ガチャガチャ。  
室内に金属音がこだまする。  
笹本は手錠をかけられた両手を必死に引っ張る。手錠の鎖は浴槽の取っ手に絡められていて、笹本を嘲笑うかのように音を鳴らしている。取っ手は笹本の努力の甲斐も虚しく全然取れそうにもない。  
あの忌々しいテロリストの顔を思い出す。あの豚野郎あとできっちりお返ししてやる。  
笹本は辺りを見回してすぐに頭をがっくりと垂れる。いっそのことナイフでもなんでも使って両手を切り落としてしまおうか、と考えるが刃物は見当たらないし例え見つけたとしても届かないと意味がない。  
笹本は何十回目になる試みを始め、すると両手首が痛み出して顔をしかめる。酷い腫れだ。女の体にこんな跡を残させやがって、やっぱ殺す。なぶり殺す。  
 
しばらく手を休めているとドアが開く音がした。  
あいつ戻って来やがった、とドアの方に目を向けたら、婦長と医者が誰かを運んで入ってきたのが見えた。  
驚いたことにその医者は井上だった。それに井上たちが運んでいるのはテロリストの一人だった。  
「何やってんだ」  
白衣にきっちり身を固め、眼鏡もかけて髪型だって七三だ。山本かよ。  
「任務を遂行しているんすよ」  
井上の答えにまぁそうだよなと思う。  
婦長が大丈夫ですかと近づいてきた。  
「鍵はそこの椅子にあるから」  
テロリストを適当な場所に置いた井上は鍵に気づいて手に取った。  
婦長の方に投げようと腕をあげようとするが、  
ポーズをとるとすぐに腕を下ろして手中の鍵をじーっと見つめた。  
「井上?」  
不思議な行動に笹本は声をかけた。すると井上は顔をあげて、真顔ですみませんと言った。  
「婦長さん、少し出てもらえませんか」  
えっと婦長は驚きの声をあげ、笹本もはぁ?と言いたげに眉間にシワを寄せた。  
「20分くらいで済みます」  
でも、と婦長は笹本に目を落とした。  
笹本は井上の真意がわからず不安を覚えたが、婦長に頷いてみせた。  
婦長は了承の意味に取り、井上の脇を通り過ぎて部屋を出た。  
 
「それで?」  
笹本は井上を見上げた。井上は笹本の傍に行き、膝をついた。  
鍵を持った手を手錠に伸ばす。  
なんだ鍵を外すなら婦長にさせればよかったのに、と不思議に思うとチャリンという音が耳に入った。  
間違いなく鍵を外した音ではない。まるで浴槽に落ちた音のようだ。  
笹本は後ろの方に頭を回そうしたときに井上の顔が不自然に近いところにあると気づいた。  
何、と言おうとしたとき不意に口が塞がれる。笹本は驚きで目を開いて頭が真っ白になった。  
半開きの口に井上の舌が滑り込んで笹本と絡み合う。  
何が何だかわからなくなって井上に抵抗せず好きなようにさせていたが、  
はっと正気に戻り、怒りがカチンと頭を叩いた。  
笹本が井上の舌を噛もうと歯を下ろしたのと井上がするりと中から抜け出したのはほぼ同時で、  
勢い余って笹本は歯をガチっと鳴らした。  
「お前…何のつもりだ」  
井上は目をパチクリとさせる。  
「あれ、笹本さんやったことないんすか」  
「舐めてんのかやったことあ…じゃねーよさっさと外せ」  
ガチャガチャと金属音を鳴らすが、井上は手錠に一瞥もくれず笹本を見ていた。  
「嫌です」  
嫌ですって何だふざけてんのかという抗議は  
井上の左手がスラックスからワイシャツを出しそこから入り込んだせいで発せられなかった。  
「おい井上!」  
叫びに躊躇せず手は胸に到達した。  
「思った通り…でかいっすね」  
笹本の抗議は胸をもみ出した手に遮られた。  
井上は笹本の耳に顔を寄せ甘く噛んだ。笹本の体はビクンと一瞬跳ねた。  
「ちょ…っ今何してんのかわかってんのか」  
「セックス」  
「っ!正気、か!テロに占拠されてんだぞ」  
「もちろんわかっていますよ。だから」  
20分で済ませないと。  
 
笹本はさきほどの婦長と井上の会話を思い出した。  
サァッと血の気が引いていく。  
「冗談だろ」  
笹本は信じられないと思った。  
「本気ですよ。俺、過去最短記録は13分なんで大丈夫です」  
誰もそんなこと聞いてねぇよ早漏野郎。  
少し肌寒く感じたと思えば、いつの間にかシャツのボタンは全部外されていて  
キャミソールが胸の上まで捲り上げられた。ブラジャーの留め具も器用に外される。  
「井上、いい加減にしろ…任務中だ」  
「それ以外ならいいんすか」  
「お前とはもう無理」  
じゃあやっぱ今しかないっすねーと井上は呑気に呟いた。  
「井上…ほんっと、ふざ、け、ん、な」  
頭突きを食らわそうにもあまりダメージはなさそうだし体の自由もきかず力も上手く入らないから、  
あと位置も悪いし井上の股間を蹴り上げられない。  
「だって、ねぇ考えて下さいよ。こんな楽しい状況滅多にないっすよ」  
医者のコスプレに手錠、テロ占拠による緊張状態。  
いつ目覚めるかわからないテロリストが一人と外で待つ婦長。  
今日は厄日なんてもんじゃない、笹本は怒りを通り越してあきれ果てた。  
「一生のお願いだ。死ね」  
「笹本さんの中でなら喜んで」  
何でそう前向きに捉えるんだこの男は。  
井上はガブリと笹本の首筋を噛んだ。  
「っ!」痛みに顔が歪む。  
「時間ないし始めますよ」  
最高に最低で最悪だ。  
笹本はこのときばかりは殺人罪の判決を喜んで受けてもいいと思った。  
 
井上はさらに笹本の服を捲り上げ、腕のほうに全部寄せた。  
笹本の上半身が空気に晒される。  
「いい香り」  
井上は笹本の襟足辺りに鼻を寄せると犬のように鼻を嗅ぎ、カプリと甘く噛んだ。  
それがくすぐったくて笹本は逃れようとするが井上はがっちり押さえ込む。  
「笹本さんって何のシャンプー使ってるの?あ、香りならリンスとかか」  
井上の手は笹本の胸を柔かく揉み解す。背後からの攻めに笹本は唇を噛み締め、必死に耐えようとする。  
けれどもたまに井上は襟足や肩、耳を痛くないように噛んできて、  
その感触にふとした瞬間に力が抜けそうになるが笹本は意識を保ち体に力を入れる。  
「力入れすぎると痛いっすよ」  
なら今すぐやめろ、と言えばあーじゃあ頑張って、と無責任なことを言う。  
笹本の唇に屈辱と怒りが集結してギリギリと噛み締める。  
手錠をガチャガチャと鳴らしてどうにか取れないかと粘るが、  
すると下腹を滑らかに右手が這い、スラックスの留め具をパチッと外す。  
そしてスルリと侵入してきて、その動作にチャックも緩やかに下がった。  
右手は直接下着の中に入ってきて、指先がそこを軽く撫で始めた。  
ゾワッと背中に刺激が走り、全身をかける。あぁ気持ち悪い。笹本は瞼を頑なに閉じる。  
「ぐ…ぅ」  
笹本はハッと頭を回した。  
向こうに横になっているテロリストは少し頭を動かしてまたピタリと止まった。  
「起きますかねぇ」  
呑気そうな井上を笹本は睨みつけた。  
「井上…今なら一発、いや二発殴るだけで許してやる」  
怖いなぁ、と感情のこもらない声で呟いても相変わらず手の動きは止まらない。  
左手は胸の突起を弄り、右手は茂みをかきわけて敏感なところを突いてきた。  
笹本は体を一層強ばらせ刺激に屈しないようにするが、時折訪れる井上の口の愛撫は強制的な手よりも何故か優しく甘く、  
そのギャップが生み出すくすぐったさに違和感を覚えた。  
襟足や肩の辺りは仄かに井上の噛み跡と涎が染み込んでいて、犬の玩具のような気分になる。  
 
ヴィーヴィー。  
聞き慣れない機械音が鳴り響いた。出所はテロリストのようだ。  
「携帯かな」  
井上はスッと立ち上がるとテロリストに近づいていった。  
傍に屈んでズボンのポケットを調べると、携帯を取り出した。  
携帯を開くと新着メールの表示があった。メールを開くと垣原からだった。  
様子はどうだと聞いている。井上は少し考えたあと、問題なし、と無難な返事を返した。  
それから携帯を閉じようとして、手を止めた。  
井上は笹本の方を振り返ると相変わらずガチャガチャと手錠を鳴らしている。  
「笹本さん、すみません」  
井上の謝罪に笹本は顔を上げる。やっと解放してくれる気になったか、と思えば右腕を持ち上げられた。  
笹本は井上を見上げると、すみません、とまた聞こえてきて右腕が頭上に動かされる。  
井上の右手は笹本の胸の下を過ぎてわき腹を掴み、グルリと右に回される。  
まさかと思ったのもつかの間、最初に手錠をかけられた時の体勢になり、隠れていた前が井上の目前に顕わになる。  
上半身裸で、スラックスも下にズレているこんな格好を改めて思い知らされて笹本は顔を赤くした。  
「痛くなかったっすか?」  
心配そうに井上は聞いてきた。変なところで気遣って、もっと違うところを気にしてくれ。  
目線で訴えるが井上にちゃんと届いたのかどうかはわからない。  
 
 
174 名前:井上×笹本(・∀・)7 Qhs5UzfT 投稿日:2008/01/18(金) 19:39:26 ID:FDyZ1L/6 
井上は笹本を気にせず持っていた携帯を操作し始めた。  
またメールが来たのだろうか、と思ったとき、カシャっという音と共に携帯から光が発せられた。  
写真を撮られた。  
「・・・っ!!」  
あまりの出来事に笹本は絶句し、井上はいいアングル、と言った。  
「えーっと、アドレスは・・・」  
右手の親指が忙しなく動いているのが見える。  
「お・・・っま、何して・・・」  
「俺の携帯に画像送るんすよ」  
「やめろ!!!!」  
あ、そうか、と井上は呟いた。  
「今携帯とられてっから、そっちよりもパソコンに送った方がいいっすよね」  
「ば・・・っそういう意味じゃねぇ!!」  
井上の斜め上をいく解釈に笹本は頭痛を感じてきた。  
送信メールも画像もちゃんと消しますから大丈夫っすよ、井上はニコッと笑いかける。  
笹本は怒りと殺意で頭がグルグルとなり、再び近づいてきた井上をキッと睨みつける。  
「絶対、殺す」  
きつい表情に鬼のようなオーラ、大抵の男ならこの威圧感にたじろいでしまいそうだが、  
井上は相変わらず無頓着だった。  
 
携帯を白衣のポケットに入れ、井上は膝をつくと笹本に顔を近づける。  
笹本はすかさず勢いをつけて頭を前に動かしたが、寸前のところで井上の手に遮られた。  
井上の両手に顔を抑えられたまま、笹本の瞼の上にキスが落とされた。少しずつ下に下りながら、今度は鼻をハムっと噛まれる。  
痛いどころかこそばゆい。  
こいつは噛むのが好きなのかな、と笹本は思った。  
唇はさらに下りて頬を噛んだり舐めたりするが、唇の近くには寄ってこなかった。  
キスをしたら噛み切られるとでも思っているのだろうか、でも隙があれば笹本はやるつもりだった。  
それにしても、いつまでこんなこと続けるつもりなのか。井上は飽きもせず笹本の顔中を柔かく愛撫する。  
しばらくすると井上は唇と両手を離した。あぁ、と笹本は名残惜しく思い、すぐに何を考えているんだ、と自分を一喝した。  
それから井上は顔を笹本の右肩に寄せ、背中に手を回してギュっと抱きしめた。  
強すぎず弱すぎず、この抱擁に何だか妙な温かさも感じて笹本は面食う。  
両手を拘束されて抵抗できないのを利用されて犯されようとしているはずなのに、井上は笹本をまるで恋人と体で愛し合うように接してくるのだ。  
井上の真意が全く見えてこなくて笹本は逆に不安を覚えてくる。こいつは本当に犯す気があるのか、なんて思ってしまった。  
ドクン、ドクン、服越しから井上の鼓動を感じる。笹本の胸も脈打っている。二人の音が混じりあってどれが自分のかわからなくなった。  
井上、と耳に届くかどうかわからないほど小さな声で呼びかけた。僅かに抱きしめる力が強くなった気がした。  
 
すると前触れもなくパッと抱擁が解かれた。  
笹本が身構えるよりも早く、右手が股の間に入り込み再びそこを攻め始める。笹本はンッと声を漏らして、目を丸めた。  
気持ち悪いはずのこの無理矢理の行為に一瞬甘い痺れを覚えたことに衝撃を受けたからだ。  
きっと何かの間違いだ、と頭の中で必死に言い聞かせるが、そこから熱が緩やかに全身に広がっていくのを感じた。  
「や・・・めっぇ・・・!」  
行為の始めの方にはなかった快楽が徐々に形を成して行く。  
自分の変化に信じられない、と笹本は自分自身に絶望し、さきほどしてしまった油断のせいだ、と後悔した。  
井上は首や鎖骨、胸に噛み跡を残していく。噛み跡は砂に残した足跡が波に浚われるように、  
すぐに消えてしまいそうなほど弱いものだった。  
その間に左手は笹本の背中を優しく撫でる。  
 
調子が乱され狂わされていき、それを認めるのが悔しくて笹本は首を何度も振り続けた。  
井上の唇が首を伝って上へとあがる。右耳の下の首筋に鼻をこすりつける。  
笹本は首を動かし逃れようとしてもその動きに合わせて鼻はついていき、今度は頬を通って唇に近づき、  
そしてお互いの唇が重なった。  
最初のキスと同じように井上の舌がスルリと入り込み、笹本に絡みつく。  
先ほどの決意は熱に溶かされて一つになってしまった。  
口内で舌が絡み合い、両手の愛撫も手伝って、さらに体が熱くなる。  
井上は唇を離すと顎を噛んだ。それから顔の様々な箇所にキスをしたり舐めたり噛んだりする。  
どうかしている、と思っても体は既に井上を拒否していなかった。  
笹本の限界も近い。それを感じ取ったのか指の動きがもっと激しくなった。  
「いの・・・ぇ・・・」  
名前を呼ぶと唇がまた重なった。今度は笹本が積極的に舌を絡めてきた。  
一瞬井上がたじろいだが、すぐにそれを受け入れた。  
あぁもうだめだ。笹本は熱に浮かされながら来るべき絶頂を待った。  
 
「あ」  
ピタリと、井上の動きが止まる。同時に唇も離れた。  
ぼんやりした目で笹本は井上を見た。井上は白衣のポケットから携帯を取り出してパカっと開いた。  
笹本はハッとする。  
「また撮るのか!?」  
そうじゃないっすよ、と言って井上は携帯を閉じた。  
「そろそろ時間です」  
「時間?」  
一体何の、と言いかけたとき笹本はまた目を見開いた。  
"婦長さん、少し出てもらえませんか。20分くらいで済みます。"  
笹本は口をパクパクとさせた。  
ちょっと遊び過ぎちゃいましたね、と井上は軽い調子で言った。  
井上は腕を笹本の後方に回し、笹本の腕のあたりに寄せ集めていた服などを引っ張り、前に持ってきた。  
丁寧に笹本に着させていく。  
「さっさと任務終わらせましょうか。続きはそれからで」  
掃除をしてからお茶を飲もう、と誘うような響きだ。  
笹本の体はプルプルと震えていた。  
 
シャツをスラックスの中に入れると、井上は浴槽の方に体を向けた。  
中に手を伸ばして鍵を拾った。  
井上は手錠の穴に鍵をさそうとしたが、立ち上がって笹本から離れた。  
「鍵外せよ」  
井上は少し待ってください、と呟いた。  
「婦長さんいた方が笹本さんあんまり暴れなさそう」  
笹本はカッとなって腕をあげようとするが、取っ手に邪魔される。  
「それに俺よりもテロリストの方をどうにかしないと」  
ね、と井上は笹本に笑いかけた。  
笹本の頬はピクピクと痙攣している。こっのド外道地獄に落とす。  
井上はドアに歩いていき、開けて婦長を中に入れた。  
婦長はまだ繋がれたままの笹本を見て、井上に顔を向けると一体何をしていたんですか、と問いかけた。  
井上はただ笑って婦長に鍵を差し出した。婦長は首をかしげてそれを受け取る。  
笹本のほうへ歩いて行き、手錠の鍵を開けながら、同じ質問をした。  
笹本もどうにか無理矢理に笑顔を浮かべた。企業秘密、です。  
婦長は笹本と井上を交互に見て、もう一度首をかしげたのだった。  
 

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