「不覚だ……風邪をひくとは」
アイズ・ラザフォードは懐から体温計を取り出してそう呟く。
体温38.5℃。喉の痛みとせきも少々。
立つだけでふらふらしている始末である。
原因として、日頃の仕事の疲れが一気に出たものと考えているが
眠る際にエアコンをつけたまま寝ていたのも原因の一つだろう。
ベッドから上半身を起こし、そんな事を思考していた。
「まぁ、しばらくはオフだから仕事の方は全く問題はないが。
今から電話するところには気分が重い」
ため息をつきながら、今日約束していた人物の携帯に電話をかけてみる。
しかし、寝ているのか留守電に切り替わったのでメッセージを吹きこんでおく。
「……。とりあえず、寝るしかないか」
身体を横たえ天井を見上げる。やがて、意識は薄れていった。
ジリリリリリ……
「うーん。良い天気の朝ですね」
窓から外を見上げて雲一つ無い天気なので今日は上機嫌。
今日はアイズさんとデートです。ちゃんと目覚ましをかけた
時間に起きれたし。今から準備しても充分間に合うはずです。
その前に、念の為携帯をチェックしておかないと。
アイズさん、昨日までずっと仕事で。今日からしばらくオフらしいですけど。
いきなり予定が入る事もあるから、たまに留守電にメッセージが
入ってるんですよね……。はぁ。
「えっと……携帯携帯。何か留守電が入ってますね」
早速聞いてみる。
「アイズさんが風邪を引くなんて。疲れが溜まってるのでしょうか。うーん。
看病しに行く事にしましょう。うん。そうと決まったら早速準備っと」
これは、夢……か。
かつて、母親に無理矢理ピアノを弾かされた時の出来事。
殺戮を求める我が子を抑えるためとはいえ、かなり強制的だったのを覚えている。
更に、無理矢理好きでもない女を抱かされた出来事が夢に現れる。
息子の気を僅かでも殺戮から逸らそうとした行為の一つだろう。
だが、それは苦痛でしかなかった。何故、今更こんな夢を見ている。
今度は何だ……これは。あの時の出来事か。
全てが終わった日の、呪われし子供達の運命に決着がついた日。
死ぬつもりだった。それによって、手にかけてきた人間達に対する
償いだと思ったから。しかし、それは彼女の手で止められた。
「生きて、生きて償う事は出来ないんですか?」
その一言はあの時の自分の心に強く響いた。
「わたしは、アイズさんの事が好きですから生きていて欲しいんです」
彼女、ヒヨノが言った一言。自分は誰にも愛されていないと思っていた。
だからこそ余計にその一言が強く心に響いた。
それがきっかけという訳ではないが。付き合うようになり、そして何度か
肌を重ねた。自分がかつては見失った愛する事を思い出した。
そして、そこで目が覚めた。
「あっ、起こしてしまいましたね」
「ひ、ヒヨノ?」
「はい。アイズさんの可愛い彼女のひよのちゃんです」
いつの間にか頭の上に置いてある袋に入れた氷を取り替えながら
自分の恋人である結崎ひよのが目の前に笑顔で居た。
どうしてここに……」
「えっと。留守電を聞いたので。看病しに来たんですよ」
「そうか……すまない」
「謝るような事じゃないですよ。恋人同士なんですから。ところで薬は飲みましたか?」
「いや、生憎と置いてないので飲まずに寝ていた」
「駄目ですよ。そんなのじゃ治らないですよ」
「そうだが……」
「はぁ、仕方ありませんね。こういう事もあろうかと一応持ってきましたので
飲んでください。でもこれは食後に飲まないといけないので」
そう言いながらはキッチンから何か持ってくる。
「ひよのちゃん特製のおかゆを食べてから飲んでくださいね」
「……。ヒヨノが作ったのか?」
「ええ。キッチンは勝手に借りましたけど。料理はあまり出来ませんが
おかゆくらいは作る事はできますよ。食べさせてあげましょうか?」
「一人で食べれる」
「そうですか」
一瞬、悲しそうな目でヒヨノがこちらを見てくる。
そんな目で見るなと言いたくなるが。恐らく言っても無駄だろう。
覚悟を決めるか。
「分かった。食べさせてくれ」
「はいっ。それじゃあ。はい、あーん」
「あ、あーん」
ひよのはとても嬉しそうにこちらにおかゆの入ったレンゲを差し出す。
少しずつそれを食べながら雑談を交わす。
「ところで、アイズさん」
「何だ」
「さっき凄い汗をかいてましたけど。怖い夢でも見たんですか?
それと、身体を拭かないと風邪が酷くなるので拭いても良いですか?」
「身体ぐらいは自分で拭け……」
「駄目です。病人なんだからたまには甘えてください」
「分かった」
とりあえず、身体を起こしパジャマを脱ぐ。ヒヨノがタオルを持ったまま
少し呆然としている……
「どうした?」
「えっ。えっと、肌が綺麗だなと思って」
「そうか?」
「はい。それにいつもこの人に抱かれてるんだなと思ったら……
って、変な事を言ってますね」
「最後の方の発言は恥ずかしいぞ」
「言っているわたしも恥ずかしいですよ」
顔が少し熱い……ヒヨノの顔を見ると、真っ赤になっている。恐らく自分もそうだろう。
少ししてヒヨノがタオルでこちらの上半身を拭き始める。
「そういえば、さっきの質問に答えてなかったな」
「夢の部分ですね」
「昔の夢をみていた。無理矢理母親にピアノを弾かされた時の夢と……
あの時の。全てが終わった時の夢。それと……」
(どう言えば言い。そのまま言ったらヒヨノはどんな顔をする。
いや、言わなくても同じ事か)
「言いにくい事なら良いですけど」
そう言いつつ、ひよのは少し不安そうな顔で身体を拭いている。
「……。子供の頃だ。好きでもない女を抱かされた」
「えっ?」
一瞬、場の空気が凍った。ひよのは呆然としているがアイズは構わず話を進める。
「殺戮を求める息子の気を紛らわせるためと思うが、真実は知らない」
多少これには嘘がある。真実は一応知ってはいる。
が、今更どうでも良い事だ。
しかし、ヒヨノはショックなのか固まってしまった。
「何度も何度も、例え抵抗しようが何をしようが無理矢理に抱かされた」
「アイズさん」
「その夢を今でも見る。それが原因だ」
沈黙が部屋を支配する。目を閉じヒヨノを見ないようにする。
少し辛い。自分で言っておいて何だが。後悔の念に駆られる。
だが、少しして頭に柔らかい何かが当たる。
ヒヨノが頭を抱き寄せたようだ。つまり、当たっているのは胸か。
「ヒヨノ?」
「わたしは、アイズさんの過去に何があろうとこの想いは変わりませんよ。
ちょっとショックで悔しいですけど。アイズさんの初めての一つは貰ってますしね」
「あ、ああ……」
かつて、強制的に抱かされた女としてなくてひよのとはしている事。
それは、キス。付き合うようになって少しして初めてキスをした。
「ヒヨノ」
「あっ……」
顔を上げヒヨノにキスをする。ただ、唇を合わせるだけのキス。
だが、言葉だけでは伝えられない想いがそこには確かにある。
「アイズさん。しても良いですか? 今日はわたしがしても良いですか?」
「風邪が移る」
「今更ですよ。移るんだったらキスをした時点で移るでしょうし。
今日はわたしが気持ち良くしてあげます」
「ヒヨノ?」
こちらが聞き返そうとした瞬間、ひよのはパジャマのズボンを脱がして下着だけの姿にされる。
ヒヨノは少し躊躇したようだが、下着も脱がしてくるので、つい腰を上げてしまい脱がされてしまう。
「これがいつもわたしの中に入るんですね……」
「弄りながらまじまじと見ないでくれ」
ヒヨノは自分の物をしばし、見ていたが、ゆっくりと触りだし、
そしてそれに口をつけた。
「んむっ……ふぅん」
「くぅっ。ヒヨノどこでこんなのをならっ……」
「本とか見て少しだけ練習したんですよ。気持ち良いですか?」
「あ、ああ。くっ、あっ」
「んっ、けほっけほっ」
男が感じる部分を勉強したのかヒヨノはそこを中心に丹念に舐めたり口に含んで
刺激してくるので自然に腰が動いてしまい喉を突き上げる。ヒヨノは少し苦しそうに
しながらも舐めるのを止めようとはしない。
「ヒヨノ……出そうだから、離れ」
「良いですよ。そのまま出して」
ぺろぺろ、ぴちゃぴちゃ
ここ最近、仕事が忙しかったのでしてないせいか、出るのがかなり早い。
このままだとヒヨノの口に出してしまうので言うがそのまま舐められてしまう。
「だが、くっ。出る」
「んっ、んん!!」
どぴゅどぴゅ
大量の精液がひよのの口に射精される。苦しそうにしながらもひよのはアイズの精液を
徐々にではあるが飲んでいく。少しして、全部飲んだようだが、少しだけ顔を歪めている。
「何も飲まなくても……」
「好きな人のですから。だから、飲めますよ」
「……」
無言でひよのを抱き寄せ、頭を撫でる。
自分なりの感謝の気持ちである。
「今度は俺がヒヨノを気持ち良くしてやろう」
「あっ……」
さわ……
スカートの中に手を入れショーツ越しにひよのの女の部分に触れる。
そこは、少しだけ湿っていて濡れているのが分かる。
「いつから、濡れてた?」
「は、恥ずかしいからそんな事を聞かないでください」
「そうか。なら答える気にするだけだ」
くちゅくちゅ……
そう宣言してショーツの中に手を入れ直接触り始める。
とりあえず、付近を触り時折敏感な部分を触る。
ヒヨノも最初のうちは我慢していたが段々と我慢できなくなってきたのか
腰を動かし始める……
「あっ、ふぅん……。あ……アイズさん」
「どうした?」
「はぁ…はぁ…言いますから焦らさないでください」
「そうか。じゃあさっきのに答えてくれ」
「アイズさんの裸を見た時にちょっと濡れて汗を拭いている最中に
いつもしてもらってる事を思い出しちゃって……それで。ああっ!!」
ぐちゅっ!!
言い終わる瞬間に指を思いきり膣に入れ少し掻き回す。
散々焦らされたせいでそれだけでひよのはいってしまったようだ。
アイズに身体を預けて息を整えている。
「いったようだな」
「はぁ。はぁ……もっと感じさせてください。んんっ」
「その前に服を脱がないと汚れる……」
「そ、そうですね」
ひよのは立ちあがって服を脱ぎ出す。しばらくそれを見ていたが我慢できなくなったので
背後から抱きしめて、ゆっくりと胸を揉み始める。
「あ、アイズさん」
「前より少し大きくなったか?」
「は、はい……ちょっと大きく。はぁっ」
ヒヨノは胸が弱いのでいつもかなり揉んでしまう。
そのせいか、最近胸が大きくなりつつあると言っていたが。
この前より確かに少し大きく感じられる……
「はぁ、乳首も弄ってください」
「ああ」
こりこり、ぴちゃ…
ヒヨノの要望通り、硬くなっている乳首を弄りつつ、再び下半身に手を伸ばす。
少しだけ薄い茂みを感じながら敏感な部分を刺激する。
「あ、アイズさん、またわたし……」
「もっともっと、感じて欲しいからな。構わないぞ」
「は……い。ああーーー」
再び、ひよのは絶頂の快楽へと導かれ、立っていられなくなったのかこちらに
身を預けてくる。流石に立ったままは無理だな……
そう判断し、抱き抱えてベッドへと運ぶ。
「アイズさんのまた硬くなってますね」
「そのようだな」
「ヒヨノ……」
「良いですよ。入れてください」
くちゃり……
そう言って自らの秘部を指で広げる。顔は恥ずかしさで真っ赤である。
「……。いくぞ」
ずぷっ……
ゆっくりと自分の物がヒヨノの秘部の中に入っていく。
何度かしているが締め付けが多少きつい。
少ししてゆっくりと腰を動かし始める。
「はぁっ、アイズさん。気持ち良いです。はぁっ」
「俺も気持ち良い」
正常位で抱き合いながら腰を動かし、敏感な部分を弄る。まだ少しきついヒヨノの内部が
より締まり、更に絡みついてきて快感を生み出していく。
「んんっ、はぁ…そんなに弄ったらまたわたし」
「いくのは今度は少しだけ我慢してくれ……」
「もちろん、アイズさんも一緒ですよ、はぁっ」
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ……
結合部から水音が大きくなるが、行為に没頭している二人の耳には届かない。
お互いに一緒に快楽の絶頂に行く事だけに集中している。
「はあっはあっはあっ……アイズさん、もうわたし」
「俺もだ。もうすぐ出る」
「今日は大丈夫ですから中に出してください。んはぁ、いく、いく…いくぅぅぅぅぅぅぅ」
「分かった……くっ!!」
どぷっどぷっ……
事が終わって……
裸のままベッドで横になってただじっと天上を見ている。
ヒヨノは俺の隣で少し眠っている。
「これから先も何があっても守って見せる。忌まわしき過去は消えない。
だが、これから先は何があっても一緒に歩んでいけるはずだからな」
終わり……