ナイヅと呼ばれた、アキラという名の異世界人が死んだ。
まだ更年期も前の、ネバーランドの平均寿命から見ても些か早い死だった。
妻のネージュは悲しみながらも、夫の満足げな死に顔を見て気丈に見送る事を決意した。
残された我が子達の為にも。
葬式で見送りに来てくれたのは、道場の関係者、学園の仲間達だった。
その中でも……。
茸が大好きなネバーランド共和国の将軍をしていた友人は、双子の子供を連れていた……独身の筈だったのに。
共和国の情報機関で教官をしていた忍びは、三人の子供を連れてきた。彼女も結局独身のまま、だったのに。
ハイレインを務めている獣っ子とエルフの二人も、クォーターの子供を連れていた。
言霊を操る大術師も、耳の尖った黒髪の子供を連れていた……彼女曰く、言霊に感謝してるらしい……意味は知りたくないけど。
爆炎の申し子と一緒に巡察官を長年勤め続けているかつての恩師も、彼女そっくりの子供を連れていた……黒髪の。
ネージュの子供達は、滅多に怒らず穏やかな母親が怒髪天と言わんばかりに激怒するのを初めて見たという。
しかも、亡夫の入った棺桶をゲシゲシとヤクザキックしまくり、友人達に羽交い締めされてまでいた。
……そんな彼女も、一通りの葬式が終わった後、アキラの位牌が安置された部屋で塞ぎ込む事が多くなり。
夫の三回忌が訪れる前に彼の後を追うようにしてこの世を去ったという。
あの世で二人が再会したら、間違いなくこれ以上ないぐらいにアキラがネージュに絞(搾)られるだろうな、と夫婦の知人達は噂しあったとか。