あたたかな木漏れ日が揺れる泉、幼い兄妹がたわむれていた。
「エレフみてみて、お魚!」
「え、どこどこ?」
「ほら、あそこ!」
「えー見えないよー」
「――えい!」
「うわっ!?」
「……ヒドいよミーシャぁ」
「あはは! エレフったらびしょびしょーあははは!」
ずぶ濡れの自分を指さして笑い転げる妹に、兄は頬をふくらませる。
「もー……あ! ――見てみてミーシャ、僕、月をつかまえたよ」
「本当!?」
雛鳥を握るように、そっと水から手をさしだすと、妹は嬉しそうに顔を近づけのぞきこむ。
「……うっそだよー!」
「きゃっ!? 冷たい! エレフのバカー!」
「人のこと言えないだろ、おあいこっ!」
「もー、…ふ、うふふっ、あはははっ! えいっ!」
「わっ、冷たいよ、ミーシャ! てい!」
「きゃん! あはは、えいえい!」
「あははは!」
二人は水をかけあい、子犬のようにじゃれ合う。
もつれ合うように倒れこみ、派手な水しぶきが上がった。
「……鼻に入ったー!」
「あははっ、ミーシャはドジだなー、はは……は、」
不意に笑い声が半分になる。
「あははは……は…どうしたの、エレフ?」
「え、ううん、何でもないよ」
慌てて顔をそらす兄に、妹は覆い被さるようにつめよった。
「何なの?」
「いや、その、ミーシャ、今日、下着……」
「え? 暑いから着てないけど?」
答えながら、自分の身体を見下ろす。
白い布を一枚巻きつけただけの体はびしょぬれ。
ミルクに薔薇色を一滴落としたようななめらかな肌が、くっきりと浮かび上がっている。
「……何か変?」
ミーシャはきょとんとした表情で顔を上げ、エレフを見る。
「いや、あの、さ」
煮え切らない兄の態度に唇をとがらせる。
「なによ、エレフと変わらないでしょ?」
妹は自分の身体を見るように兄の身体を目でなぞり――不意にボッと頬を染めた。
「エ、エ、エレフのエッチー!」
「うわぁぁっ! うっぷ、え、ミーシャ!? ダメだよそのまま帰っちゃ!」
「エレフなんてだいっきらーい!!」
叫びながら走っていく妹を追いかけようと慌てて立ち上がる兄。
「ごめ……いや、僕が悪いの?(小声) や、ごめんミーシャ! 待ってよー!」
「もう知らなーい!」
「待ってったらー!」
「エレフのばかー!」
「ごめんってばー!」
深緑の中に響く輪唱。
今日も変わらず仲の良い兄妹は、家路を急いでいった。
おわれ