満月がいやに明るい夜、川べりで盛大にため息をつく影があった。赤髪に角、蝙羽、我らがシャイターンである。  
シャイターンはぶっちゃけ欲求不満だった。  
千年近く埃くさい地下に押しこめられて、両腕は岩壁に取り込まれ自家発電も不可能だったので当然である。  
(聖者にそんなつもりは無かったのだろうが)  
そんなこんなでライラが目の前に現れたときは「コレガ禁断少女トイウモノカ…」と思ったという。  
実際には生身の少女だったわけで、あれこれ思わせ振りなことを投げ掛けた上で契約を持ちかけたら成功、  
見事解放と相成った。(どうでもいいが契約の接吻の際シャイターンは舌を入れたらしい)  
解放されたシャイターンがまずしたことはライラのコスチュームチェンジだった。千年の闇のなか名前さえ忘れ  
てらんらんるーした妄想の産物がライラのあの姿である。  
シャイターンのシャは悪魔のシャなので契約したその日にライラを手籠めにしようとした。  
契約後にわかったことだがライラは怒ると結構怖かったので「コレシナイト本契約デキナイカラ!ネ!  
 オ願イシマス」とかでたらめなことを言ってごまかすあたりへたれだった。  
千年のブランクか急いて事を進めたところ先っぽを挿入したところで大層痛がって泣かれ、中止になったの  
である。その後にちゃっかり理由をつけて手で抜いてもらったが。  
自分の手も使えるようになったし以来自家発電でやり過ごしてきたが、やはり肌の触れ合いが、何よりライラ  
が欲しかった。  
「デモライラ二泣カレルノハモット困ルナ…」  
契約の日に見た小柄な少女の裸身。肉付きの薄い体、組み伏せた態勢では胸の肉が流れてほぼ平らになっ  
ていた。そんな胸やうっすら浮き出たあばらを撫でるとくすぐったがっていたのを覚えている。そう、少女は性  
感も発達しきっていなかった。二回りは大柄な己に組み伏せられ、おそらく何をされるか漠然と理解していた  
(知らない以上に怖いことだろう)ライラは、それでも羞恥と恐怖にふるふると震えながら自ら足を開いたので  
ある。そこまでライラは頑張ったのだ。  
「…モウ少シ待トウ」  
そう言って記憶の反芻で反応を始めた息子を宥めようと手を伸ばした時。  
「何を待つの?」  
「―ッ」  
背中からぺたりと抱きつかれ顔を覗きこまれ、ただでさえ白いシャイタンの顔はさらに白くなる。声をかけてきた  
のはライラだった。  
「ナ、何デモナイ、ヨー」  
「変なシャイタン。起きたらいないし、探したのよ。…ねえ、具合が悪いとか、何か隠していない?」  
「ナイナイ、ナイヨー」  
その即答にライラは頬を膨らませたかと思えば、急に深刻な表情になる。  
「……嘘」  
「ライラ?」  
「だってここ数日、ずっとよ。ずっと起きたら貴方がいないの。しばらくしたら戻ってくるけど、じっと私を思いつめた  
ように見つめてるじゃない。私がしなければいけないことができていないんでしょう?」  
寝顔にハァハァしているのに気付かれていたのか、とどう答えるか考えているうちにライラが正面に回り込み、膝上に  
座りこまれた。そして、服の上から反応を始めてい  
た息子を握りこむ。  
「…やっぱり」  
「ラララライラ何ヲスルッ」  
慌ててその手を外そうとしたがライラが体を寄せてそれを阻んでくる。それから、思いつめた表情で見上げてきた。  
「あの、その、本契約がまだ、なんでしょ? あのとき痛くてできなかったから…そのせいでシャイタンが  
不調なんじゃないの?」  
このとき、シャイタンの脳内でラッパが鳴り響いた。ライラは非常に都合の良い勘違いをしてくれている。そしてあの  
とき言ったでたらめをライラが信じていることにちょっとだけ罪悪感を覚えた。でもすぐ忘れた。だって悪魔だから。  
「シャイタンが辛いのは嫌なの」  
とどめの一言だった。  
シャイタンは表情だけは真面目にしてライラにくちづける。やっぱりシャイタンは舌を入れた。  
 
地面に組み伏せられては背中が痛むだろうと、シャイターンが下になった。薄い胸でも下を向けばそれなりの  
サイズに見える。シャイターンは誘われるように腕を伸ばした。やわやわと形をたしかめるように揉む。尖りを  
強く摘めばライラは高く鳴いた。指の腹でやわく撫でてやれば足をもじもじとさせた。牙で噛んでやれば頭を  
抱きこまれた。そのまま舌先でちろちろと舐め、吸う。まだ擽ったさが勝つだろうが、胸で感じることを覚えて  
ほしかった。  
「あ…はふ、シャ、シャイターン、うう…」  
わざと水音をたてて吸いつきながら背中を撫でさする。ここも立派な性感帯だ。そこからするすると尻の方へ  
と下げてゆく。既に濡れているのは腹にぽたぽたと垂れてくる水滴でわかっていた。  
口にそって何度か撫で上げれば指に少し粘り気のあるそれがついてくる。ライラに見せると胸をぽかりとたた  
かれたのでシャイタンは笑った。ライラの腰を掴み軽々と体勢を変えさせる。  
「シャイターンっ、待って―」  
ライラが口をつぐんだのはしとどに濡れたそこに口付けられたからか、目の前にたちきったシャイターンのものが  
あったからか。  
そういえば前回はろくに見ていなかったからと、シャイターンはじっくり観察することにした。そこはぴっちりと閉じて  
いた。きれいな桃色で、いたずらに息を吹きかけてみるとひくりと動いた。見ている間にも液体は溢れてきて、  
何滴かは口元を濡らす。シャイターンはそれを舐めとってからそこに舌先を伸ばした。  
足を腕で固定して逃げられないようにする。指でゆっくりと開く。もどかしいほどにやさしく舐めたかと思えば、  
勢い良く舌を突き入れる。そのままぐにぐにと中で遊んでやると耐え切れずにライラが声をあげた。  
「あ、ああっだめ、だめ」  
膝で体を支えきれず、腰を顔におしつけているような体勢になってしまい、ますます舌を深くに感じてしまう。  
シャイターンもライラの腰、尻をがっちりとつかみ逃がさなかった。  
「ふっ、ふぁ、あうー…」  
快感に無意識にすがるものを探したライラが手を伸ばした先は、シャイターンのものだった。  
それに触った瞬間シャイターンの舌の動きが弱まったことから、これをどうにかすれば舌から逃げられるかもしれな  
いとライラは考えた。とりあえず顔の前にあったのでぱくりとくわえてみる。やはり舌が一瞬止まった。目には目を、  
舌には舌を。悪魔のそれはライラの口には入りきるようなものではなかったので咥えて舐めるのには無理があった。  
根元から舐め上げたり、さすったり。特に先端にくちづけるのをライラは好んだ。見た目は不気味だし、味も妙なもの  
だったけれど、ライラはこれがシャイターンのものだと思うと不思議とかわいく思えたのだ。  
それに夢中になっているとシャイターンの舌がいつのまにか動いているのに気づいた。しかもさっきより激しい。突きこ  
まれ、あふれてくるものを吸われ、ライラはそこがきゅ、っと締まるのを感じた。  
「あ、あぁ…っ」  
尻が、腿がぴくぴくと震える。気をやったのだ。肩で息をつくライラにシャイターンは落ち着くのを待って服を着せようとする。  
「…シャイターン? 本契約がまだ…」  
「嘘ダ」  
シャイターンはぶっちゃけた。  
今回もライラは頑張ってくれた。自分から言い出して、舐めることまでしてくれた。  
シャイタンは悪魔だったけれど、  
そんな健気なライラに嘘をついたかたちで抱きたくはなかったのである。なんだかんだでロマンチストであった。  
時々口か手でしてもらおうとかは考えていたが。  
「嘘ダッタ。契約ハ最初ノ接吻デ成立シテイル。ダカラ、コレハ必要ナイ。コレ以上ハ君ガ辛イダケダ」  
「―嘘でもっ!」  
本契約云々が本当だとしても現状力はつかえたのだし、ライラには関係なかった。それでもあの日シャイターンが  
口にしたことを理由に今回の事に及んだ理由は唯一つ。  
「シャイタンが辛いのは嫌だって、言ったでしょう」  
ライラは気づいていたのだった。  
「ライラ、無理ハヨクナイ。君ヲ傷ツケタクハナイ」  
「私がいいって言ってるのっ」  
 
言うが早いか、ライラは膝立ちでシャイタンのうえにまたがると、ものを手で支えて自らにあてがった。  
「ライラ!」  
めり、と音がする。  
「っくぅ…」  
ライラは苦しそうな顔をするが腰を落とすのはやめなかった。先端が漸く飲み込まれたところで支えていた手を  
腹に置き、ひとつ息をつくと勢いをつけて腰を落とす。  
「んん…―ぐ、う」  
「ラ、イラ。痛イダロウ? 苦シイダロウ?」  
ぼろぼろと涙を流すライラに、シャイタンはそれを指で掬いながら痛ましげな顔を見せた。二人の下腹部に隙間  
はなく、ライラの小さなそこは限界まで押し広げられ、男のそれをみっちりといやらしく銜え込んでいた。  
「これは、嬉し泣き、なんだからぁ…」  
止められるのを恐れるように、未だ痛みが強いだろうにライラは自ら、とはいえゆっくりと腰を動かし始めた。  
「ライラ、ライラ、ライラ…」  
シャイターンは何も言えなかった。ライラが自ら腰を振っている。じゅぷ、じゅぷ、と水音をさせながら。  
本当はその腰を掴んで思うがまま突き上げたい、狭く、柔らかく、ぬるぬるとしたライラのなかを蹂躙したい。しか  
し今はライラのペースで、辛くない程度にさせるべきだと思った。  
ゆっくりとしたグラインドから、だんだんと早い動きになり、ライラの肉と、シャイターンの肉がぶつかる音がぱちんぱ  
ちんとリズミカルになってきた。ライラの顔はとろんとしはじめ、潤んだ瞳でシャイターンを見つめていた。  
「あふ、シャイターン、ね、ちゃんと、気持ちいい?」   
あられもないライラの問いかけに、グゥ、と獣のような唸り声しか出せなかった。シャイターンはライラの腕をそれぞれ  
掴んで自分の腰辺りに固定した。深いところでつながってはいるが、ライラはこれでは動けず不満を言おうと口を  
開けたときー狙いすましたようにシャイターンが腰を突き上げた。不満のかわりに口から零れたのは嬌声だった。  
一番深いところから突き上げられ、軽いライラの体は浮く。手を引かれ反動で腰を落とせばさらに深いところに突き  
こまれる。  
「きゃん、あう、あぁっ、シャイターン、シャイターンが、私のなか、いっぱいなの  
…っ」  
快感を知らせるライラに、シャイターンはもはや歯止めがきかなかった。ガクガクと腰  
を震わせライラのなかを堪能する。  
小柄な体。狭い胎内。暴力のような激しさで突きあげれば、それでもライラは歓びに  
声を上げた。  
「ああ…来ちゃう…」  
きゅ、きゅ、と締め付けを始めたライラ。その間隔がだんだんと早くなり、ひときわ  
強くなった瞬間を狙って突き込めば、  
ライラはふるふると体を震わせ気をやった。その瞬間の吸い付くような締め付けに  
シャイターンも精を放ったのである。  
息を弾ませながら二人は見つめあい、くちづける。  
今度はライラから舌をいれるあたり、今後の二人の力関係がうかがえたが、それはま  
た別の話…。  
 
おしまい  
 

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