地上が『セイジンシキ』という式を迎えた日の夜。
いつも通り地上に死せる魂達を刈ってきた冥王が帰ってきた。
が、今日は様子が違った。
「忘ーレーラーレーター」
元々細い目を半眼にしていた。相当機嫌が悪いのか。
いや、寧ろこれは。
「ミーシャァ〜〜っ」
酔っている。
半泣きの声で戸口に立った自分に崩れるように抱き付いた彼の顔色を見る。
血色の悪い顔が少し綻んでいるから、笑顔なのだろうが・・・泣き上戸だったのか。
あのサングラスの若僧が、やら 折角出てやったのに、息仔ともう一人死者を呼んだくせに、やら言っている辺り、どうやら打ち上げに弾かれたようだ。だから一人で飲んできたらしい。
そうこう思っている内に座りこんで泣き始めてしまったので、仕方なく寝かしつけようとあやし始める。
これが地上で畏れられた冥府の王だというのだから、呆れを通り越して 笑みがこぼれてしまう。
あやしていると 彼は自分をあやす手を絡め上体を起こした。
そしてにこ、と彼は幼い子供の笑みで微笑む。
「ヤハリ我ハ、ソナタガ一番ダ」
背に回った腕が私の髪を解き、言葉と共にまだ淡く ミルトの香りがする口付けが私を床に沈めた。