月が雲に隠れ、今宵も一匹の黒狼が現れる。
「ミーシャ…」
「んっ…んふっ!」
無理矢理に唇を奪われるのも何度目のことだろう。
舌を啄まれて溢れる唾液をエレフの舌が追いかける。
「っエレフ、お願い。もう…こんなこと、やめて…」
レスボス島で再開した時は昔から何度も夢見た優しいエレフだったのに。
あの日からエレフは変わってしまった。
実の母と兄を手にかけてから…
「お願いだから、もう、こんな…」
ジャラリ、と金属音が静かな部屋に鳴り響き手足の鎖の存在を嫌でも知らされる。
「ダメだよミーシャ…僕達はもう離れたら行けないんだ……二度とミーシャを放すものか」
そういって微笑むエレフの笑顔はどこか狂喜に満ちていて。
もうミーシャの知るエレフではない。
鍛えられた腕がミーシャを抱き寄せ、黒い欲望に濁る紫の瞳がミーシャを捉えた。
「僕達は一つにならなくちゃいけないんだ。…一つに戻ろう」
「はっ…ぅ…」
ぐいと抱き寄せられ激しく口づけられる。ぬめった舌が生々しい感触をミーシャに伝え、ゾワリと背筋を震わす。
「はっは…ふっ…んく!」
くちゅくちゅじゅるじゅると唾液を絡ませる獣のような激しい口づけはミーシャの意識を奪うには簡単だった。彼女のトロンとした眼を見てエレフは軽く笑った。
「口づけだけで、こんなになっちゃうなんて……ミーシャは淫乱だね」
「!」
ぐったりとエレフにもたれ掛かったミーシャの体がビクリと震え瞳からは涙が溢れる。
「ねえ、ミーシャ。気持ちよくなるのはこれからだよ」
ミーシャの後ろに回り、後ろから抱き抱えると、ぐいと胸をわし掴む。
骨ばった指先で乳房の先端を弄るとミーシャが悲鳴をあげた。
「ひっ…いやぁ…」
「ん?痛かった?…じゃあこっちを弄ってあげる」
右手は胸に置いたまま、左手を足の付け根に這わせた。
「いやっエレフ、だめぇっ…あぁっ」
顔を真っ赤にして涙目で訴えたところで狼を余計煽るだけ。
「ミーシャ、可愛い」
獣がするようにエレフはミーシャの首筋を何度も噛んでは舐めあげる。
そのせいでミーシャの肌にはいくつもの鬱血した痕や歯形が残っていた。
「っめ…兄妹同士で…だめぇ…こんなこと、許されないっ…」
「まだそんなこと言うの?」
太ももを愛撫していた左手を固く閉じられたその先に無理矢理ねじ込む。
「あうっ!」
「ふ…ミーシャ、濡れてる」
エレフに無理矢理慣らされた体は従順で。
軽く触れられただけで感じてしまう己が憎くもあり怖かった。
エレフを何度も迎えた入口は少しの刺激で溢れんばかりの蜜を垂らした。
「エレフぅ…っ」
「ミーシャ、気持ちいい?」
月の光さえ届かない暗く静かな部屋で卑猥な水音がミーシャの鼓膜を震わせる。「あっあ…あっ…」
「ミーシャ…」
(このままじゃ私っ)
エレフに流されて一つになってしまったら…
このまま一つになればなるほどエレフは遠くに行ってしまう気がした。
「いやあっ!」
「っ!ミーシャ!」
狂ったようにミーシャが暴れだす。鎖に繋がれた両手両足が痛んでも、暴れるのをやめようとはしない。
だが、
「あっ」
奴隷部隊の将軍にとって小娘一人の腕力など痛くも痒くもなかった。
後ろから羽交い締めにされ、抱き抱えられる。
「そんなに僕と一つになるのは嫌?」
「だって…だって…」
「ミーシャも気づいてるはずだよ…あの瞬間がどんな時よりも幸せだって」
「っ!」
ぐち、と水音がした。
何度も受け入れされてきたエレフの昂りが残酷なほどゆっくりとミーシャの身体に入ってゆく
「ああああああぁっ!」
「あぁ…ミーシャ…!」
ふと視線を下に下げれば自分達の繋がっている部分が妖しく蠢いていた。
「んっ…く」
「ミーシャ、ミーシャ…」ぎゅうっとエレフに抱きしめられると、堪えようもない感情が沸き上がってくる。
「エレフ、エレフ…っ」
エレフが好き。
大好き。
だから…
「元のエレフに戻って…」
エレフの目を見て訴える。
「…元の?」
だが、ミーシャの声は今のエレフには届かない。
クッと笑うと激しくミーシャを突き上げる。
「あうっ!」
「あんな弱かった僕がいいの?それじゃミーシャを守ることができないじゃないか。」
「っぁ…それでも私はっ」…!
「もうお喋りはやめよう」
「ふぁっ」
激しく揺さぶられて何も考えられなくなる。
顎を捉えられて唇が奪われて何度も唾液を流し込まれる。胸をエレフに弄れてどうしようもなく感じてしまう。
「ん……くっ」
「ああっあっ!」
乳房の先端は赤く色づき、痛いほど立ち上がってエレフの愛撫に答える。
成長するにつれ大きく膨らんだミーシャの胸はエレフを大いに満足させた。
「ミーシャの胸は柔らかい…ね。触ってて飽きない」
「っ…エレフっ」
キッと睨んでもエレフは怯まない。
「下の口は素直なのに上はまだ恥ずかしがりや?」
下肢にのびた手が結合部をなでて敏感な芽をなぶる。
「いやぁっ」
「可愛い…」
ミーシャが恥ずかしがる様子をエレフは楽しんでいる。
「意地悪…っく…ひっ…く」
「…泣かないで」
そっと頬に伝う雫をエレフが舐めとる。
そんな優しい行動をしておきながら腰の動きはますます激しくなるばかりだ。
「あっ!…ん…ぁ…あぁ!」
「ん、知ってる。ミーシャはここが弱いよね」
お腹の奥にある敏感な部分を重点的にせめられる。何度か抱かれるうちにエレフに見つけられたミーシャの弱点。
「!いやぁっ!エレフっやめてっ」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を鳴らしていた二人の繋がりは、ミーシャから溢れた蜜で鈍い音をさせながら肉のぶつかる音を響かせた。
(あ…もう…もう、ダメっ)
「っ…!ああっあー!あああーー!」
限界だ。そう思った瞬間ビクリビクリとミーシャの膣が痙攣し蠢いた。
「…っく」
エレフもまたミーシャの中に熱い欲望を吐き出したが、次の瞬間ミーシャを押し倒した。
一度熱を吐き出すだけでは足りないのだ。
「くぅんっ!」
ミーシャは子犬のような鳴き声を出して呻いた。ミーシャの中に入っていたエレフ自身がズルリと抜ける間もなく再び挿入される。
獣が交わるような体勢は、エレフのお気に入りだ。
「っ…ミーシャ…っ」
ミーシャの肩に噛みつきながら後ろから激しく突き上げる。
ミーシャの流す蜜と先ほど吐き出した精液が掻き回され、溢れ出て、ミーシャの太ももにいく筋もの線を描いた。
それを満足そうに眺めながらエレフは腰を進めた。
「もっと奥まで…いける、よね?」
「えっエレ…!っ…あぁっ!!」
子宮を犯し抉るような動きは苦痛でしかない、のに。じわりと快感の波がミーシャを襲った。
「ひっ…あっ…」
「ははっ…やっぱりミーシャとの相性は抜群みたい…だねっこんなにしても僕のこと、受け入れてくれる…っ」
「あっあっあっ…」
「ミーシャ、愛してる…」
耳元でエレフが囁いた。
「エレフ…」
ピタリと合わさる二つの身体は一つになるのが当たり前なのだと知らされているようで。
私もエレフを愛してる。
生まれた時からずっと、ずっと愛してる。
エレフを愛しているからこそ。エレフの裏に潜む暗闇を受け入れてはいけないのだ。
身も心も一つになって堕ちてしまったら、エレフがその闇に喰われてしまう。
ミーシャには見える。
見たくはないその未来が。運命(ミラ)には抗えないとわかっていても。
だから
「……エレフなんて、…きらいっ」
「!」
後ろを向いているから顔は見えないが、エレフの空気が怒りとも悲しみともいえる感情を纏うのをミーシャは感じた。
「まだ…そんなこと言うの?…なら、ミーシャがわかるまでずっと繰り返すしかないね」
ぞっとするほど冷たく言いはなつエレフにミーシャはこれからおこるであろう苦痛と快楽が紙一重の拷問に耐えるべく身を固くした。
…ミーシャ、二度と君を失うものか。
何度も攻められて失いかけた意識の中、最後に聞こえたのはミーシャのよく知る悲しげな兄の声だった。