その夜の食事にはどんよりとした空気がながれていた。
始まりはアキラたちのもとを突然、フレデリカが訪れたときにさかのぼる。
キュオはそのとき、ちょっとした用でその場にいなかった。
料理担当はキュオだったため手持ち無沙汰だったアキラのために料理をすることを申し出たのがフレデリカだった。
何か手伝おうとアキラがフレデリカに近寄ろうとしたとき、アキラが躓いてしまい、
それをフレデリカが抱きとめたところをちょうどキュオが目撃したためだ。
普通に再会してれば、食事の時間がこんなに重い雰囲気になることはなかったのだが…
その空気をなんとかしようと勇気を振り絞ってアキラは声をだした。
「うん、うまいな…フレデリカ、この料理」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
「キュオもそう思うだろ?」
黙ったままのキュオにもなんとか会話に参加してほしくてアキラは声をかけた。
「うん、おいしいにゃ…」
多少ぎこちないとはいえ、なんとか返事をした。
確かにフレデリカの料理はおいしかった。けれどキュオにはそれどころではなかった。
「そういえば、どうしてフレデリカがここに?」
「ああ、それはな…」
「アキラは黙ってるにゃ」
「…はい」
けんもほろろな返答に押し黙るアキラ。
(きたわね…)
「あのね、このあたりに珍しい動物が出没するっていうから確かめに来たの」
いろんな動物を知っておいたほうがいいでしょというフレデリカ。
キュオは当然、フレデリカが獣医を目指してるのは知っていた。だから一見不都合はないように聞こえる。
「ふーん、でもキュオそんなの聞いたことないにゃ」
キュオはハイレインだからそんな噂があればまっさきに捕まえてると言外ににじませていた。
「キュオが聞いたことがないだけじゃないかしら」
まだキュオが半人前だと言いたいのだろうか
「そ、そんなことないにゃ、だったら聞くけど、どんな動物にゃ?」
「そ、それは…そうおっきくて、目が三つあって…」
「ふーーん」
見透かしたようなキュオの態度にすこしおされるフレデリカ。
ぴりぴりとした空気が二人の間に流れ始める…
二人の表情は笑顔だが笑顔じゃない。
耐えられなくなったアキラがなんとかしようと話しかける。
「ま、まぁいいじゃないか二人とも…落ち着けよ…」
気おされてるのだろうか、言葉に力がない。
「「アキラ(さん)は黙ってるにゃ(てください)!!」
「…はい」
だがアキラの思いは通じたのだろう。
「まぁいいにゃ」
「そうね」
とりあえずこの場が収まったことにほっと息をつくアキラ。
「そういえばアキラさん、神器の封印のほうは…」
「ああ、とりあえず一つは終わったところだ」
これから北の火山を越えたところの神殿に行くところだと伝える。
(もういくつかは終えたと思ったけど…意外と進んでいないのね。)
「じゃあ、わたしもついていっていいですか」
「いいのか?珍獣とやらはどうしたんだよ?」
フレデリカの発言にびっくりしたキュオが慌ててアキラに相槌をうつ。
「そ、そうにゃ、つよーいモンスターもいるし、危ないにゃ」
フレデリカがここにきた理由が嘘だととっくに看破したキュオ。
おおかた目的はアキラだろう。それだけはなんとしても阻止したかった。
アキラも満更でもないようだったから特にだ。
「いいんですよ、生息してなかったらしてなかったで、所詮噂ですもの」
「まぁお前がいいならいいけどな。戦力は多い方が楽でいい」
キュオはどうだ?とアキラが聞くと、
「…わかったにゃ」
確かに神殿内にもモンスターは多数出没する。戦力は多い方がいいのはわかってる。
それを無理に駄目だといって困らせたくない。
キュオは今回だけのことと割り切る事にした。
フレデリカはすこし表情の暗いキュオに罪悪感を感じた。
*
「おれは一人で寝るよ。積もる話もあるだろうからキュオとフレデリカで寝たらどうだ」
アキラの提案をうけ、三人はそれぞれのテントで眠る事にした。
どことなく気まずい空気が二人の間に流れていた。
「ごめんね…」
ふと隣に横になってるフレデリカがキュオに話しかける。
「突然、びっくりしたでしょ…そうなの、アキラさんに会いに来たの…」
「…うん、わかってたにゃ」
でも、今になってどうしたのだろう。
「わたしね、アキラさんが好きだったの…」
それも知ってた。フレデリカのアキラを見る目が単なる親切心でないことぐらい。
フレデリカの言葉はつづいた。キュオはただ聞くことしかできなかった。
「旅が終わって…はなれてみて、…思ったの。やっぱりアキラさんのことが好きだって」
「……」
「わたし、何もしてこなかったから…自分の気持ちも何も…伝えてなかったから…
ごめん、わがままばかり…どんな結果でもいいの…自分の気持ちを打ち明けられないまま
終わらせたくないの…」
フレデリカの気持ちはよくわかった。自分も立場が変わったら同じ行動をとるかもしれない。
思い返してみれば、自分の思いを押し隠してまで相談にのってくれたのもフレデリカだった…
自分にとってのフレデリカはやっぱり一番の親友で、悲しみに沈んだ姿は見たくなかった。
「こっちもごめんにゃ…」
そこでキュオは初めてフレデリカに向いて話した。
「キュオ、怖かったにゃ。フレデリカは美人だし、優しいし…キュオとじゃ比べ物にならないと
思ったにゃ…でも…アキラのこと、とられたくなくて…」
すこし涙ぐみながらも話すキュオ。
「ううん、違う…わたしが臆病だったから…」
そこまできてキュオはある決意を固めた。
「ねぇ…フレデリカ…アキラのこと、好き?」
「う、うん、それはもちろん…好き…」
今更問うまでもない事なのにと思ったフレデリカだがキュオの真剣な表情に真面目に答えた。
*
(フレデリカ、か…あいつにも結構、世話になったな…)
キュオの方が積極的にやってきた感はあるが、彼女もいい意味でしつこかった。
あの頃のアキラは随分と突っ張ってばかりいた。だから嫌な気分させてしまったのかもしれない過去の自分を恨めしく思った。
実際、フレデリカが思うほど消極的だったというわけではないようだ。
キュオとは違った気の使いようをしてくれた、もう一人の恩人。
それがアキラのフレデリカに対する印象だった。
(もし、キュオじゃなく、フレデリカだったら…)
アキラはあわてて頭をかきむしった。
キュオでもフレデリカでもどっちでもよかったかも知れない。
そう思ってしまうほど二人はどちらも魅力的な娘だった。
キュオに対する感情は疑いようもない。
だがアキラは思い出してしまった。
フレデリカにも惹かれていた自分を。
(最悪だな…この、独占欲は…)
フレデリカが同行しているうちに気持ちに決着をつけなくてはいけない。
アキラは深いため息をついた…
翌日、朝のまぶしい日の光がアキラの目を刺激する。
「おはようございます」
「おはよう、アキラ」
すでに二人は仲良く朝食の支度をしていた。
おいしそうな料理の匂いがアキラの鼻腔をくすぐる。
「ふぁ…あぁ、おはよ…」
挨拶をしたと同時にアキラは驚いて目を見開いた。
昨夜のピリピリした雰囲気がまったくといっていいほどなかったからだ。
もともと二人は親友同士だったから元の鞘に戻ったといった方がいいのかもしれない。
アキラはそんな二人がけんかしている姿は見ていてつらかった。
きっと昨夜よく話しあったのだろう。その事に関して、アキラはあえて二人に問う気はなかった。
「夜更かしはだめにゃ。早く顔を洗ってすっきりするにゃ」
おまえの場合は朝から元気がよすぎるな…そう思っていても当然、口に出せるはずがなかった。
わかったわかったと返事を切り上げ、言われたとおり水を取り出し洗面器にあけ顔を洗った。
「もうすぐできますから」
早起きでも髪の手入れは欠かしていないようだ。その新緑を思わせる髪が日の光を受けて輝いているように見えた。
料理をしている姿も様になっている。それをみたアキラはなぜか照れくさい気持ちになった。
それから何分もたたずに完成した料理には何のけちもつけようがなかった。
キュオとフレデリカもお互いに褒めあっていて、まるで姉妹のようだ。
(もう心配は要らないな、二人は…)
後は自分だけだなとアキラは改めて決意した。
食事のあと、神殿に向けて歩みを進める3人。
「今日中に神殿の入り口ぐらいには着けるようにしたいな」
「大丈夫だよ」
「わたしもです」
彼女らのやわらかい表情にアキラは今までにない活力を感じた。
*
「あっついにゃー」
神殿への通り道にあるキロッス火山についたキュオの第一声は予想通りだった。
いつもならたしなめる側の二人もこればかりはキュオに同意した。
フレデリカのペットのソルもすこしバテ気味のようだ。
「キュオ、気持ちはわかるがモンスター相手にまでだれるなよ」
目の前には多くのモンスターが居並んでいた。
アキラの忠告にキュオもわかってるにゃと反論した。
フレデリカは二人のやりとりがとても自然なのがとてもうらやましかった。
(いいな…わたしも、あんなの…)
「いくぞ、フレデリカ」
アキラの呼びかけが少しだけ暗くなっていたフレデリカの気分を吹き飛ばす。
「はい!」
「キュオも」
「わかってるにゃ!」
大剣S・O・Cを引っさげモンスターに向かって駆けていくアキラ。
その後ろから投擲武器ブレイカーを構えた二人が後方から支援する。
そのブレイカーが放たれ的確に大型のモンスターを捉える。
剣に比べ、一撃の威力に劣るブレイカーだが射程外からチクチクやられたらモンスターはたまらない。
動きのとまったモンスターにアキラが必殺の斬撃が炸裂する。
脳天から股まで真っ二つに切り裂かれ、そのモンスターは絶命した。
厄介なモンスターを始末した後は各個撃破に切り替える。
「ええい!」
神の腕とも称される腕前が遺憾なく発揮され、ブレイカーがまるで生き物のように飛び回る。
多少実戦からはなれていたとは言えフレデリカの腕はいささかの衰えもなかった。
フレデリカの右手にはキュオが同形のモンスターに対峙していた。
正確性こそフレデリカには劣るものの、ハイレイン固有の捕縛技を駆使し確実にほふっていく。
その上、抜け目なくアイテムを盗むのも忘れないキュオだった。
その頃、前線のアキラは多少苦戦していた。
というのもこの場所は火口付近のため溶岩が固まってできた岩によって足場が悪かった。
体捌きをうまく行なえないのは剣士にとってかなり不利といえた。
「チッ」
敵モンスターの爪がアキラの頬をかすめる。
それでも力量は完全にアキラが上回る。その攻撃にひるむことなく大剣を突き出す。
断末魔とともに崩れ落ちるモンスター。どうやら今のでこの場のモンスターは全て片付けたようだ。
「なんとか片付いたな」
「意外と速く済んだにゃ」
以前はキュオとふたりでこなしていたからそう思うのは当然だろう。
「そうだな、ありがとうフレデリカ」
「そ、そんなお礼なんていらないですよ」
まさかお礼を言われるとは思っていなかったフレデリカは手を振って否定する。
ふとフレデリカはアキラの頬の傷を指差した。
「怪我ですか、アキラさん」
「あ、ほんとだぁ大丈夫?アキラ?」
フレデリカの指摘に思い出したようにその傷をなでる。
「たいしたことはない、かすり傷だ」
ふと何か思いついたフレデリカはすこし顔を赤く染めながら、
「いけません、化膿したらどうするんですか」
そういうとアキラの肩をつかんで強引にしゃがませる。
「お、おい」
「フレデリカ?」
突然のフレデリカの行動に疑問符を浮かべる二人。
ペロッ
「あーーーーー、何するにゃ!」
キュオが大声で抗議する。
フレデリカが何をしたかといえば、アキラの傷口を舌でなめたのだ。
アキラは何をされたのか認識できるまでぼーっとしており、当のフレデリカは顔を真っ赤にして俯いていた。
フレデリカの鼓動はこれまでにないほど激しかった。
(ああ、やっちゃったわ…)
顔を真っ赤にして俯くフレデリカ。
当然キュオの抗議も耳に入らない。仮に入っていたとしても後悔などはまるでしないが。
「いてて、やめろって」
「デレデレするからにゃ」
ぽーっとしていたアキラの頬をつねるキュオ。アキラの顔がそれほどしまりがなかったのか。
キュオはそのままフレデリカにまけないという意思をこめて視線を強めた。
以前と違うのは、そこに敵意は含まれていないという事だった。
*
ガラヴァ神殿内部。
祭壇までの狭い通路の両脇にはマグマが流れている。
ちなみにペットのソルは外に置いてきてある。
内部にはやはりモンスターが入り込んでいた。一番の問題なのがドッペルゲンガーだ。
恐るべき怪力をほこる半怪物のクンドリー。その偽者が侵入者を拒む。
オリジナルよりも上の実力をほこるその怪物に気を引き締める三人。
「いくぞ、二人とも」
「うん!」「ええ!」
そのほかの雑魚には問題ない。先程の戦闘のように無難にこなしていく。
ドッペルゲンガーの攻撃は極力無視し、敵の数を減らすことに専念する。
雑魚を排除し終え、三人は改めて体勢を整える。
「さて、これからが本番だ」
キュオもフレデリカも息を呑む。
フォローは任せると二人につげアキラはドッペルゲンガーに正面から挑む。
クンドリーのドッペルゲンガーらしくその豪腕を振り回しながらアキラにせまる。
一発一発をさばくのに冷や汗物のアキラ。だがその合間にも攻撃をくりだす。
キュオもフレデリカも機をうかがいながら援護を行なう。
「ぐっ」
ドッペルゲンガーの猛攻を捌ききれず、数発の拳を受け体勢を崩してしまう。
「「アキラ(さん)!!」
悲痛な叫びを上げながらも、ブレイカーを繰り出し追撃をはばむ。
一瞬やんだ攻撃をアキラはその場からすばやく距離を置いた。
「すまない」
キュアグラスを使い体力を回復させ息をつく。
「アキラさん、わたし達が何とか隙を作ります。その間に」
「うん、任せるにゃ」
なにか奥の手があるのだろう。アキラは二人を信頼してタイミングをうかがう。
ドッペルゲンガーのパワーはかなりのものだがスピードはたいしたものではない。
二人はすばやい動きでかく乱し、狭い通路に引きずり出す。
「いくわ!キュオ!」
「オッケーにゃ」
キュオとフレデリカのそれぞれの最大奥義が炸裂する。
「「獄鎖爆火陣!!」」
鎖がドッペルゲンガーに絡みつき、業火がその身を焦がす。
「「今にゃ(です)!!」
そのとき、自らの気を最大限まで高めていたアキラがドッペルゲンガーにむけ剣を振り上げ跳躍する。
「とどめだ!!」
アキラの奥義、G・ドライブがドッペルゲンガーにクリーンヒットする。
3人の奥義にさしものドッペルゲンガーも耐え切れず消滅した…
「くっ…」
アキラはそう呻くとガクッとひざを突いた。
「アキラ!!」
「大丈夫ですか?!!」
あわててキュオとフレデリカが駆け寄った。
圧倒的なパワーのクンドリーのドッペルゲンガーから受けた攻撃が今になってきいてきたのか。
「あぁなんとか…」
「とりあえず手当てしますから…」
「アキラ…大丈夫だから…ね?」
傷自体はそれほど深いものではない。すこしほっとしたキュオとフレデリカは手当てを始めた。
アキラはふたりの肩を借りながらなんとか神殿の外にむかう。
ソルも心なしか元気がない。
「すまないな…」
「気にしないでください」
「そうにゃ、アキラは気を使いすぎにゃ」
「そうだな…ほんとに…」
アキラの疲労もピークに達しており、声に抑揚がない。
神殿外につくとフレデリカはアキラをテントの中に毛布をひき横たえる。
「今日はもう横になってください。」
「はやく元気になってにゃ」
とアキラに語りかけるがすでにアキラからは寝息が漏れていた。
眠っているアキラの顔をのぞくと安らかな表情を浮かべていた。
「アキラさんの寝顔って…かわいい…」
アキラの寝顔を眺めながらそんな感想を口にする。
以前の旅では基本的にはしかめっ面が主だった。
「そうにゃ、多分これがほんとのアキラなんだよ」
アキラの本質に触れたキュオらしい感想。
「いいな…」
フレデリカはうらやましいという気持ちを素直に表に出した。
やっぱりアキラの事が好き、これからもいっしょにいたい。フレデリカは気持ちを強めた。
「…大丈夫にゃ、アキラなら」
「キュオは…それでもいいの?」
こくりと頷くキュオ。
キュオにとってもフレデリカはかけがえのない親友だ。これからも一緒にいたい。
そこにアキラもいればもう他に何も望まない。
「ね、アキラがおきたら…」
「…がんばってみるね」
*
「う…」
ドッペルゲンガーとの激闘の後の深い眠りから目をさますと、
キュオとフレデリカがアキラの両脇に抱きつくように眠っていた。
(心配かけちまったな…)
二人の髪をなでるアキラ。
その感触にキュオもフレデリカも目を覚ます。
「ふぁ…ア、アキラさん大丈夫ですか?」
「ああ、心配かけたな」
キュオも本当にうれしそうに見つめていた。
「キュオも」
「うん、よかったにゃ」
それ以上言葉が進まず場が沈黙する。
「ふっ」
三人が目をあわすとアキラにつられてキュオもフレデリカもクスッと吹き出した。
「改めてほんとに、心配かけたな、ありがとう」
アキラが礼を言う、二人は顔を赤らめる。
「いいんですよ、そんな…」
「そうだよ、アキラったら」
そういいながらもキュオはフレデリカに肘で軽くこずいていた。
それがどういう事かよくわかっているフレデリカ。
(言わなきゃ、ここで言わなきゃ)
「あ!あの…アキラさん」
だんだんと声のトーンが下がっていくフレデリカ。
「ん?どうした」
「アキラさん!」
突然大きな声でアキラの名を呼ぶ。フレデリカの顔は真っ赤に染まっていた。
「な、なんだ?」
「わたし、アキラさんが好きです!」
「!」
「あの時の旅からずっと…でもわたし、あの時は言えなかった…だから伝えます。
わたしはアキラさん、あなたが好きです」
あれだけのアプローチをしてくればいくら鈍感なアキラでも薄々は感づいていた。
だが、まさか本当にそうだとは。
フレデリカの告白にアキラはうれしく思った。が、同時につらくもなった。
そんなアキラの思いが手に取るようにわかっているキュオは助け舟をだした。
「ねぇ、アキラ、好きか嫌いかだけでいいにゃ、応えてあげるにゃ」
なぜキュオが?普通ならフレデリカの告白に真っ先にとがめるはずなのに…
フレデリカは答えに不安になりながらもアキラを見つめる。
「…嫌いじゃあない」
その答えが不満なようなキュオはじーっとアキラの目を覗き込む。
「ああ!好きだよ。俺はキュオもフレデリカもどっちも好きだよ」
キュオの視線に耐え切れず己の本心を暴露する。
フレデリカもキュオもその答えが満足だったのか満面の笑みを浮かべている。
しかもフレデリカはすこし涙ぐんでいる。
けれどアキラは、
「そ、それでいいのかよ」
自分の言ったことが咎められない不思議にアキラが聞き返す。
すると、キュオは頬をふくらまして、
「もう、細かい事は言いっこなしにゃ、みながみなの事好き、それでいいにゃ」
キュオの言葉に驚いたのかアキラはポカーンと拍子抜けた顔をしていたが、
「…なんだかキュオが言うと、すごく単純に聞こえるな」
アキラはもうこの際、キュオの単純さを見習う事にした。
「じゃあ、アキラ」
「ああ、これからはみんなでいよう」
そう告げると二人は本当にうれしそうな顔だった。
「ど、どうした?」
見ればフレデリカの瞳からはポロポロと涙がこぼれていた。
「な、なんでもないんです。なんだかすごく、うれしくて」
アキラはそんなフレデリカに引き寄せられるように、その手を伸ばした。
「!」
フレデリカの涙をぬぐうようにアキラの指が触れる。
「…アキラさん」
二人の顔が自然と近づき唇が合わさった…
…キュオはすこしうらやましそうに微笑んでいた。
*
夢にまで見た初めてのキスの感触にか顔を赤く染め、唇に指を触れながらその感触を思い返すフレデリカ。
そんなフレデリカにもう一度軽くキスしながらフレデリカを横たえるアキラ。
フレデリカはアキラを信頼しつつもどこか不安な表情を浮かべていた。
「…だいじょうぶにゃフレデリカ。アキラ、優しいから」
「う、うん」
経験者の言にフレデリカから強張った表情が消えた。
キュオとアキラに向き合うと、アキラは無言で頷いた。
そのやり取りをみていたフレデリカはすこしいぶかしんだ。
「ん…」
キュオがフレデリカの唇にみずからのそれを合わせる。
そのまま舌をからめ唾液を交換する。するとフレデリカもキュオの舌の動きにあわせて絡み付いてきた。
クチュ、クチャ、チュ…
美女同士の絡みは見ているアキラのみならず当人達の官能も高めていく。
キュオが唇が離れたとき引かれた糸が淫らに写る。
フレデリカの緊張もほぐれたところでアキラがフレデリカに覆いかぶさる。
彼女と目を合わせキスを交わす。キュオに引き続いて深く深くフレデリカの口内を味わう。
甘い…
錯覚かもしれないがアキラはそう感じた。
軽く耳たぶをなめてやると火照ってきたフレデリカは敏感に反応する。
「ふぁ…」
その初々しい反応にたまらなくなってきたアキラは本格的な行為に突入していく。
キュオは見る側にまわるのは初めてなためかいつもとは違った興奮をしていた。
もじもじと膝をすり合わせてじーっと二人を見ていた。
「触るぞ」
コクッと頷くのを確認したアキラはフレデリカの胸を優しく揉みしだく。
「ん、はぁ…ふっ、あはぁあ…」
アキラの手の動きに合わせてフレデリカが声を上げる。
フレデリカのジャケットの止め具をはずし、下着を露出させるとフレデリカはますます顔を赤くした。
反射的に両手で覆ってその胸を隠してしまう。
「…よくみせてくれ」
「で、でも恥ずかしい、です…」
それでも断りきれないフレデリカはおずおずと両手をどかす。
ブラジャーをめくるとその乳首はきれいな桃色をしていた。
キュオのそれとはまた違った感触をあじわうようにアキラはフレデリカの胸をあじわう。
すこしいじっただけで乳首がコリコリと固く勃起する。
「ひゃう!」
アキラが右の乳首を口に含むとフレデリカは甲高い声をあげる。
固くなった乳首を軽くかみ、舌先でつんつんと先端を刺激すると、フレデリカの甘い声がどんどん大きくなる。
「ひゃあ、あ、あん、アキラさ…ん、そんな噛む…なんてぇ…」
空いた左側も愛撫を途切れさせず乳房全体を指を立てて揉み、人差し指で固くなった乳首をこねくり回す。
「ふ、ふあ…ああ、ん、ふ…ああ…ん…」
もう喘ぎ声を出す事にためらいも何もなくなったフレデリカ。
(そろそろいいか…)
アキラの手がフレデリカの秘所に触れる。
「あ!」
するとフレデリカは本能的な恐れからか、それ以上の進入を阻むようにギュッと股を閉じた。
「…困ったな」
するとアキラは何か思いついたようで
「キュオ、手伝ってくれるか?」
するとキュオは待ってましたといわんばかりに擦り寄ってきた。
アキラとキュオの息が合い様といったら…
するするとフレデリカの背後にまわると上着を完全にはぎとり、後ろから胸をいじり始めた。
「ちょ、ちょっと、キュオったら」
フレデリカが抗議しようにもキュオはまったく聞く耳を持たなかった。
「にゃー、フレデリカったらもうこんなになってるーー」
こりこりーと呟きながら両の乳首をこねくり回すキュオ。
「あ、ふぁああ、キュ、キュオ!だ、駄目だってぇ…く、ふ…」
フレデリカは襲い掛かる快感に身をよじらせる。
キュオが意識をそちらに向けている間にアキラの指はフレデリカの秘所に到達する。
「あ!ア、アキラさ…あ、ああん、はぁん、ああああ」
すでに両側を紐で留めている下着はあふれる愛液によってびしょびしょになっていたが、アキラはまだ剥ぎ取らず下着の上から秘所に刺激を与える。
浮き上がった筋にあわせて指を上下し、そして入り口のあたりでぐいぐいと押すように動かす。
「あ、ああ、は…はぁ、も、もうアキラさ…」
なにか言いたげなフレデリカだがキュオが唇でそれを封じた。
アキラはそのまま下着の紐を解き現われた秘所に顔をうずめる。
薄いヘアに囲まれた秘所の愛液を、残さずなめとるように舌を動かし、クリトリスへの責めも加える。
皮をむき、やさしく丁寧にこする。
ピチャ、ピチャ、クチュ…
「く…ふ、ふ…はぁ、あ、ああ…ん、アキラさん、いいです、気持ちいい…」
「そりゃよかった…」
「むー、キュオもいるのにー」
頬を膨らましたキュオが乳首を強めにつまみ、口に含んだほうは軽く歯をたてる。
「だ、だめぇえキュオ!!、そんな…ふぁああああ!!」
キュオに胸、アキラに秘所を同時に責められ、フレデリカはもう達しようとしていた。
「ハァ、あぁあん、く、ふぁあ、も、もう駄目、アキラさ…ん、キュオぉ…ふあああ!」
止めとばかりにアキラは硬く勃起したクリトリスを強く摘む。
「ふあああぁああ!!」
一際、おおきな喘ぎとともにフレデリカは絶頂に達した。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
息を整えるフレデリカをみて、残る二人は向き合いながら
(やりすぎたか?)
(んー、どうかにゃ)
当のフレデリカは恨めしそうにこちらを見ている。
そのじとーっとした視線に耐えられなくなったアキラはフレデリカに弁解する。
「あ、あのな、その…最初はこんなつもりじゃなかったんだが…」
なぁっと隣のキュオに振るとコクコクと同意した。
「…るいです」
フレデリカがなにかボソッとつぶやく。
「え?」
「ずるいです…わたしばっかり…ずるいです!」
突然大きな声をあげるフレデリカに呆けとられるアキラとキュオ。
「わたし、初めてなんですよ、それなのに二人掛かりなんてひどいじゃないですか」
「駄目って言ってるのに、ちっともやめてくれないで」
フレデリカの愚痴がとめどなくこぼれアキラとキュオは唯頷くだけだった。
「そ、そうにゃアキラ、ひどいにゃ」
いきなり手のひらをかえすようにキュオがフレデリカの肩をもちだした。
「い、いきなり何言ってるんだ。おまえだって…」
「アキラさん!!」
アキラの反論は女二人にむなしくスルーされてしまう。
(な、なんだこの扱いは?)
「今度はやさしくしてくださいね」
「…ああ」
アキラは頷くと改めてフレデリカに覆いかぶさる。
軽くキスした後、アキラはフレデリカの手をとり自分のモノに触れさせる。
「あ、アキラさん…これ、は…」
当然のことながら初めて触れる男性器にとまどうフレデリカ。
そこはすでに服の上からでもわかるぐらいに硬くなっていた。
「フレデリカがかわいいからさ」
ゴクッ
意を決したようにフレデリカは起き上がりアキラと位置を入れ替える。
「お、おい」
フレデリカの思い切った動きに戸惑うアキラ。
アキラのベルトをはずし、トランクスごとズボンをおろとアキラのペニスが隆々とそびえ立っていた
フレデリカはおずおずとそのペニスに手をふれる
「くっ」
ひんやりとした手の感触にアキラも反応する。
だが、それ以上の動きはなかった。
勢いに任せてみたはいいものの、どうしたらいいかわからないのだろう。
その様子に見かねたキュオがフレデリカに助け舟を出す。
「フレデリカ…こうするといいにゃ」
キュオはフレデリカの手をアキラのペニスを握らせるとそのまま上下に動かす。
「ほら、アキラ気持ちよさそうにゃ、ピクピクってふるえてるにゃ」
一瞬だけキュッと強く握り、そのままやさしくしごきあげる。
「く、お、おいキュオ…」
反論なんて聞く耳もたずのキュオはそのままフレデリカに指南をつづける。
「ここはカリ首って言うにゃ、ここをこうしてコリコリって…」
顔を赤らめながらもキュオのしたように自分も真似てみる。
(く、さすが神の手…といわれるだけはある…)
飲み込みの速いフレデリカはあっという間にコツをつかんだようだ。
だんだんと動かす手にぎこちなさがなくなり、アキラの反応をうかがうほどの余裕をもてるまでになっていた。
もだえるアキラの様子を見て、
「ふふ、アキラさん、かわいい…」
「でしょ」
アキラは反撃しようとするも二人がアキラの動きを封じ、それもままならなかった。
「ここも男の人はかんじるにゃ」
そういってキュオの手が玉袋にふれる。
フレデリカは少し意外そうな表情を浮かべたが、アキラの表情をみて納得したようだ。
「じゃあそろそろ…」
キュオはフレデリカに見本を見せるようにアキラのペニスをくわえ込む。
「ん、んふ、ふ、ふ…」
亀頭から竿まで丹念になめあげるとアキラは本当に気持ちよさそうな表情をうかべる。
「ぷぁ…じゃ、フレデリカ」
今度はフレデリカの番というようにペニスから口は離す。
さすがに咥えるという行為にはためらいがあったが思い切って咥えてみる。
「歯を立てたらだめにゃ、丁寧にね」
たっぷり唾を含み、やさしくなめあげる。
(キュオにくらべたら、ぎこちないけど…これも、いいか)
「ああ、いいよ。フレデリカ…」
アキラのその言葉にうれしくなったフレデリカはアキラへの奉仕を続ける。
フレデリカは舌よりも手の方が得意なのかそちらのほうを強くする。
アキラのツボを心得た手の動きにアキラの射精感が高まっていく。
「く、あぁ、フレデリカ…もうでるぞ…」
「ふふ、いいですよ。だしちゃって下さい」
そのまま、フレデリカは上下させる手を速くする。
アキラのペニスがピクピクと震える。いく前兆だ。
「く、うああ」
勢いよく放たれた白濁液がフレデリカの顔に降りかかる。
「す、すまん」
「ふふ、いいんですよ。それより、いっぱい出ましたね」
顔についた精液をぬぐい、手についたそれをまじまじと見つめる。
そんなフレデリカの姿はひどく淫靡でアキラはもう我慢する事ができなかった。
アキラのモノは萎えることをしらずいまだ固くなったままだった。
「フレデリカ、もういいか?」
それがどういうことかわからないほど疎いフレデリカではなかった。
「は、はい…」
そうはいうもののフレデリカは内心不安だった。あんなに大きいものが本当に入るのだろうか?
初めては痛いと聞いた。でもやっとアキラと一つになれるという喜びも同時にわいた。
そんな期待と不安の入り混じった表情を浮かべるフレデリカに、キュオがやさしく語りかける。
「大丈夫だから、ね。アキラ優しくしてくれるから」
「う、うん」
フレデリカとキュオの期待を裏切るわけにもいかない。
(一気に入れてやったほうがいいな…)
アキラは自分のペニスをフレデリカの秘所にあてがい、挿入する前にもう一度キスをする。
「いくぞ」
その言葉とともにペニスがフレデリカの秘所を一気に貫く。
「う、くぁ…い、いた…」
懸命に痛みに耐えるフレデリカにたとえようのない愛しさをアキラは感じていた。
「はいったぞ、全部…」
涙ぐみながらもアキラをしっかりと見つめ返すフレデリカ。
「うれしい。これでわたしも…」
アキラさんのものになったんですね。その言葉にアキラも顔を真っ赤にするほど照れた。
「おめでと、フレデリカ」
「うん、ありがと…キュオ」
フレデリカの涙をなめとるキュオ。
まだ痛みはとれないだろう。そのため腰をうごかさずじっと彼女の痛みが取れるのを待つアキラ。
「いいんですよ。アキラさん、動いても」
アキラも一刻もはやくフレデリカの膣内を味わいたいがそうもいかない。
自分の欲求のままに動くほどアキラは傲慢ではない。
「おまえにいたい思いをさせてまで気持ちよくなろうとは思わないさ」
アキラの気遣いにうれしくなったのか、またフレデリカは涙ぐんでしまう。
「泣き虫だな。フレデリカは」
「だって…」
「だから言ったにゃ、アキラやさしいって」
(そうだね、本当にやさしい…)
しばらくすると痛みも取れたのか、改めてフレデリカはアキラに申し出る。
「じゃあ動くぞ」
アキラが腰を動かすとフレデリカも反応しだした。
「あ、あん、ああ、アキラさん、アキラさ…ん」
はじめは気遣ってゆっくりだった腰の動きもフレデリカの敏感な反応に興奮し、腰の動きを強める。
「はぁ、はぁ、いいよ。フレデリカの中…気持ちいいよ」
「わたしもぉ…いい、気持ちいいです。ああん、あん、あん、あああ…」
キュオはと言えば、もじもじと股をすり合わせて必死に我慢しているようだ。
今回はフレデリカの大事な“はじめて”だから。
(おめでと、フレデリカ)
腰を打ち付けるたびに漏れるフレデリカの喘ぎ声がテントに響く。
アキラがフレデリカから一端、モノを引き抜く。
すると彼女は物足りなさそうにアキラを見る。
「まだまだだ」
フレデリカを四つん這いにさせ、後ろから挿入しなおす。
先ほどとは異なりすんなりと進入を果たす。
「ふ、ふあああああ、はいってる、入ってきます…アキラさんの…」
「フレデリカ、気持ちいいよ。おれのをキュウキュウ締め付けてくる」
フレデリカの膣肉はアキラから搾り取ろうとうごめいてた。
「はぁはぁ、アキラさ…さっきとは違ったところにあたって…気持ち、いいですぅ」
アキラが一突きするたびにフレデリカは甘い声で返す。
フレデリカの胸も腰の動きにあわせて揺れている。
それが幾度となく続いた頃、ふたりにも限界が訪れた。
「ふあ、ああああん、アキラ…さん、わたし、わたしぃも、もう、イク、いっちゃいます!!」
「ああ、俺もだ」
「お願い、アキラさん…いっしょに…」
「ああ、一緒にいこう」
より一層腰の動きを激しくし、高みに上り詰めようとする。
本能のままに腰を振り、アキラもフレデリカは快感に喘ぐ。
「フレデリカ、俺ももうイキそうだ」
「あん、アキラさん、そのまま膣内に…だしてえええ」
アキラにはもう深く考えるだけの思考力が残されていなかった。
「あん、あん、あああ、ふぁあああああ!!」
「く、うああああああ」
そのまま、フレデリカの膣内に、アキラの欲望が深く打ち込まれた…
「アキラ…さん、気持ちよかったです…」
「ああ、俺もすごく良かった…」
好きな人とやっと一つになれた満足感とともに心地よい疲労感をあじわう。
アキラもそのまま疲労感に身をゆだね横になろうとする。
が…
「ねぇ、アキラぁ」
ビクッと声の主のほうに目を向けると、もう我慢の限界といった様子のキュオがアキラに迫る。
「ちょ、ちょっとまて、俺はもう限界で」
「嘘はいけないにゃ。いつもは3回は当たり前だったにゃ」
そういいながらキュオはアキラの萎えたペニスを握り、上下に動かし始めた。
するとアキラの意思に反してそれは瞬く間に大きくそそり立つ。
「ほら、アキラのこれも元気になったにゃ」
嗚呼、悲しきは男の本能…
(また…出発がおくれちまうな)
アキラは覚悟を決めると、キュオにむしゃぶりついた。
*
(う…)
あれから何回したのか自分でも思い出せなかった。
キュオとの情事が終わったと思ったら、体力も回復したフレデリカにもせまられて…
(ああ、太陽がまぶしい…)
今回はどれくらい眠っていたのか?おそらく丸一日ぐらい眠っていてもおかしくないだろう。
左にはキュオが、右にはフレデリカがそれぞれの腕に抱きついて眠っていた。
毛布の下の三人はもちろん素っ裸だ。
「ふぁあ…アキラ、おはよ…」
「…おはようございます、アキラさん」
キュオはともかく、フレデリカは顔を赤くして顔を背けた。
フレデリカはまさか自分でもあれほど淫らになるとは思ってもいなかったのだろう。
今の自分たちの格好がそれを証明していた。
「おはよう」
アキラが挨拶を返すと二人は幸せそうな笑顔をみせた。
背負った責任は二倍になったが味わえる幸せもまた二倍、いやそれ以上になるだろう
この幸せを逃さないように、そうアキラは決意を新たにした。
完
おまけ
「そういえばアキラさん、全部神器を封印したらどこへ行くつもりなんですか?」
次の神殿にむけて歩みを進める中、フレデリカが唐突に聞いてきた。
「ああ、一応メイマイって国に行くつもりだ」
そういいながらアキラは腕輪についている封印の神器をみせる。
これを託した人物はどうやらその国から持ちだしたらしいからだ。
「ル・フェイとアルフリードにも約束したからな」
そのアキラの言葉にキュオもフレデリカの表情がこわばる。
「な、なんだよ。変な事言ったか?」
キュオもフレデリカも思い当たることは一致していた。
「「浮気はゆるさないにゃ(ですよ)」」
「そ、そんなわけないだろ」
アキラにしてみれば寝耳に水のような話だ。だから必死になって否定する。
「どうかにゃ、アキラ押しに弱いから」
「自覚してないでしょうけど、アキラさんってもててたんですよ」
男としてそういわれてうれしくないはずもなく、ついそれを表に出してしまう。
そのアキラのにやついた表情が気に入らないのか、
「「やっぱりーーーーー!!」」
道端に二人の女性に正座させられ叱られているアキラに、通りかかった他の旅人は哀れんだ目を向けるのだった。