギグの声がしない。
…ひょっとして、寝てるのかな。
今まであんまり意識してなかったけど、ギグも寝るわけで。
ひょっとしたら、今なら気付かれない…?
「…ギグ?」
『………』
返事はない。
どうやら、本当に寝てる…みたい。
それなら…今なら…やっても、大丈夫…だよね?
自問自答しながら、私は…とうとう、我慢しきれずに…自分の秘所に、手を伸ばした。
最近ではお風呂以外じゃ触ってなかったそこは、既にしっとりと湿ってて…ちょっと、恥ずかしい。
「ん…ぅ…っ」
指を噛んで声を殺しながら、ゆっくりと指を動かしていく。
最初はなぞるように、そっと動かして…それだけなのに、凄く懐かしい感覚が、心地良い。
もう、一度動き出したら止まらなかった。
ギグを起こさないように、静かに…でも、動きはどんどん激しくなって。
秘所をするだけじゃ足りなくて、勝手に手が胸に伸びていく。
やんわりと揉むだけでも、甘い快感が身体を走って、手のひらにコリコリと、はしたなく立ってしまっている乳首が触れる。
「ふぁ…っ、ん、ぁ…っ!」
声を殺しきれなくて、小さく喘ぎ声が漏れてしまった。
それでも、もう…そんなのは関係なくて。
びしょびしょに濡れてしまった秘所に、指を―――
『…へぇ、成る程。そういうことかよ、あ・い・ぼ・う♪』
「…っ、ひゃあっ!?」
―――一気に、頭が冷めた。
な、なんで、どうして…って、そんな物音も立ててないのにー!?
『相棒も馬鹿だなぁオイ。
感覚も共有なんだぜ、俺達。起きるに決まってるじゃねえか』
「じゃ、じゃあ…さっきから、ずっと…!?」
『当たり前だろ…ったく、我慢なんざしねぇでしちまえば良いのに。
…へへ、そうだな…オイ、相棒!』
「な、何…?」
恥ずかしさとか何やらかが交じり合って、思考が上手く働かない。
…見られた?何時から?っていうか最初から?
まだ誰にもっていうか一生だれにも見せたくないものをギグに?
『…さっきの続き、してみろよ』
「…え」
『相棒だってさっきので満足した訳じゃねぇんだろ?
俺に見られるのに慣れちまえばこれから我慢しないで済むんだぜ?』
…混乱した頭で、考える。
さっきの続きって、要するに、自慰のこと?
それを、今度は、ギグが見てるってわかってるのに、やるって?
「そ、そんなの…」
出来るわけが無い、と言いたかった。
実際、普段ならそういってただろうし、こうして混乱してる今だって、そんな事をするのは、嫌だ。
でも。
身体は、火照ったままで―――私は、遂に小さく…頷いて、しまった。
言葉にしなかったのは、理性がかけた、ほんの僅かな抵抗。
『んじゃほら相棒、どうやってんのか最初からやってみろよ』
「…う、ん…」
自慰の熱に魘された頭じゃ、もうマトモに思考もできなくて―――私は、そのまま自分の秘所に…手を、のばした。
先ほどまでの余韻か、まだ秘所からは愛液がトロリと溢れていて、指で触れるたびにクチュ、と小さな音が鳴る。
…まだ指をいれてもいないのに、甘い痺れが身体を支配していく。
―――なんで、こんなに…?
『ん…っ、まだそれだけじゃねぇんだろ?
ほら…さっきしようとしてた事が有るだろうが』
「う、うん…っ、あ、ふぁ…っ!」
ギグに言われるがままに、そのまま秘所の中につぷりと指を入れた。
ちょっとずつ、だけど…入れていく過程すら気持ちよくて、指を進める度に甘い声を上げてしまう。
…ギグが、聞いてるのに。
そう、小さく心の中で呟いても…それすら、快楽を増やす材料にしかならなかった。
…そうか。私、ギグに見られてるから…
『うぁ…っ』
「…ふ、ぁ…ぎ、ぐ?」
『…っ、な、何でもねぇよ、続けろ!!』
「う、ん…ぁ…ひぅっ!」
ギグの言うとおりに…指を、少しずつ早く…内側を、擦るように動かしていく。
久しぶりだからか、快感が、凄い。
体中どんどん熱くなるし…もう、寝巻きは汗でびっしょりだし。
段々、自分でも何が何だか判らなく、なって…っ
「んぁ…っ、ひゃ、ん…あ、ぅ…っ!」
『…っ、ぁ…く…っ』
…そんな、わけのわからなくなった思考に、小さな、自分以外の声が聞こえた。
自分の喘ぎ声に、時折混ざる声。
熱に魘された頭にも、はっきりと響く、その声は。
「ぎ、ぐ…も…きもち…いい、の…?」
『…っ、ば、バカっ、そんな…わ、け…ねぇ、だろっ!!』
―――ぽつり、と頭の中に、ちょっと意地悪な考えが浮かんだ。
ちょっと、ゆっくり…指を、動かしてたけど…親指で、軽く…クリトリスを、擦ってみた。
「ひぁっ、ぅ…っ!!」
『…くぁっ、ぐ…』
「…やっぱり、ギグも…ん…っ、きもち、いいんだ…」
『…っ、う、うるせぇ!
しかたねぇだろ、相棒と感覚は共有してんだからよぉ!!』
何となく、少しだけ…ほっとした気がする。
そっか…私だけじゃなくて、ギグも、恥ずかしいんだ…なら、こういうのも…悪く、無いかも。
クス、と小さく笑いを零しながら、また…指を、動かし始める。
クチュ、といやらしい音が耳に響くけど…でも、もう恥ずかしいとか、嫌な感じはしなかった。
「ん、ぁ…っ、ひゃ、あぁ…っ!」
『ま、待て、ちょ…っ、激し、すぎんだって…お、いっ!』
「…っ、ふふ…私も…恥ずかしい声、聞かせるから…ギグの声も、聞かせて?」
『ふざ、けんな…っ、だ、だれが、そんな…うぁっ!?』
「ひ、ぁ…っ、ん…っ、今の…きもち、いいんだ…」
秘所の内側をすると、ギグが可愛い声を上げてくれた。
…なんでだろ、ちょっと嬉しい。
やっぱり私の弱い所は、ギグも弱いんだ…
そのまま、指を動かして…だんだん、勝手に指が早く動きはじめ、て…っ!
「んぁ、ひゃ、や…っ、ん、ぅ…っ!!」
『うぁっ、ちょ、相棒っ!
やめ…っ、何だよこれ…っ!?』
「ぁ…っ、あ、ひぁ…ん、ぁ…ふぁ、ああああっ!!!」
―――頭が、はじけた。
秘所を弄っていた手に、水しぶきがかかってるのが、わかる。
…潮、ふいちゃったん、だ…
でも…やっぱり、ずっと我慢してたからかもしれないけど…ちょっと、早くいってしまった。
「は、ぁ…ん…」
『こ、この…止めろって言っただろうが!!』
「…でも、ギグも…気持ちよかったでしょ?」
『…そりゃあ、まあ…って、コレとソレとは別なんだよ!
畜生、あんなの反則じゃねぇか…』
ギグの反応に、つい笑みを浮かべてしまう。
微笑ましいというか、今まで恥ずかしがってたのがちょっとバカらしくなるくらい。
『な、何笑ってやがるんだよ相棒!!』
「ううん、何でもない。
じゃあ、そろそろ寝ようか」
明日もまた、世界を喰らうものを倒す為に旅をしなきゃいけない。
きっとそれはまだまだ長く続くんだろう。
…ただ、ソレまで抱えなければならない筈だった問題が一つ消えたのは、単純に嬉しかった。
今日は、安眠できそうだ。
…次の朝、ダネットよりも寝坊してしまったのはまたのお話。
・後日談
「ところでさ、ギグ」
『何だよ、どうかしたか相棒』
「あの時続きをしろって言ったのって…やっぱり、気持ちよかったから?」
『…ぶっ!?ち、ちげーに決まってんだろ!!』
「…素直じゃないんだね、ギグってば」
『ば、バカっ、こんな所で胸なんざ揉んでるんじゃねぇ!!?』
明らかな蛇足。