「異界の魂」  
 
チキュウからネバーランドに呼び出された人間は元の世界にいたときには、  
考えられない超常な力を得るという。  
                   *  
俺を呼び出したという神官は言った。  
君の力が必要だ。奇跡を起こせ。  
だがそんな事言われても普通の人間にできるわけがない。  
そう、俺は普通の人間に過ぎなかった。  
ちやほやされた時間はほんの数分で終わりを告げ、俺は放逐された。  
混乱する暇もなく状況が変わっていった。  
すぐさま証拠隠滅を図る神官のはなった暗殺者に命を狙われた。  
たまたま通りがかったゲイルとマックスのおかげで危機を脱する事ができた。  
そして瀕死の男から神器を受け取り、しゃべる白いヒヨコ虫のシロを拾ったり・・・  
状況が落ち着くと同時に俺は先の見えない不安感に襲われた。  
何をしたらいいのだろう、どうすれば帰れるのだろう。  
今後の事について考えていると、シロが言った。  
天魔王とやらの力を封じているというその神器を集めていけば  
帰る方法が見つかるかもしれない、と。  
                    *  
俺は藁にもすがる気持ちでそれにかけた。  
俺が受け取った神器は特別らしくそれを狙う別勢力が存在した。  
そいつらの手を何とか神器を守りつつ、他の神器を回収する。  
そんな旅にいろんな連中が加わっていった。  
加わった面子にヴァラノワールとかいう学園に通う連中がいる。  
メンバーの大半が女。それだけならまだしも、  
女が三人集まれば姦しいとはよくいったもので、騒がしい奴らばかりだ。  
しかもそいつらは、度がつくほどにお節介が多く、  
俺がチキュウから召還されたという境遇を知ってか、俺に気をかけてくれてるようだ。  
だが俺はどうも素直に受け止める事ができない。  
 
「俺の事は放っておいてくれ」  
話しかけてくる物好きな「仲間」に対してそっけない態度をとるたびに、  
またやっちまったと思うことが何度あっただろうか。  
いつだって、何かをやってしまった後に後悔する…  
こんな性格、変われるものなら変わりたい。  
ぼんやりとそんな事を考えつつ、オルルの町を歩いていると、  
「アキラ様」  
「ん?」  
この変な呼び方は…  
「ノーラ・ノーラ…か、何のようだ?」  
見れば、手に大き目の籠と図鑑を持ってる。  
「アキラ様、今時間はおありですか?」  
しまった!こいつはキノコ好きの少し変わった奴だった。  
以前ミュウとヘレネと一緒に付き合わされてえらい目に会った。  
「この前の場所のほかに穴場を見つけまして、それで是非と思いまして」  
やっぱりか!  
「すまんな、これからマックスと用があったんだ」  
「マックス様なら、イグリアス先生と二人で歩いてるのを見ましたけど」  
マックスの奴…あっちこっちで女つくってるくせにイグリアスの前ではいい子ぶりやがって。  
「ミュウ様もナギ様とリーエ先生に呼ばれてるようなので」  
はぁ?マジかよ。  
「ミュウ様がおっしゃるにはアキラがさっき暇そうに歩いてるのをみたから誘ってあげたらと  
おっしゃられていまして」  
 
あのアマ、俺に押し付けるつもりだな。うまく言い逃れやがって。  
仕方ない…俺は覚悟を決めると、  
「はぁ、わかったよ。けどあんまり疲れるのはごめんだぞ」  
「ありがとうございます。では早速参りましょう」  
そう言うと、ノーラは俺の手を引っ張って歩き出した。  
「そ、そんなにひっぱるな」  
「光陰矢のごとし。時間は無駄にはできません。フフフ…」  
                   *  
オルルの町の外れにその穴場はあるそうだ。  
作業前に、ノーラは図鑑を見せて食べられるものかそうでないものかを説明しだした。  
以前行ったときは俺は言われるままに取ったり、荷物運びばかりで種類まではよくわからなかった。  
ふとノーラの顔を見てみる。前髪で目が隠れてるがその口調や表情はどこかうれしそうだ。  
「では、早速始めましょう。アキラ様はそちらをお願いします」  
俺は、図鑑とにらめっこしながらなんとかキノコを籠に放り込んでいく。  
やはり、チキュウのものとは違うんだな。  
しばらくして、ふとノーラの方に目を向けてみる。  
ノーラの手つきは手馴れたもので、すばやく、丁寧にキノコを集めていく。  
 
その表情は真剣そのもので、  
へー、こいつって結構…  
「どうしたんですか?何かわからないものでも?」  
俺の視線に気づいたのか、ノーラが聞いてきた。  
「い、いや、何でもないっていうかその、これはどうだ?」  
俺はとっさに手近なキノコを見せて何とかごまかそうとする。  
「こ、これは!」  
ノーラが突然大きい声を出した。  
「な、何だ?やばいもんなのか?性格反転ダケとか」  
「?、それは分かりませんが、これは十年に一度と言われるぐらいの貴重なもので……」  
ノーラは嬉々としてそのキノコについて語り始めた。  
なんでも、香りよし味よしの一品で結構な高値がつくとか。  
これが長いんだよな。俺はため息をつきながらもノーラの様子を眺める。  
「ふっ」  
「な、なにか変でしょうか?」  
どうやら声に出たようだ。  
「いや、好きなんだなとおもってな」  
「す、すみません。つい夢中になってしまって…」  
「いいんじゃないか?なにか夢中になれるものがあるっていうのはいい事さ」  
俺はふと剣道に打ち込んでた自分を思い出したが、すぐに打ち消した。  
 
「でもアキラ様は迷惑だったんでは?」  
ノーラは俺に上目で俺に見上げてきた。さすがに長時間つき合わせてしまった事を  
気にしているのだろうか。  
「気にするなよ。結構おもしろかった」  
まぁいい暇つぶしにはなったと思う。毎回は勘弁だが…  
「よかった…」  
ノーラが安堵した声をだす。そこで俺は疑問を口にする。  
「なんで俺を誘ったんだ?暇人ならまだ他にもいただろうに」  
俺の言葉にノーラは少し慌てて、  
「そ、それはその…」  
「最近、アキラ様、何かお悩みになられているんではないかと思いまして」  
そんなに顔に出ていたのだろうか  
「なにか気を紛らわせる事ができないかなと思っていたのです」  
「気を使わせてすまなかったな」  
俺は自分でも驚くほど素直に言う事ができた。  
「お礼を言うのは私のほうです…ほんとうにありがとうございます」  
日もそろそろ暮れそうだ。早いところ宿に戻った方が良いだろう。  
採ったキノコはノーラに任せる事にした。  
「どうした?」  
ノーラが俺を眺めている。その表情はどこか赤くなっているようだが…  
 
「い、いえアキラ様が笑ってるところ、初めてみました…」  
「か、からかうなよ。先に宿に戻るぞ」  
そういうと俺は、後片付けして、さっさと宿に向かって歩き出す。  
まってくださいというノーラの声が背後から聞こえてきた。  
穏やかな休日は終わりを告げ、また戦いの日々が始まった。  
あの休日の一件以降、戦闘でノーラが俺の支援をするようになった。  
俺に気を許したのか、まぁ悪い気はしない…俺も少しは変われてきているのか…  
                  *  
旅は進んでいく。  
神器を回収していく中で、俺の中で一つのわだかまりが生まれた。  
はっきり認識したのはサディム遺跡で天魔王の存在とその意義を知ってからだ。  
チキュウとネバーランドを繋ぎ、目覚めれば全てを無に帰す破壊の権化  
クリングゾールはそれを呼出すために神器を集めてるのだろう。  
改めてみなの目的がクリングゾールの野望を阻止して平和を守るという決意を強めていた。  
単純なミュウを初めとする学園都市の連中はとくに野望阻止のためにいきり立ってるようだ。  
正直に言えば、俺はこの世界の危機といわれてもピンとこなかった。  
 
ただチキュウに帰還すること。そのために俺はここまで進んできた。  
みなの目的と俺の目的のズレ。これが俺とそのほかの連中の間に影を落とした。  
「アキラさん、大丈夫ですか」  
町に戻った後、俺の様子が気になったのかネージュが話しかけてきた。  
「別にどうってわけじゃない」  
彼女は俺に気をかけてくれた人間のひとりだ。無論感謝はしている。  
が、どこか気に入らない事も事実だ。なぜなら彼女はどこか俺を哀れんでいる。  
「仲間」の中では彼女が特にその傾向が強い。生まれもった性格がそうさせるのか。  
そんな目をされてはいい気持ちにはなれなかった。  
どこか気持ちがささくれたっているのか厚意を厚意と受け入れられない、  
少しは改善されたと思っていたひねくれ物の俺が顔をだす。  
返事もそこそこに俺はその場を後にし、宿の俺の部屋のベッドに寝転んだ。  
コンコン  
部屋のドアがノックされた。  
 
「誰だ?」  
「ノーラです。入ってもよろしいでしょうか?」  
いちいち拒んでも角がたつ。俺は立ち上がってドアを開ける。  
「何のようだ?」  
「用と言うわけではないのですが、遺跡でのアキラ様の様子が気になって…」  
目敏いと言うべきだろうか。  
「そんなにおかしかったか?俺は」  
「急がば回れ、あせる気持ちも分かりますが…」  
俺は、ノーラの言葉を打ち切るように、  
「別にあせっちゃいない。心配かけてすまなかった。疲れたから、少し休ませてくれ」  
「アキラ様…」  
ドアをしめ、寄りかかりながら俺はため息をつく。  
またか…ちっとも進歩しない自分につくづく呆れる。  
せっかく、気にしてくれてるのに…本当は嬉しいくせに…  
俺は再びベッドに横たわり、ただ天井を見つめた。  
                   *  
二つの鍵と四つの神器、そのうちの一つを除いて神器を回収する事ができた。  
俺たちは最後の神器を取り戻すためにあえて敵のボス、クリングゾールの誘いに乗った。  
奴の指定するモリア神殿でついに対峙する時が来た。  
「欲しくば、我が手より奪ってみせるがよい」  
クリングゾールの言葉がきっかけとなって戦いは始まった。  
不死兵をなぎ払い残るクリングゾールに迫る。  
「あんたが・・・・・・」  
「初めまして、かな?不完全なる異界の魂よ」  
なぜ、俺の名前を…俺の疑問に対し、  
「答えは、我を打ち倒すことができれば、教えてやろう」  
「その言葉、忘れるな」  
奴の武器はその両拳のようだ。なにか武術をやっていたのだろうか。  
正直、強い。  
「なめるな!」  
俺は剣に聖なる力をこめて振り下ろす。この世界に来て覚えた魔法剣の一つだ。  
ドガァ!!  
ヒットしたにも関わらず、クリングゾールは平然としていた。  
どういう耐久力をしているんだ?こいつは。  
「頃合か」  
その言葉にイグレーヌは軽口をたたくが、気にも留めず  
クリングゾールは俺に語りかける。  
 
「自分もおまえと同じ、不完全な異界の魂だ」  
「こんな世界のために命をかける必要などないではないか」  
「だれもお前の心情など理解していない。わたしに協力すればチキュウに帰れる。」  
 
たたみかけるクリングゾールの言葉。  
それはまるで麻薬のようにおれの心をとろけさせる。  
ごくっ  
思わずつばを飲み込む。  
そしてクリングゾールがつぎなる一言を放つ。  
「今しかないのだよ。この機会を逃せば、二度とチキュウに戻ることは叶わぬぞ」  
その言葉に、「仲間」達がざわめく。  
イグリアスは言う。「そんな言葉なんて聞いてはだめよ」  
ミュウは言う。「そうだ。自分だけよければいいなんて、そんなの絶対に間違ってる」  
クリングゾールはそれらの言葉を聞いて何かを確信したように、俺に告げる。  
 
「無知な者どもよ。こやつの心情を察しえぬとはな。よく理解できたであろう。  
 こやつらこそ、己のことしか考えておらぬ、愚か者であるということが。  
 おまえの心情を理解しえるのはこの世界でただ1人、我だけであるということがな」  
 
この言葉が決定的となった俺は言われるままに封印の神器を渡していた。  
満足したクリングゾールは復活の儀式の場所を言い、この場を去っていった。  
後に残るのは「仲間」の叱責だけだった。  
売り言葉に買い言葉、たまった鬱憤を吐き出すように怒鳴り散らした。  
マックスを初めとする大人たちがこの場をおさめ、一時町に戻る事になった。  
                    *  
部屋に戻ると俺はすぐさまベッドに横になった。  
頭が冷えてくると後悔ばかりが頭に浮かぶ。  
しばらくしてノックの音ともに誰かが入ってくる。  
断りぐらいいれろ、と起き上がると、  
二人分の食事を載せたお盆を持ったノーラ・ノーラがいた。  
「何の用だよ?ミュウに言われてきたのか?」  
だがノーラは意に介さず、  
「食事です。降りてきづらいでしょうから…一緒に食べませんか?」  
部屋に備え付けてあるテーブルにお盆を置き、俺にテーブルにつくように促す。  
 
「お、おい」  
今はそんな気ではないというのに…わざわざどういうつもりなのか。  
俺はノーラに問い詰めようとするが、ノーラはマイペースにご飯を口に運んでいる。  
「冷めてはおいしくありませんよ」  
俺は、あきらめて自分の茶碗を見やる。  
炊き込みご飯とお吸い物。具はやはりキノコか。  
結構、うまいな。  
息で少しずつ冷ましながらも、あっという間に食べ終えてしまう。  
ノーラを見ると、彼女も食べ終えたようだ。  
空のお椀をテーブルに置くと、彼女はベッドの俺の横に座った。  
一息つくと、俺は改めて彼女に聞いた。  
「なんでこんな事を?」  
だがノーラは逆に聞き返してきた。  
「どうでした?」  
「どうって?」  
「料理です。私が作ったんですけど…」  
「あ、ああ。うまかったよ。すごく…」  
「よかったです。喜んでもらえて」  
「だ、だから、そうじゃないだろ!」  
つい語気を荒げてしまう、が…  
「キノコはあの時採ったものなのです」  
 
以前、あの穴場で取ったあれか。お吸い物の方には貴重品だという方のキノコを使ってるという。  
「へー、そうなのか?売っぱらったと思ったよ」  
「宿の主人に保管を頼んだのです。貴重なキノコなんですよ?私も一度食べてみたかったので」  
ノーラは話を続ける。売ってくれと頼み込まれたとか。こういう調理法もあるとか。  
気がつくと、俺はすっかりノーラのペースに巻き込まれていた。  
 
「落ち着きましたか?」  
「え?」  
言われてみれば、少し落ち着いたかもしれない。  
「やっぱり、アキラ様はそんな顔が一番です」  
唐突にノーラが俺に言う。  
「アキラ様は、いつもしかめっ面で無愛想で…意地っ張りで…」  
ほめてねーよ。  
「でも…」  
「ホントはすごく優しい人…」  
何を言ってるんだこいつ。俺はそんな人種じゃない。  
沈黙が場を支配する。  
うつむく俺をノーラはじっと見つめ、静かに口を開く。  
 
「弘法も筆の誤り」  
あの事を言ってるのか?結局おまえも説教か…  
「違う…」  
とっさに言い返す。  
あのとき、クリングゾールは巧みに俺の心を読んだかのように俺を誘惑した。  
だが、神器を渡したのは紛れもない俺の意思だ。  
帰るか?残るか?どちらだといわれれば前者をとったのは俺だ。  
下手な慰めなら要らない。  
だがノーラは続ける。  
「雨降って地固まる、という言葉もあります。みなさんもあの一件でアキラ様の  
 心情を理解したはずです。アキラ様もみなさんに遠慮する必要はないんです。  
 そうすれば私たちは本当の仲間になれるはずです」  
「誰もアキラ様を責める人はいませんし、責められません」  
やけに饒舌だ。いつもの大人しいノーラとは思えない。  
「後悔先に立たず、後はどう行動していくかです」  
「…………」  
この世界に強引につれてこられて、俺は常に被害者という視点で物事を捉えていた。  
そのせいでいろんなものを見落としていた。  
早々とマックスとゲイルが、みなが純粋に手を差し伸べてくれたのに…  
それは純粋な善意からだったのに…  
別に俺なんかにかまう義理はないのにな。  
わかっていたんだ。本当は。皆がいてくれなければ俺はとっくにのたれ死んでた。  
俺は向こうから与えられる事ばかり望んで、自分から与えようとしなかった。  
俺の気持ちなんてお前等にはわからない?分かろうともしなかったくせに…  
勝手に壁を作って、勝手に悲劇のヒーローぶって……  
くそ!  くそ!  
 
「アキラ様…」  
うつむいていた顔を上げると、ノーラは両手で俺の顔を包むように触れ、  
俺に、口付けをした。  
「?!…」  
な、なんだ?やわらかい感触が伝わる。  
どうやらキスされているようだ。  
ノーラの唇が離れる。  
「ど、どういうつもりだよ…」  
「元気…出してください…私、こんなことしかできませんけど…」  
わからない…女と言うのはこうも大胆なのか?  
なんで、そこまでする必要があるんだ?俺なんかに…  
「アキラ様…」  
少し潤んだ瞳で俺を見つめる。  
「わかってるのか?」  
コクッ  
顔を近づける。  
ノーラは目を閉じ無言で俺の行為を受け入れる。  
唇が合わさった。  
 
「……んんっ……」  
そのまま俺はノーラをベッドに横たえる。  
「あの…私、初めてですから…」  
声も小さく、つぶやいた。  
すでに顔が真っ赤だ。それにどことなく震えているように見える。  
「怖がる事ないから…」  
「優しく…お願いします…」  
返事の変わりに俺はもう一度、キスをする。  
今度は深く、ノーラの口内に舌を進入させる。  
「ン、ン…ハァ…ンッ」  
ノーラの舌に俺のそれを絡め唾液を交換する。  
長く舌を絡めているうちに、ノーラの緊張も少しは解けてきたようだ。  
唇を離すと銀の糸が引いた…  
「ふぇ…」  
唐突にキスの感触がなくなった事が不満なのか、目で訴えかけてきた。  
俺が前髪に触れると、ノーラはビクッと反応した。  
「嫌なのか?」  
「そ、そういうわけではなくて…は、恥ずかしい…」  
ボソッと、声を絞り出すように言う。  
ノーラは前髪で目が隠されている。いい機会だ。  
「目、よく見せろよ」  
前髪を掻き揚げて顔を眺める。  
 
「……ッ」  
恥ずかしいのだろうか、目をきつく閉じている。  
「目、開けろって…」  
そういわれておずおずと目を開く。  
普段見たことのない、ノーラの素顔は素直に可愛いと思った…  
「アキラ様?」  
「い、いやその…」  
照れくさくなった俺はごまかすように額にキスをする。  
「ずるいです…」  
俺はそのまま、耳、首筋に舌を這わす。  
「あ、あ、はぁ…ん…」  
俺はノーラの胸に触れる。  
「あっ」  
突然の感触に驚いたのか、ノーラは声を上げる。  
ノーラの服はプロテクターが一体となっているため乳房を持ち上げるように  
できるだけ優しく揉む。  
「や、やぁ…、ふぁ、ああ…」  
ノーラが甘い声を漏らす。  
「服、脱がすぞ」  
俺もいっぱいいっぱいだったため手つきがおぼつかない。  
しかもどういう構造だ、この服は?  
たどたどしい手つきに見かねたのか、ノーラは自分から脱ぐ。  
「そ、そんなに見ないでください…」  
かわいらしいブラに包まれた胸を両手で隠しながら言った。  
「無理だ」  
俺はあらためてノーラの体を押し倒し、両手を取り払う。  
大きすぎず、小さすぎず、形のいい双丘は俺の手にぴったりと合う。  
左手で左の乳首をつまみながら、右の乳首をなめる。  
 
「んふっ、ふぅ、ふぅ……ふぁぁぁ……」  
左手の人差し指で乳首を押したりこねくりまわし、右の乳首を甘がみする。  
ノーラは胸が弱いのか、絶え間ない刺激に身をよじる。  
「は、はぅ! くふっ!だ、 だめです、乳首ぃ噛んじゃ…だめぇ……っ!!」  
ノーラはどうやらイッたようだ。  
 
「はぁ…はぁ…」  
息をついたノーラをみるが、俺はまだ満足してない  
「続けるぞ…」  
「ハイ…」  
俺は胸への愛撫を続ける一方、俺はノーラの下腹部に下を這わす。  
「ン…」  
切なげに身をよじるノーラ。  
そして俺は、ノーラの秘部に手を触れる。  
「あ!」  
今までの刺激によって、準備ができたかのように  
下着越しでもはっきり分かるくらいにそこは濡れそぼっていた。  
「ぬれてるな…」  
俺は、ボソッとつぶやく。  
が、ノーラにははっきり聞こえたようで、  
「いやぁ…そんなこと言わないでください…」  
下着の上からなぞるようにノーラの秘部をさする。  
筋に沿って指を上下し、入り口あたりで指を差し込む。  
「あ、あ、ああ…、ん、ふああ…」  
「すごいな、まるで洪水だ。パンツびしょ濡れだ」  
「あ、ああ、い、嫌ぁ…そんな事…いじめないでくださいぃ…」  
刺激と羞恥を同時に与えられノーラの顔が真っ赤に染まる。  
「脱がすよ」  
真っ赤になってる顔を両手で隠す。  
「あ…イヤァ…」  
俺はその濡れた秘部に直接舌を這わす。  
 
あふれる愛液をわざと音をたてて吸い上げ、ぷっくり膨らんだクリトリスを軽く摘む。  
「そ、そんなところ、汚い…ですぅ…ん、摘むなんて…あ、あああ!、はぁ、ふああああっ!」  
われながら古典的なやり方だが俺はノーラを攻めるのをやめない。  
「く、ふぁ…だ、駄目…また…私だけ…」  
ノーラは強引に俺を引き離すと、俺と体の位置を入れ替える。  
「アキラ様も…脱いで、ください…」  
そういうとノーラが一つ一つ俺の服を脱がしていく。  
そしてズボンのベルトに手をかけおろしていく。お互い一糸纏わぬ姿になる。  
一見華奢な体のどこにあんな無骨な槍を振り回す力があるのか…  
「これが…アキラ様の…」  
ノーラがマジマジと俺のモノを眺める。  
「そ、そんなに見るな…」  
「お返しです」  
気づいてるのか?お前、別にことわざ引用しなくたってしゃべれるじゃないか…  
ノーラの両手が俺のモノをそっと包む。  
「んっ」  
すでに大きくカチカチに固まった俺のそれは敏感に反応する。  
 
「それでは…」  
ためらいがちに、チロっと舌をだし先走りを舐めとる。  
そして決心したのか俺のモノを口に含む。  
ノーラの舌が絡みつき鈴口を舐めまわす。  
そして口内全体で俺のモノを包み込み、上下にしごく。  
「う、うわ…」  
思わず、言葉が漏れる。  
「ろうれすか?…ひもひいいれすか?…」  
「くわえたまま、しゃ、しゃべるな、いいよ、すごく」  
ノーラの攻めに俺も、やばくなってきた。  
「くっ!出る…」  
俺はノーラの顔を引き離そうとするが、ノーラはモノをくわえ込んで離さない。  
「う、くあっ!」  
俺のモノから溜まった欲望が吐き出され、ノーラの口の中が白い液体で一杯になる。  
ゴホッ、ゴホッ!!  
喉につまり思わず、激しくむせるノーラ。  
「ごめん、突然…」  
「ケホッ、ケホッ…受け止めたかったのですが、すみません…」  
「お前…」  
何でそこまで健気なのか…  
俺のものがあっという間に硬さを取り戻す。  
「ノーラ…いいか?」  
 
「わ、わたし…」  
「わかってる」  
俺は自分のモノをノーラの割れ目にあてがう。  
ノーラの腕が俺の首の後ろにしがみつくようにまわる。  
「いくぞ…」  
思い切って貫いた方が帰って楽かもしれない。  
ズプッ  
俺のモノがノーラの膣内に進入していく。  
ノーラの膣が俺のモノをきつくくわえ込む。  
プツッ  
何かが破れたような…そうか、俺がこいつの初めてを奪ったのか…  
「あああああああああああああっ!!!」  
あまりの痛さに背中に回ったノーラの爪が俺の皮膚に食い込む。  
ノーラの痛さに比べたら…そう思えばこの程度、痛みに入らない。  
ノーラの膣内は暖かくとても気持ちがいい。  
シーツに初めての証である赤い染みができていた。  
 
 
どれくらい時間がたっただろうか  
「大丈夫か?」  
「まだ、少し…でも平気ですから…」  
早いところ終わらせてやったほうが良いかもしれない。  
そう思った俺は、少しずつペニスを動かす。  
初めは動かすたびに顔をゆがめていたノーラも慣れてきたのか  
少しずつだが、甘い声を漏らすようになった。  
「あ、あぁあん、んあ」  
俺の腰の動きに合わせて喘ぐノーラ。  
その声がもっと聞きたくて俺は腰の動きを強めていく。  
ぐちゅ、ぐちゅ、  
卑猥な音が響き、湿った膣内が俺のモノをキュウキュウしめつける。  
「アキラ…さま、アキラさま…イイです…気持ちいいです…ふあ、あぁああ!!」  
「俺も…いいよ、けどな、様は…よせ…」  
子供の頃からの教育のせいなのか、誰に対してもこいつは様付けする。  
俺には堅苦しくてしょうがなかった。  
「でも…」  
まだ何か言ってくる。俺は却下だと言わんばかりに、腰を激しく打ち付ける。  
「アキラさ…ん、アキラさ……あん、あん、ひう、ふ、あぁあぁあぁあああ」  
まぁいいか、これから少しずつ変わっていけばいい。俺もそうであればなおいい。  
「アキラさん、好きぃ、好きです、アキラさ…あああ、も、もう、わ、わたし…」  
「俺も、す…だ、はぁ」  
ノーラがどことなく嬉しげな顔を浮かべた気がした…  
 
終わりの瞬間が近づいてくる。  
「いいよ…イケよ」  
言うと同時に腰を一際強く打ちつける。  
「ああああああああ!!」  
ノーラの絶頂にあわせて、俺もノーラの膣内から引き抜く。  
白濁とした液がノーラの下腹部に広がっていった…  
俺は心地よい疲労感に身をゆだねて、ノーラの上に覆いかぶさった。  
                    *  
どれくらいたったのだろうか?いつの間にか眠ってしまっていた俺は、ふと目を覚ました。  
窓の外はすでに真っ暗で月が綺麗に輝いている。  
チキュウのと変わらないんだな…  
ふと、ノーラの様子をみると、気持ちよさそうに眠っていた。  
「ごめんな、気を使わせて」  
俺はノーラの頭をなでる。  
「俺もできたよ。決意が。この世界で生きるっていう、さ」  
どこの世界にいようと生きる意志がなければ意味がない。  
決意と同時に俺は責任もできた。となりに眠るこいつの事と、  
神器を渡してしまった事に対する二つの…  
俺はもう逃げない。ここでそんなことをしたらノーラに、みなに申し訳が立たない。  
 
「いいんですか?」  
俺の独り言を聞いていたのか…  
「聞いてたのか?人が悪いな、お前も」  
「アキラさんのがうつったんですよ」  
言ってくれる。  
「本当は…その、チキュウに戻りたいのでは?」  
ノーラは少し寂しげな顔で聞いてくる。  
戻りたくないと言えば嘘になる。両親や妹には俺がいなくなって騒ぎになってるだろう。  
ごめん。  
心の中で、向こうにいる家族に謝る。こんな一言じゃとてもたりないけど…  
元気でやっていくから…  
「正直言えば、な…、でもいいんだ。俺は、ここにいたい理由を見つけたから…」  
「…アキラさん…もう一人で抱え込まないでください。アキラさんにはわ、わたし達が  
ついてますから」  
「わたしだけ、の間違いじゃないのか?俺の理由の大半はお前なんだが…」  
「え?そ、それはどういう…」  
「さぁて、俺はもう寝る。朝は早いんだろ?」  
ノーラがなにかしつこく追求してくるが、俺は強引に布団の中にもぐる。  
またキノコ狩りに行くのもいいな。と言ったらこいつは驚くだろうか。  
全ては天魔王を倒してからだ…  
俺は、こいつとこいつのいる世界を守っていきたい。  
それが俺の中に生まれた、たった一つの真実だから…  
 
 
……朝、俺が皆のところに顔を出すと、マックスが俺に親指を立ててニヤついてきた。  
ファインはやれやれだねといった顔を浮かべ、ゲイルは…そのにやけたツラに腹がたった。  
他の連中も似たような表情を浮かべてる。  
女連中には顔が赤い奴もいる。目があうと途端に背けやがる。  
 
どうやら筒抜けだったようで…  
ノーラ…頼むから余計な事言うなよ…  
取り囲まれてる彼女を見て、俺は違った意味で身の縮む思いをすることになった。  
 
 
                              完  
 

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