気付いたら朝になっていた。昨日は飲みすぎたようだ。  
まだ頭痛がする。昨日のの宴会でジャドウさんが暴れたまでは覚えているが、  
それ以降の記憶が全く無い。  
キース同盟を退けたとはいえまだこの国は予断の許されない状況だ。  
今後は飲みすぎないよう気を付けよう。  
 
 
フォルトはガルカシュを離れてから魔王軍に身を寄せていた。  
かつて魔王軍はネウガードを拠点におき、その圧倒的戦力で諸国を統治して  
いったがある日、隙を突かれキース同盟にネウガードを奪われて以来、次々と  
キース同盟に領土を奪われいき、今ではカイゼルオーンを残すのみとなった。  
そんなある日、カイゼルオーンの地にて魔王軍はキース同盟の撃退を祝して宴会  
を行っていた。  
「うぅ、最近娘のメイミーが酷いのだよ。私と会う度に裏切り者だの、一族  
の誇りを捨てた恥知らずだのと罵って。昔は素直でとてもいい娘だったのに。」  
すっかり酔いの回ったバイアードが泣きながらゴルベリアスに愚痴をこぼす。  
どうやら家族関係が上手くいってないらしい。ゴルベリアスの方は迷惑そうに  
バイアードの愚痴に付き合っている。フォルトはそんな様子を見ながら一人  
静かに酒を飲んでいた。  
「楽しんでいますか。」  
そんなフォルトにザラックが声をかける。  
「その様子ではあまり楽しんでないようですね。」  
ザラックの言うようにフォルトは悩んでいた。  
「今日、キース同盟を退けたと言っても一時的なものです。また来るでしょう。  
それなのにこんなに騒いでいてよいのでしょうか。」  
フォルトの言う事はもっともだった。魔王軍は今、西側はキース同盟に、  
東側はメイマイに囲まれて、滅亡の危機にあった。  
「それに・・・」  
「何故、何故なんだ。スノーーーーーーーーーーー。」  
更に何か言おうとしたフォルトだったが、突如辺りに響き渡ったジャドウの  
叫びによって遮られる。  
 
「うぅ。スノー。何故なんだ。俺の何処が気に入らないんだ。」  
ジャドウは相当酔いが回っているらしく、ただでさえ青白い顔を更に真っ青に  
させて涙を流していた。以前リトルスノーに拒絶されたのをまだ根に持っている  
ようだ。  
「落ち着いて下さいジャドウ様。私が言うのもなんでしょうが、唯でさえ  
ジャドウ様は女性の方が嫌われになる極度のマザコンなのです。それに加えて  
触手プレイまで強要されては、嫌われて当然です。」  
全く人のを言えないルドーラがフォローになっていないフォローをする。  
「お、俺はただ、スノーが喜ぶと思って・・・うわぁぁぁぁ。」  
ジャドウは更に涙を流しながら触手を振り回して暴れる。  
フォルトはその光景を唖然として見ていた。  
「気にしないで下さい。お酒が入るといつもああなんです。それよりフォルト、  
彼方の言う事も十分わからます。でも皆嬉しいのですよ。キース同盟に拠点  
であるネウガードを奪われて以来、殆どの兵がキース同盟に寝返り、アナタが  
来るまで敗戦続きだったのですから。」  
ザラックが言うように、魔王軍はこの所キース同盟に寝返る魔族が多く、深刻な  
人材不足に悩んでいた。そのため、フォルトの様な人間でも魔王軍に入る事が出来た。  
「今日の勝利だって彼方の作戦の御陰です。彼方が楽しまないでどうするんですか。」  
「そ、そんな、僕は大した事はしていませんよ。」  
ザラックの賞賛に照れながらもフォルトは納得し、自分も宴会を楽しもうと思い  
近くにあったワインを飲み干した。  
こうしてこの日の宴会は深夜までつづいた。  
 
「ううぅ、まだ頭がクラクラする。」  
日記を書き終えたフォルトはまだ残っている酔いを覚まそうと外の風に当たる  
為に城壁の上に上がった。  
「・・・ここも随分と荒れ果てたな。」  
城壁から見える景色に溜め息をつくフォルト。城の周りの木々は焼け落ち  
大地は枯れ果て、先日の戦闘の傷跡を生々しく残していた。  
その光景を眺める度にフォルトは悩まされる。  
自分はどうすればいいだろう。元は先代メイマイ王グランの頼みでメイマイ国  
を救うためきたが、ティナ達の趣味に耐えられず逃げ出した。そのまま祖国に  
帰らなかったのは、心の何処かで別の方法でメイマイ国を助けたいと思ってい  
たからだ。だがメイマイはもう、自分の助けが必要無い程強大な国になった。  
それに今自分は何をしているだろう。彼女達に追われる度に逃げ、所々で戦火  
に身を投じ、放浪を繰り返す。  
そんな思いと別の行動をしている自分にフォルトは葛藤する。  
「本当に、僕はどうすればいいんだろう・・・・・えっ。」  
深く悩み、思わず独り言を漏らすフォルトだったが、ある異変に気付く。  
遠く離れた東の方に動く物体があった。それも一つではない。  
沢山の物がこちらに向っていた。  
「あ、あれはメイマイのデビル達。ついに来たのか。」  
それらをはっきりと確認したフォルトは急いでみんなを呼びに戻った。  
 
魔王軍の武将全員が城壁に上がり、進軍してくるメイマイ軍を見る。  
「おいおい、随分少なくねえか。」  
ゴルベリアスの言うように、メイマイ軍はデビルが僅か百匹程で極端に少なかった。  
しかも数百メートルほど離れて待機している。  
「なにか様子が変ですね。」  
ルドーラが言うと同時に、デビルの群れの中から一匹がおもむろに前に出る。  
それに引かれて、後ろ手を縛られたリトル・スノーが前に出てくる。  
「これは明らかな罠です。ジャドウさん、注意して下さい・・・って、アレ?」  
フォルトはジャドウに警告しようとするが、既にそこにジャドウの姿は無かった。  
ジャドウはリトル・スノーが見えた途端に直接攻撃を仕掛けていた。  
「待ってろよスノー。今助ける。」  
物凄い勢いで敵軍に向うジャドウ。どうやらリトル・スノーの事になると見境が  
無くなるようだ。  
「全く。私はこんな馬鹿に負けたのか。」  
ジャドウがリトル・スノーに触れようとした、その瞬間。ジャドウは何者かに  
弾き飛ばされる。  
「久しぶりだな。ジャドウ。」  
そこには、ジャドウの妹である爆炎の申し子ヒロが立っていた。  
「ヒロ。貴様がスノーを・・・・」  
「だとしたらどうする。」  
「貴様を殺す。」  
ジャドウの触手が目に見えぬ速さでヒロに襲い掛かる。  
だがヒロは一瞬の内にゲートオブヘヴンて触手をなぎ払った。  
「なっ。」  
「遅い。」  
驚くジャドウを瞬く間に間合いを詰めたヒロが左腕で殴り飛ばした。  
 
ジャドウは目の前の出来事に信じられなかった。  
四年前ヒロと戦った時は自分の圧勝だった。だが今は自分が手も足も出ない。  
ジャドウが繰り出す攻撃は全て躱され、放った氷もヒロの炎に消される。  
「何故だ。何故俺が押される。」  
追いつめられたジャドウは最大の必殺技G・シュトロームを放つ。だが、  
「無駄だ。烈火死霊斬。」  
ヒロの鎌より放たれた死霊がジャドウごとG・シュトロームを潰す。  
死霊が直撃したジャドウはその場に倒れ動けなくなった。  
「終わりだ、ジャドウ。貴様は父様の苦悩によって生まれた存在。憎しみに  
満ちていた四年前ならともかく、今の貴様では私に勝つ事は出来ない。それは  
貴様が一番解っているだろう。」  
ヒロの言う通りだった。ジャドウもリトル・スノーやフォルトといった様々な  
人間と出会う内に、次第に人間達への憎悪が薄れていった。しかし母代わりの  
存在だったホワイトスノーを欲深い人間に殺された事が、ジャドウにその事を  
認めさせなかった。  
「お、俺は。俺は。」  
なおも立ち上がろうとするジャドウ。しかし傷ついた体が言う事を聞かない。  
「それからな、ジャドウ。貴様に言うのも気が引けるが、このさ・・・・」  
「ヒーロー。」  
ジャドウに何か言おうとしたヒロだったが、そこへ何故か捕まっていたはずの  
リトル・スノーが駆け寄ってきて、ヒロに抱き着いた。唖然とするジャドウ。  
「どうだった。私の作戦。上手くいったでしょう。」  
「ああ。まさかここまで上手くいくとは思わなかったよ。」  
「それじゃ・・・その、今夜は・・・その。」  
二人のそんな会話を聞いて、ジャドウは全てを理解した。  
「すまぬなジャドウ。こういう事だ。」  
「ごめんなさい、ジャドウ。貴方との恋は、辛く悲しい恋でした。」  
「そ、そんな。スノーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」  
ジャドウの悲痛な叫びが辺りに響き渡った。  
 
「ったく、あの馬鹿。見事に捕まりやがった。」  
ゴルベリアスが壁を叩いて怒りを露わにする。当然と言えば当然だ。  
「困りましたね。」  
ザラックが冷静に言うが、仮面の下では心底呆れていた。  
「まあ、幸いメイマイの君主は善政で有名な方です。いきなり殺されるような  
事はありませんから、ジャドウ様には悪いですがここは見捨てましょう。」  
ルドーラはあっさり切り捨て案をだす。さすが悪名高い事だけはある。  
「確かに。今の我々の戦力ではジャドウ様をお助けする事は出来ないでしょうし。」  
バイアードを初め他の五魔将もルドーラの案に納得し始める。  
「ちょっと待って下さい皆さん。」  
ジャドウの切り捨て案にフォルトが待ったをかける。  
「仮に、今ここでジャドウさん見捨てて危機を避けても、このままでは魔王軍に  
未来は有りません。そこで僕に考えが有ります。これは賭けになりますが上手く  
行けばジャドウさんを助けられますし、なによりこの二大強国に挟まれた苦しい  
状況を抜け出せます。」  
そう言ってフォルトは自分の考えた作戦を話した。  
「面白れぇ。その話、乗った。」  
「兵の方は私とバイアードに任せて下さい。必ず集めます。」  
「それしか方法は無い様ですし、私も乗りましょう。」  
フォルトの作戦に全員が賛成する。  
ここに魔王軍一世一代の作戦が決行される事が決まった。  
 
 
その日の満月の夜。プラティセルバとカイゼルオーンの国境沿いに建てられた  
拠点用の砦にヒロとリトル・スノーは戻っていた。  
「どお、ヒロ。気持ちいい。」  
その一室。リトル・スノーは騎上位で腰を振りながらヒロに尋ねる。  
「ああ。」  
その答えにリトル・スノーは喜びながら動きを早めていく。  
そこへ天井から不如帰が降りてくる。  
「なんだ、お前も入りたいのか。」  
「いえ、そんなんじゃありません。ボルホコよりリム様から連絡が入りました。」  
ヒロの言葉に赤面しながらも、不如帰は連絡を伝える。  
「五魔将の一人、ルドーラがボルホコに投降しました。彼の情報によりますと  
現在、魔王軍は君主の不在により混乱状態にあるようです。」  
「そうか。」  
その情報に不敵に笑みを浮かべるヒロ。  
「スノー、続きは後だ。我らはこれよりカイゼルオーンに進軍する。」  
そう言うとヒロはリトル・スノーから自分のモノを引き抜き、服を着はじめる。  
「捕虜はどういたしましょう。」  
「見張りと数十名の兵だけ残して置いていく。それより兵の準備を急がせろ。」  
 
 
ヒロの軍が出発して静まりかえった砦。その奥にジャドウは捕らえられていた。  
「ううぅ。頼む、捨てないでくれスノー。もう触手を強要したりしないし、  
生理の日は諦める。それにヒロの衣装を着させてするのも止める。だからさぁ。」  
完全にリトル・スノーに捨てられたジャドウは、涙を流しながら独り言を言いつづける。  
連れて来られてからずっと続くジャドウの独り言に見張りの兵士も半ば呆れていた。  
「見張り、代わりましょうか。」  
そこへ鎧に身を包んだ一人の兵士が入ってくる。  
「えっ、いいの。ありがとう。いい加減私も限界にきてた所だったの。」  
見張りは兵士に鍵を渡すとその場を去って行った。見張りが居なくなったのを  
確認すると兵士はおもむろに被っていた鉄仮面を脱ぐ。  
「ジャドウさん。助けに来ました。」  
それは砦に侵入したフォルトだった。  
 
フォルトとジャドウは砦を逃げ出し森の中を走っていた。  
「おい、何処に連れて行く。カイゼルオーンとは方向が違うぞ。」  
ジャドウがフォルトに問う。現在、ヒロの軍勢がカイゼルオーンに進軍中であり  
一刻も早くカイゼルオーンに戻り防衛の準備をしなければならなかった。  
「大丈夫です。もう既にカイゼルオーンは蛻の殻です。」  
フォルトが笑みを浮かべて言う。敵に偽の情報を与えカイゼルオーンに注意を  
引き付けさせ手薄になったその間に、プラティセルバに駐軍中のメイマイの  
本隊を一気に攻める。これこそがフォルトの考えた作戦だった。  
「成程。確かに今ならメイマイの本隊を叩ける。だが貴様はそれで良いのか。」  
フォルトの作戦にジャドウは納得したが、それと同時に疑問も浮かんだ。  
この作戦が成功すればメイマイは甚大な被害を受ける。だがそれはフォルトが  
この大陸に来た理由である先代メイマイ王グランの意志に背く事に他ならない。  
「構いません。きっとグラン様もそれを望んでいます。」  
メイマイは人質を使うなど、大陸の統一に手段を選ばなくなってきた。このまま  
だといずれ大陸はメイマイ、いや、彼女達の狂気に包まれるだろう。  
そうなる前に彼女達を止めねば。最早フォルトの心に迷いは無かった。  
「それじゃあ僕が追手を引き付けますから、ジャドウさんは先に本隊に合流して  
プラティセルバに向って下さい。」  
フォルトの決意を信じたジャドウは、フォルトの指示に静かにうなずくと、本隊  
に合流すべく走り出そうとした。  
「それから。」  
だがそれを急に止めるフォルト。  
「貴方の母親は復讐なんて望んでいませんよ。」  
「貴様。何故それを・・・」  
フォルトの言った一言に驚くジャドウ。リトル・スノーにしか話した事の無い  
自分の忌まわしき過去。なのに何故フォルトは知っているのか。  
「大蛇丸さんに知られたのがまずかったですね。結構有名な話ですよ。」  
そう笑って言い残すとフォルトは森の中に消えた。  
「ふっ、人間が・・・言ってくれる。」  
フォルトの姿が消えた後、残されたジャドウは独り言を呟く。  
その顔にはほんの微かだが笑みが浮かんでいた。  
 
「これは・・・。よくここまで集まったものだな。」  
ボルホコ、カイゼルオーン、プラティセルバの国境付近の森林で本隊と合流した  
ジャドウは兵士達の数に驚く。城には300兵程しか残っていなかった筈なのに、  
目の前には魔族の兵だけでなく、ゴブリンやワーウルフ、ティターンに  
ディアボロスなど総勢2000もの兵が集まっていた。  
「驚きましたか。ゴブリンの残党や近くにいた闇の眷族を全て集めました。  
これだけの数、メイマイも予測していないでしょう。」  
ザラックがジャドウに説明をする。フォルトが救出に向っている間、ザラックと  
バイアードが集められるだけの兵力を集めていた。  
「これなら勝てるな。」  
ジャドウは勝利を確信した。だがその時、突如魔王軍に爆雷が降り注いだ。  
「何事だ。」  
突然の出来事に慌てて空を見るバイアードだったが、其処には4000を  
超えるエンジェルが魔王軍の周りを包囲していた。  
「ジャドウ様。貴方の負けです。」  
そう言いながらルドーラが静かに姿を現す。どうやら先程の爆雷は彼の仕業のようだ。  
「ルドーラ。テメェ裏切りやがったな。」  
ゴルベリアスが怒りを露わにする。だがルドーラは全く動じない。  
「私は賢いのですよ。己の力を理解し、従えるべき者にしたがえる。私も仲間を  
裏切るのは悪いと思っています。ですが許してもらう必要はありません。」  
冷たく言い放たれたルドーラの言葉を皮切りに、上空で構えていたエンジェル達  
が一斉に魔王軍に襲いかかった。  
 
戦場と化した森から離れた丘の上。リムはそこに陣を布き様子を見ていた。  
「流石は魔王軍、と言った所ですね。」  
リムは魔王軍の戦いに素直に感心する。  
数ではエンジェル達の半数程だった魔王軍だったが、ジャドウと五魔将の三人  
の圧倒的な強さに加え、地形や天候も魔王軍に味方して、魔王軍が押していた。  
だが、そんな不利な戦況でもリムは全くの余裕の表情でいた。  
「そろそろ、でしょうか。」  
リムのその言葉と同時に、戦場に爆炎が上がった。  
 
 
「全く、この私を囮に使うとは、やってくれる。」  
一度はカイゼルオーンに進軍していたヒロだったが、その後不如帰のから真の  
伝言を聞き、急いで軍を引き返して戻ってきた。  
「四年前の借り、ここで返させてもらう。」  
ヒロの軍が魔王軍の背後から参戦した事で戦況が一変する。次第に魔王軍は  
追いつめられ、遂に一体のエンジェルの槍がジャドウの右胸を貫いた。  
「ジャドウ様。」  
ザラックが急いでそのエンジェルを殺すが時既に遅く、ジャドウの胸には槍が  
深々と突き刺さっていた。初め、自分に突き刺さった槍を呆然と見るジャドウ  
だったが、おもむろに槍を引き抜く。辺りに大量の血が流れる。  
「ウジ虫共が、なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」  
ジャドウが怒りに身を任せて叫ぶ。するとジャドウの体がみるみると変化していき  
やがてそれは一匹の巨大な魔獣となった。  
 
「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」  
魔獣と化したジャドウの咆哮が大地から死霊達を呼び集める。  
地上に放たれた死霊は木々をなぎ払い、大地を砕き、生きる者全てに牙を剥く。  
「これが奴の真の力か。」  
ジャドウの余りの強大な力に絶句するヒロ。そして自分がパンドラの箱を開けた  
事を知る。  
「奴は私が止める。他の者は急いで撤退して本隊を合流しろ。」  
ヒロが生き残っている軍に命令する。だがジャドウを止めるとは言ったものの、  
正直一人で勝てる気がしない。なのに何故そんな事を言ってしまったのか。  
ジャドウを真の姿にした贖罪の為。いや違う。ジャドウは遅かれ早かれいずれは  
こうなった。ならば何故か。きっとそれは宿命だからだ。今のジャドウは迫害  
され続けた魔族の怒り、悲しみ、恨み、全ての苦悩そのものだ。それを受け止めず  
して自分の願い、全ての種族の共存な到底出来はしないからだ。  
だからこそヒロは敢えて一人で戦う事を選んだ。  
「負けないよ、ジャドウ。」  
そう言うとヒロはジャドウに向って行った。 
 
 

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