魔導世紀999年   
1月    
フリージィ 陥落 マリマー騎士団 全滅 君主マリマー 処刑  
 
2月    
エイクス  陥落 解放軍ドゥム 全滅 君主トゥエンティー 自決  
 
4月    
オーグル 陥落 牙兵ドラコニアン 全滅 君主アルトファ 自決    
 
5月   
シリニーグ 陥落 神聖皇国軍 全滅 君主グリーザ 処刑   
 
マリアンルージュ無条件降伏勧告を受託する。   
君主ピンキー以下参謀2名は処刑  
 
無名兵団の規律、整備をアルが実地。  
   
フェリアス 陥落 旅団フェリアス 全滅 君主トリック・ブルー、幹部1名と共に自決  
     
7月  
ヘルンハンプール内部紛争により、ヴァングル盗賊団解散。君主行方不明  
 
ガッツォ 陥落 旧帝国ストーンカ軍 全滅 君主コリンコリン 処刑  
 
11月  
シルヴェスタ 陥落 クリアスタ王国軍 全滅 君主 グレイ 処刑  
 
対ハネーシャ艦隊軍の戦線構築、君主ウェイブにより停戦協定が結ばれる。  
 
そして、次なる目標は『ツェンバー』。  
 
『刻ノ終ワリニ潰サレルマデハU』  
 
「現在、ツェンバーの包囲は完了し、補給路を断ちました。」  
「……敵の数は」  
「はい、君主メイミー以下の暗黒不死団はおよそ二千。我が軍は3万5千です…ただ…」  
「………何だ」  
「暗黒不死団の一部が港湾にて不穏な動きが有ります。斥候の報告によりますと海路からの脱出を  
謀っているようです。」  
「……そうか、下がれ」  
「……はい、失礼します。」  
ここ一年を待たずして大陸南西部を掌握しつつある無名兵団。  
その大半はウェイブの力によるものである。  
戦闘は1時間とかからず、ウェイブによって敵軍はほぼ消滅する。  
残るのは兵団の兵士による敗残兵の掃討と民への虐殺と蹂躙。  
無名兵団には規律はほとんどなく、大儀もない。  
ウェイブが無関心なのだ。  
軍勢が集まろうが集まらなかろうが関係なく、敵国を攻め、そして確実に滅ぼす。  
蹂躙しつくされた国の民は奴隷商によって売買され、無名兵団の資金源となる。  
税収などなくとも国庫には各地の通貨が溢れ、徴兵など行わなくとも無法と化している兵団に我を我もと志願する者が後を絶たない。  
あまりに見かねたアルが兵団の規律、整備、指揮系統の確立を行ってから幾分、マシにはなったが。  
 
それ以前に滅亡に追いやられた国……その中でも特にマリアンルージュ戦は最悪だった。  
国民の大半が若い女性であった為、所構わず強姦、陵辱の嵐であったのだ。  
「…………」  
戦に敗れた者の末路は『死』そして『陵辱』の二つしか選択肢はないのかもしれない。  
が、アルがマリアンルージュ戦で目を覆いたくなったのは、その嵐のような蹂躙の中にウェイブの姿もあったという事だった。  
君主のピンキーを屈服させ、死ぬ寸前まで犯し抜いたという事実。  
アルは将校用のテントに帰ると、報告書の束を机の上に置き、簡易ベッドに腰を掛けた。  
「……嫉妬……しているのかな……私……」  
ウェイブの前で報告している最中、密かに濡れていた秘所。うずく乳房に勃起した乳首。ゾクゾクしていた腰に尻。  
この報告が終われば……終われば……また犯される…いや、犯してくれる。  
そんな期待が心のどこかにあったのかもしれない。  
「……最低だ……どうかしているわ、こ、こんな淫らな……想像………ん…」  
スカートの上から軽く秘所に触れるアル。  
「は……ウ、ウェイブ…さ……ま」  
「失礼します。アル様。」  
従卒の少年兵の声がテントの外から聞こえた。  
「は、はい。な……ど、どうかしましたか?」  
自慰の声を聞かれたか?とアルは一瞬、どもってしまった。  
「はい、ウェイブ様より明日のツェンバー攻略戦についての軍議の為、出頭せよとの命令が。」  
「は−−−はい、わかりました。ありがとう、今夜はもう構いません、休んで下さい。」  
「はい、ありがとうございます。では、失礼します。」  
去っていく足音。  
アルはホッと胸を撫で下ろした。  
ウェイブからの出頭命令……それはイコール『犯す』という事であった。  
これで今夜も抱いてもらえる……とどこかで安心している自分がいる。  
「…………」  
アルはそんな自分に絶望し、深くうなだれた。  
 
「……メイミー様」  
「はい、今、我が国がおかれている状況は絶望的です。戦力差は−−−言うまでもないでしょう。」  
クラウス、ドファン以下の将校達の前でメイミーは天守から見える無名兵団の野営地を眺めた。  
「同盟国であったクリアスタ王国軍が滅亡した今、我々の残す道はありません。全国民は艦船へ乗船させ、国外へ  
脱出してもらいます」  
メイミーが将校を見回し、決断した。  
「し、しかし脱出と言っても…一体どこへ?近隣諸国は既に−−−」  
将校の一人が言った。  
「海路を通り、ネウガードの魔王軍に投降してもらいます。その役目はドファン殿、クラウス…お願いします。」  
「君主の命とあらば……我が身にかえましても」  
とこれはドファン。  
「……それならばメイミー様は脱出を。私が殿を務めます」  
クラウスが言った。  
「バイアードの…バンパイアの誇りを全うするのは私だけで充分です。」  
「し、しかし!」  
「これは命令です。」  
「お、お父上の……バイアード様の元へ」  
「あの人は私の父などではありません。」  
「メイミー!」  
「『国外へ脱出の後、魔王軍への投降』、これを暗黒不死団長としての最終命令とします。クラウス、ドファン殿…皆、今まで……ありがとう」  
 
 
暗黒不死団の拠点、ツェンバーに無名兵団の軍旗が翻ったのはそれから数時間後の事であった。  
各地の砦、そして君主メイミーの居城に至るまでさしたる抵抗はなく、無傷でツェンバーを手にしたウェイブ。  
そしてここはその城の王の間、捕虜となったメイミーの処遇がウェイブ、軍師アルの前で行われていた。  
 
 
「……己の身を国民の為に犠牲にするとは……見上げた心意気だな。」  
「私は敗軍の将。どのようになさっても結構です……ですが民だけは…」  
メイミーは消え入る様な声でウェイブに言った。  
その神妙な態度にアルは口をつぐんだ。  
これがあの高貴なバンパイアの最期なのか…国民の為に己の命さえ差し出すのか…あまりに哀れでならない……。  
「ウェイブ様…メイミー殿の言う通りであれば、魔王軍はツェンバーの民を受け入れます。その為、負担も増えるでしょう。  
追撃を出せば我が軍にも被害が出ます……ここはどうか追撃をなさらない方が−−−−」  
「…………うむ…」  
ウェイブのその一言にメイミーはうなだれた頭の中で己の策に敵将が落ちた事を確信した。  
高貴なバイアードの一族が人間風情に頭を下げ、哀願をすれば誰であろうとなびくはずだ。  
拠点を手に入れる為の過程で自軍の被害は皆無。その上、君主自身がバンパイアの女を思う存分堪能できるのだ。  
欲深い人間族にとってこれほどの好条件はないだろう。  
マリアンルージュではピンキーを死ぬまで陵辱したとの情報があった事から、  
目的は魔力を持つ女性との性交。  
いわゆる『強制進化』である可能性が高い。  
もっとも、メイミーは己の身体を差し出す前に舌を噛み切るつもりでいたが……。  
「……そのようだな」  
メイミーは勝利を確信した。  
「……ウェイブ様……」  
これにはアルも驚いた。己の進言にウェイブが耳を貸すなど今までではあり得なかった事だ。  
着実に『人』としての『心』を取り戻しつつあるのではないか…とアルは胸が高鳴った。  
「あ、ありがとうございます…このメイミー、ウェイブ殿の寛大な御慈悲に感謝します。」  
「我が軍が手を出すのはやめよう………アル、お前の従卒を呼べ」  
ウェイブは玉座に腰を降ろし、低い声で言った。  
「は…?……恐れながら…」  
「あの年少の従卒兵を呼べ」  
「……は…はい…早急に」  
胸の高鳴りは消え、代わりに胸を覆ったのは強烈な違和感。  
アルは微かに震える声で従卒を呼んだ。  
 
「……ウェイブ様、従卒の−−−−」  
「小僧…名は?」  
アルの声を遮り、ウェイブはその年少兵の胸を射抜くような視線で問う。  
「は…はい…ア、アラン…でご…ございます」  
見れば15にも満たない子供であった。農家の口減らしに兵隊に出されたのだろう。  
そばかすの残るあどけない顔だ。見方によっては女の子にも見える中性的な少年である。  
「……お前は童貞か?」  
「ウェイブ様!」  
アルはたまらず叫んだ。と同時に己の愚かさを呪った、ウェイブの心に『優しさ』など欠片も戻っていない。  
それどころか捕虜たるメイミーへの慈悲など−−−皆無だ。  
「は…へ…あ、あの…?」  
アランは予想だにしなかった質問にしどろもどろになった。  
「童貞か…と聞いている」  
「は、はい」  
アランは律儀にも再敬礼直立不動で答えた。  
「……その女を犯せ」  
ウェイブはアランに向かってこともなげに言ってのけた。  
「ウ、ウェイブ……」  
メイミーはウェイブを睨んだ。  
「宛てが外れたか…愚かなバンパイアの娘よ。貴様の脆弱な魔力など俺には必要ない。」  
「ウェイブ様!そ、それでは我が軍の捕虜に対する扱いの規律に触れます。そんな事をすればまた−−−−」  
「ほう……では、こうしよう」  
アルの言葉にウェイブはメイミーの髪を掴み、身体ごと引きずると机にうつ伏せになるように叩きつけた。  
元々、両腕を縛られていたメイミーは為す術もない。  
「猿轡を持て、両脚を机の脚に括りつけろ」  
ウェイブの命により、屈強な兵がメイミーの身体を拘束していく。  
「やめなさい、貴方達!これは命令ですよ!」  
アルは兵に向かって怒鳴った。  
「我が君主の命。軍師アル様には失礼ですがその命令は承諾できません」  
メイミーが頭を振り、身体を揺すった。ウェイブに己の策など初めから読まれていたのだ。  
−−−叶わない。己の力などこの怪物の足下にも及ばない−−−  
そう思うと涙が溢れてきた。  
遠い昔、まだ大陸が平穏だった頃、幼なじみの少女と駆けた野原。  
自分を守って腕を失った最愛の親友に助けを求めたかった。  
(……ヒロ)  
to be continued  
 

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