これまでのあらすじ  
 
 魔導世紀985年、突如としてシルヴェスタに侵攻を開始したヴァンパイア軍団の前にクリアスタ王国軍は壊滅、王家の血統は途絶えたかのように見えた。  
 数年後、クリアスタ王家ただ1人の生き残りとなった王女ミュラは、14歳の誕生日を機に祖国再興の志を立て、忠実な補佐役のミリオン、雇われ参謀ニール・マーロンと共に傭兵を募る。  
 しかしスポンサーである反攻軍司令部が彼女に許した保有兵力は、僅か1個小隊に過ぎなかった。  
 一計を案じたミュラは、任務の過酷さを強調することで、腕に覚えのある一騎当千の戦士を集めることに成功した。  
 ミュラに付き従うことになったのは、母国の君主の座を狙うザーフラク、野暮用で故郷を出奔した大蛇丸、ラコルム武術の完成を急ぐ7代ハマオウ、己を侮辱した女を見返したいジェイク、そして魔族の存在意義を見極めようとするキャメロンの5人であった。  
 
 
「たまにゃ、こういう所にも顔を出さなくっちゃ。命の洗濯だよ」  
 その日、ミリオンが戦友ラーデゥイに連れられて訪れたのは一軒の娼館だった。  
 入り口に派手な装飾を施したその店の造りは、典型的なムロマチスタイルであった。  
「だが、お前。この大戦が終わったらザップ・ロイと……」  
「言うなミリオン、それとこれとは話が別だ。救われねぇ生き物だよ、男って奴ぁ」  
 ラーデゥイは勝手な理屈で戦友の口を封じると、強引に店内へ連れ込んだ。  
「親爺、いつもの娘は空いてるか」  
 ラーデゥイは勝手知ったる様子で、ズカズカと部屋に上がり込んでいく。  
「それと、こいつにも適当に女を見繕ってやってくれ。スレてない娘がいい」  
「ほんなら、丁度ええ娘がおまっせ。先週仕入れたばかりの上玉でんがな」  
 好色そうな親爺が揉み手をしながら、愛想笑いを浮かべる。  
「どっか西国の姫君いう触れ込みですねん」  
 どうにもインチキ臭い宣伝文句を聞き流しつつ、ミリオンは親爺の後に続く。  
「魔族からの逆輸入か。やりきれんな。やはりこんな戦争は早く終わらせねば」  
 いつの時代にも、敗戦国において真っ先に犠牲となるのは女子供であった。  
 悲惨な運命は、きらびやかな衣装を纏った姫君にも、貧しい市井の町娘にも平等に訪れる。  
 案内された部屋でミリオンが居心地悪そうに茶を飲んでいると、ドアが静かに開いて一人の少女が入ってきた。  
 少女がうつむいているため、ミリオンの位置からその表情までは伺えなかった。  
「今宵はお越し下さいまして、まことに有り難うございます。精一杯、お努めさせていただきます」  
 少女は畳に跪くと、折り目正しくムロマチ古式のお辞儀をした。  
 つい釣られて頭を下げ返してしまった自分に苦笑しつつ、ミリオンは少女にくつろぐように申し向ける。  
 ようやく少女は頭を上げ、その顔を顕わにした。  
 その瞬間から、ミリオンは彼女の虜となっていた。  
 
                                 ※  
 一番鶏の声でミュラは目を覚ました。  
 見慣れぬ天井が、昨夜間借りした農家の客間のものであると気付くまで数秒を要する。  
 全身がネットリとした汗に濡れていた。  
 新品の下履きも、汗とは異なる粘液にまみれて、すっかり台無しになっている。  
「またあの夢を……」  
 ようやくクリアスタ王家昔日の輝きを取り戻すチャンスを掴んだ現在でも、苦界に身を置いていた時の忌まわしい記憶は、悪夢となって彼女を苛んでいた。  
「あの方には、一番見られたくない姿を見られてしまった」  
 自分を娼館から救い出し、今日のチャンスを与えてくれたミリオンには幾ら感謝しても足りないぐらいなのであるが、惨めな姿を晒してしまった記憶は引け目となって残っている。  
 それは同時に、おそらく見てしまった側であるミリオンの心の中にも、しこりを残しているであろう。  
「王家の再興という大望の前には、私個人の感情など取るに足らないことだわ」  
 ミュラは悪夢を振り払うように頭を振ると、体を清めるため泉へと向かった。  
                                 ※  
 薄紫色のドレスを脱ぎ、魔物封じのコルセットを外すと、均整の取れた瑞々しい肉体が露わになる。  
 幾代にも渡り美男美女を掛け合わせてきた、クリアスタ王家730余年の美の精華がそこにあった。  
 しかしミュラにとって、この体は呪うべき対象以外の何物でもない。  
「この体は……穢れている……」  
 ミュラは禊ぎをするため、真夏でも冷たい泉に飛び込む。  
「ひぁっ」  
 清水は身を切るように冷たく、ミュラは悲鳴を上げそうになる。  
 しかしその苦痛が、穢れた自分に対し、天が与えたもうた罰と思えば何ともなかった。  
 やがて心が落ち着くと、ミュラは手拭いを使って丹念に清拭を始めた。  
「……?」  
 その時、彼女の耳が激しい息遣いと共に近づいてくる足音を捉えた。  
 
 慌てて深みに身を沈めたミュラの碧眼に、朝靄を切り裂きながら駆けてくるハマオウの姿が飛び込んできた。  
 泉の前に辿り着いたハマオウは、息つく暇もなく上着を脱ぎ捨てて、型の稽古に入る。  
 細身だがよく締まった筋肉群がハマオウの意のままに連動し、流れるような動きに無駄は微塵も感じられない。  
 そこにはクリアスタ王家にも匹敵する長い歴史に培われた、伝統の持つ重みと格式が確かに存在していた。  
 拳法について何の知識も持たないミュラだったが、しばし我を忘れてハマオウの動きに魅入ってしまう。  
「……クシュンッ……」  
 体が冷え切り、ついクシャミを漏らせてしまったミュラ。  
「誰だっ?」  
「ごめんなさいっ」  
 ハマオウの鋭い誰何に、ミュラは思わず立ち上がって謝っていた。  
「ミュラ王女っ?……うわっ」  
 真っ正面からミュラの裸を見てしまった若い拳士は、真っ赤になった顔を背ける。  
「申し訳ないっ」  
 マリル以外の女性とは、親しく話したこともないハマオウは言葉に詰まってしまう。  
「こちらこそ、ごめんなさい。盗み見する積もりは毛頭なかったのですが……裸を見られたのはお互い様ですから、無かったことにしましょう」  
 互いに気まずさを残さないように配慮されたスマートな提案を、ハマオウは快く受け入れて泉を後にした。  
                                 ※  
「午前中に将軍様の所へ、ご挨拶に参ります」  
 そう言ったミュラがお供にハマオウを選んだのは、早朝の件について何らわだかまりを残していない事を示そうという気遣いからであった。  
 一行は朝食を終えると、同盟軍司令部の置かれたケイハーム城を目指して出発した。  
「ちぇっ、何で俺を指名してくれないんだよ。ミュラちゃんは」  
 馬上で瓢箪を傾けながら、大蛇丸は不満げに呟く。  
「朝から酔ってるような奴を、将軍の前に連れて行けるか。それと口の利き方に注意しろ」  
 
 ミリオンが顔をしかめて注意を与えるが、当の大蛇丸は何処吹く風である。  
「ミュラ殿を頼むぞ。俺はギルドの会合があって、お供出来ないから」  
 ミリオンは真剣な表情を向け、ハマオウにミュラの安全を託す。  
「他の者は渡した支度金で、装備や身の回りの物を揃えてくれ。ボローニャの町にも、なかなか大きい市があるぞ」  
「装備など揃えて、無駄にならんといいがな」  
 参謀役のニール・マーロンは、この期に及んでまだ態度を改めようとしなかった。  
 だが彼もザーフラクの不機嫌そうな一瞥を食らうと、そっぽを向いて黙り込むしかない。  
「ところで……」  
 そのザーフラクが感情を込めない声で大蛇丸に話し掛けた。  
「なんか言ったか?」  
 瓢箪に詰まった酒をあおりながら大蛇丸が問い直す。  
「後ろからついてくる小娘は、お前の女か何かか?」  
 振り返った大蛇丸は、見え隠れするようにして尾行してくる不如帰の姿を見つけて、口にした酒を吹き出してしまう。  
「あの、馬鹿」  
 大蛇丸は一度完敗を喫したのにも関わらず、まだ復讐を諦めようとしない不如帰の執念深さに呆れる。  
「あなたの彼女でしたら、こちらに呼んであげればいいじゃないですか」  
 事情を知らないキャメロンが、親切心から不如帰に手招きしかけるのを、大蛇丸は慌てて制止する。  
「あっ、いや、構わんでくれ。アイツは照れ屋だから。あれだけついてくんなって言い聞かせたのに」  
 ミリオンやザーフラクが事実を知れば、後の憂いを断つ必要から、不如帰はこの場で始末されるであろう。  
「私の事でしたら、お気遣いなさらなくてもよろしいのですよ」  
 ミュラもわざわざ振り返って大蛇丸を促す。  
「またぁ〜。俺がミュラちゃん一筋と知ってて。姫も人が悪いぜ」  
 大蛇丸は引きつった笑顔で誤魔化しを図る。  
「なかなかイカしてるじゃないか。でも、ちょっと若過ぎやしないかい?」  
 
 気の弱いジェイクまでが、遠慮がちに突っ込みを入れてくる。  
「くそっ、それなら僕もマリルを連れてくるんだった」  
 とは、口に出して言えないハマオウはムッツリ黙ったままであった。  
「大事な戦旅に女連れとは……結構なご身分だ」  
 ザーフラクは疑わしそうな目を大蛇丸に向けて嫌味を口にした。  
                                 ※  
 その後も付かず離れずを繰り返していた不如帰だったが、一行が城下に入る頃にはいつの間にか姿を消していた。  
「それじゃミュラ殿を頼んだぞ。みんな、集合の時間には遅れるな」  
 ミリオンは冒険者ギルドの支部へ顔を出すために、一足先にパーティから離れていった。  
 ミュラとハマオウも登城するため、ここで皆と別れる。  
「やれやれ、やっと五月蝿いオジンがいなくなったぜ。さてと、俺は特に準備なんか必要ないから、その辺を見物してくるか」  
 大蛇丸は一人になるため、早々に皆から離れた。  
「彼女に会いに行くんだぜ、きっと」  
 ジェイクが羨ましそうに呟くのを聞きながら、他のメンバーもバラバラに離れていった。  
                                 ※  
 ケイハーム城下の自由市は、ボローニャ随一の規模を誇るだけあって、解放後間もないというのにも関わらず、様々な物資が溢れかえっていた。  
 これまで戦火に追われていた避難民が帰国し、また同盟の軍隊が駐留していることもあって、軍民両面において物資の需要は幾らでもある。  
 ボローニャの各都市は、まさに特需景気の様相を示していた。  
「状況次第では敵の数が半端ではない。飛び道具も仕込んでおいた方が良策だな」  
 ザーフラクはふと目に止まった露店の道具屋へ近づいていった。  
 地面に敷かれた茣蓙の一角には、投げナイフや半弓などが無造作に並んでいた。  
 ザーフラクはセットになった投げナイフを手に取り、重さやバランスを確かめてみる。  
「こちらの飛びクナイの方が小型だから、数を持つのには都合がいいでしょう」  
 商売熱心な店の主人がザーフラクに話し掛けてくる。  
 
 主人お奨めの飛びクナイは、肉厚の刃身に芸術的な彫刻が施された逸品であり、美しい武具に目のないザーフラクの心を一瞬で掴んだ。  
「それに重くて威力もあるから、魔物相手にも充分通用しますよ。ザーフラク様」  
 見知らぬ商人に名を呼ばれて、クナイを弄んでいたザーフラクの手がピタリと止まる。  
「何者だ?」  
 クナイから剣の柄に手を移し、ゆっくりと立ち上がったザーフラクに、商人は意味ありげな微笑みをもって応えた。  
「ユーセ商会のエツマルと申します。そうそう、そのクナイはご挨拶替わりに進呈いたしましょう。今後も何らかの形でザーフラク様のお役に立てれば、これ程嬉しいことはありません」  
 エツマルと名乗る若い商人は恭しく頭を下げた。  
「どういうことだ?」  
 猜疑心のこもった目で、ザーフラクはエツマルを見下ろした。  
「私共はユーセ商会を、大陸一の豪商にするという夢を持っております。いわば、そのための先行投資とご理解下さいませ」  
 エツマルは夢と称する生臭い野望を淡々と語った。  
 この分では、ユーセ商会とやらはミュラの正体についても既に把握しており、あわよくば王家の御用商人の口にでもありつこうと考えているのであろう。  
「フン。それこそ捕らぬタヌキの何とやらだ。まだクリアスタ王家が復興するとは決まった訳じゃない」  
 ようやく剣から手を放したザーフラクは、小馬鹿にしたように鼻先で笑った。  
「いえ。私が運命共同体として選んだのはミュラ様ではなく、あなた様の方で」  
 エツマルは顔から微笑みを絶やさない。  
「今、ロギオンではあなた様の公正で勇敢な行動を褒め称える噂で持ちきりですよ。あなた様とロギオンとの連絡も、私共の情報網が責任を持って承りましょう」  
 エツマルはザーフラクが傭兵として戦旅に出た、本当の目的を掴んでいることをほのめかし、そのうえで協力を申し出ているのだった。  
「どうも胡散臭い。油断ならぬ奴だな」  
 不愉快そうに目を細めたザーフラクだったが、ユーセ商会が大陸全土に張り巡らせたという独自の情報網については、その価値を認めざるを得なかった。  
 
「新興と名の付くものは、商売でも武力集団でも、最初は胡散臭いもんですよ」  
 エツマルはしゃあしゃあと言ってのけた。  
                                 ※  
 一方、仲間から離れて自由の身となった大蛇丸は、不如帰に帰国を促すため、町中を駆け回ってその姿を捜し求めていた。  
 自分の命をつけ狙う敵とはいえ、同郷の、年端もいかない少女を斬るわけにもいかない。  
 また忍びの修行を積んでいるとはいうものの、中身は山育ちの純朴な小娘を、欲望渦巻く都市に留めておいて、ロクなことにならないのは明らかである。  
「よく考えりゃ、なんで俺がこんな苦労をしなけりゃならないんだ」  
 大蛇丸が2時間余りも駆け回らされたことへの不平を漏らしながら、郊外の墓地まで来た時であった。  
「イヤァァァーッ」  
 絹を裂くような若い女性の悲鳴が、大蛇丸の耳に飛び込んできた。  
 大蛇丸が声のした方に駆けつけると、乗合馬車の御者2人組が、客車から若い金髪娘を引きずり下ろそうとしているところであった。  
「なんだよ、雲助か。どの国にでも、似たような連中がいるもんだな」  
 雲助とは、客が若い娘と見るや、人気のない場所に拉致して、むりやり手込めにするというムロマチの悪徳駕籠かきの蔑称である。  
 悪徳御者たちは娘を茂みの中に押し倒すと、ドレスのスカートを引き裂いてパンティを荒々しく引きずり下ろす。  
「いやっ、いやぁっ」  
 無人の墓地に、娘の悲鳴が虚しく響き渡る。  
 放っておくわけにもいかず、悪徳御者たちの後ろに回り込んだ大蛇丸は『昇陽』を峰打ちで二閃させた。  
 娘の股を開かせるのに夢中になっていた男たちは、殴られたことにも気付かず、にやけた顔のままで昏倒した。  
「馬車を選ぶ時には、もうちょっと気を付けなきゃな」  
 大蛇丸は娘に手を差しのべて助け起こす。  
 
「私は隣町に移住した避難民なのですが、日用品を取りに生家へ戻るところだったのです」  
 無惨に破かれたスカートを気にして、娘はうつむいたまま礼を言った。  
「うちにいらして下さい。是非ともお礼がしたいのです」  
                                 ※  
 それから間もなくのこと、村はずれの一軒家に案内された大蛇丸は、離れ座敷でくつろいでいた。  
 ほどなく、先程の娘が酒肴の準備をして離れを訪れた。  
 今度はドレスとはうって変わり、思い切った軽装である。  
「先程は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。今日はゆっくりしていって下さい」  
 娘は恥ずかしいのか、表情を見せないようにうつむいていた。  
「もう、止めようぜ。ガキの演劇ごっこに付き合うのは、こっちが照れ臭ぇや。金髪も似合っていねぇし……胸パットの大きさも、ちょいと厚かましすぎやしねぇか?」  
 大蛇丸がウンザリしたように首を振る。  
 一瞬の沈黙の後、いきなり煙玉が炸裂し、部屋中に白煙が立ち込めた。  
 慌てず騒がず、大蛇丸はテーブルを横倒しにすると、身を隠して盾とする。  
 煙の中から飛んできた無数の手裏剣が、テーブルに次々と突き刺さった。  
「いい加減で止めねぇか。つまらないことしてないで、国へ帰ったらどうだ」  
 煙が薄れると、そこに立っていたのは、忍び装束に身を固めた不如帰であった。  
 手には火縄式の短筒を持ち、大蛇丸の心臓に狙いを付けている。  
「フンッ、あたしを抱けると思ってついてきたくせに。見境のない犬畜生にお説教される謂われはないよっ」  
 不如帰は憎々しげに眉を逆立てる。  
「最初から気付いていたさ。俺は犬畜生だから、一度嗅いだアソコの臭いは忘れねぇんだ」  
 大蛇丸の卑猥な台詞に、ウブな不如帰は思わず自分の股間に手をやってしまう。  
 その隙を逃さず、一気に飛び掛かった大蛇丸は不如帰の手から短筒を叩き落とし、床に組み敷いた。  
 
「ちくしょおっ。殺せっ、殺せぇっ」  
 不如帰は悔し泣きしながら、大蛇丸の腕の中でジタバタ藻掻く。  
「むやみに死にたがるんじゃねぇ」  
 大蛇丸は不如帰の襟元から手を入れると、服の中をまさぐり始めた。  
「やだっ、やだよぉぉぉっ」  
 犯されると思った不如帰は、涙を流して泣き叫ぶ。  
 しかし、大蛇丸は着衣の中から隠し武器を奪い取ると、あっさり不如帰の体を解放した。  
「もう俺のことなんか忘れて、国へ帰れ」  
 そう言って立ち上がった大蛇丸の鼻が、物が焦げるような臭いを嗅ぎつけた。  
 大蛇丸が慌ててドアを開けると、部屋の外はすっかり炎に包まれていた。  
「おいっ、自分の逃げ道くらい確保してから火を付けたんだろうな?」  
 それには応えず、不如帰は無言であった。  
「まったく。考えも無しに行動するなよな」  
 大蛇丸は刀の柄で不如帰のみぞおちを突き、意識を奪う。  
 そして毛皮の敷物で不如帰の体を包むと、燃えさかる炎の中に飛び込んでいった。  
                                 ※  
 数時間後、毛皮に包まれた不如帰が目を覚ますと、既に民家は焼け落ち、消し炭の集まりになっていた。  
 勿論、大蛇丸の姿はなく、「国ヘ帰レ」とムロマチ文字で書かれた置き手紙だけが残されていた。  
「畜生、畜生、畜生ぉぉぉ〜っ」  
 天空の太陽を仰ぎ見て、罵り声をあげる不如帰。  
 固く閉じた両目から、悔し涙がとめどなく溢れた。  
 

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