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青いワイシャツのテロリストが無様に倒れている。  
傍に立ってそれを見下ろしていた笹本は、ニヤリと笑った。  
5階のナースステーションは難なく占拠できた。一応中を調べてみたが、他にテロリストはいないようだ。  
こいつと1階に縛っているやつらと、あと井上のできっと終わりだ。  
井上は何か策があるようだったし、持ち前の身体能力を考えれば心配しなくても大丈夫だろう。  
それにしても。笹本は苦々しく脇腹を握り締めた。  
体が火照っている。テロリストを制圧したことで張りつめてきた神経が落ち着いてきたせいか、  
井上との情事を思い出す。  
制限時間の20分になるからと、最後までやらずに寸止めをくらわされた。  
笹本の頬はピクピクと痙攣する。あいつ殺す。  
頭の中で生きているのが辛いと思わせられそうな仕打ちを井上にやる自分を想像するが、  
うっかりあの時の感触も脳内で再現されて下がジクリと疼いた。  
笹本は小さく呻いた。  
 
放っておこうかと思ったが、昂った体をそのまま放っておくのも何だか怖い。  
ふとした瞬間に変なことになるかもしれない。  
"さっさと任務終わらせましょうか。続きはそれからで"  
忌々しい言葉が頭の中でこだまする。  
テロを完璧に片付けてからか。  
それとも加藤を無事に自宅まで送り届けて部署に戻って報告書を提出して解散してからか。  
笹本はハッと息を呑んだ。  
何を考えているんだ、これではまるで井上を…  
まさか、それは、ダメだ。笹本は頭を横に振った。  
井上に抱かれるのだけはご免だ。  
けれども体の疼きは止まらない。  
脳内で井上に制裁を与えながら、どうしたものか、と悩む。  
いっそのこと…と何気なく目線を下げるとのびているテロリストが見えた。  
しばらくじーっと見つめ、それからまたニヤリと笑った。  
 
医療棚のガラスを開けると、笹本はタオルを2枚取り出した。  
戸を閉めようとしたとき、ガムテープも目に入ってそれもついでに取り出す。  
再びテロリストのところに戻ると、彼の両足首をガムテープでグルグル巻きにした。  
簡単に取れないほど幾重にも巻いたことを確かめると次にタオルを手に取った。  
テロリストの頭を持ち上げて、膝の上に置く。  
それからタオルでまずは口に巻きつけていき、今度は目に取りかかった。  
手はガムテープを使って自由を奪う。  
よし、準備は整った。  
笹本は横に移動すると手をテロリストのズボンに伸ばした。  
パチッと留め具を外し、チャックも下ろすとボクサーパンツが姿を現した。  
本当に何をやってるんだか、と頭の隅で冷静に突っ込む。  
何年も前に、大学生のときだったか、笹本は男を知った。  
その男は見た目も中身もいい関さばで、初めてを好きな男とできたのは幸せだった。  
結局別れてしまったが、こういう経験はその後も何度かある。  
性行為は好きな男と、という信念は笹本にないわけではなかったが、  
体の昂りをすぐにでも発散させるなら、少なくとも好きでもない男に無理矢理犯されるよりは  
自ら攻めた方が数倍マシだ。  
 
そんな風に自分を納得させ、テロリストの下着をずらして中のものを引っ張り出した。  
笹本はそれを見てほほうと感心した。結構立派じゃない。  
井上はどんなのだろう、と思ってすぐに首を振った。  
意識から井上を追い出すように笹本はそれを扱き始めた。  
指先で筋を撫でたり塊を柔らかくかつ強く揉みほぐしていくと、徐々に反応を示していった。  
気絶していても体は正直ね。  
そういえば、と思い出す。こいつがすっ転んだときに股間を遠慮なく蹴り上げたんだ。  
けれども見たところその後遺症はないようだ。  
なくてよかった、とこの後の行為のことを考える。  
それは段々と固さを増していくが、何となく反応が遅いように感じた。  
口でもした方がいいのだろうか。しかし笹本はそこまでやりたくなかった。  
その時あっ、と声を出した。  
笹本はそれから手を離し靴を脱いだ。スラックスを少し捲り上げ、靴下も脱ぐ。  
テロリストと距離を取り、素足をそれに伸ばした。  
軽くツンツンとつついてから、両足で挟み込んだ。  
足コキってやってみたかったのよね、と器用に足を動かしながら揉み出す。  
グリグリと強弱をつけて反応を窺う。  
 
ウウっと呻き声が聞こえて笹本はビクッとなった。  
その動きが足に伝わり反動でそれを擦った。  
それがよほど良かったのか、さらにピンっと張った。  
チラリとテロリストを見る。起きる様子はない。  
保険に目隠しをしているけれども、笹本はほっとため息を吐いた。  
できれば最後まで目を覚まさないで欲しい。  
目をそれに戻すと、もう充分だろうと思った。  
笹本は立ち上がってスラックスに手をかけ、少し躊躇したが留め具を外した。  
ジーッとチャックも下ろし、下着と一緒に脱いだ。  
上着も脱いでテーブルに置いた。今はワイシャツ一枚の状態になった。  
笹本は膝をつくと、テロリストのベルトを引っ張った。  
そのベルトを立ち上がっているものの根っこにきつく、キツく、締め付ける。  
この時また呻き声がしたが笹本は特に気にとめなかった。  
ふぅ、と静かに息を吐いてテロリストに跨る。  
右手で先端を軽く握り、左手は笹本の股の奥に触れた。  
熱が集まり、ジクジクしている。  
笹本は人差し指を膣に差し込んだ。体がビクッと反応する。  
 
人差し指を動かし、何度か出し入れして熱を助長させた。  
さらに中指も入れて心拍数を高める。  
膣を指で掻き回し息が荒くなる。指の動きはヒートアップしていき、ついには薬指も参加した。  
笹本は体の頃合いを見計らって指を抜いた。しっとりした液体が指にまとわりついている。  
それからゆっくりと体を下ろす。先端が入り口に触れた。  
笹本は官能的な声をあげ、さらに腰を落としていく。  
慣らした場所にズブズブとそれは入り込んでくる。  
ンッと声を抑えたときに背中にひんやりとした風を感じた。  
そういえば、ナースステーションのドアのすぐ前で事に及んでいた。  
ドアはずっと開きっぱなしで外から丸見えである。  
危篤やどうしても移動ができない患者以外はみんな1階のロビーに集められている。  
自由に動き回っているテロリストももういないだろう。  
それでも万が一誰かがそこを通ったら?  
妄想がさらに笹本の興奮を駆り立てる。  
そんなことは有り得ないと思っても見知らぬ誰かを熱望する。  
こんな痴態を見て何を思うだろうか。もしそれが男なら…  
ビクンッと中のものが反応した。笹本は背を仰け反らせた。  
勢いでそれは笹本の奥まで貫いた。  
ネクタイが邪魔で最後までいかないが、それでも充分だった。  
 
笹本は喘ぎながらだらしなく涎を垂らす。  
動かないテロリストの代わりに笹本自身が動いた。  
それはさらに膨張し、笹本はため息を漏らした。  
その時、下からくぐもった声が聞こえた。横たわる体がもぞもぞと動き始める。  
あ、起きるかな。  
タオル越しに何かを言っている。どうやら完全にお目覚めのようだ。  
視界はタオルに邪魔されて、かつ下半身にただならぬ熱と締め付けを感じて戸惑っているようだ。  
最初は起きない方がいいと思ったが、こちらの方が都合がいいかもしれないと思い直した。  
笹本はテロリストの左耳に口を寄せる。  
「いいから、動きなさい」  
笹本が少し腰を動かすと呻き声があがった。  
そして少しずつテロリストは動き始めた。その刺激に笹本は身を捩る。  
「そぅ…っ そ…ァッ!んンッ」  
動きは激しさを増していく。笹本はたまらなくなって胸を揉み始めた。  
下からも悦びを帯びた声がしている。  
それはまたさらに大きくなったようだ。  
「あ…アッ、も……やっ」  
甲高い声をあげて、笹本は絶頂を迎えた。  
 
しばらく快楽の残り香にうっとりしていると、テロリストのうなり声が耳に入った。  
それは縛られているから射精したくても出来なくて苦しんでいるのだろう。  
笹本はゆっくりと抜いていき、テロリストの上に立ち上がった。  
にっこりと微笑む。  
「助かったよ。ありがと」  
お礼に鳩尾に蹴りを入れた。  
 
後始末を終えると笹本は脱ぎ捨てた服を着始めた。  
テロリストも笹本によりズボンは着せられたが、股間はテントをはっている。  
ネクタイは適当に首に巻いておいた。  
欲求は解消されたが、最中の痴態に少し赤面した。  
あんなになって、自分は変態なんだろうか。  
悩ましげに唸っていると地響きが伝わってきた。  
何だろう、と思って井上の顔が浮かぶ。  
とりあえず1階に下りよう。  
笹本は開け放されたドアを通り抜け、階段を下りていった。  
 
テロリスト制圧に成功。  
加藤純三の手術も無事に終わり、自宅まで無事に送り届けた。  
車を出す前に加藤は井上に、もし考え直したら訪ねるといい、とにこやかに言った。  
井上ははにかみ、会釈すると車を出した。  
「二人ともよくやったな。鼻が高いよ」  
四係部署で尾形は井上と笹本を労った。  
石田はウンウンと頷き、山本は面白くなさそうに井上を見た。  
「医者が一人怪我をしたが、とにかく死人は出なかった。お前たちのおかげだ」  
「任務を全うしただけです」  
笹本は何でもない風に言った。  
そうか、と尾形は笑う。  
「祝いに飲みにでも、と思ったが俺はこの後用事がある。何ならお前たちだけで行ってもいいが」  
笹本は首を振った。  
「また別のときに飲みましょう。それに、私も用があるので」  
井上は笹本を見た。  
「合コンでもあるんすか?」  
はっ?と笹本は顔をしかめた。  
違うんすか、と井上は呑気そうに言った。  
 
「おま…忘れたのか」  
井上はニヤリと笑った。  
「いや、もちろん覚えてますよ」  
笹本のこめかみに2本の青筋が浮き上がるが、すぐに引いた。深くため息を吐く。  
「井上、とっとと済ませたいんだけど」  
笹本は腕を組んで挑発的に井上を見つめる。  
井上も面白そうに見返した。  
二人のただならぬ雰囲気に他三人は思わず息を飲む。  
 
「それじゃあ、お」  
ガタンっと音が鳴り響いた。  
みんな目を丸くする。笹本が井上を殴り飛ばし、井上が床に倒れていた。  
「今はこれだけ。後で覚えてなさいよ」  
笹本は鞄を取りお先に失礼します、と微笑んで言った。  
尾形はあぁと呟き、石田は頷き、山本は頭を下げた。  
笹本は軽やかに出て行った。  
「あいたたた…」  
井上は上体を起こして右頬を撫でる。  
目を上げると三人が見ていた。  
三人とも普段の尾形のように苦虫を噛み潰したような表情だ。  
「何したんだお前」  
山本の質問に、井上はちょっとな、と笑った。  
 

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