月明かりが蒼く差しこむ窓辺。  
冷たい木の床に身を横たえ、乙女は自らを慰めていた。  
平生慎ましやかに身を隠している修道衣は大きくめくれ、白磁のごとき滑らかな腿が  
付け根まで露わになっている。  
神に仕える汚れなき筈の乙女は、潤んだ入り口に自らの指を沈め淫らに動かしていた。  
 
――くちゅっ、くちゅっ  
 
睫毛を伏せ、目蓋に彼女の月のように静謐な美しい微笑みを思い浮かべる。  
今ここに触れているのが、彼女の指だったらどんなにか良いだろう。  
あの細く、しなやかで、すんなりと長い白い指。あの指をここに沈めて欲しい。  
あの桜貝のような可憐な指先で私の胸を摘んで欲しい。  
そして、私も同じように彼女を愛してあげたい。  
 
「んふ……あぁ……っ」  
 
想いの全てを打ち明けてしまいたい。  
もしかしたら彼女も私を――そう考えると期待と悦びに体が震える。  
拒絶されるのは恐い。  
けれど、もう自分で自分を慰めるだけでは足りない。  
この想いを解り合いたい。この身を焼く欲望を分かち合いたい。  
彼女が欲しい。愛して欲しい。愛させて欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。  
 
「ぅ……んっ、あぁああっ!」  
 
絶頂を迎えて、ぱたりと手が床に落ちる。  
 
私は頭の中で夜な夜な彼女を汚している。  
この手で大切な人との思い出を毎夜毎夜汚している。  
けれど……それを赦されなくっても構わない。  
月のように清廉なる彼女が、私の中でだけでも私と同じ罪を犯してくれるのだから。  
 
……どうか、この思いを彼女が同一の物としてくれますように。  
 
浅ましい願いに濡れた指を見詰めながら涙を零した。  
 
歪んだ想いに濡れた乙女の涙は月光を受け、真珠のように輝いていた。  
 
−お終い−  
 

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