「尾形さ、んって…っ」
「なんだ」
黒く大きな瞳に涙をいっぱいにためた笹本が尾形を見上げている。
その目は恨みがましくなにかを訴えているようにも見えた。
「サ、ディストですよ…ね…っぁ」
息を乱す笹本の両手首はその頭上で尾形のネクタイにがっちりと固定され自由を失っている。
透き通るように白い裸体には艶かしい紅がいたるところに散らされていた。そのひとつを尾形が楽しげに指先でなぞる。
ピクリと身を震わせた笹本に怪しく口角を上げた。
「ひゃ、ぁんっ!!」
くちゃり、という水音をかき消すように笹本が突然嬌声をあげる。
蕩けきった其処を尾形の無骨な指が掻き回したのだ。
漏れてしまう声を抑えようにもその手は拘束されていてかなわない。笹本は羞恥に頬を染めいやいやと首を振った。
いつも強気な笹本が今にも泣き出しそうに顔をゆがめ時折甘く啼くのを聞いて尾形は満足する。
「っ、あぁっ!ゃ、だっ・・・!!んんっ」
淡く色づいた蕾に吸い付いて、あふれ出る蜜を掬い上げるように舌を這わせる。
強い快感から逃れようと身を捩じらす笹本の腰が一瞬縋るように動いたのを尾形が見逃すはずがない。
形のいい臍の横にキスをして唇を耳元に寄せる。
「欲しいか?」
「っぁ…やぁ・・・っ」
「気持ちいいんだろう?」
「んあぁっ!!んっ!!」
尾形が起ちあがった蕾を指で弾く。
豊かな胸にじらすように舌を滑らせていたかと思えば強く吸い付いて所有の印とも言うべき痕を増やした。
「笹本?」
「は、ぁっ・・・」
もう言葉を発することもままならないことをわかっていながらなおも自分を追い詰めてくる尾形に笹本はまただ、と思う。いつも優しすぎるくらい優しい尾形がこうして時折見せる表情にどちらが本物かわからなくなるのだ。
一瞬そんなことを考えるも焦らすように続く愛撫に笹本は思考を濁らせる。
ぼんやりとする視界の中で必死に尾形だけを見つめた。
「どうする?」
残酷にも聞こえる低い声が笹本の耳に届く。
目の前の人に縋りつくことも許されず、ついにその目から涙が零れた。
「ぁっ・・・ぃ・・・」
「ん?」
「っ・・・い、ぃっ!もっ、とぉ…!ぉが、たさぁ・・・ぁっ、くだ、さぃ・・・っ!!」
熱に浮かされ何もかもよくわからなくなった笹本が懇願の声をあげる。
そんな笹本の姿に尾形が再び怪しげに微笑んだのを笹本が知るはずもなく、頬に流れる水滴を優しく舐め取るその感触にただ身を任せた。