「フォルト、突然だがまゆらぶは今回で終わりにする。」  
「それはまた随分と唐突だねマユラ・・・・・」  
メイマイ城深夜。最後の時までマユラとフォルトはヌイグルミに囲まれていた。  
 
「欲を言えばクロニクル発売までやりたかったがネタが尽きてきてな、今回でPCを含めたフォースシリーズと同じ六作目でキリも良いし、このまま無理矢理続けて  
 SSのレベルを落とすよりは・・・・・フォルト、随分と嬉しそうだな。」  
マユラの指摘したように、フォルトはまるでご馳走を目の前に出された少年のようにキラキラと目を輝かせてマユラの話を聞いていた。  
だが、数秒後この目の輝きが絶望の闇で染まる。  
「だって、これでまゆらぶが終わりって事はもう酷い目に遭わずに済むってことだよね。嬉しいに決まってるよ。」  
「何を言っている。たしかにリアルゲームネタのまゆらぶは今回で終わる。だが私の活躍は終わらん。次回からはメイマイ騎士団を中心としてまゆらぶの様に適度に壊れた  
 キャラ達が織り成す物語、まゆらぶーにを開始する。もちろんお前は私達の公衆便所・・・いやお前は男だから水道の方が表現が適切か・・・まあいずれにせよそのような  
 立場だ。」  
「続編するのとか以前に、立場が公衆便所って・・・・・・」  
「以上でまゆらぶ最後の話は終わりだ。後は・・・」  
マユラの公衆便所発言でがっくりとしていたフォルトだったが、ここにきて急に全身に力が入る。  
フォルトも既に解っていた。これからマユラが言う言葉も、その先にある自分の運命も。だが彼はその運命を黙って受け入れる程心は弱くなかった。  
(落ち着け、計画通りにすれば必ず逃げれる。前もって廊下の窓に下まで降りれるようロープを垂らしたし早馬も用意している。勝負はマユラが言い終わった直後。  
 テーブルをひっくり返し隙を作ると同時に部屋から跳び出る。)  
瞬時に脳内で逃走の算段をするフォルト。そしてその計画を実行する瞬間を静かに待った。だが、  
「お前を犯し「ちょっと待ったあぁぁぁぁ。」  
突如全てを遮るかのような声をあげて、ヒロがガラス窓を突き破って部屋に飛び込んできた。  
 
「貴様等、まさかこのまま終わらすつもりだったのではあるまいな。この私をまったく出さずに。」  
飛び込んできて早々、威嚇するような声と目で問うヒロ。それに対しマユラは至って冷静に、それどころか笑みすら浮かべながら答えた。  
「このまま終わらすつもりだったが何か問題でも?」  
「大有りだ。スペクトラルシリーズの看板とも言うべきこの私に出番が無いなどあってはならない事なのだ。」  
叫ぶヒロ。どうやら彼女は自分がスペクトラルシリーズで人気が有ることを意識しているようだ。  
「確かにお前はゲームには毎回と言って良い程出ている。だがそれだけだ。」  
「なっ・・・」  
「ここはエロパロスレだ。客寄せパンダ、ましてや貧乳に用は無い。」  
「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」  
貧乳という言葉にヒロはキレた。  
「死ねぇぇぇ」  
ヒロの怒りに任せたゲートオブヘヴンの斬撃がマユラの首筋を襲う。だがマユラはそれを軽々と片手で受け止め、逆にヒロの腹部に魔法を叩き込んだ。  
「なっ。」  
「言い忘れたが主人公補正は私の方に掛かっている。腕も胸も未熟なお前では今の私に勝つ事など不可能だ。」  
「脇役がナメるなぁぁぁぁぁぁぁ」  
咆哮と共にヒロの身体から魔力が溢れ出し、その影響で髪が急激に伸び肌が褐色に変わる。  
「それが噂に聞くヒロ2という姿か。だがどんなに姿を変えようとお前は貧乳のままだな。」  
だがマユラはそれでもなおもヒロを貧乳と馬鹿にし続ける。実際問題、人気でヒロに負けている彼女にとって唯一胸の大きさだけでしかヒロには勝てないのだ。  
「減らず口を叩けるのもそこまでだ。それに後30年もすれば立場は逆転する。」  
「GOCの事は言うなっ」  
今度は逆にマユラがキレた。マユラの中ではあのGOCでの幼い容姿は思い出したくない事になっているらしい。  
「ヒロ、お前は今最も苦しい死を選択したぞ。」  
「ふっ、脇役が何をほざく。よかろう、長年ゲームの看板を背負ってきたこの力、その身で味わうが良い。」  
二人の魔力が瞬く間に高まっていく。お互い、完全に相手を殺る気になっている。  
長年比べられてきた魔族の両雄が今、最も下らない理由で雌雄を決しようとする。  
 
「まっ、待って二人共、喧嘩は止めようよ。」  
ここに来て呆然としていたフォルトが我に返り二人を止めに入る。  
ヒロとマユラ、性格はアレだがその実力はネバーランドでもトップクラスだ。そんな二人が本気で戦ったらどれだけ周りに被害が及ぶかフォルトにも安易に想像できた。  
「解った、止めよう。」  
「そうだな、私も少し軽率すぎた。」  
「えっ?」  
一瞬にして二人の高まった魔力が元に戻る。性格上素直に引くとは思ってなかった二人が以外にもあっさりと引くので逆にフォルトは拍子抜けしてしまった。  
「なんだその意外そうな顔は、止めようと言ったのはお前だぞ。」  
「いや、たしかにそうだけど随分あっさり引いたなあって・・・・」  
「貴様は馬鹿か。よく考えろ、魔王の血を引く私と氷の魔女と呼ばれるコイツが此処で戦ったら周りのどれだけ迷惑が掛かると思ってるんだ、少しは考えろ。」  
「いや、あの、でも・・・・・・ごめん。」  
じゃあ初めからそんな事するなよ。そんな事が一瞬頭の中を過ぎったフォルトだったが身の安全の為に決して口には出さなかった。  
「まあでも二人が戦わなくてよかったです。」  
「そうもいかない。私はアイツに脇役呼ばわりされたのだ、このままでは気が済まないんだ。」  
「私も貧乳と言われて黙って引くわけにはいかない。」  
「じゃあどうすれば・・・・・」  
「簡単だ、お互いが納得する別の方法で決着をつける。」  
「それはいい考えだよ。で、その方法は・・・・・・って何で二人して僕を見てる・・・・・・ってまさかっ」  
「そう、そのまさかだ。逃げても良いのだぞ、私の部屋に入る前に仕掛けておいたロープを使えば簡単だろ。ただしその後どうなっても知らないがな。」  
「何でそれを・・・もしかしてハメられた。」  
「それは違う。これから貴様をハメるんだ。」  
「はは、もっと別の方法でうあ止めうあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」  
結局最後まで悲鳴を上げ続けるフォルトだった。  
その後、爆炎と氷の対決は熾烈を極めたが決着は着かず次回に持ち越される事となった。  
 

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