反攻軍司令部の置かれたケイハーム城は、この地に同名の王国が興った魔導世紀845年に築城された古城である。  
 城の各所は老朽化が進み、度重なる補修が施されているものの、戦術上の主城としての役目は既に終え、今ではケイハーム王家のシンボルとしての色合いが濃い。  
 それでも城壁の重厚さや各所に施された装飾は、建国当時の王家の威容を忍ばせるのに充分である。  
 一見過剰とも思える防備の厚さは、深層心理下で常に騎兵トゥイングーの再東征を恐れているこの国の歴代王の意識を雄弁に物語っていた。  
「将軍様はおいででしょうか?」  
 跳ね橋まで来たミュラが門番に問い掛けた。  
「なんだお前は。馬に乗ったままで無礼であろう」  
 相手を只の小娘と見誤った兵士が、ぞんざいな口調で答えた瞬間、ハマオウは馬を飛び降りていた。  
「ハマオウッ」  
 ミュラが止める暇もなく、ハマオウの鉄拳を食らった兵士は、深い堀に転落して水柱をあげた。  
                                 ※  
「この城にいる間中、二度と暴力を振るわぬと、私に誓って下さい」  
 大騒ぎの後、ようやく城内に通されたミュラが悲しそうな瞳をハマオウに向けて言った。  
「しかし、あいつが……」  
 下には冷たく、上には媚びる兵士の無節操さが、若く潔癖なハマオウには許せなかった。  
「心遣いには感謝します。しかし物事を全て力で解決しようという考え方は、私は好きではありません」  
 涙を湛えた碧い瞳が、尚も開こうとしたハマオウの口を封じた。  
                                 ※  
 控えの間にハマオウを残し、ミュラは単身で謁見の間へと向かった。  
「おお、ミュラ殿。今日は一段とお美しい」  
 老将軍はガマガエルそっくりの顔を歪めて笑った。  
「そうそう、紹介しておかねば。こちらにおわすが、反攻軍の司令官に選ばれたジェノバ王子にあらせられます」  
 
 将軍は上座に座っている青い髪の若者をミュラに引き合わす。  
「では、ケイハーム王国の……」  
「次期国王陛下ですじゃ。魔王軍覆滅のため、主力部隊を率いて頂くことになりました」  
 この人事が、王子に箔を付けさせたい国王と、その国王に取り入り私腹を肥やそうとする同盟軍司令部の、それぞれの思惑が合致した結果であることは容易に推察された。  
「ジェノバ王子。こちらは今は亡きクリアスタ王家の元王女でミュラ殿です」  
 将軍は意地悪くミュラの地位を貶め、現在の彼女が平民同然であることを強調するように言った。  
「ミュラと申します。この度、先行遊撃隊の指揮を執らせて頂くことになりました」  
 恭しく頭を下げ、挨拶の口上を述べるミュラの姿は、ジェノバの心臓を鷲掴みにした。  
 金と権力と欲望の渦中にいる次期国王にとって、可憐で儚げな彼女の姿は新鮮に映った。  
「無粋な服装のままで失礼する」  
 急拵えと思われる純白の軍服は、お世辞にもジェノバに似合っているとは言えなかった。  
「兵の調練でもなさっていたのでしょうか」  
「朝から海岸のゴミを拾わせていた。訓練で怪我人を出したくないから」  
 明日になれば、波が全てを元に戻してしまうのに、と思いつつミュラは頷く。  
「お優しいのですね。殿下は」  
「いや……」  
 絶世の美少女に感心された王子は、頬を赤く染めて俯いた。  
「時にミュラ殿。一騎当千の兵、30名は揃いましたかな」  
 2人がいい雰囲気になりかけるのを邪魔するように、将軍が間に割り込んだ。  
「副官ミリオン、参謀マーロンの他、昨日5名の仲間を新たに迎え入れました」  
 ほう、と感心するように頷く将軍。  
「一個小隊30名の帯同を許されながら、たったの7名で我慢されるとは。流石はミュラ殿、我が軍の台所事情の苦しさをよぉ〜く解ってらっしゃる」  
 目を瞑った将軍は、頻りに頷いて感心してみせる。  
「いえ……私はこの先も……」  
「妃を娶るのであれば、この様に控え目なお方をお迎えしたいものですな。よく見れば、なかなかお似合いの2人ではありませんか。クリアスタ王家復興のあかつきには媒酌人の労は惜しみませんぞ」  
 ミュラにこれ以上の戦力増強を許したくない将軍は、巧みに話を逸らせる。  
 
 戦後の利権を見越し「ジェノバの妃に自分の孫娘を」と考えていることなど、老獪な将軍はおくびにも出さない。  
 結局30名予定していた兵力を、7名にまで削減することを余儀なくされたミュラは、多忙を理由に謁見の間から退出させられてしまった。  
「これより先、仲間を増やすためには私財を切り売りしなくては」  
 自分に残された財力の乏しさを考えると、ミュラはつい涙ぐんでしまう。  
「ミュラ様ではございませんか」  
 ドアの外で謁見の順番待ちをしていたのは、ユーセ商会のエツマルであった。  
「国の再興を夢見る、健気な姫様のお噂は私共にも……。如何でしょう。王家再興の折りには、シルヴェスタにおける穀物の扱いは私共に。是非前向きにご検討下さいませ」  
                                 ※  
「朝っぱらから起こされて、海岸掃除だとよ。俺らはボランティアじゃねぇってんだ」  
「ピントがずれてるんですよ。あの若……いや、バカ様は」  
 小間使いの詰所で、隠れて酒を煽っているのは、ジェノバ付きの武将、ナックルやズガーなどの不満分子であった。  
「バカ様が国政を仕切るようになったら、この国も終わりだな」  
「今の内に次の奉公先を探しておきますか」  
 彼らは無能な次期国王に早くも見切りを付けていた。  
 ジェノバが彼らを信頼していないのと同様、彼らもジェノバになんの期待もしていない。  
 やがて来る国家滅亡の日まで、楽しく酒を飲んで過ごせればいいという刹那的な快楽主義が城内に蔓延していた。  
 物憂げな顔をしたミュラが、小間使いの詰所の側を通り掛かったのはその時である。  
「よぉっ、ネエチャン。寄ってかないか」  
 ミュラを新入りの小間使いと見間違ったナックルが口笛で囃し立てる。  
 考え事をしていたミュラは、それに気付かず詰所を通り過ぎようとした。  
「お高くとまりやがって。こっち来て酌でもしろってんだ」  
 ナックルはミュラに飛び掛かると、拳法の技で手首をねじり上げて詰所の中へと押し込んだ。  
「何をなさるのです。無礼は許しませんよ」  
 ナックルたちは、その時になって初めてミュラの額に輝くティアラと、一見質素に見えるドレスが最上級のシルクで作られていることに気付いた。  
 一瞬怯んだナックルだったが、剥き出しになった白い太腿が、僅かに残っていた理性を吹き飛ばした。  
 
「どこの姫さんか知らんが、こちとら遅かれ早かれ失職する身分よ。構う事ねえから犯っちまえ」  
 不満分子たちはミュラを薄汚いカーペットの上に押さえ付け、数人掛かりでパンティを引きずり下ろす。  
「お止めなさいっ。不埒者っ」  
 大声を出そうとしたミュラの口にボロ布がねじ込まれ、その上から自身のパンティで猿轡をされてしまう。  
「自分のニオイはどんなもんだ」  
 クククと笑ったナックルは部下に命じて、ミュラの両足を左右に大きく開かせる。  
 手慣れた連携は、彼らのレイプが初犯でないことを窺わせた。  
「姫様、ご覧あそばせ。今の自分の姿を」  
 ズガーが着替え用の姿見を移動させ、ミュラの正面に持ってくる。  
「うぅっ……」  
 荒くれ男たちの手で大股開きさせられた、惨めな自分の姿を鏡の中に見たミュラは思わず目を背けた。  
 ズボンの前を開けたナックルが、勃起した分身を引っ張り出してミュラに見せつける。  
「どうだい、俺様自慢の逸物は。姫さんは父上以外の男のモノを見るのは初めてかな」  
 太い血管が浮き出た肉棒は危険な臭いを放っているのに、ミュラは食い入るような視線を逸らせられない。  
「今からこれをお前に突っ込んで、腹ン中を思いっきり掻き回してやるからな」  
 ナックルはミュラの秘密の花園を、指先でいたぶりながら卑猥な言葉を投げかける。  
「うひゃあ。結構いい乳してるぜ」  
 ミュラの両腕を押さえつけている手下たちは、左右から片手を伸ばし、それぞれ豊満な乳房を弄ぶ。  
「うぅっ。ダッ、ダメ……そんなっ」  
 幾つもの手で敏感な部分を刺激され、むりやりに快感を呼び起こされたミュラが、猿轡の隙間から呻き声を漏らす。  
「なんだぁ、もう湿ってきやがったぞ。ずいぶん水っぽい姫さんだな」  
 ミュラが意外に敏感な反応を示すことに不審を抱きながらも、ナックルは片膝を立てて戦闘準備を整える。  
「初物じゃなくても構わんさ。淫乱姫でも、こちとら出せりゃいいんだ」  
 
 ミュラが観念したように、目を瞑って天を仰ぐ。  
「それじゃ、頂くぜっ」  
 ナックルがはち切れんばかりになった分身を、ミュラの秘め所にあてがった時であった。  
「ミュラ王女っ」  
 すんでのところでミュラの窮地を救ったのは、余りに遅い彼女の帰りを心配したハマオウであった。  
「貴様らっ、王女に何を」  
「お前ンとこの姫様かい。そこで急にお倒れになったから、介抱してたんだよ」  
 ハマオウの詰問をはぐらかすようにナックルが答える。  
「なぁ、そうだよな」  
 ナックルの咄嗟の嘘に、手下は下卑た笑いで応じる。  
「王女様がレイプされ掛かったなんて噂でも流れた日には、縁談など二度と来やしないでしょうしね」  
 ズガーも調子を合わせ、事態を収拾に導こうとする。  
「ミュラ王女?」  
 真意を測りかねてハマオウがミュラに視線を移す。  
 そのミュラは体の自由を取り戻すと同時に、その場から逃げるように駆け出した。  
「あんなに元気になったのなら、目出度いこった」  
 その姿を馬鹿笑いで見送るナックルたち。  
「貴様らやっぱり……幾ら王女の命令でも捨ててはおけん」  
 握り拳を固めたハマオウが小悪党どもを真正面から睨み据えた。  
「へぇっ、俺とやるってのかい。丁度いい。ここんとこゴミ拾いばっかやらされて、退屈していたところだ」  
 ナックルは拳を固めると、両肘を左右に開いたアップライトスタイルに構える。  
 対するハマオウは、拳を両腰に当てて、深く腰を落とした構えをとる。  
「ほう、ラコルム武術か。どの程度使うか知らんが、飼い慣らされた番犬など怖かねぇ」  
「なにっ。俺は……」  
「違うってのか。お姫様の命令には絶対服従の忠犬なんだろ」  
 ハマオウの脳裏に、ミュラの悲しそうな瞳と、城内での揉め事を戒める声が蘇る。  
 ナックルは一瞬たじろぎを見せたハマオウの心の動揺を見逃さない。  
 
「ここで問題を起こすと、困るのはそっちの姫さんだぜ」  
 主の命令を遵守すべきか、その主の名誉を守るために戦うか、心の葛藤に苦しむハマオウ。  
「えぇ〜い。知らんっ」  
 ハマオウは雑念を振り払うように首を激しく揺すると、前後五分五分に保った重心を一瞬後ろにずらす。  
 そして右足の蹴りを使い、前方のナックルへ向かって飛び出した。  
 鈍い音が響いた次の瞬間、固い石畳の上に崩れていたのはハマオウの方であった。  
 躊躇しながらの中途半端な突進は、狙いすましたカウンターの格好の餌食になったのだ。  
「そんな腕前じゃ、大事な姫さんを食われちまうぜ」  
 不良兵士たちは、倒れたハマオウに滅多打ちを加えると、捨て台詞を残してその場を立ち去っていった。  
「くっそぉ〜」  
 最後の最後でミュラとの約束を守ったハマオウは、唇の端にうっすらと血を滲ませて立ち上がった。  
「宗旨に添わない手合わせは、今回限りにして貰いますよ。ミュラ王女……王女?」  
 ハマオウはその時になって初めてミュラの姿が通路から消えていることに気付いた。  
「王女っ、ミュラ王女っ」  
 ハマオウの叫び声が石畳に反響した。  
                                 ※  
 西国育ちで敬虔なコリーア教徒のジェイクにとって、ケイハーム城下に広がる市場の雑踏は新鮮な驚きに満ちていた。  
 コリーア教圏内にありながら、天唱教の影響をも色濃く反映したケイハームの町並は、独特のエキゾチックな雰囲気を醸し出している。  
「ラクサンの実があんなに安い。きっとサンライオから近いからだな」  
 サンライオ特産の果実であるラクサンは非常に美味であり、乾燥させると保存がきくので携帯食料に打って付けである。  
 槍一筋の騎士であるジェイクには、支度といっても特に必要な物もないので、ブラブラと露店を見物して時間を潰すしかない。  
 そのジェイクの目が、一軒の露店にしゃがみ込んで小物を物色しているキャメロンの姿を捉えた。  
 
 何やら手に取っては、優しげに細めた目で見つめている横顔は妙に艶めかしく、その気のないジェイクも思わず息を飲んで見とれてしまう。  
 その視線を察したのか、振り返ったキャメロンがジェイクの姿を認めて会釈してきた。  
「やっ、やあ。武器選びかい?」  
 ジェイクは気弱そうな微笑みを浮かべてその場を取り繕うとした。  
「弟への土産物を探していたのですよ」  
 キャメロンはジェイクの問い掛けに、にっこり微笑んで答えた。  
「えっ?アンタにも弟がいるのかい」  
 思わぬ共通点を見つけた2人は、近くのオープンカフェに場所を移して親交を深めることにした。  
「いやあ、チームにアンタがいてくれて良かったよ。俺って内向的なところがあるし、他の連中は普通じゃないだろ。特にあのザーフラクって奴は、かなりヤバいぜ」  
 同じ西国出身と言うこともあってか、ジェイクはすっかりキャメロンに気を許してお喋りを続ける。  
「あの拳法使いの兄ちゃんも結構気が短そうだし、大蛇丸ってのにしたって、バカやってる時でも眼だけは笑ってないぜ。アンタも見たろ、あいつがストーンカ人に喧嘩を売るところ。正直、俺はこの先不安だよ」  
「まだお互いの手の内は良く知らないのですから。意外に相手もあなたのことを気味悪がっているかも知れませんよ」  
 キャメロンは被害妄想的な心情を吐露するジェイクにやんわりと釘を刺す。  
「それに、チームで一番の使い手が、実はあなただってことも有り得る話ですしね」  
 上手く乗せられたジェイクは、照れ笑いを見せながら頭を掻く。  
「ほらっ、噂をすれば……」  
 丁度その時、ハマオウがカフェの近くを通り掛かった。  
 そのハマオウの顔は険しく、キャメロンは何か切羽詰まったものを感じる。  
「お役目はもう終わったのですか?」  
 キャメロンに呼び掛けられ、2人に気付いたハマオウは立ち止まる。  
 2人を交互に見つめるハマオウの目に、みるみる熱いものが込み上げてきた。  
 
                                 ※  
 ゴトンゴトンという規則的な物音と川のせせらぎに、ミュラは意識を取り戻した。  
「うぅん……ここは?」  
 あわやレイプ寸前のところをハマオウに救われ、その場を逃げ出したミュラであったが、その後のことがよく思い出せない。  
 急に周囲が真っ暗になったと思ったら、甘酸っぱい匂いに包まれ……気付いたらこの狭く薄暗い部屋で寝ていたのである。  
「はっ、私は薬を嗅がされて拉致されたんだわ」  
 頭痛の残る頭で、ようやく現状を把握したミュラは立ち上がろうと試みた。  
「痛ぁっ」  
 ミュラはその時になって初めて自分が鎖で縛られ、床に固定されていることに気付いた。  
「こっ、こんな……うぅっ」  
 俯せに寝転がったミュラの両腕は背中で一纏めに縛られており、両足は限界ギリギリまで大きく開脚させられ、足首の枷から伸びた鎖が左右の壁に固定されていた。  
 ミュラは痺れるような苦痛に耐えながら、幼い頃にバレエで学んだ柔軟体操の姿勢を思い起こす。  
「くぅぅっ……誰が……こんなことを」  
 残酷にもミュラの着ているドレスの裾は捲り上げられ、パンティを奪われたままの尻は隠しようもなく晒されていた。  
 内腿に浮き出た太い筋が時折ピクンと痙攣し、それに合わせるようにヒップがプルルンと震える。  
「お目覚めですかな、ミュラ殿」  
 視界の外からいきなり声を掛けられ、ミュラは心臓が止まりそうになるほど驚いた。  
 ミュラは振り返った肩越しに、破廉恥な誘拐犯人の姿を見上げる。  
 そこに立っていたのは、顔と体を覆う奇怪なマスクを身に着けた化け物であった。  
「誰っ、誰なのですっ」  
 ミュラは失神しそうになるのを我慢して、厳しい口調で誰何した。  
「我が名はガンマッハ。お見知り置きを」  
 恭しく一礼をするガンマッハ。  
「どうしてこんなことを……うぅっ」  
 無理に身をよじったミュラの全身に激痛が走る。  
 
「魔族のために人間を滅ぼすことが我が使命。今さら貴女に王家を復興されては迷惑なのですよ」  
 ガンマッハはミュラの抱いている大望をせせら笑うように言った。  
「それに貴女の体に流れている高貴な血は、魔力を高める儀式にはもってこいなのです。貴女の身柄は、間もなくここを訪れる魔族の男爵様に引き渡してあげましょう」  
 ミュラは未だ見ぬ男爵とやらの姿を脳裏に描いて身震いした。  
「あなたは人間なのでしょう。どうして魔族の味方などするのです」  
 その問い掛けにガンマッハの口調が一変した。  
「人間だぁ? その人間が俺の家族に何をしたっ。好きで魔族の肩を持っているんじゃねぇ。人間に復讐するため、奴等の魔力を借りているだけよ。小娘が聞いた風なことをほざくな」  
 我を忘れ、つい地を出してしまった事に気付き、ガンマッハは一礼して非礼を詫びる。  
「私を解放するのなら今の内です。直ぐに仲間が助けにやってきて、あなたを魔族と共に滅ぼすでしょう」  
 ミュラの精一杯の脅し文句に、ガンマッハは馬鹿笑いで応えた。  
「腰抜けの番犬でしたら、無抵抗のまま不良兵士に殴り倒され、ほうほうの体で城外に逃げ去りましたわい」  
 それを聞いたミュラの表情が凍り付く。  
「あぁ……ハマオウは私の言いつけを守って……」  
 城内での暴力沙汰を禁じた自分の命令を、ハマオウが頑なに守り通したことはミュラにも容易に想像出来た。  
 
「ミュラ殿。他人のことより、ご自分の心配をしては如何です」  
 ガンマッハの小馬鹿にしたような笑い声が上から降ってくる。  
「私は仲間を信じています。それに、昔より悪の栄えたためしはありません」  
 ミュラの視線に真っ直ぐに射抜かれて、ガンマッハは一瞬たじろぎを見せる。  
「ふんっ。そんな台詞、尻を丸出しにした姿で言われても説得力は無いですぞ。そろそろ男爵様をお迎えに行かなくては。その間、ミュラ殿に寂しい思いをさせては申し訳ない」  
 ミュラは背後の物音を気にして首をよじるが、ガンマッハが何をしているのか見えない。  
「しばらくの間、これで楽しんでいてくだされ。お気に召されるとは思いますが、おかしくなってしまわれぬよう」  
 ミュラが恨めしそうな目でガンマッハを見送った直後、最初の一撃が彼女を襲った。  
 ネットリと濡れた軟体質の何かが、ミュラの股間を撫で上げたのである。  
「ひぁぁぁっ?」  
 背筋を一気に走り抜けた快感に、ミュラは思わず悲鳴を上げて背中を仰け反らせた。  
「なっ……なにっ?ふわぁぁぁっ」  
 振り返ろうとしたミュラの股間に二回目の攻撃が襲い掛かった。  
 ガンマッハの置き土産は、室外の水車に連動して回り続ける巨大な輪であった。  
 輪の表面には舌を象ったゼラチン質のヘラが幾枚も植え付けられており、輪が回る度にそれがミュラの大切な部分を舐め上げるのである。  
「こっ、このままでは……変になって……ひぁぁぁっ」  
 敏感な肉芽を撫で上げられたミュラが、一際高い悲鳴を上げて仰け反った。  
「なぜ……この様な狼藉を……はぅぅっ」  
 ミュラの脳裏にガンマッハの哄笑が蘇る。  
 何故かその声が自分の記憶を刺激することに、ミュラは疑問を感じた。  
 

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