「係長、これ」
笹本が小さな箱を差し出す。
意味を分かりかねて箱と笹本の顔を交互に見た。
すると、彼女はふっと笑いながら
「係長は特別なんで。」
と箱を俺に押し付けるようにして渡してきた。
「次の任務があるので。失礼します。」
出ていこうとする彼女に声をかける。
「笹本!」
「はい」
「怪我、しないようにな。気を付けて。」
「はい!」
彼女を送り出し、俺は手のひらの箱に視線を移した。
翌朝、四課では井上、山本、石田が何やら語り合っている。
「笹本さんて昨日男にチョコ渡したりしたんすかね?」
「ないない。少なくとも俺にはくれなかった」
「もしかしてお前、昨日チョコ一つももらえなかったのか?」
「お、俺はいいんです。チョコなんかいつでも食えるし…」「井上は?」
「惨敗っす。合コンも連敗だし…」
頭を抱える二人を尻目に、妻子から愛情たっぷりチョコをもらった石田は上機嫌だ。