スパイラル  

手に持った買い物袋。  
両手いっぱいで重い。  
二人は買い物袋を抱え彼の住むマンションの一室に向かう。  
一人は結崎ひよの。  
もう一人は浅月香介。  
鍵をまわして扉を開ける。  
「ふぅ…」  
両手の買い物袋を床に下ろす。  
「ずいぶん買ったな…。足りるか?」  
「多分。…でも。何で私が夕食作らねばならないんでしょう?」  
「いいだろ? 金出したのは俺なんだから」  
ひよのはしばらく、香介を見つめてきたが、仕方ないですねと呟くと、台所まで荷物を運ぶ。  
「ほら、浅月さんも早く運んでください」  
香介は言われるがままに荷物を運ぶ。  
今、この瞬間、彼女と居られることを感じ取って。  

「えっと…。油、油……」  
ひよのがエプロンをしながら台所を駆け回る。  
「よし、一品完成です♪」  
さらに料理を盛り付け、ひよのは満足げに微笑む。  
「誰かに教わったのか?」  
椅子に腰掛けていた香介がひよのに尋ねる。  
「ん〜♪ 誰でしょうね?」  
また、あの笑み。  
全てを見透かしたような瞳。  
そして形の良い唇がすこしつりあがる。  

(鳴海弟とか?)  

香介の頭にあの無愛想な少年の顔が浮かぶ。  
何時見ても気に食わない。  
あの澄ました顔で彼女を連れ去ってしまうのではないか?  

(いいや、考えるのはやめとこ)  

今はただ、彼女を見ているだけで幸せなのだから。  

「んっ…。美味い、美味い。出来るじゃねーか、料理」  
香介は食卓に並んだひよの手製の料理を口に運ぶ。  
「料理ぐらい出来ますよーだ」  
ひよのも口をつけつつ、憎まれ口をたたく。  
「いや、ほんとに美味いぜ」  
それなのに、香介は屈折のない笑顔をひよのに向ける。  
「……ありがとうございます…」  
その笑顔のせいかひよのは頬を赤くして、礼を云う。  
褒められることなど、あまりに少なくて。  
体だけを求められるのが関の山で。  
なのに。  

彼らは。  
彼は。  
私の愛を求める…-------。  

のんびりとした時間。  
洗い物を片付けて。  
さらさらと流れる夜風に当たりながら。  
ひよのは香介に寄りかかる。  
「どうした?」  
「べつに・・・」  
どうもしない。  
ただ、あなたに触れたかっただけ。  
「綺麗ですね・・・」  
香介がナイフに付いた血の汚れを拭いているのを見て、そう言った。  
「それ、結構危ない発言じゃないか?」  
「そうですかね…」  
ナイフは蛍光灯の光に反射して輝いている。  
窓から強めの風が吹く。  
彼女の髪が揺れた。  
色素の薄い髪。  
ベッド上で汗ばんだこの髪を幾度と撫でた。  
「お風呂、入ってきますね…」  
彼女がふと、そう云う。  
「……ああ」  
短く返事をする。  
夜は闇と欲が支配する…。  

「……ふぅ…」  
シャワーの銃口を閉める。  
体にまとわり付く濡れた髪。  
水の滴る体。  
体が熱い。  
これから、彼とする行為を考えて。  
「熱いな…」  
そういって背後から抱きすくめる。  
「? 浅月さん?」  
抱きしめた腕を見ればまだ、着衣したままだ。  
「ちょっ…もうすぐ上がりますから…」  
ひよのが香介の腕を解こうとする。  
「嫌だ。待てない」  
ひよのの首下にキスを落とす。  
「………んッ」  
胸に手を伸ばし、ゆっくりと愛撫する。  
「っあ…まだ…湯に浸かってないのにぃ…ふあ…」  
ひよのがそう呟く。  
それを聞いたのか、香介はひよのを抱き上げる。  
「ひぇ!?」  
向かい合うような体制で浴槽に入る。  
もちろん、香介は着衣したまま。  
「あ、浅月さん…服…」  
「かまわない」  
湯船で胸を揉まれる。  
いつもは感じない水の感触。  
抵抗力。  
次第に熱が高まってきて。  
「ふうあ・・・・っ・・・あっ・・・」  
ひよのは自分に胸に顔をうずめる香介の髪を撫でる。  
「ふっ・・・くはあ・・・ッ」  
胸の先端に舌を這わせると。  
「あっ・・・いやぁ・・・ふあぁっ・・・」  
甘い声が、朱唇から漏れるのだ。  
「はぁ…はぁ…あふッ…だめっ…の・のぼせちゃう・・・っ」  
顔も赤くなり、全身も赤らんでいる。  
それに気づいた香介は一度、湯船から上げてやる。  
「ふ・・・っ・・・・はぁ」  
湯気が二人を包む。  
その間にひよのはさっきのお返しと香介のズボンにチャックを引く。  
其れに唇をこすりつける。  

キスを降らして、舌で舐め上げる。  
「ふぁ・・・・あふ・・・・ちゅっ・・・ッ」  
口に含み、亀頭に舌を這わせる。  
「・・・・・・ッ」  
香介の顔が高潮し、快楽に身を任せていることを知るとひよのは喜びを感じる。  
笑みを浮かべつつ、口を上下に動かす。  
次第に其れが熱を持ち、大きくなっているのに気づく。  
脈々と熱打つ其れを口からはずし、手でしごきながら。  
「浅月さん・・・・・もう…いいですかぁ?」  
ひよのは香介の耳元で熱い息を吹きかけながらそう尋ねる。  
「・・・ああ・・・そこに手をつけな」  
香介はそう言って、ひよのの背中に口づけする。  
「ふぁ・・・・はい・・・」  
そうすると自然にバックから突かれる体制になる。  
すぐにひよのの中に香介のものが挿入られる。  
「あああぁぁっ!」  
激しく突かれている。  
髪は乱れ、体も揺れる。  
「あっ・・・あっ・・・あふぅッ! ふああんっ」  
痛いほどの快楽に身を任せる。  
「っあ・・痛ぁあっ・・・・ああんっ・・だめぇ・・・ッ」  
突かれる度に秘所がすれて痛い。  
でも、それも彼女にとっては快楽の一種だった。  
「痛いのが良いのか? いやらしいな、こんなに濡らして・・・」  
香介が耳元で囁く。  
サディスティックでそれも快楽。  
この時は全ての快楽を貪るのだ。  
それが彼女のやり方。  
「ああああんっ!! ダメぇ・・・あさづきさっ・・あたし、もうッ!!」  
突かれまくって、早くに絶頂を迎えそうになる。  
「イキな…」  
そういって、もう一度激しく突く。  
「ふあああぁぁんッ! ああああっ!!」  
一際高い声を上げて、絶頂を迎える。  
意識が一瞬飛んだ。  

「あっ・・・あっ・・・・ふぁあん・・・」  
ベッドでひよのが甘い声を上げる。  
周りは薄暗い。  
ベッドを愛液で汚しながら、香介の愛撫を受ける。  
「ふっ・・・・ああんっ・・・浅月さっ・・・そこぉ・・・」  
秘所に口付ける香介。  
真珠を撫でると甲高い声を上げる。  
「あああんっ!」  
もう、熱を持っている自分のものを押し当てる。  
「はふっ! はやくぅ・・・」  
彼女が自分の物をねだる。  

「なに? もう一回言って…」  
「いじわるぅ・・・はやくっ・・・・欲しいのッ!」  
意地悪言う彼にひよのは抗議する。  
「仰せのままに・・・」  
そういって香介は自分のものを一気に突き上げる。  
「ふああぁぁんっ!! いいッ…いいですッ!!」  
ひよのは香介の背中に手を回し、つめを立てる。  
「‥…っ…ひよ…の……ッ…!」  
限界に近づきつつあり、彼女の名を呼ぶ。  
「ふあっ・・あああっ…浅月…さっ…ああんっ!」  
体内で熱を持っているのが分かる。  
「ああああんッッ!! あたし・・・もうッ!!!」  

 

ウトウトとうたた寝して、瞼を開けると彼の顔がすぐそこにあった。  
「浅月さん・・・」  
裸の胸に薄いシーツが掛かっているだけですこし肌寒い。  
頭は香介の腕で腕枕されていた。  
「どうかしたか?」  
「…腕…温かいですね……」  
彼の手は冷たかった。それ故心地よく、彼女は彼の腕に抱かれるのが好きだった。  
「血が通ってるからな…」  
ひよのはそっと、瞳を閉じる。最初に浮かんだのは冷たい腕で抱きしめてくれた人。その次に浮かんだのは年下の無愛想な少年。そして、隣で横になっている少年。  
自分は誰の手も取らない。孤独は優しい。裏切りはないから。  

「いつかは…貴方も居なくなるんですね…」  
かすれた呟き。相手には届いただろうか。  
「いなくならねぇよ」  
彼の声もかすれていて、聞き取りづらい。  
「…ずっと一緒に居てやるよ」  
これは空耳かもしれない。わからない。  
「…無理ですよ。この世に永遠なんてないんですから……」  
そっと彼に抱きしめられる。暖かい。安らぎ。  
「……悲しいこと…いうな…」  
悲しくならないようにいってるんじゃない。  
愛した人が居なくなるのは嫌だから。  
愛さない。  
愛されない。  

 

あなたに。  

 

私の闇が判るの―――…?  

――終り――  

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