「うるさいんだよ!この男女!」
「なんだと!てめぇ!もう一度言ってみろ!」
「ああ、何度だって言ってやるよ。この男女」
「上等だ!」
もはや恒例となった感のある口喧嘩が今日も街に響き渡る。
金髪のツインテール、肌の色の濃い魔族の少女。気が強そうで額に魔術文字が掘り込まれ、
かなり大胆な格好をしている。対する少年は黒を基調とした、この世界では珍しい服をきている。
背格好はかなり引き締まっており、顔は美形といっていいだろう。
「ま、まぁ落ちつこうよ。二人とも」
放って置けばじきに収まるだろうに…仲間内では共通事項になっているにも関わらず、
生来のお節介焼きの少女、ミュウは毎度のごとく仲裁に入る。
「あたいは十分落ちついてるよ。こいつがいちいち女々しいのがいけないんだ」
「何だと?あれはお前が俺の獲物を横取りしたのがいけないんだろうが!」
「ふん!あんたがぼーっとしてるのがいけないんだよ」
「おまえ…」「なんだよ」
「まぁまぁ、結果的にはモンスターは倒せたんだからさぁ」
ミュウの必死の仲裁が効いたのか、街の人の視線が多くなったのが効いたのか
ともかく口喧嘩も終わりを迎えた。周りの目を気にせずあまつさえ破壊活動にまで発展する
バニラとイグレーヌの喧嘩より、口だけで終わる分彼等の方がはるかにましだった。
だが、原因はその二人と同レベルで、異界の門での訓練でアキラが相手をしていた
モンスターをタルナーダが横から倒したのが原因だという。
いつもは面倒見のいい姉御肌のタルナーダも、無愛想とはいえ集団行動では迷惑をかけないアキラも、
なぜかお互いのことになると、感情をあらわにする。
「ふん。おぼえてろ」
「しるもんか」
そう言うと彼らは別々にどこかに行ってしまった。
その様子を見てミュウはため息をつく。
「いつもいつもあきないねー。さすがのボクも疲れるよ」
「あんたも懲りないね。いつものことなんだから放っておけばいいんだよ」
三人のやり取りを面白がって眺めていた短めの緑髪の少女、ナギが言った。
「喧嘩するほど仲がいい。案外いいコンビなのかもしれません」
そしてもう一人、ミュウの言葉にかたわらに黙って控えていた少女ノーラ・ノーラが言う。
「でも、二人とも素直じゃないからなぁ…もうちょっと仲良くしてほしいよ」
案外、仲いいよと残りの二人は言うが。
*
「くそ、あの男女め」
歩きながらつぶやくアキラ。どうやら女々しいという彼女の指摘は的を得ているようだ。
先ほどの戦闘を思い出す。実戦訓練に利用される異界の門もそれなりに階数を数えると、
敵モンスターの強さはそれ相応のものになる。
これまで実戦を潜り抜けてきたとはいえ、アキラは人を襲うモンスターなど存在しない
チキュウから召還されてきたのだ。不完全とはいえ「異界の魂」の力をもつアキラも、
実戦経験ではタルナーダたちに一歩劣るのは事実だ。
男だ女だと言うつもりはない彼も、女に助けてもらってはプライドが許さないのだろう。
「強くならなきゃな。一人でも生きていけるくらいに…」
だが、アキラはふと思い返す。苦戦していたアキラに変わってモンスターに駆け寄った時の
タルナーダの表情を。あれはどこかしんぱ…
慌てて頭を振るアキラ。
そんなわけあるか。どうせ俺をまだ素人だと思って馬鹿にしてるんだ。
でも…それでいいのか?
……とアキラは思った。
*
「なにが男女だよ。あたいは立派な女だ」
公園のベンチに腰掛けながら、一人つぶやく。
彼女はこれが少し気にしてたりする。
それでも彼女は虫や幽霊の類が苦手だし、外見に反して押し花が趣味だったりする。
だが外見があたえる印象は強く人には粗野な印象を与えてもおかしくはない。
確かに男っぽいよ、あたいは。
アキラの奴、気にしてる事をずけずけ言いやがって。
それに少しはあたいに感謝したっていいもんだろうに、あのひねくれ者。
確かに大したもんだと思った。
チキュウってところはモンスターなんていない世界だって聞いた。
それを踏まえたらあの身のこなしはすでに戦士のそれといっても過言ではない。
だが、アキラは一人、前に出すぎていた。何か焦っているように。
だからあたいはあいつを助けたのに、あいつがよけいなことを、なんてつぶやくから…
頭に来たタルナーダが、アキラに言い返し喧嘩に繋がってしまったのだ。
「少しは頼ってくれたっていいもんだ」
ミュウ程ではないが彼女も相当のお節介焼きだ。
どこか危なっかしいアキラを放っておけないのだろう。
「あたいじゃ、頼りにならないのかな…」
な、何言ってるんだ。別に…あんな奴どうなろうと知ったこっちゃない。
好きにすればいいんだ…あんな奴……でも…どこか気になるんだよな、あいつ…
*
彼らの日常はこうして過ぎていく。
ノーラ・ノーラは彼らを喧嘩するほど仲がいいといった。
あの一件でお互い反省するものがあったのか、戦闘でも少し息が合ったやり取りをするようになった。
「そっちいったぞ。アキラ」
「いちいち言わなくてもわかってる」
言葉は荒いが、悪いものでもなさそうだ。
その様子をみていた仲間達は彼らの変化を快く受け止めていた。
だがそんなある休日に事件が起こった。
新たに加わった少年レン・ウォルトはアキラを召還した張本人だった。
その少年に対し、アキラは激しくつめよる。
アキラは今までのあわただしい日々に追われ忘れかけていた憎悪を召還した本人にぶつける。
レンと一緒にその場にいたタルナーダはそんなアキラに対し必死の説得を続ける。
が、自分の都合ばかりのアキラにタルナーダも激しい口調で言い放った。
「うざったいんだよ!いつまでそうやってウジウジしていたら気がすむんだ。
んなことしたって、何の解決にもなりやしないじゃないか。
あんたのやろうとしていることは、あんたを傷つけようとした奴らと同じだ」
その叱咤も今のアキラには更なる怒りを呼ぶ結果に終わってしまった。
涙をうかべるレンの謝罪によってこの場はひとまず収まったが、
彼らの間にしこりを残してしまった。
*
あたいも言い過ぎちゃったかな…けど、
「おれのこの気持ち、おまえにわかるはずない!」
アキラの先ほどの言葉がタルナーダの心を重くする…
そりゃ、あたい達は当事者じゃないさ。
けど、あたい達は仲間じゃないのかよ…その辛さを全部理解できるわけじゃないけど
一緒に背負う事ぐらいできると思ったのに。
「タルちゃん…」
レンの呼びかけにふと我に帰る。レンの表情は暗く落ち込んでいた。
仕事とはいえ自分のした事がこんな大事に発展していたとは思わなかったのだ。
タルナーダは彼に気にするなと言って慰めた。レンは仕事をこなしただけだ。悪くはない。
「たく、あいつは……バカな奴だよ…」
*
アキラは宿の自分の部屋に入ると、すぐさまベッドに横になる。
彼は嫌な事があるごとにいつもこうする。
一人になって逃げ込む癖がついているのだろう。
「クソ…」
呟く彼の脳裏に先ほどの出来事を思い出す。
自分を召還した奴が目の前に現われたとき、自分の感情を抑えきれなかった。
勝手に召還しておいて、役立たずの烙印を押し、しかも命を狙う…
一度味わってみればいいんだ。そうすりゃわかるだろ。
だがレンの泣き顔とタルナーダの必死の形相。
それを思い返すとアキラも何かいたたまれないものを感じた。
「ちっ」
何か考え込んだ後、アキラは目を閉じた…
*
それから何日か経ったある日、タルナーダとレンの二人がアキラの部屋の前にやってきた。
レンがアキラに対して謝罪したいそうだ。
「もういい。おまえに謝ってもらったってしかたないしな。
おまえは言われたとおりのことをしただけなんだろ?」
「だったらおまえを恨むのは筋違いだ」
人を責めるばかりでは先に進まない。
予想以上に強いアキラの精神力にタルナーダは彼を見直したようだ。
これで口の悪さと意地っ張りも直ればいいけどな、と思った。
「ありがとう、アキラちゃん」
だがちゃん付けだけはどうしてもいやなようで、必死にやめさせようとしていた。
その慌てぶりにタルナーダは可愛いところもあるじゃないか
思わず口に出ていた笑い声にひと悶着あったのはご愛嬌だが。
だがのほほんとしたレンには通じなかった。これでもアキラと同じ17歳だと言うから…
その後、アキラはタルナーダにも以前のことを謝り彼女も自分も悪かったと返した。
どちらも、あの休日の一件は気になっていたのだ。二人ともどこかほっとしたようだった。
*
少しは仲間との信頼も深まったと思われた頃、また事件が起きた。
アキラの持つ神器を敵のボス、クリングゾールに渡してしまったのだ。
クリングゾールもアキラと同じ「異界の魂」でアキラの神器を必要としていた。
自らの持つ神器とあわせて天魔王を召還、そしてその力をもってチキュウへ帰還する。
だが同時にネバーランドは破滅するだろうとクリングゾールは告げた。
だが、アキラは渡してしまったのだ。
「まだ…信頼してくれてなかったのかよ…」
身に降りかかった不幸もなんだかんだと言いながらも立ち向かっていたアキラに頼もしさを感じ、
信頼と厚意を寄せていた。だからこそ彼女は悔しかった。
なにかガツンと言ってやらないと…
そう思うと彼女はアキラのところに向かった。
「いつまでうじうじしてんだよ!前に言わなかったか?あんたがいつまでも被害者面してたって
どうにもならないんだよ」
「……うるさいんだよ、あっちへ行ってろ」
またうるさい奴がきた。そんな表情がありありと浮かぶ。
これまでに何人もの仲間が彼に話しかけたのだろう。
アキラ自身も悪気があってやったことではない。だが正しい事をしたとも思ってない。
クリングゾールの言に飲まれたとはいえ、私情を優先してしまった、と本人もわかっている。
その自覚がある分、アキラにとっては耳が痛いようだ。
つい言葉も荒く邪険に扱ってしまう。アキラはそこで何か言い返してくると思った。
だが、今回は違った。
「そうかいそうかい…そうやってみなを拒むんだ。そうやって一人になって逃げ込むのかい。
だったら…だったら勝手にしろ!!」
そういって踵をかえして走り出していった。
いつもと違う彼女の様子…勝気な顔もどこか泣き出しそうに見えた。
「女子は泣かすものじゃないっちよ」
泣かしてないだろ。アキラの言葉にシロは似たようなものっちと返す。
「悪い事したか…な…」
アキラは気まずそうな、つらそうな顔を浮かべて、タルナーダの去って行った方向を見つめた。
*
(見損なったよ…)
力なくうなだれながら街を歩いていると、背後から呼び止める声がする。
「タルナーダーー」
「ああ、あんた達か…」
ミュウとナギのコンビだ。
「元気ないねーどうしたの?」
あんたらしくないとナギも続ける。と言いながらも二人には理由がわかっていた。
「やっぱりアキラの事でしょ」
「……ああ、駄目だよアイツは…」
「そんな事言っちゃだめだよ」
信じてあげようよと二人は続ける。
(あたいだってそうしたいさ。けど…)
「あいつはあたいたちのことなんてどうでもいいのさ」
「そんなことないって。アキラ、気にしてたよ、タルナーダの事」
「そうそう、悪かったってさ」
本当にどうでもよかったらそんな事いわない。と二人は言う。
「こんなときだから支えてあげなきゃ。アキラの意地っ張りは今に始まった事じゃないし」
「どうだか。あのままヘタレたままかもしれないぜ」
すぐそんな事言う。少し元気がでたタルナーダに、アキラとタルナーダって似たもの同士だねと言うと、
タルナーダは顔を真っ赤にして否定する。
素直じゃないところだよと捨て台詞を残して走って逃げ出すミュウとナギだった。
*
クリングゾールが儀式を行なうという城へと向かう事になった一行。
アキラは思うところがあるのか一緒についてくる事を選択した。
だが、まだふんぎりがつかないのか戦闘には参加しないままだった。
そんなアキラが気になるのか、タルナーダはなかなか戦闘に身がはいらない。
城へと続く洞窟内に出現するモンスターは雷属性を吸収、半減してしまうものが多かった。
雷を自在に操りかつ得意とする彼女にとっては苦手な相手だ。だが一級の戦士である彼女なら、
別の対処法をとるだろう。
全力の雷神剣がきかず、思わず舌打ちするタルナーダ。
「危ない!!」
苦戦する彼女にイグリアスの声が飛ぶ。
隙を見せたタルナーダにモンスターの攻撃が襲い掛かる。
やられる!おもわず目を閉じるタルナーダ。
ガシッ!!
何かがその攻撃を受け止める音がする。
目を開けるとそこにはアキラがたっていた。
「何、ぼーっとしてるんだよ」
お前の獲物を俺がやっちまっていいのか?アキラの皮肉にようやく我を取り戻す。
「あたいをだれだとおもってるんだい!」
そういいながら放った彼女の斬撃がモンスターを両断した。
タルナーダの表情は晴れやかだった。
*
ディグニダー城
禍々しい瘴気を放つその城を見上げる息を呑む一同。
空はすでに暗い。
ここまでたどり着くのに消耗した体力、気力を回復させるためキャンプする事にした。
皆が体を休め、談笑している中、
一人考え事があるかのように皆とは離れた場所の木に腰をかけているアキラ。
そこに一人こっそりとタルナーダがやってきた。
「さっきは…ありがとう…一応礼は言っとく…」
別にたいしたことじゃないさ、とアキラは返す。
「どういった心境の変化だい?」
「責任はとらなきゃって思っただけさ」
本当はいろいろあるのだろう、がタルナーダが相手だとどうもうまく口が回らないようだ。
「すまなかったな、いろいろ気を使わせちまって」
タルナーダはキョトンとしている。まさかアキラがお礼を言ってくるとはおもわなかったのだろう。
沈黙した場に耐え切れなくなったのかアキラがつい言ってしまった。
「…なに黙ってるんだよ、男女」
「また言いやがったな、てめえ」
「………」
だがアキラは何も言わず、どことなく微笑んでいるように見える。
「な、なんだよ…」
今まで見たことのないようなアキラの顔
「おまえ、普通にしていれば美人なのにな」
ボッ!顔が火を噴いたように赤く染まる。
「な、なななななにいいやがる!?」
わかりやすい奴だなとクスクス笑うアキラ。
(やっぱりからかってやがるのか?)
だが次に見せたアキラの顔は真剣なものになった。
*
「俺、信じるよ。みんなを、自分も…やっと気づいたよ。俺は一人じゃないってさ。
いろいろ気を使ってもらって…ほんとうにありがとう。感謝している」
「アキラ…」
顔が熱い…自分でもはっきりとわかる。
ああ、あたいはこいつの事が…
だけど、天魔王倒して…全て終わったらこいつはどうすんだろ?
こいつはチキュウに帰るのか目的で…
「おい、ど、どうした?」
自分でもわからなかったがタルナーダの頬を涙が伝っていた。
あ、泣いてるのか…あたいが、なんでだろ…でもあいつに会えなくなると考えたら無性に悲しかった。
「な、なんでもない…さ、寂しくなるけど、帰れるといいな」
そういうと彼女はその場から立ち去ろうとする。
が、アキラがとっさにタルナーダの腕を掴み、こちらを振り向かせる。
彼女に行って欲しくなかったのだろう。彼女に近づくと、そっと涙をぬぐってやる。
「泣くなよ…」
「あ、あたいが泣くわけ…」
「俺は、お前に泣かれるのが一番困る…」
「そ、そりゃどういう意味だい?」
泣いちまったのは今回が初めてだ。困らせられたことはあっても、その逆はない。
そう思ってアキラを見つめる。アキラもこちらを見つめる…
自然と顔が近づく。
吸い込まれるように、お互いの唇が触れ合った。
「ン…」
(あたいがキスしてる。こいつと…でも嫌じゃない…すごく安心する。)
キスそのものは酔ったリューンエルバに無理矢理された事が何度かあるが、
これは何かが違った…あたいはやっぱりこいつのこと…
アキラがタルナーダの頭をなでツインテールの髪を梳く。
いったん、互いの唇が離れるとアキラは言う。
「俺、お前がほしい…」
「こ、ここでか?」
タルナーダは多少うろたえたが、皆のいる場所からはなれてるのを確認すると
今度は自らの唇を押し付けた。
*
月の光が差し込む物静かな森の中で二人の男女がお互いの体をなでる。
大きな木を背にアキラの左手が体を抱きしめ、背後に回った右手が肩、腰、太ももと順になでていく。
その間に彼女の魔族特有のとがった耳をなめ、首筋へと移っていく。
「ん、あぁ…はぁ、うぁ、アキラぁ…」
「おまえ経験は?」
「な…ない…よ」
タルナーダは恥ずかしそうにつぶやく。
アキラは意外そうな顔をする。タルナーダはアキラより2つ年上の19歳、経験済みでもおかしくない。
そう思っていたアキラだがタルナーダは顔を真っ赤にしてうつむいている。
「案外うぶなんだな、おまえ」
「か、からかうなよぉ」
しゃべりながらも手を休まず、体への愛撫をやめないため反論する事もままならない。
そういうアキラはどうなのだ?そんな目をアキラに向ける。
「……初めてだ」
そういうわりにはその手つきは手馴れたもので、タルナーダにしてみれば嘘をついてるように思われた。
「俺もいっぱいいっぱいなんだよ」
アキラはチキュウでは一匹狼的なところがあった。本人もあまり必要ないと思っていたから
女遊びもした事なかった、というよりできなかったというのが本音であるが…
アキラ自身も十分うぶだ。
手馴れたように見える手つきも自身の知識をフルに動員させているからである。
こういうときには男がリードすべきだとおもっているのだろう。
彼の顔を見れば嘘をついていないように見える。
クスッ
「な、なんだよ」
「いや、あんたも結構、可愛いところがあるじゃないかと思ってな」
顔に出やすいアキラの顔はすぐに赤くなる。
照れ隠しか、唇で彼女のそれをふさぐ。
今度は長く、長く、舌と舌を絡め唾液を交換し互いに求め合う…
くちゅ、くちゅ…ちゅ…
「ん、んん…」
そっと唇が離れ、息を整える。
「触るぞ」
「え?…ふあぁ」
アキラはタルナーダの胸を優しく触れる。
初めは指をたて鷲づかみするように、そして包みあげるように。
「あ、あん…ああ、アキラ…」
声に色っぽさが混じるようになりアキラは興奮したのか。少し乱暴に胸をいじる。
「ちょ、ちょっと…そんな乱暴に…」
「わ、わるい…」
少し落ち着いたアキラが胸の留め具をはずし、彼女の胸をあらわにする。
さわるぞと断りを入れるとタルナーダの静止をきかず、乳首を摘む。
「もう硬くなってるな、興奮してたのか?」
「ば!ばかやろ…」
与えられる刺激の強さに語気が弱る。
アキラは乳首を摘み、押し、考えられる刺激を与え続ける。
「く…ふぁ、あぁ、んん…」
外だという事で必死に声を抑えるが、それでも喘ぎは止められない。
「あ!」
突然大きな声をだす。
乳首をなめ、吸い、加えて軽くかむ。
「ふぁ、ああん、ああ…」
アキラは応えず、無言のまま攻め続ける。
唐突に胸から口を離すと、再びタルナーダに口付けする。
左手で抱きしめつつも右手で、タルナーダの秘所に手を触れる。
「!」
アキラの手が秘所をなぞり、いじると未知の刺激が襲い掛かってきた。
服越しとはいえ、今まで味わった事のない刺激に腰が砕け、立っていられなくなる。
そんな彼女の様子を見てアキラは彼女を木に寄りかからせる。
タルナーダはアキラにしがみつき、アキラからの刺激を味わう。
「く、ふ、あ、ああ…」
アキラはタルナーダの服の止め具をはずし直接、彼女の秘所にふれる。
そこはすでに大量の愛液で濡れかえっていた。
「あ!うぁ、ん、ん、ああ」
ここが外だということを思い出し、必死に声を抑える。
それがわかっているにもかかわらず、アキラはタルナーダの秘所に中指を軽く抜き差したり、
勃起したクリトリスを剥き、つまみ、こする。
「ア、アキラ…そこはぁ…あぁ、んはぁ」
彼らが情事を行なっている場所は仲間達がいる場所から離れているとはいえ聞こえないとは限らない。
それがわかっているにもかかわらず、タルナーダを攻めながらも、アキラは意地悪そうな笑みをうかべて
「お前の今の顔、みんなにみてもらうか?」
いつもの気の強そうな凛とした表情ではなく、快楽に染まったみだらな彼女の顔…
「ば、ばかや…ろ…、ふぁ…ああ、あぁ」
もったいないな、と冗談とも本気ともつかないアキラに腹を立てようにも、
与えられる快感にその腹立たしさもどこかへ行ってしまう。
「タルナーダ…俺、そろそろ…いいか?…」
アキラがどことなく遠慮したように聴いた。
それがどういうことかわかったタルナーダはコクンとうなづく。
アキラのそれはすでに大きく形状をかえ、そそり立っていた。
それをみたタルナーダは驚いたように
「こんなになってるなんて…」
大きく凶悪なフォルムのモノをみて驚いたタルナーダに追い討ちをけるように
アキラが彼女の手を自分のモノに触れさせる。
「すごく…熱い…」
「おまえが色っぽいからな…、おまえの、せいだ…」
いくぞと声をかけられると、タルナーダは体を固くする。
タルナーダの緊張が伝わったのかアキラは気遣いつつも、彼女の右足を持ち上げ、
自分のモノを秘所にあてがう。
初めてのそこはきつく侵入者を拒む、が、アキラはゆっくりと慎重に入れていった。
「おまえのほうも…少しずつ腰を落としていってくれ」
アキラの挿入に合わせて、タルナーダも少しずつ腰を落とす。
「くっ、うぁ…」
まだ先のほうを入れただけなのに激しい締め付けがアキラに快感をもたらす。が、
女性にとっては苦痛でしかない。タルナーダは声を必死に抑え苦痛に顔をゆがめていた。
そしてアキラのペニスが彼女の処女の証を貫き、赤い雫がこぼれる。
「くあぁあ…あ、う、くっ…い、たああ…」
痛みに耐えるタルナーダ。彼女の顔を見ると目にうっすら涙をうかべていた。
「大丈夫か?」
「あ、ああ…痛みには慣れてるから…でも…」
「これでおまえとひとつになったんだな…」
結構、恥ずかしい事をぽろりとこぼすタルナーダ。
「やっぱり、おまえ女だったんだな…」
「どういう意味だい?」
軽口を叩いてごまかすアキラをよく知るタルナーダはこれ以上追求せず、
うちに収まったアキラのモノの感触を確かめる。
「おまえと…こうなるなんて、思っても見なかった…」
「俺もだな」
はじめはくだらない喧嘩の繰り返しばかりだった。
タルナーダにとってはお節介以上にアキラにどこか惹かれていたのだろう。
アキラもそうだったのだろう。
痛みも引いてきたのか自然な笑顔を浮かべるタルナーダ。
それを見たアキラはいったんモノを引き抜く。名残惜しそうな彼女に対して、
「まだ続けるさ」
そういうと彼女を木に手を支えさせ、尻を突き出すような体勢にする。
「いくぞ」
後背位、後ろからの挿入はスムーズにいった。
アキラは声を出させないように自分の上着を脱ぎその裾をかませた。
ぐちゅぐちゅと湿ったそこはアキラのモノを暖かく包み込み、締め付ける。
それがもたらす快感にアキラもたまらなくなる。
「気持ち…いいよ…タルナーダ…」
声が出せない変わりに嬉しそうに微笑む。
パン、パン、パン…
腰をつく音がひびきわたり、そのたびにお互いの気持ちよさそうな声が漏れる。
「ん!、ん!、んふ!、んーーーー」
きつく噛んだ服の裾に唾液によって染みがひろがる。
アキラの容赦のない腰の動きについ、噛んだ服をおとしてしまう。
腰を振ると同時に、硬く尖った乳首をつまみ、胸も揉みしだく。
「あ、あぁ…あん、、あん、うあぁ…はぁああ…」
声が漏れてしまっているがもうそれを考えるだけの余裕がなかった。
ただお互いに快楽をもっとえようとする本能のみが彼らを動かしていた。
「あ、そこ…いい…もっと…あ、あぁぁ」
「ここか?」
言われたようにアキラのペニスが膣内のもっとも敏感な部分をつく。
「ひぁ!ああ、そこ…はぁ、ああん、あん、あああ」
タルナーダの喘ぎがアキラにさらなる快感をもたらす。
「はぁ…あぁ…ア、アキラ…も、もうあたい、うぁああぁあ…」
「俺も…そろそろ限界だ…な」
ラストスパートにむけてますます腰の速度をあげるアキラ。
そして、絶頂が訪れる…
「くっ、うあ!」
「ふあぁあああ!…ん」
アキラがペニスを引き抜くと同時にタルナーダの尻に白濁とした液が広がった…
しばらく余韻に浸っていると、唐突にタルナーダが口を開く。
「あ、あのさ…あ、あたいは、その…あんたの事…」
「ん?」
「………………」
「………………」
何か会話を交わした後、皆のところに戻った。
ゲイルやマックスたちはとくに何も言わなかった。
アキラはその表情にどこかやらしさを感じたが…
ミュウたち年頃の女性連中はなに二人でなにをしていたのかしつこく聞いてきた。
二人は少し話してきただけだとごまかした。…納得したとは思えないというのが彼らの認識だが。
もしかしたら、聞こえてたかもしれないと思うと恥ずかしいどころではないだろう。
休みにはいろうとすると、ふとアキラはタルナーダと目が合った。
お互い何も言わず微笑んで、その夜は終わった。
*
「時のかなたに消えうせろ!」
アキラの全力をこめた一撃が天魔王にとどめをさす。
「グオオオオ……」
断末魔をあげ崩れ落ちる天魔王。
ディグニダー城にまちうけるメイヴを除く天星四将をしりぞけ、最後にまちうける
教祖クリングゾールをもうちたおした。だが、彼の最後のあがきにより天魔王が強引に召還された。
強大な力をもつとはいえ不完全な状態では全ての力を発揮するわけには行かなかった。
それは人の手によって倒せる事を意味していた。
孤独である事を選んだものと仲間と共にある事を選んだもの。
対極に位置するクリングゾールとアキラ。二人の勝負はアキラの勝利で終わった。
「俺はこの世界で生きていく」
クリングゾールにそう告げるアキラの目に迷いはなかった。
「で、これからどうするんだ?」
マックスがアキラに聞いた。
タルナーダはその応えが非常に気になった。
結局、チキュウに帰る方法は見つからなかった。
けど、アキラは強くなった。全てを受け入れ前に進むことができるだろう。
「とりあえず、旅に出てみようと思う。神器の再封印は俺に任せてくれないか?」
当面の目標を確保したいというアキラの提案にル・フェイは快く応じた。
(旅に…でるんだ。でも会えなくなるわけじゃないし)
本当はついていきたいがタルナーダもまだ学園都市でやる事がある。
今はお互いがやらなきゃならない事をやらなければならない時だろう。
ふとアキラがタルナーダのほうに顔を向けた。
「…またな、そっちにはかならずよらせてもらうよ」
「ああ、またな」
言葉は少なかったが、彼らにとっては十分だった。
旅立つアキラの背はタルナーダにとってとても大きいものに感じられた…
完
おまけ
「いいの〜タルナーダぁ。いっちゃうよぉア・キ・ラ」
「旅立つ男、待つ女。いいネタになるわ。ははは」
「あらあら、タルナーダったらいつのまに。意外と手がはやいのねー」
上からミュウ、ナギ、リューンエルバ…
周りを取り囲む、ヴァラノワールの面々…
「そういえばタルちゃん、城に入る前の夜、アキラちゃんとなにしてたの?」
爆弾投下。
「レン君、それほんと?」
「興味わいたなー、タ〜ルちゃん、二人でなーにしてたのかな〜?」
「あーボクも興味あるなーー」
ついにタルナーダの堪忍袋の緒が切れる…
「おまえらーーいい加減にしやがれーーー」
電撃を放ちながら大暴れするタルナーダ。
「タルナーダ。そんなんじゃアキラさん、他に女の人つくっちゃいますよ」
まとめ役と思われたネージュも意外とその場の流れに乗るようだ。
「これがあたいだーーー」
あばれるタルナーダの顔は真っ赤だったとさ。