「んっ…ふぁっ…あはぁぁぁぁぁ…ん…」
深夜、学園都市ヴァラノワールの居住区にある一室に、快楽を貪る女の嬌声が悩ましげに響いていた。
灯りの消えた暗闇の中、止まらない喘ぎ声とクチュクチュと粘着質な音が、暗い部屋の中を満たしている。
「ああっ!!んっ…はぁぅっ…んぁっ…くぅぅぅぅぅん…」
女の嬌声は時の経過と共に艶っぽさを増していき、あわせる様に淫らな水音も次第に激しくなっていく。
そして悲鳴に近い嬌声が上がると同時に、薄闇の中に浮かぶ女のシルエットがビクビクと痙攣を繰り返した。
「はぁっ…はぁっ…よ、欲求不満だわ…」
絶頂の余韻が過ぎ去り気だるげに起き上がった女―メイヴは熱の篭った溜息を吐き出しボソッと陰鬱に呟いた。
今も収まらぬ胸のモヤモヤを持て余すメイヴだったが、そんな彼女を叱る様な響きの声が心の内に響き渡る。
『もうメイヴったら…最近少し多すぎよ…』
「はぁ…そりゃ姉さんの方はこないだ愉しんだばかりだしねぇ…」
うぅっ…と言葉を詰まらせる姉の気配に苦笑いしつつ、メイヴは何も身に纏わぬ姿のままムクリと立ち上がる。
全裸で歩き回る妹に苦言を漏らすシェキルの声を余所に、浴室へと入ったメイヴは汗に濡れた身体を洗い始めた。
「こないだもリューンエルバに虐めて貰ったんでしょ〜?良かったわねぇカミングアウトした相手が理解のある人で」
『あぅ〜…言わないで〜お姉ちゃんをあんまり虐めないで〜…』
台詞の内容とは裏腹に嬉しそうな響きを帯びた心の声に、メイヴは自らの身体を借りた姉の過去の痴態を思い返す。
絡み付いた縄で淫らな型に緊縛された肢体を、うっすらを興奮が入り混じった表情で弄り回すリューンエルバ。
彼女の手が動くたびに苦痛と快感が背筋を駆け抜け、己の唇は悦びに支配されたシェキルの嬌声が放たれ続ける。
「最初こそ引いてたけど後半なんてノリノリじゃなかった?…あの目は絶対に愉しんでたわアレ…」
最早ぐうの音も出なくなったシェキルの様子に、シャワーを終えたメイヴは水滴を拭いながらククク…と笑う。
そしてバスタオルを身体に巻くと彼女は部屋に戻って、ソファに身を沈めるとブツブツと何かを思案し始める。
「虐める愉しみを覚えたなら…虐められる事も…ふふっ…そうよ…こういう事はバランスが…」
ボソボソと口から漏れる呟きが剣呑な響きが混じり始めるにつれて、メイヴの表情は淫魔のそれへと変わっていく。
やがてゆらりと立ち上がった彼女は身に纏ったタオルを投げ捨て、ハァハァと息を荒げて衣装棚の前に立つ。
そしてドキドキと胸を高鳴らせつつ目の前の扉を押し開くと、愛用のボンテージと共に無数の淫具が姿を現した。
『ちょっ!?ちょっとメイヴ!?メイヴッッッッ!!!』
「大丈夫よ〜心配ないわ姉さん…ほんのお触り程度に虐めてあげるだけだからぁ〜」
ボンテージスーツを身に着けたメイヴは、いやらしい笑みを浮かべて一つ一つ淫具の手入れをし始める。
そんな妹の姿に半ばパニックに陥ったシェキルの声は、誰の耳にも届かぬまま虚しく響き続けるのだった。
『だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!浣腸とかは絶対だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?』
住人の誰もが寝静まりシンと静寂の満ちる廊下を、爛々と瞳を輝かせたメイヴが獣の様な息遣いで歩いている。
その肩に提げられた鞄には、熟考に熟考を重ねた淫具のコレクションが詰め込まれ、出番の時を待ち続けている。
間もなくしてリューンエルバの部屋の前に辿り着いた彼女は、扉の鍵を手馴れた様子で解錠し暗い室内へと侵入した。
『あぁ…ごめんなさい私は無力です…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…』
ブツブツと現実逃避に入ったシェキルの声が続く中、メイヴは僅かな物音を立てない様に寝室を目指して進んでいく。
そしてベッドから聞こえてくる寝息にニタリと唇を歪めると、鞄の中から緊縛用のロープの束を引っ張り出す。
次の瞬間、彼女の手がシーツを剥ぎ取ると同時に、宙を舞う無数のロープがベッドの上の獲物へと襲い掛かった。
「っっっっっ〜〜〜〜〜!?!?!?!?」
真っ暗な室内にも拘らずメイヴの操るロープの群れは、突然の事に混乱する対象の肢体を正確に縛り上げていく。
やがてピシッと張り詰められたロープの音を合図に、暴れていた人影は自由を奪われベッドの上に張り付けにされる。
自らの緊縛の技に満足しつつメイヴは逸る心のままにライトを灯すと、ベッドの上の人物を見てピタリと硬直した。
「あるぇ〜?(・3・)」
「これはどういうつもりか説明してもらえるか…メイヴ?」
次々と脳内に浮かんで消える疑問符に困惑の表情を浮かべ、やや子供っぽい仕草で小首を傾げるメイヴ。
そんな彼女へ亀甲縛りの型に緊縛されたヒロが、ベッドの上から恨みがましい視線を投げかけていた。
「えーとー…つかぬ事をお聞きしますが、リューンエルバさんはどちらにおいででショウカ?」
予想外の出来事に立ち直れず今だ片言になりながらも、メイヴは頭に浮かんだ疑問を率直なまでに口にする。
「リューンエルバならミュウの家にお泊りだとか言って来週まで帰ってこないぞ…ちなみに私は留守番を頼まれた」
「Oh…」
期待外れの結果にガックリと肩を落としたメイヴは、見るからに落胆の表情を浮かべて盛大な溜息を吐き出す。
その理不尽な様子に次第に怒りを覚えてきたヒロは、ビキビキと青筋を浮かべて地の底から響く様な声を口にした。
「理解したか?理解したなら早くこの縄を解いてくれ…な?」
憤怒を宿したヒロの言葉につられる様に、メイヴは改めて彼女の肢体とそれを縛り上げているローブに視線を落とす。
寝間着の代わりに羽織ったワイシャツは縛られた際に着崩れて、僅かに見える合間からは綺麗な肌を覗かせている。
同時にすらりと伸びた太股が見せる健康的な魅力を前に、メイヴの中では再びムラムラと性欲が湧き上がり始めた。
「ハァハァ…ハァハァ…ハァハァ…!!」
「お、おい…ちょっと待て…お前、何を考えて…オイィィィィィッ!?」
興奮に荒い呼吸を繰り返しながらベッドに這い上がったメイヴは、ヒロの胸を覆い隠すシャツをはだけさせていく。
シャツの布地がずらされるにつれて、ブラを付けていない生の乳房が布に押さえられて左右へと広がり始める。
そして布の端に引っかかる具合に止まった乳房は、次の瞬間プルンと跳ねる様にしてメイヴの眼前に姿を現した。
「うはぁ…これは何とも…」
仰向けになった体勢にも拘らず、ツンと上向いた形の良い美乳を見下ろし、メイヴは滾る劣情に表情を綻ばせる。
特にプックリと盛り上がった乳輪が、中央の突起を覆い隠している陥没乳首の先端は、何よりも彼女の目を愉しませていた。
「ううぅぅ〜…何をジロジロ見てる…んっ!?「いただきまふぅ♪」ひゃあぅぅっ!?」
ヒロの抗議も虚しく彼女の乳首を注視していたメイヴは、とうとう我慢できずにハムッと乳首へむしゃぶりついた。
柔らかい乳肉の感触を楽しむ様に、メイヴの舌は弧を描きながら乳輪に沿ってレロレロと執拗に舐め回し続ける。
その快感は柔肉に包まれた乳首を徐々に勃起させ、次第に乳輪の状態をチュ―の形へと押し上げていく。
「ひぅんっ!?ばか、やめ…やめろぉ…そんな舐めっ…やはぁんっ!?」
舐め回す乳首が変化していく感触に気分を良くしたメイヴは、盛り上がった乳輪のスリットにヌプッと舌を挿し込む。
そして舌先に感じる弾力を転がしながら、その肉粒を引っ張り出す様に口内全体を用いて力強く吸い上げ始める。
「んんっ!!や、やぁっ!!は、激しっ・・・激しすぎるぅ…んはぁっ!?」
「ハフッ!!ハフッ!!ハムッ!!ハムッ!!んっ…ちゅうぅぅぅぅぅぅ〜…ぷはぁ〜」
ちゅぽんと音を立て乳首を解放されたヒロは、気が抜けた様に身体を弛緩させて艶っぽい吐息を吐き出した。。
激しい口撃に曝された乳首は唾液にてらてらと濡れて、引っ張り出された乳首はピクピクと快感の余韻に脈打っている。
「んふふ…可愛らしい乳首じゃない…やっぱり普段隠れてるだけ敏感だったりする?」
唇の端から流れる唾液の筋を拭いながら、メイヴは悪戯っぽい笑みを浮かべて再び目の前の乳首へと舌を伸ばす。
そして舌先で弄ぶ様にコロコロと舐め転がしながら、もう一方の乳房を横目で見つつ根元から優しく撫で上げる。
「こっちの方は…んふっ、私のとっておきで感じさせてあげる」
乳首を舐め転がされるたびに漏れる甘い悲鳴を聴きながら、メイヴは撫で回していた乳房をふにっと鷲掴む。
それに併せて彼女の唇が旋律の様なモノを紡ぎ始めると、ざわざわとした甘い痺れがヒロの乳房へと襲い掛かった。
「ふっふっふ…これこそが黒魔法や白魔法とは全く別の魔法体系…メイヴさん特製のエロ魔法よっ!!」
「きゃぅっ!?ば、ばかっ何を言って…止めっ、止めっ!?ンアァァァァァァァァァァァァッ!?!?」
快楽神経を刺激する甘美な刺激が乳房の内部に流し込まれ、メイヴの掌の中で柔らかな乳肉が徐々に汗ばんでいく。
それに併せて乳房の先端では触れられないままの乳輪が、内からの刺激にムクムクと盛り上がり自らの形を変化させる。
そして二人が見つめる視線の先でガチガチに尖った乳首が、自らを包む乳肉を押し開けるとピンと硬く立ち上がった。
「うあぁぁ…こんなのって…い、いやぁぁぁぁ…」
自分の乳首が勃起していく様を余す事無く見せ付けられたヒロは、真っ赤に頬を染めて羞恥心に涙を浮かばせる。
その瞳を覗き込みながらメイヴは両方の乳首を口元へ引き寄せると、妖しい微笑を浮かべてフッと吐息を吹き掛けた。
「息が当たるだけでもビクビクしちゃって…これで触ったりなんかしたらぁ…」
「ま、待っ…ひゃっ!!さ、触らなっ…はぅっ!!やはぁっ!?…も、もう…だめ…んひぃんっ!!」
メイヴの指先が柔らかなタッチで動かされるたび、快楽のスイッチと化した乳首から電流の様な快感が送り込まれる。
そのたびにヒロはあられもない嬌声を張り上げながら、仰け反らせた肢体をビクビクと断続的に痙攣させ続ける。
やがて彼女の痴態を満足そうに観賞していたメイヴは、仕上げの一押しとばかりに両乳首をキュッとつねり上げた。
「んふふ…満足していただけたみたいねぇ?」
絶頂後の余韻にぼぅっとした表情のヒロを見つめた後、彼女の匂いで咽返る股間へとメイヴは顔を近づける。
シンプルなデザインのショーツは今や愛液に重く湿り、指先で触れるだけで透明な雫が糸を引いて滴り落ちる。
「さてさて中の方はどうなってんのかしらねぇ…?」
薄っすらと秘肉を透けさせたショーツを突付いて、メイヴは溢れ出る愛液に濡れた指先を淫靡に舐め上げる。
そして今も意識を混濁させているヒロの様子を確認しつつ、ショーツの両サイドに手を掛けズルリとずり下ろした。
「ふぁっ?…はぁ…はぅぅぅぅん……?」
自らを覆う布地が取り去られた途端、ヌルリと愛液を垂らす秘所を見下ろし、メイヴは放り出していた鞄を漁り始める。
鞄の中にあるモノを散々引っ掻き回した彼女は、一本のディルドを取り出すとヒロの身体をまんぐり返しにひっくり返す。
そのままの体勢に固定させる様に陣取ったメイヴは、挿入の瞬間を見せる様にディルドの先端を秘穴の入り口へと押し当てた。
「はい、そんじゃまぁ…挿入ううぅぅぅぅぅ〜」
嬉しそうなメイヴの声と共にディルドの先端が、ズプズプと秘裂を押し開いて熱い蜜壷の中へと挿し込まれて行く。
目に飛び込んでくる光景に驚愕の表情を浮かべたヒロだったが、その表情は瞬く間に快楽の色に蕩け始めた。
「んはぁっ!!お、大きぃ…わらひのなか…ひぅん!!い、いっぱいぃぃぃぃ〜〜!!」
ジュッポジュッポと淫らな水音と共に、下腹部から伝わってくる快感に、ヒロは我を忘れて嬌声を張り上げる。
彼女の視線の先では上下にディルドが抜き差しされるたびに、肉壷から溢れる愛液が止まる事無く流れ落ちていく。
「あはっ…ほらほら、もっと頑張って♪」
飛び散る愛液に顔を濡らしながら、メイヴはディルドを夢中に突き入れ、硬くなっている淫核をクリクリと弄ぶ。
そうして送り込まれる快楽を貪る様に、瞳を潤ませたヒロは自らの秘所から降り注ぐ愛液を嬉しそうに浴び続ける。
「ふあっ!!凄っ…凄いぃぃぃ!!熱っ、熱いのが…ひゃうぅ!?溢れてくるぅぅぅ」
ますますヒートアップするヒロの嬌声に、メイヴは淫核から指を離すと後ろの窄まりに絡みついた愛液を塗りつける。
やがてヌプリと尻穴に指を挿入させると、ピストンさせるディルドと併せてリズミカルに動かし始めた。
「そろそろでしょ!?解ってるの…派手にイッちゃいなさいなっ!!」
「きゃうぅ!?だ、だめぇ!!そんなにグリグリしたら…っはぁ!?い…いいいぃぃぃぃぃぃっ!?」
両方の穴の同時責めに瞬く間に絶頂へと昇っていくヒロの様子に、メイヴはタイミングを合わせディルドを引き抜く。
大きく音を響かせ光る飛沫と共にディルドを引き抜かれた秘穴は、次の瞬間に激しい絶頂の衝撃にビクンと震え上がる。
そしてヒロの甲高い悲鳴と共に断続的に水飛沫が放たれ、惚けた彼女の顔や肢体にパタパタと降りかかった。
「んふふふふ…オイシイ思いをさせて頂きました…ごちそうさまぁ♪」
「おまっ…おまえぇ…おぼえてろぉ…ぜったいおぼえてろよぉ」
絶頂を迎えてグッタリと脱力したヒロに向かってぱむっと手を合わせ、メイヴは満足そうに明るい表情を浮かべて感謝の言葉を口にする。
そんな彼女を涙ながらに睨みつけると、ヒロは怒りと羞恥の入り混じった表情でブツブツと呂律の回らぬ恨み言を呟き続ける。
「いや、ほんと反省してますって…本当ならリューンエルバを頂いちゃう予定だったのよ…そこで一つお詫びを兼ねた提案なんだけど…」
パタパタと手を振りながら悪びれる様子も見せず、メイヴは今も刺々しい視線を投げかけてくるヒロにピッと指を突きつける。
その怪しげなにフレンドリーな姿に訝しげな表情を浮かべるヒロに、メイヴは小悪魔を思わせる笑顔を浮かべて一つの案を提示した。
「いつもリューンエルバに色々とセクハラ受けてるんでしょ?…日頃の意趣返しに二人で逆にお礼参りってのはどう?」
予想外の悪魔的な提案を聞いて眉をひそめたヒロは、むぅ…と一つ唸った後に深い思考の海へと意識を沈める。
その脳裏には今までリューンエルバからのセクハラの日々が鮮明に蘇り、それに応じる様にして黒い思考がムラムラと心を満たし始めた。
「あなた一人じゃアレは手に余るだろうけど二人で行けば…どうよ?」
きらーんと胡散臭いまでの爽やかな笑みのメイヴを見つめて、どこか悟りを開いた賢者の様な表情になったヒロはフッと口元を綻ばせる。
―それこそがセクハラ女神に人誅を下すため、二人の魔人コンビが結成された証であった―
「とりあえずリューンエルバが帰ってくる来週までにプランを練りましょう」
「了解だ…ところでその鞄は他に何が入ってるんだ?」
復讐を決意し暗い笑みを漏らすヒロの言葉に、メインディッシュを前に控えて興奮しているメイヴはニヤリと笑って鞄の中身をぶちまける。
そして一個一個の淫具の解説が開始されると、方向性を違えながらも二人の同じ様な響きの笑い声が夜明け間近の室内へと流れ始めた。
『もう駄目…この二人は私じゃ止められない…』
嬉々としてメイヴが解説を続ける最中、不意にシェキルの絶望的な嘆きの声がが響き渡るも、それは当然の如く誰の耳にも届く事は無かったのだった。